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A Week On The Wrist チューダー ヘリテージ ブラックベイ Ref.7922Rを1週間レビュー

懐かしのヘリテージ ブラックベイ Ref.7922Rは、チューダーの最も人気なモデルのひとつ。しかし実際につけているとどうなのか。その答えはここにある。


本稿は2015年6月に執筆された本国版の翻訳です。

チューダーのブラックベイを1週間着用したことは、非常に興味深い経験だった。実際、私がレビューのために手にした時計のなかで、リューズチューブが時計全体の魅力を理解する鍵となったのはこのモデルが初めてだ。信じがたいかもしれないが、このリューズチューブに魅力や説得力、浪漫さえ覚えた。それには少しいわくがある。

 2012年に初めてこの時計を手に取り、皆様にご報告したように、この時計は1954年にチューダー初のダイバーズウォッチ、サブマリーナーが発表されたときから始まった。これはより記憶に残るロレックスのサブとブランパンのフィフティ ファゾムスが発表された直後だった。チューダーサブがダイバーズウォッチのパイオニアとしてほかのふたつと同列に語られることが少ないのは、その誕生時期が早かったことを考えると不公平に思えるかもしれないが、人生とはそもそも不公平なものである。ともあれ、この時計は今日のブラックベイの多くの要素にインスピレーションを与えた。夜光プロットの構成、ケースとリューズの全体的な外観と感触はすべてヴィンテージのチューダー サブマリーナーのライナップから来ており、サブマリーナー自体の外観の元をたどると、ロレックス サブマリーナーに由来している。

ロレックスのRef.5510(1957年製)とチューダー ブラックベイ(2012年製)

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 憂慮すべき興味深い点は、チューダー初のサブマリーナー Ref.7923が、ロレックス サブマリーナーのわずか1年後に一般大衆のもとへ届けられたということだ。というのも、Ref.7923は1954年に登場し、手巻きムーブメントを搭載していた。文字盤に“Rotor Self-Winding(自動巻きローター)”と記された初の自動巻きチューダーサブは1956年に登場し、大きなリューズやリューズガードの欠如など、ほとんどの点でその仕様はブラックベイに引き継がれている。

 ブラックベイが発売された当初、延々と、嫌になるほど(しかし正しく)指摘されていたように、実はこのモデルはひとつのヴィンテージモデルをベースにしているわけではない。チューダーサブが親のひとりだとすれば、もうひとりは時針と秒針の独特な形状から“スノーフレーク”と名付けられた、1968年のチューダーサブマリーナーだ。ブラックベイが特定のヴィンテージモデルを正確にコピーしていないという事実は、当初ヴィンテージ愛好家たちから非難を浴びたが、現時点ではこのモデルが直接的なコピーを意図したものではなく、いわばその精神を現代的に換骨奪胎したものであることは明らかだ。

 歴史を目の当たりにしているという感覚は、間違いなくブラックベイを身につける楽しみの一部である。ヴィンテージウォッチのファンなら、この時計を腕にすることは非常に楽しいことだろう。この時計はどのヴィンテージモデルも直接模倣していないが、私もそうだったようにそれでもまったく問題がないことに気づくだろう。単独で見ても十分に見栄えがよく、どのヴィンテージモデルと比べてもまったく見劣りしない。もちろん、直径は41mmと先祖より少し大きく(みんなそうだろう)、幅の割に厚みがあるように感じるが、それは決して悪い意味ではない。深海潜水調査用の潜水艇のような、ややずんぐりとした、しかし目的意識に満ちた魅力があり、そのがっしりとしたラインは潜水用具として意図された目的に由来している。深みのあるチョコレート色で覆われたダイヤルの文字、夜光プロットのサイズと配置、そして針のプロポーションはすべて、互いに見事に調和している。

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 この時計には、優れた品質へのこだわりもしっかりと感じられる。非常に堅牢なつくりのツールウォッチで、とてもアクティブな生活にフィットし、年を重ねるごとにさらに魅力が増す時計に思われる。大きなリューズのおかげで時刻合わせも楽しいし(その気になれば手巻きも同様に楽しめる)、ベゼルの回転も気持ちいい(ちなみにクリック音は、ダイバーズウォッチでも聞いたことがないほど大きい。濁った海水のなかでトラブルに見舞われ、仲間に合図を送る必要があるときの潜水艦の合図システム、という意図でチューダーは搭載したのだろうか。ジェイソン・ヒートンなら知っているだろう)

 この時計は決して派手で大げさではないが、かといって地味なわけでもない。ベゼルと大きなリューズのしっかりとした感触、そして異常に明るい夜光は、この時計の各機能に明確な存在感を与えている。また、少し前に取り上げたIWC ポルトギーゼのように、控えめながらよく練られたディテールが随所に施され、全体的に高品質な印象を与えている。たとえばローズゴールドでしっかりと囲われた夜光プロットは、派手さを感じさせることなく、静かで上品なリッチ感があり、それによって競合他社よりも明らかに格上の存在感を放っている。ストラップも同様に魅力的だ。私はブラックベイをファブリックストラップで着用したのだが、手首にぴったりフィットして非常に快適だった。オーダーメイドのタフさを感じさせるその感触は驚くほど魅力的だった。

 ところであのリューズチューブについてだが、赤いPVD加工が施されており、リューズを完全にねじ込んでもその色が見える。大したことではないと思うかもしれないが、誰かがこの時計のデザインについて十分に考え、そのちょっとした色を加えることで、デザイン全体がさりげなく、しかし紛れもない形でまとまることに気づいたのは明らかだ。

 一見、些細なことのように見えても、それははるかに高価な多くの時計には見られない、優れたデザインを創り出そうとする思想と意欲の証拠である。それによって、まるでサプライチェーンの向こう側にあなたと同じことを気にかける人間がいるかのように、この腕に巻いた時計と親密な関係が持てるようになるのだ。

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チューダー ブラックベイ
ケース: 直径41mm、逆回転防止スティール製ベゼル、200m防水
ムーブメント: チューダーが改良したCal.2824
ストラップ/ブレスレット: レザーストラップとスティール製ブレスレットとファブリックストラップで展開
価格: ブレスレットは3425ドル(当時の相場で約42万円)、レザーストラップは3100ドル(当時の相場で約38万円)
※生産終了モデル