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Exclusive ブレモン ENG300誕生の秘話

イギリスブランドの新ムーブメントに迫る。

見出しはこれで決まりだ。“ブレモン、ついに自社製の新ムーブメントを発表”

 先日、このイギリス時計メーカーは、新しくオープンした時計製造施設“ザ・ウィング”で大部分の部品を製造し、シリコン製脱進機を搭載したパワーリザーブ65時間の自動巻きムーブメント、ENG300を世に送り出した。それだけでも十分なのだが、それだけではない。

 だからこそ、今まで私が執筆した時計関連の記事のなかで最も試練の多いものになってしまったという泣き言をご容赦いただきたい。その理由は2つある。

 ひとつめは、イギリス人時計ジャーナリストとしてブレモンの新しいムーブメントを取材することは、潜在的に危険なことなのだ。私は15年ほど前からこのブランドの多くの人々、特に創業者のニック(Nick English)とジャイルズ・イングリッシュ(Giles English)を知っている。当時、我々は今よりもずっと若く経験も浅かったのだが、少なくとも仕事上では互いに切磋琢磨してきた。だからこそ、この新ムーブメントの話題に関しては他ブランドの同種のムーブメントの話ほど冷静ではいられないのだ。正直なところ、私はENG300が大ヒットすることに大いに期待を寄せている。

 もしそれがある種の前フリであるなら、何点かの背景も付け加えなければなるまい。私は2週間前、ブレモンのマニュファクチャリング&テクノロジーセンター“ザ・ウィング”に6時間滞在し、ニックやブレモンのMDであるクリス・レイノルズ(Chris Reynolds)、そして同社のシニアエンジニアたちと話をした。そのなかには技術責任者のマイケル・ベラミー(Michael Bellamy)もいた。彼の30年の経歴には54もの時計工房の設立やロレックス、リシュモン、それに永久カレンダーの製造を許されたオーデマ ピゲでの錚々たる経歴が並ぶ。先週、私はブレモンの新しいパートナーと1時間ほどZoom対談したが、それが誰なのか、なぜ彼らが(極めて)重要なのかは、まだ言わないでおこう。それも後ほど紹介する。

 ブレモンの上層部は、ENG300がどのように受け取られるかに関して、やや神経質になっているようだ。彼らは以前にも炎上を喫したことがあり(これについては後述する)、この記事でそれを蒸し返さないように私に懇願してきた。彼らは非常にオープンで、どのようにしてムーブメントを作ったか、ほかのブランドがこれまで私に話してくれたことよりもずっと多くのことを話してくれたが、今回私が見聞きしたことの中にはオフレコのものあった -知的財産権に触れるものもあれば、いざというときのために秘密にしておきたいこともあるようだ。彼らに対する敬意と多少の保身も込めて私はそれを尊重しよう。もちろん、彼らはこの記事を公開前に目を通しておらず、私に自由に書く裁量を与えてくれたものの、彼らがこの記事に目を通せば私に電話がかかってくるのは間違いない。でも大丈夫、心配には及ばない。

 もうひとつは、実際に新ムーブメントの自社製造という歪んだビジネスを中心とした複雑な物語であるということだ。機械式時計の製造は300年前から行われているが、今でも非常に困難な作業を伴う。

 さて、本題のブレモンENG300に入ろう。

実は我々が期待していたストーリーとはずいぶん違う。5年前、いや6年前まで遡ろう。実はブレモンがムーブメントを開発しているという話をいつ最初に聞いたのか、私自身も覚えていない。それ以来、何度もこの言葉を耳にし、その度に期待を膨らませてきたため、今ではブランドの物語の一部として定着している。施設の開設や閉鎖、機械の売買、数え切れないほどの新作発表が行われてきたが、今日まで捉えどころのないイギリス製ブレモン発のムーブメントは登場したことはなかった。

 このムーブメントの設計者として紹介されたスティーブン・マクドネル(Stephen McDonnell)は、かつてスイス名門時計学校であるウォステップ(Wostep)の上席講師を務め、MB&Fやクリストフ・クラーレと仕事をしたこともあるアイルランド人時計師であり、ブレモンが自社製だと胸を張れるようなイギリス国内で量産可能な現代的な主力ムーブメントを作るという野望を遂行した人物だ。

 年月が経つにつれ、ブレモンはマクドネルの専門知識を持ってしてもムーブメントをゼロから作るのは簡単ではないことが理解できたようだ。実はこのことはスイス人も知っていた。スイスの工場の床には機械式ムーブメントの失敗作が転がっているものだ。しかし、スイス人はそのようなことはおくびにも出さない。

 しかしブレモンはこのことを知らなかった。あるいは知っていたとしても、あえて目を塞いでいたのだろう。熱意と大いなる野心がそうさせたのだ。私が訪問した際、ニック・イングリッシュはマクドネルのムーブメントは彼らが目標としている規模と価格帯で量産化するにはあまりにも複雑すぎると初めて認めた。そう、認めたのだ。

 といっても、お蔵入りしたわけではなかった。ブレモンによれば、まだ開発段階であり、実現したとしてもごく少量生産で関税率の高いハイエンドな時計のケースに収まるそうだ。ENG300の経験はきっと役に立つだろう。ブレモンの時計とそれを求める同社の顧客がいるかどうかの答え合わせは、まだ先のことだが。

外部の影響

損失を取り戻すためにさらに投資する勇気はなかなか持てないものだ。ハッタリだと思われる前に、あるいは失敗したと思われるまで人々を引きつけておける時間も限られている。2年半前、ブレモンは物流工学の専門家であるクリス・レイノルズをマネージング・ディレクターに任命した。レイノルズは、電気モーターの世界ではあまりロマンティックではないParvalux社でオペレーション・ディレクターを務めた経験があり、製造工場をまとめる能力だけでなく必要とされる実務能力も持ち合わせていた。

 彼のリーダーシップのもと、ブレモンが秘密裏に持っていたコネクションを通じて、2019年に正式に設立されたビエンヌを拠点とする独立企業でありながら、“Momo+”や、聞き慣れない “Horage”を開発したのと同じチームによって設立された“THE+”との交渉に入った。これらの企業はともに、2003年にスウォッチグループが業界の競合他社にETA社のムーブメントを供給するのを中止すると発表したことを受けて設立された、破壊的で起業家精神にあふれた世代のスイスのムーブメント製造会社の一員だ。

写真: The Naked Watchmaker

 THE+とその姉妹会社は、7年の歳月をかけてK1と呼ばれる自動巻きキャリバーを開発した。このモジュール式で現代的かつ魅力的なキャリバーは、それまでHorage社の時計にしか搭載されていなかった。現在、同社ではK1を搭載した時計を2260ドル(約26万円)から、KTトゥールビヨンを搭載した時計を7000ドル(約80万円)以下から販売している。競合他社の高騰している価格に対抗するため、現実的な価値を提供することが同社の信条の一つである。ベースとなったK1ムーブメントはシリコン脱進機と65時間のパワーリザーブを備えており、スモールセコンド、ビッグデイト、パワーリザーブインジケーターといった比較的難易度の低い機能を搭載するために、18通りの仕様設定が可能だった。

 これこそがブレモンが必要とする近道だと考えた。ブレモンはK1の知的財産使用権と独占的ではないがアップグレードする権利を取得した(金額は非公開)。先週インタビューを行ったTHE+社は、ほかのブランドにも知的所有権を譲渡したいと考えているが、それはブランドが製造知的財産権を取得する準備ができている場合のみだと明言している。ブレモンは単に組み立てられたムーブメントや部品あるいは図面を購入するのではなく、製造プログラムを開発するというチャレンジを行った唯一の企業だと言う。このようなリスクがあるため多くの企業が後に続くとは考えにくい。

 ベラミーと同僚のマーティン・ペノック(Martin Pennock、製品開発責任者)、スチュアート・アンダーソン(Stuart Anderson、ソフトウェアエンジニア)が中心となり、K1の堅牢性と精度を高めるためにムーブメントクランプの追加、両持ち脱進機ブリッジ、ねじ込み式ヒゲゼンマイなどの仕様を追加した。

 ニックらはこの後者の開発を熱心に進めており、ENG300の構造はETAの主力自動巻きムーブメントよりもはるかに優れたものになっている。精度は公式にはクロノメーター認定の許容範囲である日差-4/+6秒以内に収まっているとしているが、非公式にはオメガのマスタークロノメーターとは1秒、ロレックスの厳しい+2秒とは2秒に肉薄する、非常に精度の高い日差+3秒以内に収まっていると自信を持っている。 調整もすべて自社内で実施される。ブレモン独自の性能検定は有名なマーティン・ベイカーの軍用機脱出シートテストであり、ENG300はこのテストを受けて見事合格したという。

 また一連のハイエンドな仕上げを追加し、K1の控えめな美しさをはるかに超えてブレモンならではの外観を実現した。部分的に肉抜きされたタングステン製ローターとテンプ受けは、ザ・ウィングの急峻な外観を反映して再設計されており、ムーブメントには美しいサーキュラーストライプ仕上げが施されている。来年、ENG300がコアコレクションに登場する際にはこれらのディテールはすべて継承される予定だという。

 知的財産のノウハウを移転し、熟練化し量産化するのは簡単ではないが、ブレモンによれば、重量ベースでムーブメントの80%がカスタマイズされており、ENG300の知的財産は彼らの手に委ねられているとのことだ。THE+はENG300を単なる改造ではなく、K1とは別のムーブメントとして捉えていると感心しているほどだ。また、ベースとなるキャリバーをゼロから設計するには3500もの設計工程が必要であり、ムーブメントの製造に必要なノウハウを吸収するためのブレモンのプロセスはほぼ完了しているという。スイスにも技術供与する懐があるようだ。

どこまでがブレモン印なのか?

次の関心は、ブレモンが実際に製造しているものに移る。つまり、地板と香箱、テンプ、自動巻き機構、輪列の5つの主要部品だ。愛情を込めて香箱のブリッジには“Made in England”の刻印が刻まれている。ネジ、シリコン製脱進機、ヒゲゼンマイなど、それ以外のすべての部品は非公開のサプライヤーによって製造されている。業界の常識としてサプライヤーネットワークは知的財産の一部とみなされる。

 “ザ・ウィング”北東の突き当りにある騒々しい機械室、マイクロハブの床から天井まである窓からはオックスフォードシャーの田園風景や近くのポロ競技場が見渡せる。スイスの老舗メーカーの基準からすれば控えめな大きさだが、それでも数百万ドルの価値がある機械が少なくとも6台は収容することができ、ブレモンによるとケースやムーブメントの部品を3μ(ミクロン)の公差にまで追い込んで製造することができる。ブレモンのルスクーム工場を訪れたことはないが、そこにも数台のCNCマシンがあるそうだ。

 そのマイクロハブのなかで最も新しいのは5軸の精密なフライス盤だ。これにも名前があるが、ブレモンはこれも知的財産の一部なので非公開とするよう要請してきた。家庭用冷蔵庫程度の大きさにもかかわらず数億円もするということだ。聞くところによると従来のCNCフライス盤に比べて50%も速い6万rpmという驚異的な速度で回転するドリルを搭載しているため、従来の大型機に比べて格段に早く部品を生産することができるということだ。ニックはまるで誇らしげな父親のように顔を輝かせて話してくれた。もう何度も見たはずなのに彼はスマートフォンを取り出して撮影を始めた。彼の少年時代の夢が今まさに実現しているのだ。

 その横のテーブルにはブレモンが製造しているENG300の部品を切り抜いた板材が30枚、40枚と山積みになっている。20万行に及ぶ機械制御プログラミングに1週間を費やした(ファイルを見たが、悪夢のようなエクセルだった)前述のエンジニアでブレモンの最高責任者の一人であるアンダーソン氏は、この山が1日分の生産量だと断言した。数週間以内に2台めのマシンが納入される予定だという。

組立説明書

情報公開に積極的であることは、これらの部品がスイスに運ばれてメッキされるということを聞いて改めて感じた。イギリスにはブレモンが求めている量と品質の時計製造工程を実現する施設はまだないが、ブレモンらしい解決法でいつかは実現するだろうと楽観視しているということだ。しかし、ほかのイギリスブランドがまずこのムーブメントに参加しなければならないだろうと彼らは認めている。

 ヘンリーに戻るとENG300の部品の一部はまだすべてではないが、組立前工程の段階であるT0を通過する。一部の工程はイギリス国外で実施される。ミシンほどの大きさしかないルビーをプレートに挿入する珍しい装置も紹介された。

 その2歩先にはザ・ウィングの工房の設備設計・監督したマイケル・ベラミーがいる。彼にENG300についての感想を聞くとその構造に対する熱意を隠しきれない様子だった。彼が教えてくれたディテールの一つは、一般的なムーブメントでは平均9種類もあるネジが、わずか3種類しかないことだ。このような効率的な設計によりコストを抑え、組立工程を迅速化し、後続のサービスの負担を軽減することができるのだ。シンプルさに宿る美とはこのことである。

 また、表面加工機も目に入る;20台ほどの作業台があり、技術者がムーブメントや時計の組み立てに忙しく従事している。また品質管理室にはルーペをつけた3人の厳しい顔つきの人がいた。このスペースが未完成のように見えるのはもっと多くの人員を収容できるスペースがあるからだ。ブレモンは拡張性を念頭に置いて建設しており、将来的には拡張を見込んでいる。

 2022年にはこの生産ラインで年間5000個のムーブメントを製造することを目標としており、さらに生産能力を高めるためにさらなる投資を実行するだろう。これらのムーブメントは現在生産している1万本の時計の半分を供給している外注キャリバーに代わるものだ。しかしレイノルズ氏によれば、ザ・ウィングを建設した際に隣地に増築するための基礎を築いたという。なるほど賢いやり方だ。今のところ組み立てたムーブメントやENG300のライセンスをほかのブランドに供与する予定はないとのことだ。

精度検定

写真: The Naked Watchmaker

パズルの最後のピースは精度検定だ。ブレモンはクロノメーターへの愛を貫いているが、多くの人が知るようにCOSCはスイス国外で製造されたムーブメントを公認しない。現在、ブレモンの時計に適用されているISO 3159クロノメーター認定は奇しくもCOSCが発行したものだが、知名度の高いCOSC独自のクロノメーター証明書は発行されていない。

 ENG300はイギリス生まれなのでCOSCは手を出さないだろう。またイギリスには認定機関がないため、ブレモンは自社検定に委ねるとしている(パテックではうまくいっている、これは私の口癖だ)。

 そのために、ブレモンは現場に自己完結型のテストラボを設置している。私が訪問したときには16日間のテストを行う3台の温度制御された冷蔵庫のうち1台だけ稼働していた。しかし、追加設備を注文していることからブレモンは来年中に“H1 精度基準”を主要コレクションに導入できると見込んでいる。

 基本的な規格はISO 3159だが、H1ではCOSCよりもさらに進んで自動巻きのブリッジとローターを組み立てた状態でムーブメント全体を検定する。さらにこの規格を発展させることも計画されているが、それはまた別の機会に紹介しよう。

完全自社製か否か?

時計業界は、“自社製”という言葉の呪縛から徐々に解放されつつある。その要件は曖昧で定義も明確でないため、評論家も時計メーカーも濫用しがちだ。機械式時計のすべての側面を完全にコントロールできるのは、大手中の大手であるロレックスでさえも不可能だということを我々外部の人間はようやく知るに至った。しかし、時計用語というものはニュアンスをある程度二の次にする必要がある。ブレモンはENG300を単に“ブレモンが製造したムーブメント”と呼んでいる。

 ブレモンのストーリーを要約すると、次のとおりだ。キャリバーENG300はスイスのTHE+社が設計したベースキャリバーであるK1を再設計しアップグレードしたものだ。ブレモンはTHE+社の知的財産を使用する永久ライセンスを購入した。ENG300はK1を大幅にカスタマイズした派生ムーブメントで、そのアップグレードはブレモンのチームが開発を担った。ムーブメントにはブレモンのマニュファクチャリング&テクノロジーセンターで製造された5つの主要コンポーネント、すなわち地板と4つのブリッジが含まれており、これらがムーブメントの重量の55%を占めている。合計するとムーブメントの重量の80%はブレモンがカスタマイズした部品によって占められる。THE+からブレモンへの技術移転が進むにつれ、いつかは個々の部品製造もセンターで行われるようになるだろう。今のところ、ムーブメントの100%(いくつかのT0組立前工程を含む)はすでにセンターで組み立てられており、精度調整もセンターで実施されていると言っていい。

俯瞰的視点

膨大な量のディテール(もっと、もっとある)から離れて、俯瞰的に、しかし主観的に見てみるとブレモンの功績は計り知れないものがあると理解できる。ENG300は予想外だったかもしれず、完全にイギリス製でもブレモン社製でもないかもしれないが、これは私が生きてきたスミス社が同規模の工場を閉鎖して間もない1970年代以降に限って言えば、最初にして最もイギリス的なそして最もブレモン的な量産ムーブメントである。

 ENG300を発表するにあたり、ブレモンはスイスのほかのメーカーが同様のシナリオで予想するよりもより厳しい審判に晒されるだろう。2014年に起きた、BWC/01キャリバーが自社製ではなくラ・ジュー・ぺレ社製だと判明したライト・フライヤー事件の失敗が大きく影を落とし、そのときに失った人たちの信頼を取り戻すことはできないかもしれない。しかし、私はそれがブレモンの損失になるとは思っていない。今回、敢えて脱皮を遂げたことはそうせざるを得なかったにしろ大きな評価に値するだろう。

 しかし、私はそれだけではないと思っている。15年ほど前、ニックとジャイルズ・イングリッシュは設立当初からムーブメント製造への意欲と、何十年にもわたって衰退してきたイギリスの時計製造だけでなく同国の製造業を復活させるという大きなビジョンを異例の速さで表明していた。

 ある人はそれを立派なことであり勇気のあることだと評価したかもしれないし、2人の新米時計ブランドオーナーが背負うには重責過ぎるという声もあっただろう。一方で、特にここイギリスではそれが行き過ぎだと感じる人もいるだろう。人前で自信を見せることを嫌う尊大なイギリス人のはイメージは良くも悪くもいまだに健在なのだ。

 確かに国際的な評価は重要だが、これまで懐疑的な態度を隠そうとしなかったイギリスの同業者たちに自社の進歩を納得してもらうのは大変なことだと同社は理解している。余談だが、最近結成された“イギリス腕時計・置時時計協会”にはすでに60社が加盟しているが、一方でイギリス最大の高級時計メーカーであるブレモンは蚊帳の外にある。中立的な立場から言えばここに変化が生じることを願っている。

 余談かつ全くの偶然だが、元スピーク・マリンのピーター・スピーク(Peter Speake)氏が、ダニエラ・マリン(Daniela Marin)氏と共同運営している優れた教育用ウェブサイト“The Naked Watchmaker”のためにENG300を分解・研究し、写真を撮るために私と同じ時期にザ・ウィングを訪問していた。部屋にブレモン関係者が一人もいない状態で30分ほどこのムーブメントについて話し合ってみたが、彼は公平性を保つことに固執しながらも明らかに感銘を受けた様子だった。私の見込みでは同世代で最も才能のある時計師の一人の印象は重要な意味を持つ。

写真: The Naked Watchmaker

 この話をまとめるのは愛がなければできない仕事だったと思うが、それはブレモンがこの時点に至るまでの旅に比べれば遠く及ばないことだ。私は職業人生の大半をこの物語に捧げてきたが、これまでに2度、ザ・ウィングの廊下や工房を歩いてみて、ENG300はブレモンにとって、そしてイギリスの時計製造にとっても非常に印象的で大きな一歩であると結論づけることができる。しかし、これは最終目的ではなくブレモンもそうだとは言及していない。それどころか、これは何巻もの物語になりつつあるものの次章に過ぎない。これからもっと多くの事件が起こると思っている。そして、それを読むのを楽しみにしている私がいるのだ。