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時計とモータースポーツの交わりにおける最も象徴的なイメージのひとつであり、時計やレーシングカー、そしてスタイリッシュなものに少しでも興味がある人なら誰でも引きつけられる光景がある。それはスティーブ・マックイーン(Steve McQueen)が『栄光のル・マン(原題:Le Mans)』の撮影現場でレーシングスーツのボタンを留め、タグ・ホイヤー モナコがはっきりと目に入るそのシーンだ。
サザビーズは、1971年の映画『栄光のル・マン』で小道具として使用されたホイヤー モナコのひとつが、12月にニューヨークで行われるオークションに出品されることを発表した。ホイヤーは『栄光のル・マン』の撮影に使用するためのモナコを6本提供している。そのうち4本にレザーストラップが装着され、映画でマックイーンが着用しているのもこのタイプである。そして、これら4本のマックイーンモナコがそのあとどうなったかについても、ほぼすべてが明らかになっている。
- 2本はタグ・ホイヤーミュージアムに収蔵されており、オークションでは2012年に79万9500ドル(当時の相場で約6380万円)、2009年には8万7600ドル(当時の相場で約820万円)で落札された(かなり破格だ!)
- マックイーンが『栄光のル・マン』撮影最終日に専属メカニックであるヘイグ・アルトゥニアン(Haig Alltounian)に贈ったモナコは、2020年のフィリップスオークションにて220万ドル(当時の相場で約2億3000万円)で落札された。
さらにもう1本のマックイーンモナコがオークションに出品される予定だ。推定落札価格は50万ドルから100万ドル(日本円で約7345万~1億4690万円)とされている。この個体が公の場に登場するのは今回が初めてであり、もしかするとこれが最後のマックイーンモナコを見る機会になるかもしれない。さらにこのモナコにはレーシングに関する特別なストーリーもある。
マックイーンモナコの話は少しややこしい。なぜなら6本存在し、どれをいつ着用したのか正確には分かっていないからだ。2016年、ウォール・ストリート・ジャーナル紙が『栄光のル・マン』のプロップマスターであるドン・ナンリー(Don Nunley)を探し出し、その謎を解明しようと試みたことがある。
「撮影現場にはブルーダイヤルのモナコが6本ありました」とナンリーは語り、マックイーンがそのすべてを着用したことも明らかにしている。その記事では、ホイヤーからの請求書原本も見つかっており、そこには6本のRef.1133B モナコ(そして合計で26本の時計が記載されていた。映画で使われた残りのホイヤーはどこにあるのだろう?)が記されていた。
スティーブ・マックイーンが『栄光のル・マン』で着用したモナコが約2億2945万円で落札
2020年、私たちはオークションに出品された最後の“マックイーンモナコ”について取り上げた。この時計は『栄光のル・マン』撮影後にマックイーン自身がメカニックに贈ったものだ。この時計は220万ドル(当時の相場で約2億3000万円)で落札され、ホイヤーの時計としてオークション史上最高額を記録した。詳細はこちらから。
『栄光のル・マン』の撮影後、このモナコは映画で働いていた若いメカニック、ベヴァン・ウェストン(Bevan Weston)の手に渡った。その後彼はマクラーレンに所属し、1971年にはインディ500チームにも参加したが、もちろんそのときもモナコを手首につけていた。ウェストンは2010年ごろにこの時計を個人コレクターに売却した(On The Dashフォーラムには、当時の価格について未確認の古い情報がある)。そして今回、そのコレクターがサザビーズに出品することで、このモナコが初めて公の場に姿を現すこととなる。
2020年に最後のマックイーンモナコがオークションに出品されたときは220万ドル(当時の相場で約2億3000万円)で落札され、ホイヤーの時計として史上最高額を記録した。この時計も、マックイーンが撮影後に保管していたとされる2本のうちの1本である。だが2024年の時計市場は当時とは大きく異なり、今回の個体がどのような価格に達するか予測するのは難しい。とはいえ市場に新たに登場する希少な時計は常に注目を集めるものであり、しかもこれは『栄光のル・マン』で使われたレザーストラップ付きの4本のモナコのうち、最後に公に現れるものである。サザビーズの推定価格は妥当に思えるが、もし9桁台の結果が出れば、彼らも大いに満足するだろう。
結果に大きな影響を与えるかもしれない要因のひとつは、タグ・ホイヤーミュージアムが入札に参加するかどうかである。すでにマックイーンモナコを2本所蔵しているため、3本目となるとさすがに多すぎるかもしれない。
「マックイーンやレース、ヴィンテージクロノグラフを愛する方にとって、この時計はコレクションに加えるべき究極の一品、まさに“終着点”といえるでしょう」と、サザビーズの時計部門責任者であるジェフ・ヘス(Geoff Hess)氏は語っている。
ホイヤーは1969年にモナコを発表している。これは同社初の自動巻きクロノグラフ、Cal.11を搭載した最初のモデルのひとつであった。角ばったデザインのモナコは、同じキャリバーを搭載した伝統的なカレラに対するアバンギャルドな回答だった。スタンリー・キューブリック(Stanley Kubrick)やサミー・デイヴィス・ジュニア(Sammy Davis Jr.)といった一部の人々に愛されたものの、人気は限られていた。しかしマックイーンと映画『栄光のル・マン』のおかげで、この時計はセレブリティと最も縁のあるモデルのひとつとなった。
『栄光のル・マン』で使用されたマックイーンのホイヤー モナコは、“ホイヤー チャンピオンズ”と題された12月開催のサザビーズオークションにて、ブランドのヴィンテージクロノグラフを集めた特別セクションの一部として出品される。2017年の“ホイヤー パレード”以降、オークション市場ではホイヤーに対する注目がやや薄れていたが、サザビーズが12月のカタログでどのようなモデルをほかに取り上げるのか、とても楽しみにしている。
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