ADVERTISEMENT
本稿は2015年9月に執筆された本国版の翻訳です。
2015年の4月、アンティコルムのカタログを品定めしていたとき、史上最もクールな時計のひとつである、ダグラス・マッカーサー(Douglas MacArthur)将軍が所有していたジャガー・ルクルト レベルソを発見した。レベルソが何人かの偉人に愛用されていたことは以前から知られていたが、なかでもマッカーサー将軍がこの時計をつけていたとは驚きだ。マッカーサーレベルソが出品され、ファンが食いつくだろうとは思っていたがそれは正しかった。結果8万7000スイスフラン(当時の相場で約1094万円)以上で落札された。そのときは知らなかったのだが、この時計を最初に製造した会社が買い取り、数カ月後に時計の実機を見る機会を得ることになった。
ご覧のとおり、この1930年代半ば製のレベルソは、小売店のゴレイ・フィス&スタール(Golay Fils&Stahl)社で販売されていた。リッチなブラックダイヤルに、裏蓋へ施された“D MAC A”のラッカー仕上げモノグラムが特徴である。このレベルソの裏蓋は、我々が過去に出合ったなかで最もクールな刻印のひとつだ。
興味深いことに、この時計には“Jaeger-LeCoultre”とサインが入っており、JLCのアーカイブによると、このようにサインされた最初のもののひとつであるという。それまでのレベルソには“LeCoultre”のみがサインされていた。
このレベルソについて同様に興味深いのは、落札価格である。くだらない批評をする人たちが、“ああ、JLCはブランドの価値を高めるために入札したんだ”と言うだろうが、これらの発言はムーブメントが時計のコストの100%を占めると信じているようなものである。わずかな知識は、まったく知識がないよりも危険だという例だ。確かに過去にはブランドが自分らの時計を入札していたが、今日の目標は決して高い買い物をすることではない。オークションでは両者に責任がある。つまりJLCはこの重要な時計に8万7500スイスフランを支払ったが、ほかの誰かがそれをわずかに下回る8万5000スイスフラン(当時の相場で約1070万円)で、よろこんで支払ったということでもある。私にとってはそれが魅力的なのだ。
それはなぜか。これはヴィンテージレベルソの最高記録に違いない。本当かどうかはわからないが、きっとそうだろう。というのも、ヴィンテージレベルソは非常に重要なものであり美しいが、オークションでは決して高値がつかないのだ。それらは小ぶりで比較的たくさん流通している。しかしこの結果は多くのことを物語っている。誰が所有していたかにかかわらず、JLC愛好家にとっては励みになることは間違いない。
話題の記事
Hands-On ショパール L.U.C 1860 フライング トゥールビヨンは28年を費やし完成したタイムピースだ
Introducing グローネフェルド兄弟の手頃な価格の新ブランド、グローネからマニュエル・ワンが登場
Hands-On MB&F LM シーケンシャル フライバック。複雑機構が増えるほど時計はよくなるのか?