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Interview 佐藤可士和×G-SHOCK 長年の愛用品とのコラボ秘話と時計観を語る

佐藤可士和氏が、自身の約30年におよぶクリエイティブを振り返る「佐藤可士和展」を開催。本展覧の特別企画として製作されたコラボG-SHOCKを皮切りに、ブランディング論や日本ブランドの未来など多方向に話を展開した。

佐藤可士和というクリエイティブティレクターがいる。日本で暮らしていると彼の仕事に触れずにいることが困難なほど、この国を代表する企業のあらゆるデザインやブランディングを手掛ける人物だ。彼のクライアントには、ユニクロ、楽天、日清食品やセブン-イレブンなど錚々たる会社が名を連ねるが、その商品やサービスが意識することなく日常に溶け込んでいるのが特徴だ。それは、可士和氏の仕事によって機能的なデザインが採用されたり、企業名やサービスがロゴの印象と直結されたりするからだが、それを実現するにはその企業やモノの殻を意図的に破らせて、本質的な魅力を発出させることがその秘訣だという。

 今回、六本木にある国立新美術館で開催中の「佐藤可士和展」(5月10日まで)を記念し、彼がコラボしたのはG-SHOCKである。意外な話であるが、可士和氏はG-SHOCK愛用者であり、大学時代からつかず離れず、数十年にわたってこの時計を腕にしてきたという。今回はあまり語られることのない佐藤可士和の時計観や、G-SHOCKへの思いなどについて話を聞くことができた。

KASHIWA SATO x G-SHOCK DWE-5600KS-7JR 2万5000円(税抜)。

時計は時間を確認するために着けていないんです

 可士和氏とG-SHOCKとの出会いは大学時代。1989年まで通った多摩美術大学に在学中、アクセサリー感覚で着けるようになったという。

 1983年に誕生したG-SHOCKは当初人気がなかったと聞いていますが、さすが美大生、取り入れるのが早かったですね!

可士和 美大生というのは新しもの好きで、いろいろなことに対して敏感でしたから。特に僕が在籍していたグラフィックデザイン科には、G-SHOCKに興味をもつ人が多かった気がします。僕は、当時パンクバンドをやっていたせいもあって、リストバンド代わりにG-SHOCKを着けるようになったのが最初です。アクセサリーのようで、かつ時計にもなっている。軽いし耐久性も素晴らしいし、単純にカッコいいものでした。角型のモデルを着けていたのを覚えています。

 その当時、学生が時計を着けるのは一般的でしたか?

可士和 僕の周りでは割としていたかな。高校生のころはサーファーブームで、セイコーのダイバーをみんな着けてました。入学祝などでも時計をもらうことは多かったように思います。ただ、大学生になってサーファーじゃないのにダイバーズウォッチ、パンクバンドなのにサーファーっぽい時計、ということに違和感を感じて段々着けなくなり、G-SHOCKにたどり着いた感じです。この時計は、カテゴリでくくれないじゃないですか? それがカッコいいですよね。アイスホッケーのパック代わりにシュートされるCMは特に、衝撃的でした。

 その後も、G-SHOCKを手にする機会はありましたか?

可士和 ええ、すごくたくさん買っていますね。博報堂に入社してからスノーボードを始めたんですが、そのときはBaby-Gを愛用してましたし、波はありますが事あるごとに買ってきた時計です。ここにある、NIGO君がコラボレーションしたイエローとピンクのモデルも一時期ずっと着けていて、それが今回のコラボの発端にもなりました。久々にすごくかわいく思えて、逆にスーツに合わせたり、つられて他のモデルもいくつか購入しましたね。ただ、それは気付くと長男が使っているのですが(笑)。

 可士和さんは、基本的には毎日時計を着け換えたい方ですか?

可士和 はい、毎日洋服に合わせて換えたいタイプですね。全体のファッションの一環だと思ってます。Tシャツやスニーカーを選ぶのと同じ。でもそう考えると時計って不思議なもので、時間を確認するためだけに着けていないんですよ。機能的なギアとしての男の持ち物は、昔はカメラと時計でしたけどスマホが登場して随分変わりましたよね。

佐藤可士和。クリエイティブディレクター。1965年、東京生まれ。多摩美術大学グラフィックデザイン科卒。博報堂を経て2000年に独立し、「SAMURAI」を設立する。5月10日まで、自身がロゴデザインを手掛けた国立新美術館にて約30年にわたるクリエイティブを網羅した「佐藤可士和展」を開催中。

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 G-SHOCKを長年愛する可士和氏だが、独立後、いわゆる高級時計にも興味をもつようになる。ロジカルなイメージ通り、Apple Watchも何度も試しているというが、朝のウォーキングを止めると共に着用機会が減ってしまういう。

可士和 なんでしょう、男子っぽいデザインのものが好みですね。クロノグラフとか。もともとは毎日デザイン賞などのアワードの受賞記念や、結婚記念などで買い始めたのですが、ありがたいことにだいぶ賞をいただけて時計も増えて(笑)、今は高価なものへの熱は落ち着いています。ロレックスはやはり好きで、気づくとデイトナをしていることが多いですが、他にもパネライとかロジェ・デュブイとか、やはり男っぽい時計を手元に置いておきたくなります。ちょっとの間着けなくなったものでも、ストラップを替えるとまたまるっきり違うものになるので、ちょこちょこ付け替えるのが好きですね。

 それは、今回のコラボG-SHOCKにも色濃く反映されていますね!

可士和 はい、今回のG-SHOCKはバンドはもちろん、本体のベゼルカバーも交換できるようになっていて、全3色・27通りの組み合わせが可能です。この機能はコラボモデルでは本作で初めて導入されたのですが、実はカシオさんにはかなり無理を言ってしまいました。もともと、着せ替えを可能にするには耐衝撃構造の問題をクリアする必要があって、構想はあったものの、一部のオリジナルモデルだけでローンチする予定だったそうなんです。打合せを重ねて、G-SHOCKで新たにできることを僕が根掘り葉掘り聞くものだから、当時はまだ未発表だった企画段階のことを開発担当の方が話されたんです(笑)。え、それいいじゃないですか!って。

 可士和さんがカシオさんに白状させたんですね(笑)。

可士和 あの話が聞けたのはよかったですね(笑)。やっぱり僕も「佐藤可士和展」という、30年間の活動を一堂に紹介する大規模個展で初めてG-SHOCKとコラボしたのですが、ここで展示したり販売したりするには他のプロジェクトと同じように、何か新しい視点やバックストーリーが絶対に必要です。そのときに、“ちょっとベルトをデザインしただけです”だと展示にならないと思って(笑)。それで粘って、何か新しいことはないんですかと聞いてたんです。今、「可士和展」を開催していても思うのですが、皆さんすごくバックストーリーに興味をもってくれています。三井物産の展示では、これまでのブランドプロジェクトの取り組みを、なかなかあの場で読むには大変な1万字近いテキストと共にパネルにまとめています。この考え方が作品です、というものなのですが、多くの方がちゃんと読んでくれるんです。やっぱりモノだけで存在していないというか、ストーリーと共にあって初めてブランドができるのだと思います。

オリジネーターとして、G-SHOCKは唯一無二ですよね

– 佐藤可士和

可士和さんがNIGOさんから譲り受けたという、限定35本の超希少なG-SHOCK。

可士和 僕としてはやはり、日本のブランドが世界で評価されてほしい、そういう思いが強いですね。僕からすると、例えばユニクロも今治タオルも有田焼も、日本の優れたコンテンツとして同じように捉えています。ユニクロの場合は企業ですが、ある意味日本のポップカルチャーというか、そういう面を世界に打ち出すつもりでニューヨーク旗艦店のディレクションをしました。柳井(正)さんにもユニクロというメディアに乗せて、日本のポップカルチャーを正確に世界に届けましょうとお伝えしました。単にシャツやフリースを売ろうとしても海外で簡単には売れないわけで、日本のカルチャーと共にコミュニケーションしていくことが重要だと思います。世界の中で日本ブランドを考えると、量ではなくて質の高さですよね。そこが日本の優れているところ。G-SHOCKもそうですよね。

 確かに、メディアとして発信される企業や商品も増えていて、G-SHOCKもまさに当てはまりそうです。

可士和 やはりいいなと思うのが、G-SHOCKって唯一無二じゃないですか。そこにブランド価値がある。僕のクライアントだと例えば日清食品は世界で初めてインスタントカップラーメンを作ったのですが、そういうことって誇るべきことなんです。G-SHOCKもこういう時計はなかった、オリジネーターじゃないですか。ブランドとして残るのはこういうもので、逆に言うと唯一無二にならないといずれ残っていかないと思います。ブランディングっていうのは、唯一無二の存在になるための活動で、それは製品だけではなくあらゆることを総合的に構築していくことが必要なのです。

 唯一無二とおっしゃるG-SHOCKですが、2023年には40周年を迎えます。可士和さんがさらに関わるとしたら何かプランはありますか?

可士和 うーん、G-SHOCKは困ってなさそうですけどね(笑)。異業種とのコラボなどは、これまでも相当やられていますけど、例えば僕が関わっている日本企業とやるのは面白そうですね。楽天モバイルのカラーでピンク色のG-SHOCKを作って契約者にプレゼントするとか。あとは、釣りブームなのでフィッシングのダイワと普通にカッコいいコラボ時計を作るとか。くら寿司もすごく面白いですよ。G-SHOCK巻きとか、何か硬い寿司を開発するっていうのも面白いですよね(笑)。こんなことやっちゃうの!?っていうぐらいやらないと際立たないと思うので、そういうサプライズのあるのがいいですね。

【佐藤可士和展】

開催期間:2021年2月3日〜5月10日
場所:国立新美術館 企画展示室1E
住所:東京都港区六本木7-22-2
展示時間:10〜18時(毎週火曜休館)

その他詳細は、国立新美術館公式サイトへ。
 

佐藤可士和×G-SHOCKについてはブランド公式サイトへ。

Photos:Keita Takahashi