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The Style Section パンテール ドゥ カルティエは新しいラージモデルでそのルーツに立ち返る

カルティエはタンクを縮小し、今度はパンテールを巨大化させた。これは、カルティエがすべての人に向けた製品を作る使命を担っているのだろうか?

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Photos by James Stacey

パンテール ドゥ カルティエは、ニューヨークの女性たちを魅了してやまない時計である。少なくとも私が知っている女性たち(その友人や姉妹、同僚、そのまた従姉妹たち)はそうだ。2021年、ダイムピース(Dimpiece)の創業者ブリン・ウォルナー(Brynn Wallner)は、ハーパーズ・バザーの記事のなかでパンテールを究極の“イットガール(※)”ウォッチと称した。その記事のタイトルは“なぜすべてのイットガールはこの時計に夢中なのか?”というものだった。そこで私は考えた。このどこにでもある時計が、いかにして多くのニューヨークの女性たちにとって、いまなおクールの象徴であり続けているのか?

※編註;時代感覚に合った愛らしさ,セクシーさを持つ新進女優やモデル。いわゆるインフルエンサー。

 セレブリティカルチャーをまったく気にせず、“イットガール”という言葉の完全な定義を知りたい人も(あるいは2024年の復習)、TikTok、ニコチンベイプ、アライアのフラットシューズ(誰だ、私か!)という文化的な生活を送っていて、昨年広く出回ったニューヨーク・マガジンに掲載されたこの記事を基本的に自分で書けるくらい知識があるかに関わらず、パンテール ドゥ カルティエが女性用時計デザインの世界で重要な定番として存在していることは知っている。タンクほどの文化的な名声はないが、それでも多くの人に愛される時計デザインの重要な歴史的一部であることに変わりはない。

Panthere watch

 マドンナ(Madonna)やグウィネス・パルトロー(Gwyneth Paltrow)がこの時計を着用していた古い写真から、現在のゼンデイヤ(Zendaya、ちなみに彼女はブルガリのアンバサダーだ)やデュア・リパ(Dua Lipa)のパパラッチスナップまで、パンテールは常に話題がつきまとう。もともとは1983年に製造され、1980年代に華やかな顧客向けに販売された。サイズはミニ、スモール、ミディアム、ラージの4種類で、ツートンカラー、イエローゴールドのオプションがあった(スティールモデルは1991年に発売)。パンテールは2004年に姿を消し、カルティエのラインナップに穴を開けたが、2017年になると初代とほぼ同じスペックでミニ、スモール、ミディアムの3モデルが再リリースされた。

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パンテールのヴィンテージ広告。Courtesy of Ad Patina

 この秋、メゾンはYG、SS、そしてSSにゴールドを加えたLM(ラージモデル)のパンテール ドゥ カルティエをファミリーに復活させる。サイズは年々大きくなっており、1983年に初めて登場したLMは36×27mmであったが、1985年の再発売時には若干大きくなった40×29mmであった(1983年モデルのLMは新しいミディアムモデルサイズとなった)。新しいサイズは42×31mmで、カルティエのスクエアウォッチにしてはやや巨大に感じられる。少なくともパンテールとしては大きく見える。

 私はアグレッシブで率直な意見を述べるのだが、初めてLMを見たとき、これは慣れるしかないと単純に理解した。サイズに対して嫌悪感を抱いたわけではないが、ただ少し見慣れない感じがしたのだ。親しい友人が初めてメガネを外した姿を見るように、その存在を忘れるまでにはちょっとした頭の整理が必要なのだ。

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では、パンテールはどのようにして“イットガール”ウォッチになったのだろうか? まあ、その大きな要因はセレブリティとの関連性だろう。しかしカルティエは誰もが知っている、そして大部分が手に入れやすい時計を作るという点で、無敗のチャンピオンである。さらにブランドは“コアコレクション”と呼ばれるジュエリーカテゴリーに関しても無敵の地位を保っている。ラブブレスレットやジュスト アン クルリングなど、カルティエであることがひと目で分かるエントリーレベルの作品である。これらはメゾンの小さなシンボルとなり、知らない人のあいだでもしばしば目にし、ある種のガールズクラブへの入り口を示すものとなっている。ふさわしい宝石で飾られていれば、誰でも歓迎されるのだ。これは若い頃から忠実な消費者を生み出す賢い方法であり、必ずしも豪華なアイテムを手に入れることができない顧客にも、この“ファミリー”に属することができると感じさせる巧妙な方法である。パンテール ドゥ カルティエも同じように機能する。今流行の“イットガール”はたいていYGモデルを身につけているが、カルティエははるかに手頃な価格のSSを提供することで、誰もが“イットガール”の一端を味わえるようにしている。

 しかし、パンテールのサイズを大きくすることは、そもそもパンテールが“イットガール”たちを引きつけた魅力を否定するものではないだろうか? パンテールは、スリンキーでフェミニン、ルーズに重ね着けするのが一般的な、気取らないアクセサリーだ。これはブレスレットに時計が付いた、ウォッチとジュエリーの完璧なハイブリッドなのだ。カルティエ ロンドンやプリヴェが君臨する、極めて偏狭でニッチな時計コレクターの世界では、パンテールこそがカルティエを真のジュエリーウォッチハイブリッドブランドとして大衆に定着させている。ベニュワール バングルの先駆けであり、簡単に言えば“時計付きブレスレット”である。あるいはパンテールとバングルの両方が、カルティエがほぼ1世紀以上にわたって暖めてきた、ハーフブレスレット・ハーフウォッチというアイデアの延長線上であるとも言える。

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 もう少しニュアンスのあるファッションが好みなら、より厚くて重い、そして“ベーシック”ではないジュスト アン クルの特大ブレスレットがおすすめだ。または、ラブブレスレットのフープピアスあたりか。これらは、そのアイデア全体をひっくり返すようなものである。あなたはクラブの一員であるだけでなく、ほかの平均的なメンバーよりも少しクールであることを示すためにあえて予想外のものを選ぶのだ。もしかしたら、この大きいパンテールもこのサブセクションに該当するのではないだろうか?

今日(少なくともこの短い段落では)、私はパンテールを普遍性よりもむしろデザインの利点に基づいて評価することに専念しよう。ちょっとのあいだ、パンテールを“イットガール”ウォッチの殿堂の外に置いてみる。ノイズを消せば、これは時計とジュエリーのハイブリッドとして確固たる地位を築くだろう。ブレスレットは優雅でしなやかであり、1940年代のヴィンテージウォッチで見られるレンガのようなリンクを思い出させる。90年代生まれのやや中性的なルックスで、角ばった工業的な印象を持つタンク フランセーズとは異なり、パンテールは“レディースウォッチ”ヒエラルキーの最上位に位置している。

 HODINKEEの卒業生であるカーラ・バレット(Cara Barrett)は、“かなりエントリーレベルのように感じられるが、実際には標準的なタンク フランセーズよりも少し官能的だ”と説明する。“パンテールが好きなのは、少しずんぐりしていて、少しサントスの要素を持ち、タンクではないところだ”。しかし、この時計の金無垢バージョンはSSとはほとんど関係がないと言わざるを得ない。彼女は私に同意し、YGだけが好きだと認めている。そして低価格のオプションを推奨したい気持ちはあるが、もしあなたが完全に1980年代のグラマーなパンテールを望むならYGか、少なくともツートンである必要がある。

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パンテールのヴィンテージ広告集。Courtesy of Ad Patina

 ジャンボサイズのパンテールは奇妙な矛盾なのか? スーパーサイズの仕様でありながらも、フェミニンでエレガントでいられるのか? パンテールはカルティエのデザインに与えられた神話的な品質を持っており、それはサイズに関係なく“レディースウォッチ”として軽視されることは決してない。80年代には、ピアース・ブロスナン(Pierce Brosnan)とキース・リチャーズ(Keith Richards)の手首を飾ってきた。パンテールのサイズアップで注目すべきは、その魅力を広げようとするカルティエの意図だ。タンク LCをミニサイズに縮小するのと同じように、彼らはあらゆるものを万人向けにつくっている。メゾンの絶大な人気は、このアプローチが実行可能であることを裏付けている。“すべての時計はユニセックスであるべきだ”という議論に多くの野次馬が飽きているにもかかわらず、ジュエリーや装飾品は文化的な習慣を深く反映するものである。サイズと流動性の問題は、ファッション業界ではもっと大きな規模で存在する(私たちは単にトリクルダウン効果を見ている)。率直に言えば、これこそが私たちが求めたものなのだ。この議論は依然として重要であり続けている。

Panthere watch on MC

 80年代的なゴールドの派手さと、洗練されたユニセックスの魅力を持つこの時計は、所有者が自身の信念を自分のパンテールに投影するかどうかにかかっている。なかには、一般的に好まれているミニ、スモール、ミディアムよりも大きなサイズのほうが効果的だと考える人もいる。

 “カルティエの時計の世界において、大は小を兼ねるという珍しい例だ”と、カルティエの熱狂的なファンでインターネット上の有名人であるマイク・ヌーボー(Mike Nouveau)は語る。“このサイズは、デイデイトや金無垢のロイヤル オークに飽きたあとに、クラシックなカルティエに足を踏み入れたいと考えている人に最適だ。そしてほぼ間違いなく手に入れやすいだろう”。

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 “イットガール”の要素がこの時計に興奮を与えていることは間違いない…これはパパラッチの写真の一部を自宅で再現できるような、話題性のあるものだ。スイート16(アメリカなどで行われる、16歳の誕生日を祝う特別なパーティー)のプレゼントとして受け取り、パンテールを所有することで与えられたスタイルへの信頼に満足し、穏やかでいる女の子には効果的だ。しかし、そのセレブリティステータスを超えて、普遍性を巧みに利用したものである。より大きなバージョンを作ることは理にかなっている。そう、私たちはパンテールの小さなケースデザインに慣れているが、目はすぐに慣れてくるだろう。カルティエは核となる、非常に売れやすい製品を複数のサイズで作ることで、オーデマ ピゲと同様の方向に進んでいる。そして、サイズ以外のスペックはほとんど変更していない。タンク LC ミニが標準的なLCの小型バージョンではなく、単なる縮小バージョンであるように、ジャンボサイズのパンテールもその洗練された機能と流麗なブレスレットを備えている。これはビジネスにおいて賢い決断である。どのサイズや金属も見逃さず、クラシックなカルティエを誰にでも提供するのだ。

「パンテール ドゥ カルティエ」ラージモデル。42×31mm。クォーツムーブメントを搭載。価格はYGが472万5600円、ツートンが161万400円(予価)、SSが89万6500円(すべて税込予価)。価格はすべて変更される可能性があります。パンテール LMは2024年9月発売予定