Just Because ジュネーブ空港でスヌーピーのムーンスウォッチを買い、友達ができた話

　Watches＆Wondersの翌日はいつも嵐のようだ。前の晩、私たちはジュネーブのLucid Studiosで最高のパーティに参加していた。コミュニティに属する人々が大勢集まり、大いに杯を酌み交わした。その後、HODINKEEのスタッフはホテルでピザを注文し、翌日別々にスイスを出発する前に親睦を深めた。つまりまあ、夜更かしをしたのだ。私のフライトは朝早いものだったが、結局定刻より遅れた。改めて睡眠をとるほど長くはなかったが、軽く店を冷やかすには十分な時間だった。そして、空港のセキュリティは（ジュネーブではいつものことだが）大量のカメラ機材に面食らい、私の手荷物をふたつとも検査していたために余裕もあった。そこで見つけた。私にとって、ハッピーなものを。ジュネーブ空港のスウォッチストアで。

　今朝の今朝まで、ムーンスウォッチブームには抵抗があった。その昔、初日に並ぼうと思いたったことがあったが、すぐに睡眠のほうが本当に大事だと気づいてやめたことがある。オリジナル ムーンスウォッチのいくつかは実にクールだった。タイムズスクエアでムーンシャインゴールドのリリースを取材したときには実はまだ少し在庫があり、その場で買えたかもと言われた。しかしそれを聞かされたのは、自宅に帰り着いてスウェットパンツをはいてからのことだった。そんな状況が、この土曜日に一変した。

　空港のスウォッチショップの列には十数人が並んでいた。スウォッチ×オメガの“ミッション・トゥ・ザ・ムーンフェイズ” スヌーピーウォッチのホワイトをケースから取り出し、スウォッチ×ブランパンの“オーシャン・オブ・ストーム” ブラックダイバーと見比べるために開封している人もいた。そのほかにも友人たちが買い物を終えるのを待っている人々が周りに見られ、そのほとんどはスヌーピーが描かれた新作ムーンスウォッチ、“ミッション・トゥ・ザ・ムーンフェイズ・ニュームーン”のブラックを手にしていた。Watches＆Wondersから帰ってきたばかりの疲れた時計愛好家たちをたったひとりで相手取っている販売員から、購入品と一緒に渡されたUVトーチで遊んでいるの男性も何人か見られた。家族を引き連れて列に並んでいたある若者（たぶん16歳ぐらいだ）は、黒いスヌーピーにいたく感動しているようだった。

　カウンターに着いた私は、両方（ホワイトもブラックも）買えるか店員に聞いた。その女性店員は私がひとりかと尋ねてきたので、（別の誰かが2本目を買おうとして断られているのが聞こえたため）私はひとりであることを認め、より活躍の機会が多いと思われた黒の“ニュームーン”を選んだ。

　果たしてそれは正解だったようだ。その週、ジュネーブにいたHODINKEEチームの12人のうち4人がブラックのスヌーピー ムーンスウォッチを手に入れた。そのうちのひとり、相変わらずブランド志向の強いジェームズ・ステイシーはスウォッチ×ブランパンのブラックダイバーを手に入れ、すぐにストラップをタンのNATOに交換していた。

　初めてのムーンスウォッチを座って見ようとベンチに向かったところ、日本人のビジネスマンの隣に行き着いた。彼は白いスヌーピーをバッグに詰めているところだった。私は自分の箱を掲げて小さくうなずいてみせた。彼との会話が始まり、改まって名刺交換をしたそのとき、彼が時計ブランド（どことは言わない）に勤めていて、私と同じように家に帰る前に何か笑顔になれるものを探していたのだとわかった。彼はまた、HODINKEEの読者でもあった。私が写真を撮るためにその時計を貸してくれないかと頼むと、彼は快く承諾してくれた。

　多くは語らないが、このふたつを見比べた結果として、自分の選択が正しかったかどうかはまだわからない。ホワイトのモデルは遠くから見ても一目瞭然だが、ブラックのスヌーピーはもう少し控えめで、まさに私の好みだ。なお、ムーンフェイズをもっと撮影に適した位置に設定する方法がわからなかったが、説明書を読むのも億劫だった。彼に時計を返すと、私の反対側に日本から来たもうひとりの紳士が座った。彼もまた、箱から出したばかりの新しいスヌーピー ムーンスウォッチをつけていた。もし、Watches＆Wondersの後にジュネーブから帰国しようとしているのなら、ぜひ空港内のスウォッチストアに立ち寄って欲しい。そして、そこで何か手に入れたら教えてくれ。もしかしたら、何人かの友達ができるかもしれない。