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In-Depth フィリップス ジュネーブオークションで100万ドルを超えた時計について

4本中、3本は100万ドルを超えたが、1本は超えることはなかった。

※本記事は2015年4月に US版で公開された記事の翻訳です。 

 早速だが本題に入ろう。フィリップスの今回のオークションで100万ドルを突破する(かもしれない、もしくはそうなるだろう)4本の時計がある。そのうちの2本はロレックスであり、もう2本はパテックであり、2本はスティールで、他の2本はゴールドだ。おそらく、さらに興味深いのは、そのうちの2本がほぼ明白な“本命”であるのに対し、他の2本は少し意外なものということだ。


疑う余地のない大物たち

 最初の2本は全くもって信じられないほど素晴らしい。それらは我々の多くが夢見るものであり、その卓越性は、時計収集のことを少しでも知っている者なら誰もが認めるところだ。

ロット 214: ロレックス オイスターコスモグラフ“アルビノ” Ref.6263

 ロレックスから、以前にあのクラプトンが所有していたRef.6263 デイトナ“アルビノ”を紹介しよう。この時計は、全てのロレックスのスポーツモデルの中で最高レベルで、信じられないくらい素晴らしい。このくらい特別な時計になると、その希少性ゆえ、クラプトン所有という理由だけでは価値の創造に大きな役割を果たさないかもしれない(彼のプラチナ製2499のように)。世界には3本のアルビノ 6263が存在する。3本。それだけである。20世紀に何百万本のロレックスが製造されたか、そして3本しかないロレックスの価値を考えて欲しい。さらにそれが、世界で最も魅力的な時計であるヴィンテージ・デイトナだったら。そう、バックス氏が2013年に100万ドル以上でポール・ニューマンのブラックの“RCO(Rolex→Cosmograph→Oysterの順に表記されている)”ダイヤル(確かに3本以上ある)を売ったことと、この時計が2008年に50万5000ドルで落札されたことを考えると、これは少し常軌を逸した価格になると思うのだ。

 どのくらいの価格になるかの予想は人それぞれだが、もしあなたが大のデイトナコレクターであれば、限界まで行くと言うだろう。もちろん、あなたがジョン・ゴールドバーガー氏で、たまたまホワイトゴールドのユニークな6265を所有していて、世界に3本しかないポール・ニューマンのヨットマスターの内の1本を所有しているのなら話は別だが。私の知る限りでは、ジョン・ゴールドバーガー氏は一人しかいない。

クラプトンのアルビノ デイトナの予想落札価格50万~100万スイスフラン(約5860万~約1億1730万円)に対し、実際の落札価格は132万5000スイスフラン(約1億5540万円)だった。詳しくはこちらを。

ロット123: パテック フィリップ ステンレススティール製 モノプッシャー ドクターズ クロノグラフ Ref.130

 他の明白な本命ロットは、スティールのパテック フィリップ Ref.130ドクターズクロノグラフだ。またしても、ばかげているくらい凄いものだ。1930年代にさかのぼるもので、スティールケース(パテックにとっては全ての金属の中で最も貴重)、セクターダイヤル、およびモノプッシャーのムーブメントを備えている。たった2本だけが製作されたが、他の1本はジュネーブのパテック フィリップ・ミュージアム内に鎮座している。

 この2本の時計は兄弟(両方とも医師)が注文したもので、ムーブメントの連番がそれを裏付けていると言われている。この時計はまさに大作であり、2本の時計が作られ、1つはミュージアムにあることを考えると、本質的に特別な時計なのだ。これはまさに全てのバイヤーにとってパテック フィリップのSS製モノプッシャー ドクターズクロノグラフを購入する唯一のチャンスであり、その価値は誰にでも容易に推測できる。誰かが反論するかもしれない1つのポイントがあるが、私はただ、パテックは既にこの時計の兄弟機を所有しているため、今回入札することはないと思っている。公平を期すために、いずれにしても彼らは過去数年の間、あまり時計を買っていないと聞いたことがあり、潜在的なバイヤーのリストから1つの非常に有力なプレーヤーを削除することになる。 

 フィリップスの内覧会で、このドクターズウォッチを撮影し試着させてもらったが、本当に良い時計だった。実際、これは私の夢のデイリーウォッチになるかもしれないし、カジュアルなカーフストラップでセーターとジャケットに合わせれば、誰もそれが特別な時計であることに気づかないだろう。この時計はとにかく素晴らしいし、私が以前記事にした時計について何度か言ったように、この時計は、もしできるなら、手に入れたい1本だ。

 このSS製モノプッシャー セクターダイヤル クロノグラフの予想落札価格100~200万スイスフラン(約1億1730万~約2億3410万円)に対し、実際の落札価格は464万5000スイスフラン(約5億4380万円)だった。詳しくはこちらを。


目利きの方へ

 上記の2本の時計は、マクロレベルで非常にレアで定義しやすいという点で明白な本命ロットだが、私が100万ドル以上の価値があると思う4つの時計のうち、次の2本は本当に微妙な差違で判断することになる。初めて購入する人には、これらの時計がなぜ特別なのか理解しかねると思うが、私自身や話をした数人の熟練した鑑定家にとってこれらはさらに興味深く、見る人が見ればもっと価値のあるものになるかもしれない。2つのロットは6239パンダ ポール・ニューマン、マーク1 6239 ダブルスイスアンダーライン デイトナ(これら2つは間違いなくクールで確かに価値があり、誰でも理解しやすい)のようなものと考えて欲しい。本当のマニアのためだけの時計だ。しかし、時計収集のハイエンドの世界を実際に動かしているのは彼らなのだ。

ロット72: ロレックス オイスターパーペチュアル トリプルカレンダー ムーンフェイズ Ref.6062 ブラックダイヤル

 1本めは、イエローゴールドのロレックス トリプルカレンダー ムーンフェイズ Ref.6062だ。6062はロレックスの防水カレンダーウォッチで、ベテランコレクターの間で人気の高いモデルだ。平均的な6062は、それなりの形をしていれば、既に6桁ドル台半ばの値がする時計だ。この時計が貴重な上に心を掴むのは、素晴らしい黒のパティーナが生まれているケースとダイヤルのクオリティだ。しかし、最も重要なのは、ダイヤルが黒だということで、これが価格を大幅に上げている。黒の文字盤をもつ6062は、ほとんど、実際には全く見たことがない。

 このことは、ブラックの6062を真剣に探しているコレクターなら、この時計に入札しなければならないことを意味する。私は、そうすべきだと確信している。ニューヨークで見て手に取ったこの時計には、本当に特別な何かがあった。ダイヤルは光沢があり豊かで、ケースはダークで温かみがあり、全体的な存在感はまさに輝いていた。“輝いて”と言ったのは、実際にそうだったからだ。

 この時計が100%、7桁ドル台になるかどうかは分からないが、クオリティと希少性を正しく理解されれば、7桁になる可能性はあると信じている。この時計は1955年7月14日に空軍のエクスチェンジサービスで購入されたもので、それがスウィーニー将軍に贈呈される3週間前だったとお伝えしただろうか? そしてオリジナルの計時証明書を含む書類が全て揃って、箱も付属しているということも。この時計は本当に尋常ではない。

このブラックダイヤルのイエローゴールド製6062の予想落札価格30~60万スイスフラン(約3510万~約7030万円)に対し、実際の落札価格は50万9000スイスフラン(約5960万円)だった。詳しくはこちらを。

パテック フィリップ ピンクオンピンク パーペチュアルカレンダー クロノグラフ Ref.1518

 最後のロットが、パテック フィリップ初の永久カレンダークロノグラフ - Ref.1518 - というのはらしくないかもしれない。1518を30万〜40万ドルくらいで購入することはいつでもできる。しかし、それらはイエローゴールドであり、イタリアのどこかで不明瞭な時期を過ごした可能性がある。この1518はそうではない。今まで見た中で最も優れた1518の一つだ。

 まず第一に、イエローゴールドではなくピンクゴールドである(そこで価格が2倍になる)ということ。第二に、見事なピンクの文字盤をもっている(人々はピンクオンピンクが大好きだ)こと。そして最後に、ケースにマッチしたオリジナルのピンクゴールドのブレスレットが付いていることだ。

 アーカイブには、この時計がピンクゴールドのブレスレットで製作されたことが明記されている。さらに記録によると、この時計はジュネーブのショップでフランスの著名な実業家に販売されたが、その実業家が国境を越えたため、時計はフランスの輸入証明書を得た。この証明書は、ケースバックとブレスレットの留め具の両方に見られる。彼はこの時計を輸入する際に、時計とブレスレットの両方の価値の半額に相当する関税を払わなければならなかったのだ! そういえば、当時のこの時計の価格が1600スイスフランで、ブレスレットだけだと1000スイスフランだったと知ってるかい?

 そのため、この時計はクオリティと希少性の面ではまさに大作だが、それ以上にこのブレスレットは、全くこれまでにないような最も豪華で特異なパテック フィリップのブレスレットである。このピンクの1518に付いたブレスレットの重さと厚さは本当にユニークで、率直に、我々はこのようなものを見たことがない。さらに、紛れもなく一点モノのブレスレットと共に生まれたという事実に加えて、その歴史を証明する輸入マークが付いていることを考慮すると、この時計はスティール製ドクターズクロノグラフのトップロットにも勝るとも劣らないものだ。全てのバイヤーにアピールすることはできないかもしれないが、長年ハイレベルなコレクションをしてきた人にとっては、これ以上のものはないかもしれない。

 私が今までに見た中で最もこ惑的なブレスレットを備えたこのパテックのパーペチュアルカレンダーの予想落札価格は80~140万スイスフラン(約9370万~約1億6390万円)で、実際の落札価格は144万5000スイスフラン(約1億6920万円)だった。詳細はこちらを。