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スマートウォッチ市場の動向を観察している人にとって、グーグルが有名なフィットネストラッカーメーカーであるフィットビットを21億ドルで買収すると発表したことは、非常に納得のいく話である。この動きは、インターネットの巨人・グーグル(2018年の収益:1362億ドル)が、急成長するウェアラブル テクノロジー市場でアップル(2019年度の収益:2600億ドル)と競争しようという試みだ。
この分野には、さまざまな電子製品が存在する。例えば、アップルのウェアラブル部門には、AirPods、Beatsイヤホン、Apple Watchなどがある。
ウェアラブル市場を追跡しているインターナショナル データ コープ(IDC)によると、実際にウェアラブルの成長を促しているのは、スマートウォッチであるという。2018年、ウェアラブルカテゴリの総売上の58%は、スマートウォッチが占めていた。成長の主な要因となっているのは、スマートウォッチでのますます洗練された健康およびウェルネスアプリの登場が挙げられる。
グーグルはここ数年、スマートウォッチ市場に注目してきた。 2014年には、スマートウォッチのオペレーティングシステムであるアンドロイド ウェアを発表した。(昨年、グーグルはこれをWear OSと改称した)
また、グーグルのハードウェア製品のリストにはスマートフォン(ピクセルのブランド名)が含まれているが、これまでスマートウォッチの分野に参入してはいない。
フィットビットは、二つの理由からグーグルに適しているように考えられる。 一つはハードウェアであり、もう一つはソフトウェアである。それはスマートウォッチ市場における拠り所を即座に与えることで、グーグルの製品ポートフォリオにおけるギャップを埋めることができるのである:フィットビットは、スマートウォッチの生産ではアップルに次いで世界第2位なのだ。
また、グーグルにWear OSを再起動する機会を与えることになる。このオペレーティングシステムは、スマートウォッチの生産者に普及しておらず、トップ5ブランドのうち、第5位のフォッシルのみがWear OSを採用している。フィットビット買収の発表後、グーグルのハードウェア担当チーフであるリック・オスターロー(Rick Osterloh)は、同社のオペレーティングシステムに関する野心を強固にする記事をブログに投稿した。「グーグルはこれからもWear OSと当社のエコシステム パートナーにコミットして参ります」と述べ、「そして、フィットビットと緊密に連携して、それぞれの最高のスマートウォッチとフィットネス トラッカー プラットフォームを組み合わせることを計画しています」と話している。
しかしながら、超人気のアップルが支配するスマートウォッチ市場で、Wear OSと低迷するフィットビットを再起動することは非常に困難であろう。
フィットビットは世界で
2番目に大きなスマートウォッチの生産者だが、
その生産高はアップルの4分の1にも満たない。
ウェア-テックのパイオニア
2007年創業のフィットビットは、ウェアラブル テクノロジーの先駆者だった。パーソナル アクティビティ メトリックス(歩数、心拍数、睡眠の質など)を提供する人気のフィットネス トラッカーは、健康とフィットネスを結び付けた分野のリーダーとなった。
2015年6月、フィットビットの株式が公開された。その夏、株は51.90ドルの高値で取引されたが、フィットビットの新規株式公開の2か月前にデビューしたアップル ウォッチが、次第にフィットビットのお株を奪うことになった。アップル ウォッチやその他のスマートウォッチは、フィットビットと同じ健康およびフィットネス情報の提供を始めた。ここ2年間、フィットビットは、フィットネス トラッカーからより利益率の高いスマートウォッチに重点を移すことで対応したが、その結果はそれほど芳しくない。
同社の2018年の収益は6%減の15億1000万ドル(約1663億9000万円)だった。今年のヴェルサ ライト スマートウォッチの発売は、期待に応えることはできなかったのだ。 7月、同社は2019年の販売目標を引き下げた。 8月には、株価は2.81ドルまで下落した。
アップルがはるかに先行
一方、アップルは依然として好調である。IDCおよびスマートウォッチ市場を監視する別の調査会社であるストラテジー・アナリティックス社によると、アップルは2018年には全世界のスマートウォッチ出荷量の約半分を占めていた。両社とも、2018年のアップル ウォッチの生産量を2300万個と推定している。
フィットビットは2位にあるとはいえ、ストラテジー・アナリティックス社によると、2018年のスマートウォッチの出荷量550万個は、アップルの4分の1にも満たない。サムスンが500万個で3位、その次がガーミンの300万個だった。合計4500万個の市場のうち、その他のすべてのスマートウォッチ生産者は併せて850万個を出荷している。
アップルの優位が衰える兆候は見られない。グーグルによるフィットビット買収発表の2日前、アップルのCEOであるティム・クック(Tim Cook)は、9月28日に終了した同社第4四半期の収益は、ウェアラブル デバイスが「50%をはるかに超えた」と発表した。(アップルはアップル ウォッチの販売データを公表していないが、記録を更新していることは明らかだとアナリストは言う)
Wear OSはどこへ向かう?
Wear OSの次の目標は明らかではない。 1月、グーグルは4000万ドル(約44億770万円)の取引で、アンドロイドの「イノベーション パートナー」と同社が呼んでいるフォッシルが開発中の、スマートウォッチ テクノロジーを購入した。取引の一環として、フォッシルでこのテクノロジーに携わる多くの研究開発要員がグーグルに加わった。当時、Wear OS副社長のステーシー・バー(Stacey Burr)は、「フォッシル グループのテクノロジーとチームがグーグルに加わったことは、スマートウォッチの多様なポートフォリオ実現を可能にすることにより、私たちがウェアラブル業界にコミットすることを示しています」と述べている。
この動きは、グーグルが最終的にはピクセル ウォッチでスマートウォッチ ゲームに参入することを目指しているのではないかという、新たな噂を呼んでいる。フィットビットと共に、新たなスマートウォッチ ブランドをラインナップに追加する可能性がないとはいえない。ピクセル ウォッチがWear OSを使用するのは間違いないだろう。フィットビットがWear OSに移行するかどうかは、今のところ不明である。
グーグルはスマートウォッチ用の
オペレーティングシステムは作成したが、
スマートウォッチを作成したことはない。
活況を呈する市場
グーグルとフィットビットにとって良い兆候のひとつは、スマートウォッチ市場が活況を呈していることである。世界最大のスマートウォッチ市場である米国の、腕時計の小売販売を監視しているNPDリサーチグループによると、2018年にスマートウォッチの販売額が51%、販売数量が61%増加したという。売上高で見て米国で最も売れている時計ブランドのトップ3のうち2つはスマートウォッチであったとNPDはHODINKEEに語った。上位3つのブランドは、アップル、ロレックス、フィットビットの順だった。(NPDは、売上高のデータは機密事項であるとして明らかにしなかった)
NPDによると、スマートウォッチ全体の売上は2019年上半期に24%増加した。
IDCは、今後数年間で全世界でのスマートウォッチの出荷が大幅に増加すると予測している。 IDCによると、2018年の5130万個から2019年は9180万個に達するだろうという。さらに、2023年には1億3000万個を超えると予測している。IDCのウェアラブルチームの研究部長であるラモンT.ラマズ(Ramon T. Llamas)は次のように述べている。
「スマートウォッチは、職場でも家庭でも複数のアプリやシステムを使って健康とフィットネスに深く入り込み、我々の生活に関わることになるでしょう」
グーグルの試算では、グーグルとフィットビットは、健康とウェルネス関連アプリの専門知識と、グーグルの圧倒的なリソースに支えられ、進化するスマートウォッチ市場でアップルと競合になりうるという。この予測が正しければ、フィットビットとピクセル スマートウォッチは、健康およびウェルネスのスマートウォッチの分野で多くのシェアを獲得できるだろう。誰もがアップル ウォッチを着用したいとは限らない。
ただし、まずグーグルは、同社がフィットビットユーザー個人の健康データにアクセスするのではないかという、規制当局の懸念を和らげなければならない。もしグーグルがそれを行うことができれば、取引は2020年中にまとまるであろう。
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