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先週、HODINKEEのチームは時計の世界で働くほぼすべての人たちとともにジュネーブへ行き、Watches & Wondersでの最新リリースと、このスイスの都市で開催されたほかのいくつかのより小規模なイベントを取材した。1週間ひたすらミーティングをこなしたあと、僕たちは今年の目玉となる新作の数々を見ることができた。以下のEditors' Picksで、今年も大豊作となったリリースのなかから、僕たちのお気に入りのセレクションを紹介する。A.ランゲ&ゾーネからショパール、アンジェラス、カルティエまで、さらにはドイツのトラベルタイマーも少々入っており、リリースの幅広さと僕たちHODINKEE編集部のセンスが際立つリストである。またEditors' Picks用の動画も作成したので、ここで見ることができる。
リストを読み終えたらぜひコメントを残し、今年のジュネーブでの見本市であなたが気に入った新作をいくつか教えてほしい。
A.ランゲ&ゾーネ 1815 34mm
ジェームズからこの見本市で気に入った時計を選んでくれと言われたとき、私が即座に返した答えは“ハニーゴールドのオデュッセウスとパテック 6196P。間違いない”。だった。このふたつは私が大好きな時計であり、個人的に魅力を感じる。しかし一歩引いて考えてみた。ひとりの健康な人間として、生涯であまりにも多くの時計を見てきた男である私、ベン・クライマーにとって、そのふたつは間違いなく魅力的だ。それらの時計には最高と思わせてくれる点がある。しかし、大多数の人にとっては最高の時計ではない。希少性、価格、またはデザイン、どの点をとるにせよ非常に特殊なタイプのコレクターのための時計である。つまり私のようなコレクターのための時計なのだと思う。
そこで私は、ただ時計が大好きで、実際に小売店でその時計を購入できる可能性がある人にとって、今回の見本市で実際に最高の時計は何なのか考え始めた。その枠組みのなかで言えば、私にとってはA.ランゲ&ゾーネ 1815 34mmである。まったく新しいキャリバー(ランゲの75番目!)はまったくもってゴージャスでスリム、かつエレガントであり、身近にいる誰にでもぴったりなサイズのケースに収められている。
ホワイトゴールドとローズゴールドの2種類があり、ダイヤルは美しいネイビーブルーで、価格は2万5400ドル(日本円で約360万円)だ。そう、誰にとっても大金である。しかし世界最高のブランドのひとつであるこの時計で、真のハイエンドウォッチメイキングの世界に足を踏み入れることができる。小売店でも手に入れられるはずだ。またサイジングも素晴らしいと思った。まさに未来のクラシックであり、スタイル、デザイン、そしてもちろんウォッチメイキングが、真にエレガントな筐体の中で最高の形で融合した時計だと思う。あらゆる人を、ファインウォッチメイキングというカテゴリー全体に惚れ込ませてしまうことができる時計である。だからこそ私はこの時計を、Watches & Wonders 2025の最高の1本だと考える。
– ベン・クライマー、プレジデント
A.ランゲ&ゾーネ 1815 34mmの紹介記事はこちらから。
ノモス クラブ・スポーツ ネオマティック ワールドタイマー
いつもならWatches & Wondersのあと、私は究極の時計を夢見ることになる。しかし今年は、ほかよりも心に突き刺さった時計があった。それが、新しいノモス グラスヒュッテ クラブ・スポーツ ネオマティック ワールドタイマーだ。最近、ウォッチメイキングにおける価値提案という考え方が、どんどん儚いものになっているように感じられることがある。ただノモスの称賛すべき点は、このブランドの原型であるバウハウスの精神から時折逸脱しながらも、価値が詰まったウォッチメイキングを次々と実現し続けていることだ。
8色展開のこの新作は、おそらく今回の見本市のなかで最高の価値を提案するものである。また真の自社製トラベルウォッチという観点から言えば、自分のお金で手に入れられる最も本格的な作りの時計でもあるだろう。その点が、最高のトラベルウォッチの1つとして私がこの時計を候補に挙げる理由でもある。カラフルなダイヤル(8色のうち6つは限定版で、非常に個性的)は40mmのクラブ・スポーツケースに収められており、厚さはわずか9.9mmで、100mの防水性能を備える。
ダイヤル上のマークを使い、周囲の都市リングに基づいてタイムゾーンの調整を計算することができる。その際、自分がいる都市は一番上にマークされる。3時位置のインダイヤルはホームタイムを表示する。実に印象的なのは77万2200円(税込)という価格にもかかわらず、クラブ・スポーツ ネオマティック ワールドタイマーはこのクラスのほかの時計の多くがモジュール式であるのとは異なり、第2タイムゾーン用ムーブメントが完全に統合された、このブランドのまったく新しいキャリバーを搭載していることだ。プッシュボタンの触感は非常に満足のいくもので、実際に試す機会を得たとき、各都市を次々に切り替えて表示するのが楽しくてつい何度も押してしまった。旅行に便利な仕様に新しいキャリバー、楽しい色使い、そして気取らないデザイン。この新しいノモスを大好きにならないわけがない。
–タンタン・ワン、エディター
ノモス クラブ・スポーツ ネオマティック ワールドタイマーの紹介記事はこちらから。
カルティエ ベニュワールミニ バングル ア ポア
カルティエのデザインチームが、魅惑的な曲線を描くベニュワールウォッチを、ソリッドゴールド製ながら控えめな華やかさをもつバングルに仕立てたことに心から拍手を送りたい。天才的な決断だった。2025年11月にリリースされたこの新しいモデルは、クラシックなベニュワールのシルエットを過剰になることなく高めている。一体的なイエローゴールドのバングルには46個のブリリアントカット(水玉)ダイヤモンドがあしらわれ、シャンパンカラーのダイヤルが用意される。
オリジナルのバングルは素材のシンプルさが印象的であり、時計界で長いあいだ空白となっていた、過度な装飾に頼らないジュエリーと時計のハイブリッドモデルという領域を埋めている。このモデルでは、ダイヤモンドの使用が後から取って付けたようには感じられない。むしろ私が史上最も成功したデザインのレディスウォッチと考えるものに対し、型にはまらない遊び心のあるアレンジを加えている。
私は常に、ジェムセッティングについて熱狂的に語りたい衝動に駆られているが、クリーンなラインと簡素な装飾は、現代の消費者にとって紛れもなく魅力的である。ベニュワールのバングルは、魅惑的な無頓着さを演出する種類のアクセサリーだ。まさに2000年代半ばのケイト・モス(Kate Moss)の自由奔放な着こなし方のようである。“このケイトのジーンズを履き、完璧なオーバーサイズのカシミアセーターを着て、手首に重ねたアクセサリーに、さっとこのベニュワールのバングルを加えただけなの”。
カルティエがレディスウォッチ市場で圧倒的な存在感を発揮しているのは、結局のところ女性がジュエリーデザインに求めるものを理解しているからだ。究極的には、女性が自分の体に身につけるものと共生する関係性を作り出すことが重要なのだ。つまり女性がしたい主張や、それとなく伝えたいステータスとの共生関係である。カルティエの伝統のなかで培われてきたベニュワールの歴史に、今日のカルティエの文化的な関連性を加味すれば、今もスイス時計業界の多くを支えている保守主義を損なうことなく、徹底的にモダンでファッションコンシャスに感じられる時計が出来上がる。
–マライカ・クロフォード、HODINKEE Magazine エグゼクティブ・エディター
ショパール L.U.C クアトロ マーク IV
初めてのWatches & Wondersから帰ってきて、ひとつ心に残ったことがある。明らかなトレンドだ。1週間でこれほど多くのブランドの新作を見せられたことは今までになく、さまざまなタイプのブランドにこれほどまでの共通点があることに衝撃を受けた。要するに青色と、より小さなサイズのケース、そして貴金属の多さである。この時計はそのすべてのトレンドに合致しており、どうしても頭から離れない。
そのすべては1月に刷新された新しいパーペチュアルモデルのラインナップから始まったが、私はショパールがこの新たなL.U.Cケースの形状とスタイリングでやっていることが大好きだ。その“バシーヌ”アーキテクチャは、直径39mm、厚さ10mmのこの時計を、むしろ直径36mmか37mm、厚さ8mmか9mmのように見せるのに大いに役立っている。わずかな違いのように思えるかもしれないが、ドレスウォッチのことを知っている人ならそれがすべての違いを生むとわかっているはずだ。
そう、ショパール L.U.C クアトロ マーク IVの価格は722万7000円(税込)だ。いやはや高い。しかしプラチナのドレスウォッチに散財するつもりなら、市場で購入できる新たな最高の1本を見つけたと思う。明らかなライバルはパテック フィリップの新作Ref.6196Pだが、両方を体験した私はショパールのほうに気持ちが傾く。4つの香箱と9日間のパワーリザーブを備えるクアトロは特別なものであり、もし手に入れられたなら幸せだろう。
– リッチ・フォードン、エディター
ショパール L.U.C クアトロ マーク IVの紹介記事はこちらから。
A.ランゲ&ゾーネ オデュッセウス ハニーゴールド
オデュッセウス ハニーゴールドについてはすでに多くのことを聞いていると思うが、もう少し読んでもらわなくてはならず、申し訳ない。この見本市の一番のお気に入りとしてほかの時計を選んだら、自分に不誠実だろう。私はこれまでたくさんの人に、Watches & Wondersで発表されたなかでお気に入りの新作は何か聞かれ、“えーと、オデュッセウスの次に...?”と答えるようになった。この催しで最も手が込んだ時計や革新的な時計ではないが、もし私が話をした人たちも選べたとしたら、ほとんどが選んだであろうと思うモデルである。
私は今年のことを、非常に“一般消費者”志向の年だと見ている。確かに、パテック フィリップのRef.6196Pや5370R、タンク ア ギシェ、タグ・ホイヤー フォーミュラ1など、ある意味で“愛好家向けのサービス的モデル”と呼べるものもいくつかあった。そして入手困難か、今後の製品に影響を与えるであろう注目すべき世界記録も数多く見られた。しかし例年に比べて“マニア志向の製品”は少なかった。そのことがある意味で、オデュッセウスをどんな手段を使ってでも欲しいと、多くのコレクターが思うような存在として際立たせる手助けをした。
オデュッセウスの初代モデルが登場したときのことを覚えている。その反応は賛否両論だった。今でこそそれはもっとも入手困難な時計のひとつになっている。ブランドが誇る人気の高いハニーゴールドでケースを作り、ブラウンの“トロピカル”な雰囲気のダイヤルを組み合わせることで、重厚さと視覚的な魅力が加わっている。そして、それはまるでこう語っているかのようだ。“そう…これはいい。あなたもそう思っているし、私もわかっている。そして私たちふたりとも、これを手に入れたいと願っている”。
– マーク・カウズラリッチ、シニア・エディター
アンジェラス クロノグラフ テレメーター
米国に輸入されるスイス製腕時計に対する関税の突然の引き上げは、今年のWatches & Wondersでのエグゼクティブたちとのミーティングに切迫した雰囲気をもたらした。しかしアンジェラス(およびアーノルド&サン)のマネージング・ディレクター、パスカル・ベシュ(Pascal Béchu)氏と会ってビジネスの話をしたとき、アンジェラス クロノグラフ テレメーターに触れることで思いがけず穏やかな瞬間を得ることができた。このモデルは、ヴィンテージ風のデザインを堂々と取り入れたモノプッシュボタン式のクロノグラフで、レトロなスタイルを前面に押し出しながらも、歴史的に重要な手巻き式のムーブメントを現代的にアップデートしたもので動作している。セージグリーンのカーフスキン製ストラップに“チタングレー”のスティール製ダイヤルという、私のお気に入りのモデルを眺めているうちに心配事は消えていった。
親しみのあるデザイン要素を取り入れながらも、まったく新しいコンプリケーションに堅牢性と信頼性を加えた、上質でコンテンポラリーなウォッチメイキング。直径37mm、厚さわずか9.25mmの緩やかなカーブを描くケースとラグが、その魅力をさらに引き立てている。目で見ても、手首に着けても心地よいフィット感がある。ダイヤルは控えめな表情ながら、視認性は抜群。くぼんだスネイル仕上げのインダイヤルに加え、3Nゴールドの数字とインデックスが配されている。シリンジ型の針にはスーパールミノバが施されており、日常的に着用されることを前提にした実用性の高いディテールだ。シースルーバック越しに見えるのは、コート・ド・ジュネーブ ストライプが美しく施されたムーブメント。そこには、語るべき本物の物語が宿っている。
日本のシチズングループが所有するスイスのウォッチメイキング資産のひとつであり、アンジェラスのほかアーノルド&サン、フレデリック・コンスタント、アルピナなどを擁するラ・ジュー・ペレが製造するこの時計は、フランソワ=ポール・ジュルヌ(François-Paul Journe)氏とデニス・フラジョレ(Denis Flageollet)氏がデザインし、1999年にカルティエのトーチュ モノプソワール CPCPに採用されたことで有名な045MCをアップデートしたものだ。ふたつのバリエーションが用意され、25本生産のSS製バージョンは1万7900スイスフラン(日本円で約310万円、15本生産の18KYG製は3万2300スイスフラン、日本円で約560万円だ)と、このクロノグラフ テレメーターは決して安くない。しかし、不安定な時代におけるこの平穏の価格は、それに十分見合うだけの価値があると私は期待している。
– アンディ・ホフマン、シニア・ビジネス・エディター
ローラン・フェリエ クラシック・オート ホライゾン
時計に名前が記されている人物に迎えられるとき、それが特別な体験になると実感します。まさにそれは、Watches & Wondersでローラン・フェリエのブースを訪れ、フェリエ氏ご本人とお会いしたときに起こったことでした。そのときの温かな歓迎が、これから目にする時計への印象を決定づけたのです。クラシック・オート ホライゾンは、あらゆる期待を上回るもので、私にとってこの見本市での特別な1本となりました。フェリエ氏は独立して10年以上が経った今も、パテック フィリップでの37年間に培った専門知識を活かし、高品質な製品を提供し続けています。それは、この作品にもはっきりと表れています。見事なデザインは、シルバーのガルバニックダイヤルに透明感のあるホライゾンブルーのラッカーが施されており、ダークブルーの転写プリントと清楚な18KWGのインデックスが、美しくアクセントを添えています。
エレガントな造形を持つ40mmケースは、小柄な私の手首にも完璧にフィットします。トープカラーのゴートレザーストラップは、フェリエ氏の細部にまで行き届いた美意識を物語っており、深みのあるブルーのダイヤルと調和して、落ち着いたエレガンスを演出しています。もちろん、見た目の美しさだけがすべてではありません。この時計には、約72時間のパワーリザーブを備えた洗練された自動巻きムーブメントが収められています。ワードローブにブルーが多い私にとって、この時計が日々のスタイルに自然に溶け込む姿は容易に想像できますし、この想像は、きっとしばらくのあいだ心に留まり続けることでしょう。
– ティム・ジェフリーズ、デピュティ・エディター
ローラン・フェリエ クラシック・オート ホライゾンの紹介記事はこちらから。
ジン 613 St UTC
ツールウォッチのファンで、特に多くの条件を満たしているものが好きならジンの時計に魅力を感じずにはいられないだろう。この愛すべきジャーマンブランドは、潜水艦用SS製ダイバーズウォッチ、高品質のパイロットウォッチ、そして今年の613 St UTCのようなプロ仕様の万能ツールウォッチを作ることに秀でている。613 St UTCは自動巻きクロノグラフ、旅行に便利なGMT、そしてダイバーズウォッチとしての機能がずっしりとした一個のSSの塊のなかに凝縮されている。ジン独自カスタマイズのセリタ製クロノグラフムーブメントを擁し、UTC針のジャンプセッティング機能を備えた613 St UTCは、モダンなスポーツウォッチに対するマキシマリスト的アプローチであり、まさにジンが本領を発揮した素晴らしい実例となっている。
幅41.5mm、厚さ15mmの613 St UTCは500m防水を備え、工具不要でマイクロアジャストできるSS製ブレスレットが付属する。一時停止標識のような優れた視認性を備え、いくつかの赤のアクセントと白の“逆パンダ”インダイヤルが愛らしい613 St UTCは、多才なジンにふさわしいルックスを持ち、しかも85万円以下の価格帯を実現している。決して安くはないが、ジンの基準に沿って作られた機械式ダイバーズ/GMT/クロノグラフとしては、むしろリーズナブルな価格設定だ。先週ジュネーブで数分間手首につけてみたあと、今年の見本市で発表された新作のなかで一番のお気に入りとなった(あの格別にクールなノモスの新作をタンタンにとられたので、なおさらだそうだ)。
– ジェームズ・ステーシー、エディター・イン・チーフ
ジン 613 St UTCの紹介記事はこちらから。
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