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Hands-On セイコー プロスペックス SBDY057 “モンスター” PADI スペシャルエディションを実機レビュー

“モンスター”コラボレーション。

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この夏、セイコーは、Professional Association of Diving Instructors(PADI)と共同で、ダイバーズウォッチ SBDY057 “モンスター” PADI スペシャルエディションを発売した。長年にわたり、セイコーおよびPADIのロゴを配した“ダブルネーム”のセイコーダイバーズは数え切れないほどあったが、よりふさわしい“モンスター”が、加わるのは初めてのことである。 

 まず第一に、セイコーでは時計にペットネームを付けない。付けるのはセイコーのコレクターたちだ。長年にわたり、ファンは“ツナ缶”、“サムライ”、“スモー”、“タートル”、そしてもちろん、“モンスター”といったニックネームを生み出してきたが、実際のところ、セイコー(これについてはグランドセイコーも同様)は、時計をリファレンスナンバーのみで呼んでいる。こうしたニックネームは、時計を見た瞬間にそれが脳裏に浮かぶまでに定着している。セイコー モンスターの場合も同様で、このモデルのユニークなケース形状と歯のような溝をもつベゼルのエッジにちなんで、コレクターたちが考案した名である。

 長年にわたって、セイコー モンスターは、カルト的人気を獲得してきた。セイコーコレクション全体の中での立ち位置は、兄だけが知るインディーロックバンドのようなものだ。2000年にオリジナルのモンスター SKX779がリリースされ、世界は新世紀におけるセイコーの、他とは対極をなすようなデザイン的傾向を初めて目にすることになった。分厚いベゼル、アグレッシブなスタイルのマーカー、デイ/デイトのコンプリケーションなどが、この時計の特徴である(わずかな期間、デイト表示のみの機能を採用していたこともあったが)。オリジナルのモンスターのデザインは、プロフェッショナル向けの計時機器でありながら、遊び心をもつセイコーの能力を際立たせた。リスクはあったが、まさにそれを理由に、セイコーのファンはこの時計を歓迎したのだ。 

 これまでに、モンスターは4世代を経て、マーカー、デイトウィンドウ、ケース、ブレスレットなど、あちらこちらでデザインを微調整してきた。2019年に新しいモンスターSRPD27がリリースされ、それはモンスターラインの変化を表すものにも思えた。黒いベゼルとわずかなフェイクパティーナ仕上げのマーカーをもつ、より保守的で、より成熟した時計だった。ブルー(SRPD25)とブラック両方のダイヤルバリエーションでリリースされ、必ずしもファンが慣れ親しんだモンスターではなく、デイリーウォッチとしての汎用性をいくらか高めたものだった。

 新しいセイコー モンスター PADI スペシャルエディションダイバーズは、基本的には現行モデルの新しいカラーバリエーションだが、PADIとのコラボによるテーマカラーである赤と青が特徴だ。さらに、他の同様のセイコー PADI スペシャルエディションで通常見られる2色のペプシベゼルとは異なり、このスペシャルエディションはブルーのスティールベゼルを採用している。全体的に、これはプロダイバーズウォッチへのユニークな価値提案であり、対応する通常モデルのモンスター SRPD27/29とは本質的に異なるセンスが加えられている。

 審美的に、この時計はその色の使用にもかかわらず驚くほど落ち着いている。ベゼルの青は、ある種の暗く冷たいアクアカラーのようなもので、光の少ない場所では控えめだが、直射日光が当たるとサンバースト効果を発揮する。また、放射状のブラッシングパターン仕上げが、ベゼルの控えめな効果を強めている。マーカーと数字は全てベゼルに埋め込まれ、白くペイントされているため、間近で見ると美しい奥行きと立体感がある。12時位置の夜光マークは、ダイヤルの分針や秒針と調和した赤い三角形で囲まれている。数字の書体は印象的で、モダンとレトロ両方の雰囲気を醸し出す。詰まるところ、ベゼルのスタイルは、私が“アグレシッブなまでに保守的”と呼ぶ、時計全体のデザインコードと調和している。だが、クリック感はどうか? ベゼルの動作は、私としてはもう少し硬い方が好みだが、非常に満足できるものだ。

 ダイヤルはマットな質感だが、直射日光の下ではサンバーストのような輝きを放つ。ダイヤル内周のチャプターリングは多くのセイコーダイバーズ同様、ダイヤル面と同じ角度で設置され、マーカーはダイヤル上で平らになるようチャプターリングに埋め込まれている。マーカー自体は白だが、セイコー独自の発光化合物であるルミブライトがたっぷりと塗布され、ごくわずかに青みを帯びている。差し支えなければ、この時計を“トリプルスタンプ”と呼んでもいいだろう。セイコーのロゴの下に、プロスペックスのマークもあるからだ。“モンスター”は第2世代の途中でプロスペックスラインの一部になった。通常の製品モデルでは、プロスペックスのロゴはオートマチックという単語の上に配置されるが、この時計ではPADIのロゴのために、移動されている。 

 ダイヤルの視認性は非常に高い。モンスターはこうあるべきというように、全体的なダイヤルレイアウトはアグレッシブだ。太い長方形のアワーマーカーから傾斜したチャプターリングの長くて細いミニッツマーカーまで、すべてがシャープで精密である。幅のある時針は、極めて広い。赤くペイントされた分針と秒針も同様にダイナミックで、その目的を十分に果たしている。 

 分針と秒針について言えば、12時位置の夜光マークへ、そしてベゼル全体に対して大きな円を描いて元に戻る。これはプロのダイビング組織の名を冠した、プロフェッショナルグレードのダイバーズウォッチだ。200m防水で、ISO規格に準拠している。これらは全て、この時計が水中に、深い海にもち込まれるよう設計されているということであり、まさにそのためにデザインされた特徴を備えている。ダイバーズウォッチで本質的に重要なのは、ダイビングタイムベゼル、分針、秒針の3つだが、これらの重要なパーツすべてに赤をあしらい、際立たせている。赤い分針、秒針、そして12時位置の夜光マークは、ダイビングの際に必要な、容易な計時機能を実現している。一般的な観点から言えば、赤のポップさにより、時計の全体的な見た目によりクールな印象を与えている。 

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 全体的なケースデザインは、モダンで工業的、やや穏健な中道左派といったところだ。正面から見ると、1時から3時の間に大きく欠けた部分が2カ所あり、8時から11時の間も同様だ。これは多くの点でモンスターという名の理由であり、歯のモチーフのデザイン的な由来でもある。これまでのモデルでは、サテン仕上げのSSベゼルを採用していたため、ケースの特徴を隠していたが、今回のブルーのベゼルだとかなり強調される。そして私は、これが好きだ。それによってこの時計は、より目的を重視した設計、道具としての外観を与えている。これはスタイルよりも実質にかかわる部分だが、この時計の場合、見た目にも非常にスタイリッシュなままである。また、“欠けた部分”によってベゼル操作をはるかに容易にしており、このことは、プロのダイビング協会が自らの名を付した時計としては、ぜひ欲しい機能だろう。さらに付け加えるなら、ケースにはドリルで開けたラグ穴があるが、これは多くの人から歓迎されるオプションだ。 

 次に、デイトウィンドウの拡大レンズについて話そう。これは多くのセイコーファンはもちろんのこと、一般の拡大レンズ批判論者にとっても、大きなショックを与えていることは間違いない。理論的には、最も実用的な機能こそ最善であり、この場合、拡大レンズを使えば日付が見やすくなる。では、何が問題なのか? それは2つある。まず、拡大表示機能がダイヤルの対称性と全体のデザインを損なっていると感じる人が多くいるという点。第二に、デイト表示の拡大と、デイ/デイト表示の拡大の間には大きな違いがある。私はデイトウィンドウの拡大には何の問題もないと考えいるが、デイ/デイトについては、考えが定まっていない。前述のとおり、機能面でいえば、デイ/デイトウィンドウの拡大レンズのおかげで、時計はより一層読みやすくなる。しかし、ハードレックスクリスタル風防の表面にこれほど大きな場所を占める長方形の拡大レンズは、少しばかりぎこちなく感じられる。これはモンスターに限った問題ではない。実のところ、セイコーの新しいモデルのいくつかには、デイ/デイトの拡大レンズが採用されているからだ。 

 様々なセイコーのブレスレットを体験してきたが、このブレスレットは本当に好みだ。おそらく多くの人が、ジュビリー、オイスター、あるいは“プレジデント”スタイルといった某ブランドの(またはサードパーティメーカー製の)多様なブレスレットを目にしたことがあるだろう。モンスターの場合、ケースのアシンメトリーな外観や感覚にマッチする、独自の風変わりなニュアンスを備えた、独立したブレスレットスタイルが採用されている。ブレスレットはラグから突き出ており、丸みを帯びたポリッシュ仕上げのセンターリンクを備えている。また、セイコーの刻印が施されたクラスプに向かって、わずかなテーパーがかかっている。ラグ幅は20mmだが、ブレスレットのリンク幅はエンドリンクの後に広がり、ケース幅との調和を高めている。セイコーのクラスプを知っているなら、このクラスプのことも知っているはずだ。間違いなく目的を果たすものだが、特にそれ以上言及すべき点はない。

 サイズは直径42.4mmもあり、総じて大きいのだが、ほとんどのセイコー ダイバーズと同様、これでその全てが分かるわけではない。私自身は手首に装着して不快感を感じたことはないが、リンク構造により、腕を少し挟み込んでしまうことがあるという不満を聞いたことがある。私が言えるのは、自分自身はそういう経験はしなかったということだけだ。私はSKX007を所有しているが、全体的に言って、この時計のフィット感はそれと非常に似ていると思っている。

 さて、以前、私がとある“大きな”赤と青のダイバーズウォッチの実機レビューをした際に、「大きな時計の場合、実際には手首に着けると小さく感じる」という古い格言に同意するミスを犯したが、それに反応したある人が、もしかすると、私は身長190cm以上、体重115kgほどで、サイズについての私の意見には意味がないのではないかと言っていた。細かな数字は言わないまでも、私はごく平均的なサイズ、体格、そして手首の持ち主である。あえて、もう1度言いたいのだが、42mm以上の時計の場合、手首に巻くと予想よりずっと小さく感じるものだ。ブレスレットのエンドリンクの出っ張っていることを考慮すると、NATOやラバーストラップを付けた場合、さらに小さく感じるだろうと想像している。とはいえ、次に進もう。 

 裏蓋にはセイコーの波のモチーフと、PADIモデル専用のスペシャルエディションの文字が刻印されている。この時計は特別モデルであって、限定モデルではないことに注意してほしい。時計の生産数は限定されないものの、おそらく実際の総生産数は少なくなるということだ。 

 この時計は、暗い場所で特に際立つ。もちろん、セイコーの明るい夜光には以前から定評があるのだが、それにしても、この時計には本当に不意を突かれた。アワーマーカーと秒針の矢印はみな青色に明るく光るのだが、12時位置の夜光マーカーと分針は緑色に発光するのだ。これは、確かにダイビングタイムの計測を助けるための工夫なのだが、時計を輝かせるもう1つの小さなディテールでもある。―もちろん、意図的なダジャレだ。 

 私にとってこの時計は本当に、ファンキーなデイリーユースの時計のように感じられる。2色のベゼルを排除したことで、この感覚はあらゆる面で強化されたと思う。モンスターはセイコーのオリジナルデザインで、その曲線、傾斜、エッジ、そして歯のモチーフはセイコーの重要な要素として貫かれている。この時計は、PADIロゴの有無にかかわらず独自の魅力を備えているが、過去の他のセイコー PADIモデルとは異なる、独自のカテゴリーに位置している。 

 このセイコー BDY057 “モンスター” PADI スペシャルエディションは、ただただ楽しく、個性的なデザインの現代におけるツールウォッチだ。このPADI スペシャルエディションは、あなたが過去の“モンスター”信者であろうとなかろうと、全ての人にちょっとした楽しみを与えてくれる。

セイコー SBDY057 PADI スペシャルエディションは、200m防水のダイバーズウォッチ。SBDY057は、直径42.4mm、厚さ13mm、ラグ幅は48mm。リューズと裏蓋はねじ込み式。フォールディングクラスプ付きのSSブレスレット。セイコーCal.4R36を搭載、振動数は2万1600振動/時、24石、パワーリザーブは41時間。手巻き機能付きの自動巻き。ブラックダイヤル、アプライドマーカー、針とインデックスにはルミブライト。価格:5万8000円(税抜)。詳しくはセイコーウォッチ公式サイトまで。 

写真:カシア・ミルトン