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Editors' Picks フィリップスのレトロスペクティブ オークションで最も思い入れのある時計

時計製造の20年を振り返る。

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オークションの季節がやってきた。ちょうど先日、フィリップスが12月に販売する素晴らしい時計を見る独占ライブがあった。登場したのは、ポール・ニューマンのデイトナ Ref. 6263とスティーブ・マックイーンがル・マンで着用した希少なモナコだ。

 フィリップスといえば、11月8日にジュネーブで開催される「フィリップス レトロスペクティブ オークション」があるが、そこでは21世紀の時計製造が、なぜそれ以前のものと異なるのかに焦点を当て、時計製造の過去20年を振り返るという。通常、我々はオークションに関して、出品作品の概要をまとめたり、そのうちの数点を詳しく紹介したりするのだが、今回は現代の時計、つまり我々が長年リアルタイムで取材してきた時計にフォーカスされていることを考慮して、少し変わったことをしようと思う。単なるプレビューではなく、編集者が惹かれ、個人的に思い入れのある時計を1つずつ選ぶことにした。

ジャック・フォースター:オーデマ ピゲ ジュール・オーデマ  イクエーション オブ タイム 

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 ジュール・オーデマ イクエーション オブ タイムは、ここ数年、オーデマ ピゲのカタログには載っていなかったが、長年にわたって同社が製造した多くの時計の中で、私が復活させて欲しいディスコンモデルを1つ挙げるならば、この時計だ。これが発売された当時、懐中時計や置き時計にあって腕時計にはなかった、日の出・日の入りの複雑機構を搭載した初めての腕時計だった。

AP

 この非常に精巧なタイムピースには、永久カレンダーと均時差表示も含まれており、複雑機構が見事に組み合わされている。 これはいわば、地球の1年の軌道に沿って、地球と太陽の関係を表す機械による叙情詩である。この時計の初期バージョン(真太陽時を表示することも可能で、これも腕時計としては初めてのこと)は、昔、私が均時差とは何かを学んだきっかけとなった。今でもこの時計を見るたびに、あのころと同じような知的興奮を覚える。歴史的にも偉大なコンプリケーションのスペシャリストであるオーデマ ピゲの、美しく叙情的なタイムピースだ。

ロット 218, 予想落札価格: 2万1700-3万2600ドル(約225万〜338万円)

ダニー・ミルトン: ロレックス レッド シードゥエラー Ref. 126600

Rolex

 私はマットダイヤルのロレックスのダイバーズウォッチが大好きだ。父のRef.5513 サブマリーナーについて長々と話したこともある。また、私の好きな映画について、具体的には70年代のアメリカ映画、特に1976年の古典ともいえる『大統領の陰謀』を憶えている人もいるだろう。 この作品では、ロレックスのレッド サブマリーナー Ref.1680(ロバート・レッドフォード個人が所有した時計で、1972年の映画『 候補者ビル・マッケイ』でも着用された)が目立つように使われていた。今回、ロレックスのシードゥエラー Ref.126600が出品されるが、これは、私にとっては、レッド シードゥエラーというより、オリジナルのRef.1680 レッド サブマリーナーの現代版といえるのではないかと思う。あえてシードゥエラーではなくサブマリーナーと表現したのは、Ref.126600には、それまでのモデルに無かったもの、つまり、サイクロップレンズ付きのデイト表示があるからだ。

Rolex

 さらに、この時計は、現代のロレックスにおけるマットダイヤルを備えている。これは正直言って、我々が今まであまり取り上げてこなかったことだ。現行のロレックスの、ほんの一ひと握りが備えているものだが、金属のケースに素晴らしく映える。ヴィンテージのシードウェラーやサブマリーナーは当時、真のツールウォッチであり、レッドフォードがスクリーン上でレッドサブを着用している役柄(上院議員候補者や調査記者)は、現実では稀だ。私にとってRef.126600は、現代でも理想的なツールウォッチを体現したものだと言える。この時計は、ウェットスーツだけでなく、レッドフォードのトレードマークだったコーデュロイのスーツにもクールに合わせられるだろう。現代的なマットダイヤルのロレックスのダイバーズウォッチとして、Ref.126600は21世紀に少しだけノスタルジックなテイストをもたらしてくれる。

ロット204, 予想落札価格: 6600-9900ドル(約69万〜103万円)

ジェームズ・ステイシー: グルーベル・フォルセイ シグネチャー1

GF

 グルーベル・フォルセイのシグネチャー1を見ると、僕はいつも笑顔になるが、それはこの時計が単に豪華で美しいだけではない。この時計はまた、スティーブン・フォルセイが、私のロレックスを偽物呼ばわりしたときのことを思い出させる。それは2016年のことで、僕はちょうどSIHHのグルーベル・フォルセイのブースにいて、当時発表されたばかりのシグネチャー1の、彼自身による短いプレゼンテーションを聞き終えたところだった。僕は以前、別の媒体用に彼のプロフィールを書いているときにスティーブン(・プルビレント)に会ったことがあり、バンクーバーの僕の友人で時計職人のジェイソン・ギャロップ(彼は長年にわたって、僕の時計製造に関する面倒で細かい質問に、全て答えてくれる頼りになる存在だ)が、WOSTEPでフォルセイと同窓だったことから、友人を共有していたことになる。

GF

 このような会議にいつものことのように参加できるのは嬉しいが、スティーブンが僕の愛機、Ref.16570 エクスプローラーIIに手を差し伸べてくれたときの喜びを想像してみて欲しい。僕は手首からこの時計を外して彼に手渡し、彼がそれをよく見てくれているのが、同僚の前で非常に誇らしかった。が、その誇りも束の間だった。
「これは偽物で、しかもあまり良いものではないですね」と、スティーブンはちょっと信じられない様子で言ったのだ。僕の方を見て、にやにやした笑みを浮かべながら、イラだった僕の反論を肩透かしにした。反論したが、僕のために仕組まれた罠だとは気づかなかったのだ。「君も知っているバンクーバーのジェイソン・ギャロップから買ったんです」と言うと、彼は少年のようないたずらっ子の目をしてこう言った。「ええ、知っていますよ。ジェイソンに偽物だと言えと言われたのだから」。 フォルセイは(そして、部屋にいた他の人たちも)大爆笑した。僕は笑って(本物の)ロレックスを取り戻し、バンクーバーの方向に拳を振った。いつか復讐してやろう、と。そして、シグネチャー1は、信じられないほどクールな時計で、かなりレアだ。今回のオークションのテーマにもピッタリだと思うから、フィリップスにとっても良い出品になるはずだ。

ロット216, 予想落札価格: 6万5400-13万1000ドル(約677万〜1356万円)

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ジョン・ビューズ: ウルベルク UR-103

Urwerk

 今世紀に入って、独立系時計メーカーが急速に台頭してきていることは、他でも言われていることだと思う。私が2005年に初めて時計を取材し始めたとき、既にこの業界は、大手グループと、小規模で職人的な独立したプレーヤーとの2つにはっきりと分かれていたように感じる。後者の中でも、最も魅力的な作り手の1つはウルベルクで、私がこの業界に入ったときには、型破りなケースフォルムとディスプレイによって、既にその存在を示していた。同社は他の多くの企業がそうであったように伝統に縛られず、私はこのアプローチが本当に新鮮で魅力的だと感じたものだった。

Urwerk

 私にとってUR-103は、前面の時間表示用サテライトに現れているように、21世紀初頭の独立した時計製造の象徴であり、時計の取材を始めたきっかけとなったエキサイティングな時期を思い出させてくれる。振り返ってみると、その時期は時計業界にとってかなり重要な時期だったような気がする。

ロット230, 予想落札価格: 1万6500-2万7500ドル(約171万〜285万円)

コール・ペニントン :ロレックス GMTマスターII

Rolex

 子供の頃、航空宇宙誌が毎月家に届き、私は飛行の奇跡についての大胆な物語に夢中になり、宿題をさぼってそれを何度も何度も読み返したものだ。私が、時計広告で初めて目を留めたのは、時計によってではなく、その広告にチャック・イェーガーが登場していたからだった。広告の中で、彼はGMTマスターIIを身に着けていて、そのイメージは私の中に永遠に刷り込まれた。キャッチコピーには、「歴史はいつも静かに描かれているわけではない。時には飛行機のような大音響を必要とすることもある」とあった。 さて、GMTマスターIIが“日常的にパイロットが着けている時計”から、ロレックスが “コスモポリタン・ウォッチ”と呼んでいるものへと変化したことは知っているが、私にとってイェーガーが着けていた初代GMTマスターIIを見た記憶が、常にこの時計を定義しているのだ。ちなみに、彼は現在ウェストバージニア州に住んでいる。コスモポリタンではないようだ。

ロット202, 予想落札価格: 8800-1万3200ドル(約92万〜137万円)

スティーブン・プルビレント:ブルガリ オクト・フィニッシモ「安藤忠雄」エディション

Bulgari

 リリースされてから1年も経っていないのに、これが話題になっているというのは面白いことです。実際、僕はそれが発売された日のことをとてもよく憶えています。僕は東京にいて、HODINKEE Japanのチームと一緒に、日本版HODINKEEのサイトの準備をしていました。ウェブプロデューサー兼編集者のマサが、ランチを食べながら、ブルガリが安藤忠雄とコラボしていると言い、その時計を見てみないかと誘ってきたのです。僕は思わずラーメンを詰まらせそうになりました。この時計をすぐに見なければならないと思ったからです。

Bulgari

 すぐに連絡を入れ、HODINKEE Japan本社で一緒にその写真を撮りました。これが僕らにとって初めての共同作業です。この時計は、それ自体も大好きですが、渋谷の素晴らしい仲間たちと一緒に仕事をしたこと、そして、HODINKEE Japanを誇りに思っていることを常に思い出させてくれます。

ロット281、予想落札価格:6100~1万3300ドル(約64万〜138万円)

 2000-2020年:レトロスペクティブ オークションは、11月8日にジュネーブのホテル ラ レゼルヴで開催される。詳細はフィリップスのウェブサイトを。