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A Week On The Wrist ロレックス デイトナ ル・マン Ref.126529LNを1週間徹底レビュー

時計界の主役を張るロレックス デイトナのオーナー視点のレビューをお届けしよう

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こういうのが欲しかったんでしょう? できましたよ(編注:70年代の米国トヨタ カローラのCMより)。ロレックス デイトナ “ル・マン” Ref.126529LNについて、オーナーである私からお届けしよう。この記事を執筆しながら、本メディアで私が実際に所有している時計を個人的にレビューしたのはいつ以来か思い出せないでいる。久しぶりなだけに、ちょっぴり楽しんでいる。そして、もしかしたら本記事がきっかけで“A Week On (An Owner's) Wrist(オーナーの手首で1週間)”にシリーズ名が変わるかもしれない。それはとにかく、さっそく本題に入ろう。

 先日、我々のチームの誰かが、新しい時計で純粋に興奮したのはいつ以来かと尋ねてきた(HODINKEE限定モデルは除く)。 最近の記憶では、オーデマ ピゲのRef.15202 BCパテック フィリップのRef.5270PA.ランゲ&ゾーネの1815ラトラパンテカルティエのノルマルだろうか。それぞれ審美面、系譜、技術面など、あらゆる面で私に語りかけてくる、まさにキラーウォッチの数々だ。

Rolex Daytona on the wrist

ル・マンのような時計は、筆者にとってそうそう巡ってくるものではない。

 しかし、最近の歴史のなかで、私に邪悪な考えを抱かせた2本の時計がある。私のような時計沼にハマった人なら、どんなタイプかご存じだろう。“この時計のためなら何でもする。何でもだ”と言わしめるような時計だ。そのうちのひとつは、こんな感じの小さな貴金属製の時刻表示のみの時計だ。もうひとつは? ロレックス デイトナ ル・マン Ref.126529LNである。


ロレックス デイトナ ル・マン Ref.126529LNとは何か?

 世の中で起こった重要な出来事は、忘れ得ぬ爪痕を残すという。この時計のニュースが流れた瞬間、私はどこにいたかをよく覚えている。美しい初夏の土曜日、私はここで友人たちとクレー射撃をしていた。日付まではっきりと覚えている。なぜなら、この時計はほかのロレックスの新作のようにWatches&Wonders 2023で発表されたわけではないからだ。いや、ル・マン第100回大会でひっそり(かどうかは分からないが)発表されたのだ。

Rolex Daytona with a Paul Newman dial

「これがロレックスの新しいクロノグラフだ。その名も "ル・マン"」 1963年頃、そして2023年。

Photo Report: 世界最高峰の耐久レース、ル・マン 24時間レース 第100回大会の現場から

HODINKEEのフォトグラファー、ジョナサン・マクウォーターは、2023年夏に開催されたル・マン100回記念大会に実際に参加した。この時計がお披露目された歴史的なイベントの舞台裏をこの記事で見ることができる。

 そして、これがこの時計の本質、世界でもっとも重要な耐久レースであるル・マンの1世紀にわたる軌跡を表している。そして、実はちょっとした数字遊びが隠されている。昨年の2023年は100周年にあたり、上の画像のRef.6239が発表された1963年は40周年だった。そのためか、ロレックスは現在我々がデイトナとして認識している時計を当初ル・マンと名付けていた(上の私の蔵書内の元の広告を参照してほしい)。しかし、見方によってはル・マンはレースとしてより歴史が長いといえ、ロレックスは何世代にもわたってその一翼を担ってきた。だから、実はデイトナでありながらル・マンでもあるこのクロノグラフが、100回目のレースにあたりお披露目されるのは理にかなっているのだ。

 では、この時計はいったい何なのだろうか? 基本的には最新世代のデイトナ(Watches&Wonders 2023で初公開されたメタリックな質感のベゼルリングで簡単に識別できる)だが、ある人は“エキゾチック”ダイヤルと呼ぶ、平たく言えば“ポール・ニューマン”ダイヤルを備えているモデルということだ。さらに、2023年新作のプラチナモデルと同じオープンケースバック仕様、そして最も重要なのは、12時間積算計の代わりに24時間積算計を備えたクロノグラフという、まったく異なるムーブメント(Cal.4132)を搭載していることだろう。シンプルだが、重要な意味を持つ仕様変更であり、ロレックスが決してその地位に安住することはないことの証明でもある。

Close up on the dial

ル・マンに対する唯一の批判は、入手不可能であること以上に、ダイヤルのみならずベゼルの100のマーカにまでレッドの差し色が使われていることだ。何ヵ月も着用していると、そのことはすっかり忘れてしまう。

  この時計について語りたいことは山ほどある。だからこそ20分延々と続く動画が出来上がったわけだ。しかし、いくつかの重要なポイントを簡単に説明しよう。まずオープンケースバックは、私が持つほかのデイトナより少し厚く感じる。しかし、私が“感じる”と書いたのは、実際に時計の厚さを測ってみると、それほど厚くなかったからだ。つまり“サファイアバック=厚みが嵩む”というのは少し的外れであり、私の感覚はあくまで感覚であって、事実ではない。

Rolex Caliber 4132

Cal.4132は、“オートオルロジュリー(超高級時計)”と呼ぶような水準ではないが、実に素晴らしく見える!

 ケースバックとゴールド製ローターについて特筆すべきは、このムーブメントが実に素敵に見えるということだ。パテックやランゲの手巻きクロノグラフムーブメントと仕上げの点で比肩するだろうか? 確かに及ばないが、それが目的ではないし、価格帯も異なる。ロレックスのムーブメントが工業品のように見えるのは、実際そのように製造されているからだという思い込みがあろう。しかし10年近く前にロレックスの社内に潜入したときに紹介したように、これらのムーブメントがどれだけ手作業の工程が多いか知るとショックを受けるだろう。そしてCal.4132は、ここでご覧いただけるように、実に見栄えがする。地板には深いジュネーブストライプが施され、イエローゴールド製ローターも精巧に仕上げられている。

 ムーブメントについて触れておくと、4132は新しいキャリバー番号で、ほかのデイトナに搭載されているCal.4131とは異なり、12時間ではなく24時間積算機能を持つ。ロレックスによると、これを実現するために7つの部品を追加する必要があったという。つまり、それほど多くはないのだが、いくつかの理由からこの逸脱は大きい。ロレックスのムーブメントが刷新されることは滅多にあることではないし、必要に駆られたものでもなかった。確かに、積算計を12時間から24時間に増量させるのに、たった7つの部品しか使わなかったが、それは称賛されるべきことである。ロレックスは効率性を追求する社風があり、丸1日分の経過時間をカウントする唯一の機械式クロノグラフではないにしても(ただし、この事実については、どなたかに検証いただきたい)、そのひとつを作り上げることができるのは、ロレックスのムーブメントの高い品質と創意工夫があってこそ、なのだ。

 24時間積算計なんてたいしたものではないと思われるかもしれないし、12時間積算計と人間の頭脳を組み合わせればちゃんとした24時間積算計になるから誰も作ったことがないと主張する人も多いだろう。しかし煎じ詰めれば、高級時計製造のほとんどすべてに同じことが言えてしまう。そしてロレックスは、ル・マン24時間耐久レースとの本格的な連携という真の目的を持って、それを成し遂げたのである。また、24時間積算計を時計製造への些細な貢献と見なすのは簡単だが、クロノグラフを作るのがいかに難しいかを考えると、少し考えが変わるかもしれない。例えば、パテック フィリップのカタログを見るといい。アワーレジスター(時積算計)を備えたクロノグラフは見当たらない。Ref.5172/5270は、間違いなく世界で最も優れたクロノグラフのひとつだが、計測できるのは30分までである。パテックのより実用的なキャリバーであるRef.5905でも60分積算計を搭載するのみである。ダトグラフは? 同じく30分だ。これでお分かりいただけたのではないだろうか?

 また、私はバーゼルワールド2018で、多くの人がレインボーベゼルは時計製造における宝石セッティングへの些細な貢献だと言っていたことを思い出している(カーラは違った、彼女は逆の評価を下していた)、そして今の世界を見て欲しい。私の言葉を覚えておいて欲しい。我々は今後数年のうちに、さらにいくつかの24時間積算クロノグラフを目にすることになるだろう。しかし、ほかのレインボー同様、このデイトナのオリジナル性に匹敵するものはないだろう。

24時間積算計の12のすぐ下を見ると、ダイヤルがレンダリング画像で見るようなピュアでリッチなブラックではないメタリックグレーであることがわかる。

 もうひとつ注目すべきは、このダイヤルがステンレススティール製デイトナに見られるようなリッチで艶感のあるブラックではなく、メタリックグレーに近いという点だ。まったく予想していなかった光沢感がある。よし悪しではなく、手首につけたときにしか見られないディテールであり、ウェブ上の画像ではあまりわからない。また、ダイヤルについては、ポール・ニューマンスタイルが採用されており、各積算計のハッシュマークの端の小さな四角いマーカーの意匠は、誰も予想していなかったのではないだろうか。

Reference Points: ロレックス ポール・ニューマン デイトナの全て

オリジナルの "ポール・ニューマン デイトナ "について知りたい? 2014年にさかのぼるこのReference Pointsの動画をご覧いただきたい。

 さて、“ポール・ニューマン”スタイルのダイヤルのロレックスコレクターの伝説における立ち位置を知ることは重要だ。まず、誰もが言うように、これらの特別なダイヤルは曲者が多いのだが、紛れもなくクールな要素が潜んでいる。時計収集が主流になってから何年も経った今日でさえ、非エキゾチックダイヤルの通常のデイトナよりもかなりのプレミアムがつくほどだ。特に理解し難いことは、どの時計がどのダイヤルと組み合わされて製造されたかを知る術がないことだ。しかしロレックスの世界では、価値の多くはダイヤルに左右され、出自はほとんど問題にされない。世界で最も高価なデイトナは、ほぼ間違いなくこのスタイルのダイヤルを持つものであり、あの1800万ドルのポール・ニューマン デイトナに限った話ではないのだ。だからロレックスがついにこのスタイルのダイヤルを備えた現代版のコスモグラフを発表したとき、世界が特に注目するのは当然といえよう。もちろん、この時計はSS製ではなく18Kホワイトゴールド製だ。これは、(ロレックスの時計が依然として享受している著しい需要に対して)すでに困難に陥っている供給問題を悪化させないように、おそらく価格帯を入手可能な範囲から大幅に引き上げることを期待してのことだろう。


デイトナ ル・マンはデイトナ愛好家のコレクションのどこに位置するのか?

ここでの違いは微妙だが、重要である。

 私がデイトナを愛していることは隠すつもりのない、公然の事実だ。先代のSS製(Ref.116500LN)のホワイト/ブラックダイヤルの両方と、オイスターフレックスのWG仕様を含め、何本か所有している。ブラックダイヤルのSS仕様は現在、ニューヨーク州ロチェスターに住む母のもとで過ごしている(彼女の手首からこの時計を買い取ろうとした地元のスーパーマーケットの変人たちに拍手を!)。しかし、この時計は長いあいだ、私のコレクションの定番だった…ル・マンがそれを変えてしまうのだろうか? もちろん、そんなことはない。しかし、そもそも現代のデイトナの何がそんなに素晴らしいのかを再考するきっかけとなった。私にとっては、伝統、デザイン、機能性、そして率直に言って、2016年に初めて新型デイトナを手にしたとき、あるいはその何年も前に初めてヴィンテージデイトナを手にしたときに感じた特別な感覚を保ちながら、デイトナをつけてやっていけないことはないという事実だ。先代までのデイトナに取って代わるものでないし、率直に言って、ロレックスの販売店では、この時計が誰かの最初のデイトナになる確率はゼロに等しい。

Rolex Daytona Le Mans

これは? これはいい時計だ。

 ル・マンは誰かが唯一持つモダンなデイトナになる可能性はあるだろうか? もちろん、その重量と、WGはロレックス独自のSSよりも傷がつきやすいという事実に慣れることができれば、そうなる可能性はある。ここに見られるポリッシュ仕上げのセンターリンクや、現行デイトナすべてに見られるポリッシュ仕上げのミドルケースは、深刻な形で傷が付きやすい。しかし、それはロレックスにとって目新しいことではないし、もしそれが本当に問題であれば、ロレックスはそれについて何かしら対処するはずだ。そうしないということは、ロレックスはこの時計が本来の性能を発揮していると感じているのだろう。それだけで私にとって十分だ。

他のデイトナ同様、オイスターブレスレットにはポリッシュ仕上げのセンターリンクが施されている。

ミドルケースもまた、プッシャーのキャップとともに美しくポリッシュされている。


ル・マンの競合モデルはあるのだろうか? あるとは思えないが、強いて挙げるならば…

2本の3レジスター、オープンケースバック、WG製の時計が、クロノグラフの2大ファミリーを代表する。

 ル・マンとの競合モデルを考慮せずして、“A Week On The Wrist”を語ることはできないだろう。この時計に匹敵するようなものは、入手が不可能なだけに、なかなかないのだ。WGのロイヤル オーク クロノグラフ? だが、それはちょっとしっくりこない。私が思いつく最高のものは(市場で手に入れることがいかに難しいかという話ではないとして)カノープスゴールド™のオメガ スピードマスター プロフェッショナルだ。この2本の時計は、一方が自動巻き、もう一方が手巻きだが、それ以外はほとんど同じであり、時計製造の歴史において最も重要な2本のクロノグラフシリーズを代表するものだ。また、どちらも現実ではめったにお目にかかれない点も共通している。

 さて、ここで興味深いのは、カノープス™仕様のスピードマスターのほうがル・マンよりも小売価格が高く(カノープス™は純粋なWGではなく、プラチナ、ロジウム、パラジウムを含む合金であるため、強烈な白色を持つ)、さらにほかの要素があるため、腕につけたときの重量がさらに重くなるということである。正直なところ、カノープス™仕様の3861はとんでもなく重いのだが、しばらくつけていると、その重さを愛おしく感じないわけにはいかなくなる。どちらのムーブメントの仕上げが優れているか? もちろん一方にはローターがあって、もう一方にはないものの、同等レベルだ。

オメガの手巻きムーブメント、Cal.3861。
ロレックスの自動巻きムーブメント、Cal.4132。

 この2本は、いくつかの点で似た特徴を持つヘビー級チャンピオンである。というのも、私が上の動画を収録した時点では、ル・マンの2次流通市場での平均取引価格は約23万5000ドル(日本円で約3562万円)だったからだ(年のため、希望小売価格は日本円で税込740万7400円)。これは、ル・マンとカノープス™仕様の3861、あるいは率直に言って地球上のほかのクロノグラフを比較することがまったく意味をなさないもうひとつの理由である。


ロレックス デイトナ ル・マン Ref.126529LNの今後
Daytona Le Mans on the wrist

何本製造されるのか? ホワイトダイヤルやYG仕様は登場するのだろうか? 読者と同様、私にもわからない。

 私は上の動画でこのことについて数分間話したが、いまだ文章がお好きな方のためにお伝えすると、ル・マンの見通しは依然として不透明だ。2024年は約2400本、来年はホワイトダイヤル仕様が2400本製造されるという報道とは裏腹に、公式には何も発表されていない。すでに生産終了しているという噂もあったが、私は先週納品されたばかりの1本を知っているので、そうではないと確信している。ル・マンはまさに、私(そして我々)が夢見るモダンデイトナなのだが、もしそうでないのなら、ロレックスがこの時計を永久に作り続けるのなら、この時計への欲望を再考することをお勧めする。なぜなら、“エキゾチック”ダイヤルは、当時のようにカタログで通常仕様のダイヤルと並んで生きるに値するからだ。

 私はそれが“今”実現すると言っているわけではない(私はこの件に関して、あるいはロレックス社の計画に関して、内部情報をまったく持っていない)。私はここで、一介のファンの妄想を話しているだけだ。ロレックスがこのダイヤルをこの先何年も作り続け、欲しい人が誰でも手に入れられるようになるのが私の夢だ。それは実現するだろうか? おそらく無理だろう。しかし、時が経てば、多くの人が驚くかもしれない。昔、SS製のデイトナを手に入れるのがどれほど不可能だったか覚えているだろうか。いま、あなたの#watchnerdの友人のうち、何人が持っているか考えてみて欲しい。まだ多くはないが、何人かは持っているはずだ! ル・マンも同じだろう。純粋に入手不可な存在であろうとも、ロレックス デイトナ ル・マンは、ロレックスとモータースポーツの歴史において特別な存在なのである。というのも、ル・マン・デイトナは、時計コレクターの心をも熱くさせる特別な存在でありながら、日常的に着用できるほど使い勝手のいい、実に優れた時計だからだ。換言すれば、デイトナ ル・マンはロレックスの最高峰モデルなのだ。だから私はこの時計が大好きなのだ。

 それにしても、2013年にル・マンという名の時計について延々と綴った人間がほかに何を言えるというのだろう。私にとって、ル・マンと呼ばれるロレックスの新しいクロノグラフほどクールなものはない。

※編注;本稿で取り上げたホワイトゴールド製のデイトナ ル・マン Ref.126529LNは、先日の Watches&Wonders期間中に生産終了となるとのニュースが飛び込んできた。詳しくは、記事「Breaking News:ロレックス ホワイトゴールド製の“ル・マン” デイトナが生産終了」をご覧いただきたい。

Video Editor by Joe Wyatt, Photography by Mark Kauzlarich

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