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我々が知っていること
セイコーの新しいダイバーズウォッチをお求めでないなら、ほかの記事を読んで欲しい。セイコーは、僕たちのなかでもダイバーズウォッチマニアに向けた特別なモデルで、新年をスタートさせた。プロスペックスの上位機種であるSBDX053(北米ではSLA065)は、ヴィンテージスタイルといくつかの特別な要素、そしてセイコーによる最高級の機械式ダイバーズウォッチに搭載される高性能ムーブメントを、魅力的に融合している。なお、フルネームは1965 メカニカルダイバーズ 現代デザイン Save the Ocean 限定モデルだが、ここから先はSBDX053とだけ呼んでも大目に見てくれるとうれしい。名前はともかく、“SBDX”の部分が、この最新のセイコーが特別なものであることを示すヒントになっている。
さっそくスペックを見ていこう。SBDX053は、幅41.3mm、厚さ13.1mm(セイコーはラグからラグまでの長さを公開していない)のスティール製ダイバーズウォッチだ。防水性能は200mで、ドリルドラグ、無反射ダブルドーム型サファイアクリスタル風防、スティールケースへの“スーパーハード”コーティング、そしてねじ込み式リューズを装備している。
僕に近い感覚の人であれば、スキンダイバー風のケースとSBDXシリーズのリファレンスを見て、新しいSBDX053はセイコーがバーゼルワールド2017で発表したSBDX019(北米ではSLA017)のような特別なバージョンだと考えたはずだ。しかしSBDX019は39.9mm×14.1mmのサイズで、セイコーのオリジナルダイバーズウォッチ、62MASのプロポーションを忠実に再現しようとしたものであった。
SBDX053については、SBDC101(北米ではSPB143、通称20MAS)などSBDCモデルに代表されるスキンダイバー風ケースに近いプロポーションをとっている。マーカーと針同様にベゼルは少し幅広になり、ISO規格に対応するために日付の横に小さなマーカーをオン、ラグのエッジにはザラツ研磨による面取りが施されているのがわかる。また、スペック表を持っているなら見て欲しいが、SBDX053はSBDX019から単純に大きくなったわけではない。ケース径は20MASモデルより0.8mm大きくなると同時に、厚さは13.1mm(SBDC101は13.7mm)とわずかながら薄くなっている。
そのケースのなかには、特筆すべきふたつの要素が潜んでいる。ひとつはメタリックブルーの文字盤で、太陽や星の位置から位置を割り出す航海用具であるアストロラーベにインスパイアされたデザインが刻まれていること。これは、ギリシャのフルニ島で水中考古学を行うチャリティプロジェクトから直接インスピレーションを得たものだという。セイコーはその慈善団体や研究機関の名前を特に挙げていないが、そのプロジェクトは4世紀にまでさかのぼる地中海の航海術を解明するための活動となっている。
そしてふたつめは、ムーブメントだ。SBDXシリーズにはハイスペックなムーブメントが搭載されることが多く、今作でも、セイコーがダイバーズウォッチに採用しているムーブメントのなかでも最高峰とされる8L35を搭載。グランドセイコーのCal.9S55をベースとするCal.8L35は、2万8800振動/時で駆動し、約50時間のパワーリザーブを備えている。
SBDX053は世界1300本(うち日本では200本)の限定生産で、価格は38万5000円(税込)だ。これは、オリジナルのSBDX019の定価38万5000円(税込)と同等で、SBDC101の約14万3000円(税込)より少し高い価格設定ということになる。
我々の考え
僕にとっては、何度見返してみても、SBDX053はSBDX019で確立されたフォーマットを継承しているというより、SBDC101の兄弟機という印象が強い。SBDC101(およびその多くの兄弟モデル)はセイコーに大きな成功をもたらしたが、SBDX053はほぼ同様の外観を持ちながらマニアにアピールするために手が加えられており、より優れた性能を実現している。
また、41.3mm径が悪いというわけではないが、一般的なレベルからすれば決して大きすぎるということもないし、僕の感覚では横幅が5mm小さくなるより、むしろ5mm薄くなった時計の方がうれしい(両方実現することが無理なら、だが)。メタリックブルーのベゼルインサート(ベゼルエッジはザラツ研磨)もそうだが、文字盤の見栄えは素晴らしいと思う。しかし結局のところ、20MASモデルも同じくらい優れたモデルであることを考えると、この限定モデルは誰のために作られたものなのだろう?
僕の目には、20MASが理想に近いながらも、十分ではないと感じていたセイコーファンのためのモデルとして映った。彼らはヴィンテージスタイルを望んではいるが、可能な限り特別なフォーマットを踏襲していることを前提としており、高精度は期待できないであろう4シリーズや6シリーズのムーブメントを手にしたくないと考えている(経験上、僕のSBDC101はこの点において問題はなかった)。SBDX053は所有欲を満たしてくれる限定モデルであることに加えて、(非常にセイコーらしい)個性的な文字盤を持ち、高性能かつ定評のあるムーブメントを搭載している。SBDC101やそれに近いモデルで提案されている60年代風のデザインを好みつつ、多額の出費もいとわない……、と思っているコレクターには、より多くを費やしてより多くを得るというシナリオが用意されているのだ。
SBDX019が発売されたとき、いつかこの時計を手にすることになると確信していた。しかし2020年、SBDC101がそんな思いを払拭してしまった。SKX007やSBDY015(北米ではSRP777)では決して実現できなかった独特の美しさと手首の上での存在感を、手頃な価格で提供してくれたのだ。そして2023年、SBDX053はセイコーのダイバーズウォッチのなかでもニッチな領域に位置する最新鋭のトップスペックモデルとして、そのコンセプトをさらにブラッシュアップさせた。僕はSBDX053のリリースが、プロスペックスにとって素晴らしい1年の始まりとなることを祈っている。ご期待いただきたい。
基本情報
ブランド: セイコー プロスペックス(Seiko Prospex)
モデル: SBDX053 Save The Ocean 限定モデル
品番: SBDX053(北米ではSLA065)
直径: 41.3mm
厚さ: 13.1mm
ケース素材: ステンレススティール(ダイヤシールド)
文字盤色: ブルー
インデックス: アプライド
夜光: あり。針とマーカーにルミブライト
防水性能: 200m空気潜水用防水
ストラップ/ブレスレット: ブルーシリコンダイブストラップ
ムーブメント情報
キャリバー: 8L35
機能: 時、分、秒、日付表示
パワーリザーブ: 約50時間
巻き上げ方式: 自動巻き
振動数: 2万8800振動/時
石数: 26
価格 & 発売情報
価格: 38万5000円(税込)
発売: 2023年2月10日(セイコーブティックと世界の一部の小売店にて販売予定)
限定情報: 世界限定1300本(うち日本200本)
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