trophy slideshow-left slideshow-right chevron-right chevron-light chevron-light play play-outline external-arrow pointer hodinkee-shop hodinkee-shop share-arrow share show-more-arrow watch101-hotspot instagram nav dropdown-arrow full-article-view read-more-arrow close close email facebook h image-centric-view newletter-icon pinterest search-light search thumbnail-view twitter view-image checkmark triangle-down chevron-right-circle chevron-right-circle-white lock shop live events conversation watch plus plus-circle camera comments download x heart comment default-watch-avatar overflow check-circle right-white right-black comment-bubble instagram speech-bubble shopping-bag

Hands-On グランドセイコー エレガンスコレクション「スリム」手巻きムーブメント限定エディション

新しいムーブメントとスリムになった横顔を備えた、グランドセイコーの最新コレクションを詳しく紹介しよう。

ADVERTISEMENT

グランドセイコーに対して、時計愛好家が一般に抱いている数少ない不満の一つは、この時計が比較的厚ぼったいということである。この厚みはある程度までは、グランドセイコーの非常にがっしりとしたムーブメント作りへの固い意志からくる当然の帰結であるが、GSの高品質かつ高価値のスリムな時計が欲しいという欲求は、概して満たされなかった。しかしそれも、新しい手巻きムーブメントを使用した、エレガンスコレクションの新たな4モデルが発表されるまでのこと。この新ムーブメント、Cal.9S63はパワーリザーブ表示を3時位置に、スモールセコンドを9時位置に配している。このキャリバーによって、典型的なグランドセイコーのデイト付き自動巻き式時計の厚さ13mm超より薄い、厚さ11.6mm、直径39mmの腕時計が完成した。

新しい手巻きムーブメントCal.9S63。

 この4種の時計は限定エディションとして発表されており、税抜価格75万円の文字盤が「岩手山」模様のSSモデルと、ゴールドの3つのモデルがある。ゴールドモデルのうち1つは白い文字盤、あとの2つは日本の漆工芸技法である蒔絵で仕上げられている。蒔絵は漆器づくりに使われる手法で、金粉を使って漆塗りの上に絵や文様を描く技法だ。

 SSモデルはとても印象的な仕上がりだ。漆塗りの文字盤のようによく見るほどに感じられる緻密な豪奢さはないものの、その佇まいが放つ際立った凛々しさがあり、「岩手山」模様にはスプリングドライブ スノーフレークのような心を惹きつける自然の空気感があり、ピーコック色の文字盤のハイビート GMTに通ずる鮮やかな玉虫色をしている。

 ゴールドに白い文字盤のモデルは、もはや全く別の時計のようだ。(完全に異なった仕様の文字盤と18KYGケースを備えている)。3つのモデルのうち、こちらは最もクラシックな雰囲気の仕上がりであり、パテックやヴァシュロンやオーデマ ピゲによって19世紀半ばに作られた名高い3針時計と並べても、場違いな感じはしないだろう。(これはドーム型のガラス部分と通常より薄いケースの両方のおかげだろう)。ゴールドの華やかさがグランドセイコーに添えられるとき、そこにはいつも趣深さがある。グランドセイコーが一つひとつの時計に惜しみなく与える細部への研ぎ澄まされた配慮が、SSをもはや幻の金属とみまがうほどにし、それがゴールドとのコンビネーションにより、特別で、慎み深くありつつも豪華なものとなっている。

 蒔絵による文字盤の赤い漆塗りモデルは、間近で見ると極めて巧みなつくりだ。漆塗りには光の加減で見え隠れする細かなスジ模様が入っていて、それが細部に埋もれることなく文字盤に驚くべき深みと複雑さを与えており、また、漆塗りの特徴である光の当たり方による色の変化も見られる。蒔絵によるアラビア数字と目盛りも似通った印象で、それらの質感にはわずかに生命感が感じられる。黒と赤の漆塗りモデルのどちらも、冴え冴えと完ぺきに磨かれた針とケースとの鮮やかな対比をなす文字盤の向こうに、何かしら生命を宿している感じがするのだ。

 2mmというケースの厚みの違いは数字の上では大した違いとは思えないが、時計愛好家であれば、それが腕に着けたときに格段の違いを生み出すことを知っている。この新しい「スリム」モデルはもちろんエクストラフラット ウォッチではなく(クレドールの中にはエクストラフラットのムーブメントがいくつかあるが)、私の知る限り、それがグランドセイコーに組み込まれたことはなく、全部ではないにしてもほとんどが日本の国内市場向けのものとなっている。しかしながら、この新しいモデルは分厚いグランドセイコーモデルとは顕著に異なる着け心地を実現している。この「スリム」モデルのガラス部分は大きく盛り上がったドーム型であるため、その着け心地には数字上のサイズ以上に大きな差がある。

 私が着用したことのある唯一の手巻きムーブメント搭載のグランドセイコーはSBGW231で、これは複雑機構も日付表示もない直径37mm、厚さ11.6mmの時計である。この時計の厚みは今回の「スリム」限定エディションと同じだが、今回のモデルのほうがいくぶん腕にしっくりと馴染む(これはおそらく縦横比の違いによるものだろう)。

 全体としては、これらの4つのモデルは従来のグランドセイコーからすると、とても斬新でかなり特色のある最新版だといえる。グランドセイコーの大きな魅力を成す特有の日本的精神を損なうことなく、より世界に通じる趣を感じさせるものとなっている。

 価格とスペックの詳細についてはグランドセイコーの公式サイトへ。