Auctions フィリップス・ジュネーブ（11月開催）にジョージ・ダニエルズによる驚異のYG製腕時計が3本登場！ – HODINKEEによる初公開

90年代ウィークへようこそ。この特集では直近10年間で最も魅力的な（そして最も過小評価されている）時計と、20世紀末を特徴付けたトレンドとイノベーションを再考していく。ダイヤルアップ接続を行い、クリスタルペプシ（無色透明のコーラ）を手に取ってほしい。今週はずっとこのテーマを扱う。

　ジョージ・ダニエルズは寡作であった。彼が生涯に製作した時計は全部で37個、そのほぼすべてが懐中時計だ。今日、それらはこれまでに作られた時計のなかで最も人気があり、渇望されている時計である。2019年にはサザビーズでクロノグラフ懐中時計のスペーストラベラーズ ウォッチIが460万ドル（当時の為替で約5億5300万円）で落札され、最近では昨年12月にフィリップス・ニューヨークでダニエルズがイギリスの弁護士エドワード・ホーンビー（Edward Hornby）のために製作したトゥールビヨン懐中時計が238万9500ドル（約3億2130万円）で落札されている。

　しかし、これらの結果は近い将来、凌駕される可能性が非常に高い。フィリップスは、来たる11月のジュネーブ・ウォッチ・オークションにジョージ・ダニエルズの素晴らしい腕時計を3本（！）出品することになった。さっそく、この3本の腕時計の特徴を紹介しよう。

　ジョージ・ダニエルズは自分用に2本の腕時計を製作したが、そのうちの1本だけが10年以上にわたって彼が個人的に着用する時計となった。1992年に完成したジョージ・ダニエルズ スプリングケース トゥールビヨンは、“スプリング”ケース構造を採用した珍しいダブルダイヤルウォッチで、ケースを開けると時計の裏側にある第2ダイヤルを見ることができるようになっている。1分間で周回するトゥールビヨンとカレンダーを搭載し、技術的にも正真正銘の傑作である。

　この腕時計は、ダニエルズの美学を象徴する手彫りのギヨーシェ模様のシルバーダイヤルに、時、分、スモールセコンドを示すエキセントリックなゴールドのインダイヤル、そして最後にパワーリザーブを示すインダイヤルが配されている。裏面にはカレンダー表示とトゥールビヨン脱進機を見ることができる。

　2分割されたケース内部にはムーブメントが収納されており、ムーブメントは外装部にヒンジで固定されているため、ミドルケースに備えられたプッシャーを解放するとケースが開き、反対側のダイヤルが見えるようになる。そのため、巻上げ用のリューズは12時位置のラグのあいだに控えめに配置されている。

　この時計は、1992年の完成から2005年に友人がダニエルズを説得して売却するまで、彼の個人所有の時計だったと伝えられている。スプリングケース トゥールビヨンがオークションに登場するのは史上初のことだ。フィリップスはシンプルに、そして当然のように落札予想価額を“100万スイスフラン（約1億4183万円）以上”と設定している。

　ジョージ・ダニエルズがデザインし、彼の弟子であるロジャー・スミス氏が手作業で製作したコレクションの一部であるこのアニバーサリーシリーズの腕時計には、YGが35本、WGが4本、プラチナが4本含まれている。これらの腕時計は一般に販売されることはなく、市場に出回ることは非常に希だ。

　このアニバーサリーモデルは、もともとダニエルズによるコーアクシャル脱進機の誕生から35周年を記念して作られたもので、ダニエルズは2010年にスミス氏の協力を仰ぎ、マン島にあるスミスの工房で完全自社製造を実現させた。フィリップスは、オリジナル35本のうちのYGの1本をオークションに出品し、予想落札価額を30万～60万スイスフラン（約4255〜8510万円）に設定している。

　ジョージ・ダニエルズ ミレニアムはアニバーサリーウォッチと同様にダニエルズがデザインし、ロジャー・スミス氏が製作したモデルだが、その10年前の1999年にダニエルズのコーアクシャル脱進機の新バージョンが開発・発表されたことを記念したものだ。ジョージ・ダニエルズ初の連続生産モデルとして注目され、最終的に合計50本が製作された。いずれもオメガのムーブメントを大幅に改良したコーアクシャル脱進機を搭載し、ダニエルズ十八番のギヨシェダイヤルを備えている。

　50本のミレニアムのほとんどはYG製で、フィリップスはジュネーブ・オークションに向けて素晴らしいモデルを発掘したことになる。今回出品されるYGのジョージ・ダニエルズ ミレニアムは、25万～50万スイスフラン（約3545万〜7091万円）の落札予想価額となっている。

　今回紹介された3本の腕時計はすべて、Bacs & Russoと共同で開催されるジュネーブ・ウォッチ・オークションのフィリップス時計部門の一部として出品される。またXVIは、2022年11月5日と6日に開催される予定である。この時計は、2022年8月29日から9月1日まで開催予定の時計フェア、ジュネーブ・ウォッチ・デイズの一環として、ジュネーブのホテル、ボー リヴァージュ（Beau Rivage）で展示される。