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大塚ローテック 片山次朗氏とTOKI(刻)ウォッチオークション出品モデル

カーデザイナーでプロダクトデザイナーという異色の経歴を持つウォッチビルダー、片山次朗氏との対話。

Photographs by Masaharu Wada

日本と時計をテーマにした史上初めてのテーマオークション“TOKI(刻)”が2024年11月22日(金)に香港のフィリップスで開催される。

世界的に見てもユニークなインディペンデントブランドが花開き始めた日本のマーケット(詳細は記事「加速する国産インディペンデントの新時代」へ)。その中心にいる作り手たちはどのような思いを持ち、時計づくりに向き合っているのだろうか。今回のテーマオークション開催に伴い、彼らの声を聞くことができた。

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大塚ローテックは、かつて関東自動車工業でデザイナーを務めたあと、プロダクトデザイナーとして独立した片山次朗氏が、独学の末に創設した時計ブランドです。大きな転機となったのは、2008年にネットオークションで何となく手に入れた卓上旋盤。自宅の台所に設置した旋盤ではクルマを製作するのは不可能ですが、手のひらに収まるサイズのものなら何か作ることができるだろうと考え、腕時計のケース製作に挑戦し始めたのが時計づくりを始めたきっかけだったと言います。

 その後、少しずつ工作機械を揃えながら時計製作に本格的に取り組み、2012年にはディスク式レギュレーター“5号”が完成。これを機に彼は大塚ローテックを設立し、時計販売を開始します。

片山次朗氏が時計を組み立てるアトリエ内の作業デスク。

アトリエにはさまざまな工作機械が所狭しと置かれている。

 片山氏は大塚ローテックを設立以降、モジュールと外装の設計・製造、組み立てから販売まですべてひとりで行ってきましたが、2023年から浅岡 肇氏が率いる東京時計精密のサポートを受けるようになります。そのおかげもあって時計に用いる素材の見直しや作り方、構造を改良し、生産体制も整えることで製造本数も拡大しました(詳細は記事「日本人初の独立時計師、浅岡 肇が描く日本の時計づくりの未来」参照)。

 自身をウォッチビルダーと称する片山氏の時計デザインは、カーデザイナーおよびプロダクトデザイナーとしての経験が影響しているのか、従来の腕時計とは異なる独自の時刻表示方式や、メカニカルな計器類を思わせる外観が特徴です。デザインのインスピレーションについて自身の好きなものを思い浮かべてていると言います。「(現代は)多くのデザインが洗練され、効率もよく便利になってきています。確かにそうしたなかにも格好いいものはたくさんありますが、私はもっと単純で原始的な機構が好みです。レバーやハンドルで操作する古い機械や、鉄の重厚さ、曲げられた形状、ボタンのような要素にずっと魅力を感じてきました」と語る彼の言葉は、プロダクトにもそのまま表れています。

ダブルレトログラードアワー&ミニッツの6号。ムーブメントモジュールにギターの1弦が使用されている。

PCデスクの横に立てかけられたSGギター。

 彼のアトリエはフィルムカメラをはじめ、古いラジコン、ミニカー、バイクのヘルメットからギターに至るまで彼の好きなもので埋め尽くされています。「工作機械もつい形で選んでしまうところがあって、時計のデザインの好みと同じ感覚で集めてきました」と笑いながら教えてくれました。実際、彼のアトリエにはさまざまな工作機械が所狭しと並び、そのこだわりがうかがえました。

ジャンピングアワーとディスク式分・秒表示を備える7.5号。

インスピレーション源となったカメラだろうか。アトリエ内の至るところで片山氏の好きなものが見つかる。

 そんな好きが詰め込まれたアトリエで作られるクリエーションは、今世界中から注目を集めています。現在は日本からしか手に入れることができないため、毎日のように購入のリクエストが公式のInstagramアカウントに寄せられているそうです。また、時計愛好家やコレクターたちだけでなくその功績は広く認められており、スイスの国際時計博物館(MIH)に7.5号と6号が所蔵され、2024年には7.5号がiFデザインアワード2024を受賞。さらに厚生労働大臣によって表彰される現代の名工にも選ばれるだけでなく、つい先日開催された2024年のGPHGではチャレンジ部門(3000スイスフラン以下の時計)を受賞しました。今日本で最も注目されるマイクロブランドと言っても過言ではないでしょう。


TOKI(刻)ウォッチオークション出品作品

すでに記事「独立時計師 浅岡肇氏とTOKI(刻)ウォッチオークション出品モデル」のなかでも紹介していますが、石川県能登半島の大地震の復興を支援するためのチャリティーの一環として、東京時計精密からユニークピースが出品されます。材料費や人件費などすべてを出品者側が自己負担で賄う純粋な形式のチャリティーであり、大塚ローテックからも特別なモデルが出品されています。本オークションでは、コレクターから出品される6号と7.5号もありますが、本稿ではチャリティーのために作られたユニークピースに絞ってご紹介します。

大塚ローテック 6号 東雲 “SHINONOME”

 チャリティーのために片山氏が製作したのは、大塚ローテック 6号をベースにした特別仕様、東雲 “SHINONOME”です。基本的なスペックは通常モデルと共通で、直径42.6mm×ケース厚11.8mmのステンレススティールケースに、内部には片山氏設計のダブルレトログラードモジュールを備えたミヨタ製の自動巻きムーブメントが搭載されています。

 本作をユニークにしているのは、ひと目見てわかるとおり、その外観です。スティールケースはフルブラックIPコーティングが施され、半透明のダイヤルが与えられました。モデル名にある東雲とは、夜明けの前の太陽が昇りはじめる空を指しますが、それが表現されているというわけです。セミスケルトンダイヤルの奥には通常生産モデルでは隠されていて見ることのできない内部のモジュールも確認することができます。

Photo Courtesy: Phillips

Photo Courtesy: Phillips

 先述のとおり、現在同ブランドの時計は日本在住者しか抽選に申し込むことができないため、今回のオークションはそうした海外のコレクターにとっては、大塚ローテックの、それも特別なユニークピースを手に入れる絶好のチャンスになります。

 LOT 107: 大塚ローテック 6号 東雲 “SHINONOME”のエスティメートは、ノーリザーブで1万5000〜4万5000香港ドル(約29万〜89万円)。そのほかの詳細はこちらから。

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