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Introducing ジン、356シリーズの25周年を記念した356 フリーガー・クラシックJUBをリリース

どうやら、356フリーガーの単純なアレンジではないようだ。


クイック解説

ジン(Sinn)にはいくつか定番人気のモデルがあるが、特に356 フリーガーは40mmを切る小径のクロノグラフウォッチとして評価が高い1本だ。1996年に日本限定で販売された手巻きクロノグラフ(ちなみに300本限定)に端を発するもので、同作の大成功を受ける形で1998年より自動巻き化(当時はETA社製のCal.7760を搭載)をしてレギュラーに加わった。256 パイロット・クロノグラフから回転ベゼルを取り払ったスリムで洗練されたデザインは、実用的なツールウォッチを求める愛好家に長らく愛されてきた。1994年にリリースされたIWCのメカニカルフリーガークロノにも通じるところがあるが、1994年にIWCのエンジニアであったローター・シュミット氏が経営を引き継いだところにその要因があるかもしれない。そして2023年に、356 フリーガーはレギュラー化から25周年を迎えた。ジンはその記念すべき年に、“356”の名前を冠しつつもまったく新しい356 フリーガー・クラシックJUBをリリースする。

 356 フリーガー・クラシックJUBでジンは、ツーカウンターをバイコンパックスで配置した。マットな仕上げのアンスラサイトダイヤルにシルバーのスモールセコンドと30分積算計が並び、その上をシリンジ針の時分針、およびクロノグラフ針が回る。従来の356 フリーガーと同じフォントを踏襲したインデックスは夜光塗料のプリントで表され、12時位置に移動したブランドロゴはアプライドになることで特別感を強調しているように見える。なお、ミニッツトラックにはクロノグラフ使用時に4分の1秒を計測できるよう目盛りが加えられた。

 ケース径は38.5mmで厚さは15mm、リューズの形状に沿ってせり上がるようなリューズガードやドリルラグなど、ケースについては従来の356 フリーガーと変わらない。表面のサンドブラスト仕上げも同様だ。レギュラーモデルでは強化アクリルを使用しているハイドーム型風防は、両面に無反射加工を施したサファイアクリスタルに変更が入り(既存モデルでも356.SA.FLIEGERや356.SA.FLIEGER.IIIなどはサファイアクリスタルを使用)、より高い視認性と高級感を演出している。なお、今作ではケースバックもサファイアクリスタルになった。ムーブメントはセリタのSW510で、裏蓋側から駆動する様子を見ることができる。

 ストラップはボア(イノシシ)革を使用した耐久性に優れるヌバックレザー製で、グレーとサンドカラーの2本が付属し、ジンオリジナルの工具とともにスペシャルボックスに格納される。価格は税込72万6000円で、2023年秋ごろの発売を予定している。


ファースト・インプレッション

356 フリーガーといえば、12時位置に30分積算計、9時位置にスモールセコンド、6時位置に12時間積算計を備えた縦3つ目のサブダイヤルが印象的だ。さらに3時位置にはブランドロゴとデイデイト表示が配され、直径38.5mmのなかにさまざまな要素がギュッと凝縮したような顔立ちは、これまでダイヤルの仕上げに変更がありこそすれ大きく手が入ることはなかった。しかし、ジンのインストゥルメント ウォッチを代表するモデルの25周年にあたり、ブランドは新たなデザインとしてバイコンパックスを選択した。初めてリリースに目を通したとき、356 フリーガーを愛用するひとりであるがゆえに、何度か型番が正しいかを確認したりもした。

 過去にも、ジンはバイコンパックスのクロノグラフを手掛けている。ソリッドベゼルに60分積算計を備えた936や、分厚いブラックベゼルが特徴的な158などだ。その事実だけを見れば、すでに安定した人気を獲得している356 フリーガーの名前で定評のあるデザインを乗せただけのようにも思える。だが、356 フリーガー・クラシックJUBと、936、158を見比べると目指す方向性が大きく異なることがわかる。936、158のケース径はともに43mmで、時分針は視認性を重視したソード針とバトン針。クロノグラフ針と3時位置の積算計にはパッと目に入る赤を使用し、とにかく(ジンらしく)プロツールとしてのパイロットクロノグラフを追求しているように見える。一方、今回の新作は柔和な色合いのアンスラサイトに馴染みよいシルバーのサブダイヤルを採用しており、強い主張はなく上品だ。ケースは前述のとおり従来の356 フリーガーを踏襲しており、どちらかというとクラシカルでノスタルジーを感じさせる見た目になっている。

 少し話を戻すが、1996年にリリースされた356 フリーガーの日本限定モデルがあれほど受け入れられたのはなぜなのだろう。そこにあったのはパイロットウォッチとしての実用性を求める声ではなく、クラシカルで象徴的なフリーガーデザインをデイリーにつけたいという欲求ではないだろうか(実際、僕もそうだ)。正直、あの凝縮感のあるダイヤルは、メガネなしでは読み取りにくいこともある。ジンのメンズモデルで356 フリーガーと並ぶ小径モデルは3針の556や一部のクラシックシリーズぐらいで、そこにはブランドの視認性に対する強迫観念に近いプライドがあるようにも思える。つまるところ、356 フリーガーが担う役割は別のところにあるのではないか、ということだ。

 ゆえに、既存のバイコンパックスデザインを取り入れながらも、356 フリーガー・クラシックJUBはまったく新しい狙いを持ったモデルであると考える。モデル名とダイヤル上の“KLASSIK”は、このモデルがノスタルジーと文字通りクラシカルさを強調したクラシックシリーズに属することを示すものである。356 フリーガーという懐古的なデザインを落とし込みやすいプラットフォームで新たな試みを行うにあたって、ジンは1940年代ごろのレトロな空気をバイコンパックスで取り入れつつ、初代356登場時に人々が感じたエレガンスを再表現したかったのではないかと思うのだ。

 散々既存の356 フリーガーへの執着も書いてきたが、意表をつかれただけで僕自身はこのデザインが大好きだ。ラグ幅も20mmなので、手持ちの356 フリーガーのメタルブレスと付け替えた際にどのような顔になるか、大いに興味がある。NATOストラップとの相性もきっといいだろう。なお余談だが、356 フリーガー・クラシックJUBと同タイミングで、バイコンパックスでアンスラサイトからブラックへのグラデーションを配した356フリーガー・クラシック AS.Eと、白文字盤にブラックのサブダイヤル(パンダだ!)を備えた356 フリーガー・クラシックWを発表している。どれもジンらしいカラートーンで、ジンのインストゥルメント ウォッチファンには刺さるものだろうと思う。

 なので、38.5mm径でバイコンパックスを表現したことで、手首の上でどう見えるのか。既存の356 フリーガーと並んだ際の印象の違いはどうか。既存の356 フリーガーから30万円ほど価格が上がる理由はどこにあるのか。そもそもなぜ、356の新たな表現としてバイコンパックスを採用したのか……。いちジンファンとして、そのあたりについては実機を手にしつつ今後お伝えできればと思う。


基本情報

ブランド: ジン(Sinn)
モデル名: 356 フリーガー・クラシック JUB(356.FLIEGER.KLASSIK.JUB)

直径: 38.5mm
厚さ: 15mm
ラグ幅: 20mm
ケース素材: サンドマット仕上げのステンレススティール
文字盤色: アンスラサイト
インデックス: プリントのアラビア数字、アプライドのブランドロゴ
夜光: インデックスと針に夜光塗料
防水性能: 10気圧防水(DIN8310準拠)
ストラップ/ブレスレット: ヌバック・ボアレザー製ストラップ(グレーとサンドカラーの2色が付属)

時計本体、替えストラップ、予備のバネ棒にバンド交換用工具が収められた特別仕様のボックス。


ムーブメント情報

キャリバー: SW510
機能: 時・分・スモールセコンド、クロノグラフ(30分積算計)
パワーリザーブ: 約56時間
巻き上げ方式: 自動巻き
振動数: 2万8800振動/時
耐磁性能: 4800A/m(DIN8309準拠)
石数: 27
クロノメーター: なし


価格 & 発売時期

価格: 72万6000円(税込)
発売時期: 2023年秋ごろ発売予定
限定: 世界限定500本

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