trophy slideshow-left slideshow-right chevron-right chevron-light chevron-light play play-outline external-arrow pointer hodinkee-shop hodinkee-shop share-arrow share show-more-arrow watch101-hotspot instagram nav dropdown-arrow full-article-view read-more-arrow close close email facebook h image-centric-view newletter-icon pinterest search-light search thumbnail-view twitter view-image checkmark triangle-down chevron-right-circle chevron-right-circle-white lock shop live events conversation watch plus plus-circle camera comments download x heart comment default-watch-avatar overflow check-circle right-white right-black comment-bubble instagram speech-bubble shopping-bag
In Partnership

セイコー プロスペックス Save the Ocean限定モデルで再び紡がれるダイバーズ神話

半世紀の時を経て再び南極へ。さらなる進化を遂げたセイコーのダイバーズウォッチが、南極地域観測隊に寄贈された。


海洋国の矜持を胸に、海と歩む限定ウォッチ

 圧倒的な自然の力の前では、どれだけ叡智を重ねてきた人類であっても無力だ。だからこそ自然に敬意を払いながら共存していくしかない。日本は四方を海に囲まれ、国土の多くが山林に覆われる自然豊かな国である一方、火山や地震、台風など、多くの天災にも悩まされてきた。昨今はSDGsという言葉が広まっているが、それよりもっと前から日本人は自然とともに暮らしてきたのだ。

 そんな日本を代表する時計メーカーのひとつであるセイコーが海洋保護活動に熱心なのは当然だろう。1965年に国産初のダイバーズウォッチを製作して以来、セイコーは海と深い関わりをもってきた。なかでもセイコー プロスペックスの「Save the Ocean」シリーズと命名された限定モデルは、その売上の一部を寄付することで海洋保護活動に役立てている。具体的には、ダイバーの世界的団体である「PADI」が取り組んでいる海底のごみを取り除く活動「マリーン・デブリ・プログラム(Marine Debris Program)」を支援し、またエーゲ海のギリシャ・フルニ島における水中考古学研究も支援している。これは歴史を探求するだけでなく、盗掘を防ぐ目的もある。

 特にセイコーらしい活動が、南極・北極に関する科学を総合的に研究する日本唯一の研究機関である「国立極地研究所」への支援だ。実はセイコーでは、1966年以降4度にわたりダイバーズウォッチをはじめとしたさまざまな時計を南極地域観測隊に提供してきた。つまりセイコーはタフで高性能な時計を通じて地球規模の環境変動研究をサポートしてきたということになる。セイコー プロスペックスの「Save the Ocean」シリーズは、こうした自然保護活動を身近に感じることができる時計と言えるのだ。


極限の環境で戦う時計には、最高峰のスペックが求められる

1968年に発表されたオリジナルのダイバーズウォッチ「300mダイバー」。6159-010、及び6159-011の2モデルが同時に発売されたが、前者はベーシックな経過時間を測る加算式の60分表示ベゼル、後者は残り時間を表示する減算式の60分カウントダウン表示ベゼルを備えていた。

腕時計以外にも南極地域観測隊で使用するさまざまな時計をセイコーが提供してきた。これは南極観測船「ふじ」が使用したセイコーのクォーツ式クロック。

 日本における南極観測の歴史は、1912年に白瀬 矗(しらせ のぶ)が隊長を務めた南極探検隊から始まった。ちなみに現在の南極観測船「しらせ」は、彼の功績を称えて命名された南極昭和基地の南方に位置する「白瀬氷河」に由来するもので、間接的なつながりがある。その後1956年から南極観測を本格化させ、現在まで60年以上にわたって極地で観測されるさまざまな自然現象を研究してきた。地球温暖化などの環境変動の予測を行うことで人類の未来へ役立てているのである。

 雪と氷に覆われた南極大陸の環境はとても過酷だ。そうした世界で問題なく使用できる機材に求める要求レベルは高い。当時、最高峰の耐久性を備えていたセイコーのダイバーズウォッチが彼らに選ばれたのは当然のことだった。

 1966年以降、南極地域観測隊の装備品として、1965年にデビューした150m防水の「ファーストダイバーズ(62MAS-010)」や、その後発売された防水性能を300mにアップデートさせたモデルなども採用された。加えて、当時世界最高水準であった10振動/秒、即ち3万6000振動/時のハイビートムーブメントを搭載した「300mダイバー」は、1970年に日本山岳会の植村直己、松浦輝夫の両氏によるエベレスト登頂の際にも使用されたというエピソードも持つ。ダイビングなど海での使用に留まらず、いずれも過酷な環境で問題なく時を刻んだことで、セイコーのダイバーズウォッチはその信頼性を不動のものとしてきたのである。

 そして2021年。その年の11月から始まった第63次南極地域観測隊へ、セイコーはおよそ半世紀ぶりにダイバーズウォッチを寄贈した。それが「1968 メカニカルダイバーズ 現代デザイン Save the Oceanリミテッドエディション SBDX049」だ。

 近年の日本ではゲリラ豪雨や酷暑など、温暖化の影響と思われる自然災害が多発している。我々の生活も大きな影響を受けており、自然環境に無関心ではいられない。地球環境の変化を捉え、我々の生活への影響を調査する彼らの奮闘を応援したい。そんな気持ちにセイコーのダイバーズウォッチが応えてくれるのだ。

実際に1967年に寄贈された時計たち。腕時計だけでなく観測用のストップウォッチや日常生活に欠かせない目覚まし時計もあった。

使い勝手やその性能を調べるため、観測隊の隊員たちが海で実地実験を行う。こういった工程を経て、セイコーの時計は選ばれたのだ。


1968 メカニカルダイバーズ 現代デザイン Save the Oceanリミテッドエディション

Ref.SBDX049 50万6000円(税込)
エバーブリリアントスチールケース、シリコンストラップ。ケース径42.6mm。200m空気潜水用防水。自動巻き Cal.8L35。数量限定1300本。※セイコーグローバルブランドコアショップのみの取り扱い。

 セイコーではSave the oceanシリーズを通じて、海に関するさまざまな団体を支援しているのは前述のとおり。そのひとつが国立極地研究所であり、同研究所が運営する南極地域観測隊へのダイバーズウォッチの寄贈が約半世紀ぶりに実現した。そこで選ばれたのが「300mダイバー」を新技術と現代的なデザイン解釈によって再解釈した「1968 メカニカルダイバーズ 現代デザイン Save the Oceanリミテッドエディション SBDX049」だ。

 オリジナルモデルの象徴的な意匠である4時位置のリューズは、手首への不快な食い込みを軽減させ、ロープなどの引っ掛かりを減少させるという機能的なメリットも考慮されてSBDX049にも採用された。さらに操作性に優れた大きなベゼルやケースとラグを繋ぐ流線形のフォルムもオリジナルモデルから継承されている。

 その一方で進化したのが、ダイヤルの表現力だ。近年のセイコーはスペックだけでなく、美的感性に訴えかける時計を得意としているが、このモデルでは南極の分厚い氷を思わせるブルーグラデーションを採用している。さらにケース素材には一般的なステンレススティールよりも白く輝く「エバーブリリアントスチール」を採用。ムーブメントは雫石高級時計工房で製造されるダイバーズウォッチ専用のCal.8L35を搭載しており、時計のスペック面においても抜かりはない。歴史的な物語やセイコーのSDGsへの想いに溢れているだけでなく、ダイバーズウォッチとして最新鋭のスペックを備えるSBDX049は、極めて満足度の高い時計と言えるだろう。

 時計の外装素材はさまざまあるが、スポーツウォッチで多く用いられるのはステンレススティールだ。これは鉄にクロムなどを加えた合金で、ステンレス(Stain less=錆びない)の言葉どおり、耐食性に優れていて錆びにくい。そのため雨や海水に触れることが多いスポーツウォッチに用いられることが多いのだ。しかしひと口に“ステンレススティール”といっても、金属の配合によってその個性は異なる。高級時計で多いのは医療器具などにも使用されるSUS316Lというタイプで、さらに耐錆性能を高めたSUS904Lを使うブランドもある。そしてセイコーがSBDX049で使用したのが、エバーブリリアントスチールという素材だ。その詳しい組成は明らかになっていないが、世界最高レベルの耐食性能を備えると同時に、金属色は白系でポリッシュ仕上げの輝きがより美しいのが特徴だ。

 オリジナルモデルはケースバックのないワンピース構造だったが、1968 メカニカルダイバーズ 現代デザイン Save the Oceanリミテッドエディションではケースバックを備えるタイプに変更し、防水性能も200mの空気潜水となっている。しかしこれはスペックダウンというわけではなく、必要にして十分な防水性能をキープしたに過ぎない。技術的に作れないわけではなく(昨年、セイコーのダイバーズウォッチ55周年を祝して製作されたみっつの記念モデルのうちの1本、SBEX011では1968年のオリジナル同様、ワンピースケースを採用して300m防水を確保している)、むしろケース厚を13.1mmに抑え、よりいっそうデイリーに楽しめるサイズ感を求めた結果だ。このケース仕様のアレンジは本機における大きな魅力のひとつである。

 ダイヤルの表現について改めて言及しておこう。そもそもダイバーズウォッチは潜水計器として生まれたため、光が反射しにくいブラックダイヤルを用いるのがセオリーだ。そして、そこから転じて紺碧の海を思わせるネイビーブルーのダイヤルも好まれるようになった。しかし現代のダイバーズウォッチには、機能性に加えて審美性も求められる。そのためSBDX049では繊細なブルーグラデーションのカラーリングを採用した。加えてその表面には絶妙な型打ち仕上げを取り入れることで氷の質感を表現しているが、これは眺めていて楽しいディテールだ。

 その一方でダイバーズウォッチらしい顔を作るベゼルは、グローブをつけていても簡単に操作できる、がっちりとしたデザインを継承している。ちなみにベゼルのインデックス部分はダイヤルのカラーリングに合わせて、繊細なライトブルーカラーを採用している。

 さらなる現代的な変化としては、長期使用に耐え得る外装素材を使用すると同時にねじ込み式リューズの内部構造として「着脱巻真パイプ構造」を採用している。これはリューズが直接ケースではなく、ねじ溝が切られた専用パーツを介して固定される構造だ。これによりメンテナンス性も向上し、ケース寿命を飛躍的に伸ばすことが可能になった。

 さらにストラップは耐水性に優れ、肌当たりも優しいシリコンラバーのストラップを採用。ストラップエンドにはケースバックと同じデザインが取り入れている。そして針やインデックスにはルミブライトという蓄光塗料を塗布。室内灯に10分間ほど当てておくだけで、暗闇でも明るく鮮やかなグリーンの光を3~5時間ほど放ち続ける。ダイバーズウォッチはタフな実用時計で繊細な計器でもあるが、SBDX049はそのスペックや美しさによって所有する喜びも満たしてくれる時計になっている。

 昨今の高級時計ではストラップを変えることで、さらに機能性やファッション性を高める手法が人気だ。SBDX049は深みのあるブルーのファブリックストラップが付属しているが、これは製紐(せいちゅう)という日本の伝統技術を用いて作られたものである。上品な仕上がりでありながら、強度に優れ、それでいて肌当たりがいいというメリットもある。さりげないアクセントカラーにもなるので、夏のシーズンにも活躍してくれそうだ。


セイコーブティック専用モデルも登場

1968 メカニカルダイバーズ 現代デザイン セイコーブティック専用モデル

Ref.SLA057JC 50万6000円(税込)
エバーブリリアントスチールケース、シリコンストラップ。ケース径42.6mm。200m空気潜水用防水。自動巻き Cal.8L35。数量限定600本。

 このセイコーブティック専用モデルとなるSLA057JCは、基本デザインや搭載ムーブメント、スペックなどはブルーグラデーションダイヤルのSBDX049とまったく同じである。しかしその配色は、オリジナルモデルと同じくブラック&ゴールドでまとめられた。そのためモダンさのなかにレトロ感が加わっており、歴史を感じることができるモデルとなっている。購入できるのは、旗艦店である「和光」や「セイコードリームスクエア」をはじめとするセイコーブティックのみであるという希少性も、注目すべきポイントとなるだろう。

 最高峰のタフウォッチとして生まれたセイコーのダイバーズウォッチは、その優れたスペックが評価され、南極や雪山などでも使用される本物の冒険時計である。そのDNAを受け継ぐ「1968 メカニカルダイバーズ 現代デザイン Save the Oceanリミテッドエディション」は、アクティブに生きる趣味人のための時計と言えるだろう。もちろん丁寧につけるに越したことはないが、使い込んだ小傷もまたカッコいい。まさに自身の相棒として身につけたい時計になってくれるに違いない。

Photos:Yoshinori Eto Styled:Eiji Ishikawa(TRS) Words:Tetsuo Shinoda Special Thanks:Fujimi Panorama Resort