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Introducing ヴァルカン ノーティカル レガシー マッセナLAB

いくつかの新しい要素が、クラシックなクリケット ノーティカルに新たな息吹を与えている。

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我々が知っていること

マッセナLABはヴァルカンとの最新プロジェクトとなるコラボレーションを発表した。ヴァルカンのクリケット ノーティカルにマッセナらしいアプローチを加えた、少数限定モデルである。オリジナルのクリケット ノーティカルはまさに1960年代初頭の時代を反映した製品であり、初代モデルは1961年に登場している。この時計に最も深く結びついている人物といえば、物理学者であり数学者、そして深海ダイバーでもあるハンネス・ケラー(Hannes Keller)だ。彼はクリケット ノーティカルを装着しながら、222mという記録的なダイブを成し遂げた。さらにその記録は伝説的な海洋学者であるジャック・クストー(Jacques Cousteau)によって目撃され、認定されている。言うまでもなく、これは極めて特別な出来事だ。

Cricket at a slant

 それから60年以上が経過した現在、ギヨーム・ライデ(Guillaume Laidet)氏の創造的なリーダーシップのもと、ヴァルカンの現代的な復活が進んでいる。そのなかで、“ノーティカル ヘリテージ”ラインとしてクリケット ノーティカルが復刻された。このモデルはアラーム機能を備えた初期の防水ダイバーズウォッチのひとつを忠実に再現したものである。そして今回マッセナLABがその復活劇に新たに加わり、クリケット ノーティカルが実際には存在しなかった1950年代にデザインされていたらどうなっていたかを想像し、それを具現化した。

 ではこのモデルにおける新たな要素とは何か? まずは驚くべきことでもないが、マッセナはクリケットの文字盤に“トロピカル”加工を行った。レギュラーコレクションにはベージュのパティーナを施したクリケット ノーティカルが存在するが、このモデルではさらに1歩進んだエイジング加工をとっている。文字盤はチョコレートブラウンで、直射日光下ではさまざまな色合いを見せる。また文字盤は仕上げにより、メタリックな光沢を湛えている。もちろんこの文字盤は減圧計としても機能しており、コンプレッサーウォッチに見られるインナーベゼルのように、文字盤上部の“プレート”が回転する。文字盤上部のプレート、その一部にある切り抜き部分が、ダイバーが水面に戻る際の正しい減圧時間を示すのだ。この計算は、事前に計画されたダイビングの深度と時間に基づいて行われる。

dial up close

 この時計においてとりわけ斬新な特徴のひとつが針のデザインである。従来のノーティカル ヘリテージに採用されていたドーフィン型の針に代わり、ノーティカル レガシーではバトン型の時針、大きな矢印型の分針、さらに目を引く矢印型のアラーム針を採用している。一方で秒針には、引き続きロリポップ型のデザインが用いられている。

 ケースは現在の生産モデルと、そしてオリジナルと同様に直径42mm、厚さ17.5mmとなっている。そう、厚さは17.5mmだ。かなり厚みのあるケースである。一般的な時計では厚みが増す原因としてムーブメントがしばしば挙げられるが、クリケット ノーティカルの場合、そうではないようだ。通常のクリケットの厚さは、もっと控えめな12.8mmである。しかし300mの防水性能を備えたダイビングアラームとして、水中で聞こえることが前提の機能を実装していることから、この時計には“トリプルケースバック”と呼ばれる密閉構造が採用されている。このケースバックは共鳴室として機能し、ダイバーに上昇を開始する理論上のタイミングを知らせる設計となっている。どうやらこの点についてはどうあがいても物理法則に逆らえないようだ。

 ムーブメントは手巻き式のクリケット アラームCal.V10を搭載しており、パワーリザーブは52時間である。このキャリバーにはふたつのバレル(香箱)が搭載されており、ひとつは時計の動力、もうひとつはアラーム機能の動力を供給している。3時位置のリューズを回すことで、回転方向に応じていずれかのバレルを巻き上げる仕組みとなっている。

wristshot of nautical
look at lume
strap closeup

 このコラボレーションにおける最後の仕上げとでもいうべきものが、新たにデザインされたブラックラバーストラップだ。これは完全にマッセナLABの功績であり、同チームがこのストラップをデザインしたとされている。ストラップの両側には控えめとは言えないサイズでヴァルカンのロゴモチーフが施されており、ヴァルカンのサインが入ったバックルが装着されている。

 ヴァルカン ノーティカル レガシー マッセナLABの価格は4950ドル(日本円で約75万5000円)で、限定25本のみの販売となる。このモデルはMassenaLab.comの公式サイトでのみ購入可能だ。


我々の考え

現行のヴァルカン クリケットには以前から興味を持っていたが、一部のモデルでほぼ5500ドル(日本円で約83万7000円)近い価格がつけられている。正直なところ、それが同モデルへの熱意を削ぐ要因だった。ただし誤解しないで欲しい。この価格設定が少量生産のニッチなアラームムーブメントを持つ時計として、研究開発や生産コストを回収するためには必要であることは十分理解している。しかしその価格ゆえに私の購入リストの上位には入らなかった。それでも、クリケット ノーティカルはそのデザインでいつも私を魅了してきた。その理由は、減圧スケール付きの可動式ダイヤルプレートというコンプリケーションが非常に魅力的だったからだ。言ってしまえば、このモデルには“あらゆるもの”が詰め込まれている。

lifestyle of nautical

 このコラボレーションモデルについて言えば、デザインの選択は非常にうまくいっていると思う。基本的に現代の時計におけるトロピカルダイヤルにはあまり興味を持っていないのだが、このモデルは同ディテールの美学を巧みに表現し、単なる“チョコレートダイヤル”に見せている点が楽しい。針のデザインも興味深い選択だ。ヴィンテージモデルでバトン型の針を見かけることはあるが、このような大きな矢印型の分針を備えたものは見たことがない。すなわちこの時計は、“想像上のヴィンテージ”と言えるかもしれない。マッセナLABとアルビシュホルンによるマキシグラフでも見られたようなものだ。それでも針は大きく、たっぷりと夜光が塗布されていて、とても視認性が高い。その結果ドレッシーさやエレガンスが多少犠牲になっているのかもしれないが、それは意図的な判断だろう。ただ個人的に惜しいと思うのは、針にファセット(面取り)が施されていれば、クラシックなドーフィン型の針と同じように光を反射してくれたのではないかという点だ。

 クリケットそのものの価格に対する懸念は残るものの、今回のコラボレーションにおいては両者に一定の評価を与えざるを得ない。小売価格は標準モデルとほぼ同じ範囲に設定されている。25本という限られた本数のために新しい針を開発し、ラバーストラップ用の金型を作成するコストを考えれば、このモデルはもう少し高価になるだろうと予想していた。価格に対して依然高いと感じているかって? そのとおりだ。しかし、このブランドではそれが“標準的”なのだ。またこのモデルが極めて狭い範囲の特定のコレクター層に向けたものであることを、彼らも十分理解しているのだろう。それでもこの新しいデザインが存在していることをうれしく思うし、これがどのような評価を得るのか楽しみにしている。


基本情報

ブランド: ヴァルカン(Vulcain)
モデル名: ノーティカル レガシー マッセナLAB
直径: 42mm
厚さ: 17.5mm
ケース素材: SS
文字盤色: ブラウン
夜光: あり
防水性能: 300m
ストラップ/ブレスレット: マッセナLABがデザインしたラバーストラップ

just the case
caseback
crown side

ムーブメント情報

キャリバー: 自社製キャリバーV10
機能: 時・分・秒、アラーム、可動式減圧スケールダイヤル
直径: 27.07mm
パワーリザーブ: 52時間
巻き上げ方式: 手巻き
振動数: 1万8000振動/時
石数: 25


価格 & 発売時期

価格: 4950ドル(日本円で約75万5000円)
発売時期: MassenaLab.comにて発売中
限定: 25本 

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