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Business News 米国のスマートウォッチ販売が急増

Apple、フィットビット、サムスンが米国の腕時計ブランド売上ベスト5として、ロレックスとパテック フィリップの仲間入りを果たした。

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米国における売上ベスト5の時計ブランドのリストに、ロレックスやパテック フィリップとは不釣り合いな企業が新たにランクインしている。NPDグループの調査によると、この新たにランクインした企業は、エレクトロニクスの巨人であるAppleとサムスン、さらにフィットネストラッカーを製造するフィットビットとなっている。

 これらスマートウォッチメーカー3社は、米国腕時計市場におけるトラディショナルウォッチの牙城であるミドルレンジに上手いこと切り込むことで、腕時計売上リスト上位の座を射止めた。米国のスマートウォッチ販売は活況を呈している。米国内におけるこれら3社の2019年上期の売上高は、前年同期比で24%上昇したと、NPDグループで腕時計と高級品業界のアナリストを務めるレグ・ブラック (Reg Brack) 氏はHODINKEEに語った。NPDは米国内の腕時計小売動向を追跡している。

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Apple Watch シリーズ2 (2016年)

 NPDによると、この飛躍はスマートウォッチの売上高が51%増加し、販売台数においては61%増加した2018年通期実績のさらなる上積みとなっている。またNPDでは、2018年の米国スマートウォッチ市場の規模を約50億ドルと見積もる。1月から6月のデータは、「米国におけるスマートウォッチは昨年に危機を脱し、同国の主流消費者に受け入れられるようになった」という、2月に発表されたスマートウォッチに関するNPDレポートの結論を裏付けている。

 「過去18か月の間でスマートウォッチの販売は大きく勢いを増しました」と、NPDでディレクター / コネクテッド・インテリジェンス業界アナリストを務めるウェストン・ヘンデリック (Weston Henderek) 氏は、2月に行われた同グループのスマートウォッチ総合市場レポート発表のプレスリリースで述べた。
「手元にスマートフォンを置く必要なく、内蔵されたLTE通信機能を介して真の「つながる」ことを実現した機能が、消費者にとっての転換点となったことが証明されました。今や消費者は、通知の受信、メッセージの送信、スマートホーム機器の制御など、この端末で幅広いタスクを完了できることに価値を認めています」とヘンデリック氏は話した。

2018フィットビット ヴァーサは、Apple Watchのフォームファクタを一部模倣。

 NPDによると、従来の腕時計の販売は、米国内における昨年の総売上高のわずか56%に低下した。ブラック氏は、2018年第4四半期には、スマートウォッチが従来の腕時計を上回り、このホリデーシーズンの総売上高の55%を占めたとしている。 

スマートウォッチ販売数量の上昇。(グローバル総出荷数推移、単位:百万)

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“腕時計の新しい時代”

 「スマートウォッチという選択肢が従来型と同様に重要となった、腕時計の新しい時代に突入しました。現在、スマートウォッチは成長の原動力となっています」とブラック氏は話す。

「500ドル以下のカテゴリがスマートウォッチの領域です。スマートウォッチはこの価格帯を本当に席巻しています」と、ブラック氏はHODINKEEに語った。

NPDでは、2018年時点で

18歳から34歳までの米国人

4人に1人がスマートウォッチを所有と推定。

 この優勢を最も明確に表しているのが、昨年の米国内における腕時計販売第1位のブランド、さらにベスト5のうち3つのブランドが、スマートウォッチのブランドであったということである。NPDでは、次のような売上順でブランドをランキングしている:
1) Apple
2)ロレックス
3)フィットビット
4)パテック フィリップ
5)サムスン
(NPDでは、データが専有かつ非公開の情報であり、クライアント専用に用意されたものであるとして、ブランドの売上高の推計値を開示していない)。 

フォッシルもスマートウォッチ市場に参入。写真はグーグルのOSを搭載したジェネレーション5。

 NPDでは、2018年時点で18歳から34歳の米国人4人に1人 (23%) がスマートウォッチを所有していたと推定している。米国全体のスマートウォッチの市場占有率は16%で、2017年の12%から上昇した。この数字は間違いなく上昇するとNPDは話している。「Apple Watch シリーズ4といった新たな健康に焦点を当てた機器が定着し続けることで、古いセグメントへの浸透が大きく促進されることが予測される」と、スマートウォッチ市場レポートでは締めくくられている。

 ウェアラブル市場を追跡する調査グループであるIDCも同じ意見を持っている。「スマートウォッチの所有は、多くのモデルがはるかに進歩を遂げることで、米国内で速いペースで伸び続けます。今日のスマートウォッチは、 わずか2年前に発売された機種を古っぽく見せ、第二世代または第三世代のバージョンが市場に登場するのを待っていた人に訴える魅力を新たに備えているのです」と、IDCのウェアラブルチームで調査ディレクターを務めるラモン・T・ラマス (Ramon T. Llamas) 氏は語った。

世界のスマートウォッチ販売の

約半分をAppleが占め、

スマートウォッチの

圧倒的な王者に。

 IDCでは、世界のスマートウォッチ出荷台数が、昨年の5130万台から今年は9180万台に急増し、さらに2023年までに1億3160万台と飛躍的に伸びると予想している。 「スマートウォッチはもちろん時間を教えてくれますが、さらに健康およびフィットネスへの指向を深めると共に、職場と家庭双方での複数のアプリケーションやシステムと接続されるようになるでしょう」と、ラマス氏は話す。同氏が挙げた一例は、スマートウォッチを使った、親による子供の所在地追跡である。


Apple Watchで大儲け

Big Apple。(メーカーごとのグローバル総出荷数)

 Appleが圧倒的な王者であることは衆目の一致するところである。IDCおよび市場を監視するもうひとつの調査会社であるストラテジー・アナリティクスによると、Appleは世界のスマートウォッチ出荷台数の約半数を占めている。両社とも、2018年にAppleが約2300万台のスマートウォッチを出荷したと推計している。(Appleはスマートウォッチの出荷台数または売上高に関する数字を公表していない。出荷台数は、メーカーから販売店、販売店からユーザーへの販売データを反映している)。

 昨年Appleは、販売に関する数字は示さなかったものの、収益という点において世界一位の腕時計企業となったと宣言したことはよく知られるところだ。腕時計の販売からAppleの収益を推定することは調査業界が得意とするところである。ビジブルアルファという調査会社では、2018年のApple Watchの売上高を計99億ドル(約1兆830億2500万円)であったとしている。これは驚異的な数字であり、もし真実であるとすれば、Appleの腕時計販売がスウォッチグループ全体の売上高(2018年の収益:84億スイスフラン<約9351億円>)よりも 、10億ドル以上高かったことになる。とはいえ、その数字はIDCが提示する手がかりと一致している。IDCでは、2018年第1四半期におけるApple Watchの平均販売価格を426ドル、年間の総出荷台数を2330万台と推定した。この出荷台数分が平均販売価格で販売されたとしたら、収益は計98億ドル(約1兆720億8572万円)となる。

優位にいるApple。(Appleのグローバル総出荷数推移、単位:百万)

 他のアナリストは、Apple Watchの販売に関して、低めの推計をしている。自社の推計値を明らかにしないあるアナリストはオフレコで、Apple Watchの収益はスウォッチグループのそれよりも低いと語った。ただし、ずっと低いというものではない。ストラテジー・アナリティクスによると、フィットビットとサムスンはAppleから大きく離され、昨年の全社のスマートウォッチ出荷台数は、それぞれ550万台と530万台であった。 

 NPDでは、Apple、フィットビット、サムスンが、2018年の米国におけるスマートウォッチ販売台数の88%を占めたと推定している。NPD、IDC、ストラテジー・アナリティクスとも、ガーミンとフォッシルが世界のスマートウォッチメーカー「トップ5」のリストを締めくくっているとしている。 

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続く混乱

 スマートウォッチは、2015年にAppleがスマートウォッチ市場に参入して以来、ファッションウォッチ分野(フォッシルおよびモバードグループが主導)とメインストリーム分野(シチズン、セイコー、ブローバが主導)双方の、いわゆる米国腕時計市場のミドルレンジに混乱をもたらしてきた。その混乱は続いている。 

 2019年上半期、米国における価格1000ドル(約10万円)未満の腕時計すべての売上高は15%減少したと、ブラック氏が語った。価格500ドル(約5万円)未満の腕時計の売上高は16%減少した。「そのカテゴリは悪戦苦闘が続くでしょう」と同氏は話す。(データにはスマートウォッチカテゴリが含まれる)。  

Apple Watchシリーズ4の発表 (2018年)。

 ブラック氏は、500ドル未満の女性用腕時計の売上高が2018年上期から22%下落したと話し、「実際にスマートウォッチがクォーツ式のファッションウォッチ分野を浸食するという事態が起きています。500ドル以下のカテゴリで勝負する従来型の腕時計メーカーは、この価格帯の消費者が従来型の腕時計を考える前に、まずスマートウォッチを検討する傾向があるため、本当の逆風に晒されることになります。500ドル未満でクォーツ式のファッションウォッチは、そのスマートウォッチに食われています」と続けた。

米国におけるウェアラブルビジネスは

非常に強力である。私たちは今からその分野に

果敢に挑戦する。

– フォッシル グループCEO コスタ・カーツォティス (KOSTA KARTSOTIS)、2019年8月

 Appleによるファッションウォッチ市場への影響の事例として、世界的なファッションウォッチ大手サプライヤーであるフォッシルグループが挙げられる。過去4年間で、フォッシルグループの純売上高は、2014年の35億1000万ドル(約3839億8000千万円)から2018年には25億4000万ドル(約2778億6710万円)まで、約10億ドル(約1094億円)の下落となった。過去2年間の純損失額は、計4億8170万ドル(約527億円)となっている。フォッシルの役員は、スマートウォッチが下落の主な理由であることを認めている。(小売業界におけるEコマース革命と、それによるモールや百貨店の来客数および売上の減少がもうひとつの理由となっている)。

スマートウォッチとEコマースの台頭で、過去4年間にわたってフォッシルグループの売上に打撃。

 「私たちは、自分たちのカテゴリにおいて、継続的な混乱に見舞われています」と、8月7日の上期業績発表でフォッシルグループのコスタ・カーツォティスCEOは語った。全社の腕時計販売は、同期間で14%下落し、7億7950万ドル(約853億円)となった。「米国でたいへん苦戦しています」と、カーツォティス氏は従来の腕時計市場についての意見を証券アナリストに伝え、「米国におけるウェアラブルビジネスは非常に強力です。その多くは、ほとんど当社の中核的な顧客である女性です。ですから、私たちは今から、その分野に果敢に挑戦します」と続けた。アメリカ州におけるフォッシルグループの腕時計販売は、1月から6月の期間で20%下落して3億3440万ドル(約376億円)であった。


入門機としてのApple Watch

 スマートウォッチが低価格帯のトラディショナルウォッチ市場における混乱を引き起こしている一方で、NPDでは高級腕時計市場を害する証拠はなにも確認していない。NPDのデータでは、 希望小売価格3000ドル(約30万円)以上の腕時計は、昨年と同様に今年上期にもたいへん堅調であった。

 「スマートウォッチの台頭は、実際にこのカテゴリに新しいユーザーを引き込む手助けになっていると私は思います。当社が行った消費者調査データでは、ごく少数の消費者(対象者の17%のみ)が、現在または将来スマートウォッチを購入することで、腕時計の購入を控えると言っています。それらスマートウォッチ消費者の多くは、 それが手首に巻く初めての時間を教えてくれる機器となっています。そして多くの場合、それらの人々は腕時計の購入へと進みます。ですから、実際に私たちは、スマートウォッチを腕時計購入の最初のきっかけと考えています」と、ブラック氏はHODINKEEに語った。

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関税の問題?

 しかしながら、あることが米国内におけるスマートウォッチの凄まじい勢いを鈍化させる可能性がある。それは米中間の貿易戦争である。中国から米国に輸入されるスマートウォッチには、9月1日から新たに15%の関税が課されることになった。この関税は、Apple、フィットビット、フォッシルといった米国を拠点とするスマートウォッチメーカーに影響を及ぼす。この関税は、韓国とベトナムに工場がある韓国企業のサムスンには問題とならない。消費者製品の大半を台湾で製造するガーミンも然りである。

スマートウォッチが米中貿易戦争の巻き添えに。9月1日より、中国からのスマートウォッチ輸入に新たに15%の関税賦課。

 Apple、フォッシル、フィットビット各社はトランプ政権に対して、 関税率を上げないよう公式に促したものの、無駄に終わった。3社ともビジネスに悪影響が生じると話している。この関税によって原価が上昇し、売上総利益が減少することとなる。製品の値上げを迫られ、それによって需要を押し下げられる可能性がある。結局のところ、この関税によって、収益および営業利益が損なわれると3社は話している。

 フォッシルは、2019年下期にこの関税で500~1000万ドル(約5億4600~10億9300万円)のコストがかかると見積もっている。他社はこのコストの見積りを提示していない。いずれの会社も、この関税の結果として、製品の値上げを行うかどうかを示さなかった。