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今日、時計コレクターを結びつける数少ないもののひとつが、日付表示窓に対する一般的な嫌悪感だ。それはフォーラムやSNSでは批判のパロディのようになり、言語や価格帯を超えた確かな拡散情報のネタとなっている。セイコー5の日付窓の存在を、パテック フィリップのグランドコンプリケーションと同じようにちゃかすのは、匿名かつオンラインであれば簡単なことなのだ。
私は今日、日付戦争に終止符を打つため、あるいは少なくとも一時的な勝者を宣言するためにここに来た。もう十分だ! 我々は日付機能がエンドユーザーのことを考慮して思慮深く実行されたとき、それを祝福することさえ忘れてしまうところまで来てしまった。そして、このようなことが起こっている例はたくさんあるが、 - カーラ(Cara Barrett)は2017年に5つの例を取り上げた。今回は私がいちばんいいと思う例を挙げたいと思う。
グラスヒュッテ・オリジナルの複雑機構“パノラマデイト”(ドイツ語で「Panoramadatum」と呼ばれることもある)は、さまざまな意味ですばらしいと言えるだろう。
グラスヒュッテ・オリジナル(GO)の隣人であるA.ランゲ&ゾーネを含め、多くの時計メーカーが“ビッグデイト”表示を採用していることを前もって認識しておこう。ビッグデイトは必ずしも特別でユニークな複雑機構ではない。むしろ、グラスヒュッテ・オリジナルがパノラマデイトをどのように実現しているかということに、軽蔑するよりもむしろ賞賛する価値があるのだ。
グラスヒュッテ・オリジナルのアプローチがほかの多くの時計ブランドと異なる点は、同軸上に配置された一対の同心円の日付ディスクを使用していることだ。上の画像で、日付の2数字を区切るスリムな曲線が見えるだろうか? この2桁の数字は、基本的にまったく離れていないことに気づいてほしい。2枚のディスクは重なることなく、4桁(0~3)の数字が描かれた内側の小さなディスクと、10桁(0~9)の数字が描かれた周囲の大きなディスクから構成されている。
大したことがないように聞こえる? まあ、たしかにそうだ。だが、これが重要なのだ。ほかのほとんどの“ビッグデイト”ソリューションでは別の方法をとっている。2枚のディスクを互いに離したり、上に重ねたりしている。そのため、ランゲ 1のような時計では日付表示の開口部は、それぞれの数字を区切る1本の縦棒で縁取られているのだ。このバーには、ふたつの数字の間に存在する大きな隙間を隠すという唯一の目的(その実行において美的に問題はない)がある。
グラスヒュッテ・オリジナルのソリューションは最適なアプローチだ。どの角度から見ても非常に見やすく(球面状の拡大鏡は不要)、しかもダイヤルのほかの部分を邪魔することはない。また、ほかの複雑機構も完璧に補完するものであり、それゆえ同社は1990年代後半に初めてこの方式を導入して以来、確固とした姿勢を貫いてきたのだろう。
パノラマデイトは、これまでで最も革新的なトラベルウォッチのひとつにはもちろん、フライングトゥールビヨン、ダイバーズウォッチ、パーペチュアルカレンダー、フライバッククロノグラフ、ブレスレット一体式スティール製スポーツウォッチ、そして従来の3針時計にも採用されてきた。しかし、ツインディスク表示はグラスヒュッテ・オリジナルのサクソン本社以外ではまだ広く浸透していないようだ。
ゼニスとブライトリングは過去10~15年のあいだ、同様の同心円ディスクシステムを利用していたが、現在はどちらもビッグデイトの腕時計を提供していない。A.ランゲ&ゾーネ、ブランパン、カール F. ブヘラ、ジャガー・ルクルトなど、ビッグデイトのオプションを継続的に提供しているブランドは別のソリューションを好んで採用している。
パノラマデイトは21世紀のグラスヒュッテ・オリジナルの美的特徴を決定付けたと言っても過言ではないだろう。そして、パノラマデイトが発表された数年後の2001年に発表されたパノコレクションとの組み合わせは最高と言っていい。
この記事のために撮影したパノマティックルナ Ref.1-90-02-42-32-05のように、左右非対称の時刻表示や大画面のパノラマデイト表示など、2000年以降のスウォッチグループ時代のグラスヒュッテ・オリジナルの時計づくりを思い起こさせるものだ。
そして、それが重要なのだ。製品の多様性と製造の垂直統合という点ではグラスヒュッテ・オリジナルに匹敵する時計メーカーはほとんどない(同社が製造するすべての時計の約95%はダイヤル、ケース、ムーブメントのネジに至るまで自社で製造されている)。
しかし、パノマティックルナのような時計を通してこそ、グラスヒュッテ・オリジナルが何を重んじ、なぜパノラマデイトがトップクラスなのかを知ることができるのだと思うのだ。ディテールのすべてがそこにあり、すべてのパーツがどのように組み合わされて完成したのかが容易に理解できる。複雑機構と計時表示がすべてダイヤル上で分離されているため、まるで意図的に解体したかのように機械式時計がいかに複雑であるかを浮き彫りにしているのだ。
パノマティックルナの日付窓をもう一度見てみよう。セネタ、SeaQ、セブンティーズなど、ほかのGOコレクションで見られるものとほぼ同じフォルムで作られている。開口部の外側に沿って2段になったきれいな斜面があり、コンプリケーションのための繊細なフレームを形成している。日付表示の歯車は、ほとんどの場合、ダイヤルの色調と正確に一致させ、シームレスな外観を実現している(GOでは美観上の理由から、日付表示窓に別の色調を使用することもある)。例えば、写真のパノマティックルナのシルバーダイヤルは、全体的にオープンスペースにすることで高精細で広角な効果をもたらし、40mmのエレガントなサイズからは想像できないほど大きな時計に見える。
この点こそ、日付表示窓で人々が感じる主な問題点のひとつなのだ。日付表示窓は設計の過程でしばしば後回しにされる。直感的で、手頃な価格で、ユーザーフレンドリーな複雑機構としてデザインされたはずの日付窓が、不当に悪者扱いされるのはデザインの怠慢が原因だ。
我々は日付窓の実装が不十分であることを指摘し、悪口を言うことにエネルギーを費やしているが、我々の批判にずっと前に対処した企業を応援することも忘れてはならないと思う。なぜなら、パノマティックルナのような時計では、好き嫌いは別にして、日付窓こそが主役になっているからだ。
時計の詳細は、グラスヒュッテ・オリジナル公式サイトを。
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HODINKEEショップはグラスヒュッテ・オリジナルの正規販売店です。また、HODINKEE Pre-Ownedでも、グラスヒュッテ・オリジナルの腕時計を販売しています。
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