Culture Of Time 知恵の結晶。HODINKEEの父たちが語る時計収集の極意

　失敗も安全策も行き過ぎた行動も、結局はその過程から学んできたのだ。ここでは時計の修理から執筆、ビジネス全体の指揮まで、HODINKEEファミリーのあらゆる場面で活躍する父親、これから父親になる人、そして希望に満ちた父親たちの知恵をご紹介しよう。

 「父が定年退職したとき、もう時刻は気にしなくていいと、職場でつけていた腕時計を私にくれました。その時計は数百ドルしかませんでした。でも、その気持ちはプライスレスでした」

– ニック・マリノ（Nick Marino）, コンテンツ部門SVP

　私が思春期の後半だったころ、ヨーロッパへの冒険の旅に出ようとしていると、父は私に腕時計を買ってくれた。オルビスの通販で買ったフィールドウォッチで高いものではなかったが、父にとってはとても意味のあることだった（「ヨーロッパの列車に乗るのに時間がわからないと困るだろう」と言われた）。私はあまり大事にはしておらず、ローマでは盗まれそうになり、リヨンのホステルでは1週間も放置。その後、私はバカなことに洗濯機にかけてしまったために、その時計は壊れてしまった。

　自分の息子には、こう言ってあげたい。「君に贈るこの時計は、僕にとってとても大切なものだ。裏蓋には君の名前が刻まれているが、それ以上に何年分ものビデオや写真、コンテンツ、経験などが詰まっている。大切に使って欲しい。モノを大切にすること。いつか、そうしてよかったと思える日がくるはずだから」

– ウィル・ホロウェイ（Will Holloway）、 コンテンツディレクター

 「私の父は世界で最も親しい友人のひとりでした。私が初めて父親になる8年前、2010年に他界しました。妻と私は、わずか3年余りのあいだに3人の男の子（レノン、アーチー、ヴァージル）の誕生に恵まれ、いつか彼らが私のように時計を愛するようになるかもしれないと期待しています。父が亡くなってから数年、父がいないことで生じたであろう空白を、父が私たち家族のためにしてくれたことに対する圧倒的な感謝の気持ちで満たしています。もし息子たちが時計を所有すること、あるいは時計をたくさん集めることに興味を持ったとしたら、私はこうアドバイスしたい。「愛する人との時間に感謝し、決してそれを当たり前だと思わないこと 」

– ジェフリー・ファウラー（Jeffery Fowler）、最高経営責任者

 「私が初めてロレックスを買ったのは父の日でしたが、そうとは気づきませんでした。新しい仕事を始めた私にとって、それは節目となるものとなりました。そしてその日が何の日かわかったとき、私は微笑みました。父親がいなかった私は若いころ、この日に苦労しましたが、この時計は私自身の旅立ちに感謝するオブジェに早変わりしたのです」

– カルロス・リベラ-アナヤ（Carlos Rivera-Anaya）、チーフマーケティングオフィサー

 「時計を道具として使い、冒険心を呼び起こす。冒険を終えた記念に新しいコレクションを手に入れ、刻印をする。時計はそれだけで特別な存在になるが、自分らしさを演出するのはあなた次第だ」

– ラッセル・ケリー（Russell Kelly）、チーフコマーシャルオフィサー

 「シンプルに自分の目に留まるもの、腕につけてカッコイイものを探せばいいのです。ブランドや価格、技術的なことはあまり考えすぎないでください。自分のことを狭めないで。自分にとって何が魅力的なのか、直感的に理解することに集中し、そこからはじめるのです」。

– マイルス・クサバ（Myles Kusaba）、バイヤー-ラグジュアリー

 「時計は自分自身の延長線上にあるものです。あなたの個性をアピールするために使われるだけでなく、あなたがいかにクリエイティブで個性的かを世界に示す、大胆で冒険的な方法にもなり得るのです。だから初めての時計を選ぶときは、その時計に自分自身を重ね合わせ、私が知っているような冒険的で特別なあなたになってください」

–  ホルヘ・カバナス（Jorge Cabanas）、ウォッチショップマネージャー

 「時計を実用品と同じように扱い、身につけましょう。時刻を合わせ、時計を巻き上げるのは、一日のうちで家を出る前にする最後の仕事です。最後に購入と売却を恐れずに。本当に楽しめるものを見つける唯一の方法です」

– リッチ・フォードン（Rich Fordon）、バイヤー-ヴィンテージ

 「読む。学ぶ。質問することを恐れてはいけない。あなたはすべてを知ることはできないが、それでいいのです。最も重要なことは本物であるという幻想に陥らないことです。もし、そこに何か興味をひかれるものを見つけたら、常に掘り下げ続けることです」

– ローガン・ベイカー（Logan Baker）、ブランドエディター

 「あなたは一過性のテクノロジーという形で時間が身の回りに溢れている時代に育っています。もちろん、それは悪いことではありません。時間を守ることに役立っているのですから。身につける時計は、あなたの趣味やセンス、価値観を表すものとしましょう」

– ジョン・ビューズ（Jon Bues）、サイトコンテンツ担当シニアマネージャー

 「私の息子たちは、残念ながら（あるいは幸いにも）時計にはまったく興味がないのです。長男のザックは以前、“パパ、よくわからないけど、高級品というのは信じられないほど幼稚な感じがする”と言っていました。しかし、もし彼らが尋ねたとしたら、あるいは誰かの子供が尋ねたとしたら、私の唯一最大のアドバイスは、“滅多に買わず、いいものを買え”ということでしょう。その分、自制心が働き、購入する時計は少なくなりますが、衝動買いをするよりもずっと有意義なものになります。もし新しい時計でセロトニンを補給したいのなら、G-SHOCKをおすすめします。手頃な価格であるだけでなく、これ以上の言葉が見当たりませんが、本物の時計なのです」

– ジャック・フォースター（Jack Forster ）、編集長

 「子供の年齢を考えると、所有することが初めての経験かもしれないので、もう自分の責任であり、壊しても誰も助けてくれない（本当に壊すかもしれないですが）ことを伝えるといいと思います。いつ、どこで身につけるか、使うかを知ること、つまり丁寧に扱うことはもちろん、身につけて楽しむことを恐れず、それを見るたびに浮かぶような思い出を作ることも大切です」

– ディロン・シュー（Dillon Shoe）、カスタマーサービスリーダー

 「なぜその時計がいいのか、誰かに教えてもらう必要はありません。ムーブメントのことも、トリプルサインであることも忘れて……、それがあなたに語りかけるのなら、それはあなたのための時計なのです」

– ベン・ナン（Ben Nunn）、バイヤー