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ロレックス ペプシGMTマスターはなぜ私立探偵マグナムに最適なのか

彼は最初の3シーズンは違う時計を着けていた(覚えているだろうか?)。マグナムがマグナムになったのは GMTを着けたときだった。


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1980年、スティーブン・スピルバーグとジョージ・ルーカスは『 レイダース/失われたアーク《聖櫃》 』のキャスティングに奔走していた。主役候補のトップには、オーディションで常に他の誰よりも抜きん出ていた俳優のトム・セレックがいた。茶色い革製の第二次世界大戦時代のボンバージャケットに中折れ帽を身に着けたセレックは、ルーカスが思い描いていた「無敵のインディ・ジョーンズ」のイメージ通りだった。スピルバーグがCBS放送局の社長から電話を受けるまでは、全てが順調だったように見えた。実は放送局は、セレックと新シリーズの契約をしていたのだ。そのため、スピルバーグが彼を使うことはできなかった。そのシリーズとはもちろん『私立探偵マグナム』のことで、インディ・ジョーンズは他の俳優に任せることになったのだ。

 運命のいたずらだろうか。確かにセレックは、日当たりの良いオアフ島の緑豊かな土地で活動する、アロハシャツを着た私立探偵トーマス・マグナムを演じるために生まれてきたような人物だ。彼のウェーブがかった髪、堂々とした体格、そして個性的な口ひげは、1980年代当時のスタイルを体現していた。セレックは様々な意味で、今でもその時代の象徴のような人物なのである。

デトロイト・タイガースの帽子、アロハシャツ、ロレックスのGMTマスターを身に着けたマグナム.。写真提供:Getty/CBSフォトアーカイブ 

 マグナムは贅沢な住み家から赤いフェラーリ308まで思うままに使えた。そしてその中には、デトロイト・タイガースの野球帽も、もちろんその中には時計も含まれていた。トーマス・マグナムは時計好きで、彼の時計はロレックスのペプシGMTマスター Ref.16750だった。

 時が経つにつれ、それは紛れもなくマグナムの象徴的な時計になっていったが、ずっと彼の手首に着けられていたわけではない。実際、それは第4シーズンまで登場しなかった。彼は最初の数シーズンは、クロノスポーツのシー クォーツ30を身に着けていたが、ジェイソン・ヒートンはそれについて「明るいダイヤルとトロピックタイプのラバーストラップを備えた無骨な42mmのダイバーズウォッチ」と紹介している。セイコーが台頭してきて、マグナムも時折、赤と青のベゼルをもつセイコーのSQクォーツダイバーを着けるようになった。そしてご承知の通り、彼はより本格的なダイバーズである「ペプシ・ウォッチ」を必要とするようになったのだ。

ペプシGMTマスター16750を装着したトーマス・マグナム。写真。A.F.アーカイブ

 では、なぜGMTマスターは完璧なマグナム・ウォッチといえるのだろうか? それは、機能性と無骨な魅力に、ちょっとした斬新さとその色がマッチした時計だったからだ。100m防水を備えたスティール製ブレスレットのデュアル・タイムウォッチならば、波しぶきの中でも母国の現地時間を確認できる。典型的なツールウォッチでありながら、赤と青のカラーが生真面目になりすぎないようにしてくれる。マグナムが悪人をやっつけるときに、笑顔でやったようにだ。

 この時計に焦点を当ててみると、マグナムがGMTマスターのどのモデルを着用していたかについて、いくつかの論争があった。何年もの間、巷では1675、つまり1959年から1980年まで製造されたクラシックなマットダイヤルのモデルだと言われていた。ちょっとした調査と、どこを見ればいいのかという方向性によって、実際にはRef.16750であったと確信がもてる。 これは1675の後継モデルであり、1980年から1988年まで製造された。シリーズの放映された年と一致している。これは偶然なのだろうか?(まあ、おそらく偶然だ)。

 なぜこのモデルが GMTマスター 16750 であるかを示す 2 つのディテールがある。それはリューズガードとダイヤルの針の配置だ。ジョン・ビューズとエリック・ウィンド氏が、ロレックス GMTマスターの歴代モデルを解説した記事で指摘したように、16750には24時間針が時針と分針の間に配置されている。1675では、24時間針は下側、つまり文字盤に最も近い位置にある。次に、16750には、他のGMTマスターモデルとは大きく異なる独自のリューズガード(少なくともマットダイヤルのモデルでは)が付いている。それは、リューズガードが非常に高く、リューズよりも高くなっている。1675では、リューズがより目立つ位置にあり、リューズガードはよりだいぶ短い。

 “マグナム” GMTマスター16750は、7年間に渡って販売された同モデルの中でも初期のうちの一つで、マットダイヤルと印字されたマーカーが特徴だった。このモデルはすぐに、アプライドインデックス―ホワイトゴールドの外周のついたダイヤル―のものに永遠に(悲しいかな)― 置き換えれらたのだ。

ロレックス  GMTマスター 16570 マットダイヤルにペインテッドマーカー。

ロレックス GMTマスター16750 アプライドマーカーとホワイトゴールドの外周。

 16750は、機能的には先代モデルよりもはるかに汎用性の高い時計だ。第一に、防水性能が50mから100mに向上している。第二に、16750はGMTマスターとして初めて瞬間日送り機能を搭載した。マグナムには、日付を変えるために時計の針を延々と回している時間はないのだ。彼には間違いなく瞬間日送り機能が必要だ。

 この時計が、マグナムに最適な理由は明らかになってきたが、 他の何よりも大きな理由がある。それは、彼の父親の時計だからだ。そう。番組では、マグナムのロレックス GMTはただの時計ではなく、家宝であり、記念の品であり、マグナムの亡き父親の形見の品だったのだ。

 第4シーズンの初回エピソードのフラッシュバックで、若いトーマス・マグナムが父親と一緒に海で泳いでいる。海中で、父親が時計を見て息子の泳ぎのタイムを計る。カメラは、マットダイヤル、ペプシベゼル、そして明るい白のインデックスを備えたGMT 16750をしっかりと捉えている。この時計にはパティーナはないのだ。

私立探偵マグナムのシーズン4のオープニングエピソードに登場する、マグナムの父の手首に装着されているロレックス GMTマスター16750。スクリーンショット。Viacom/CBS

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 そのエピソードはまた、悲しいことに彼の父の死を描いており、子供時代のトーマスが葬儀でJFKジュニアがしたような敬礼をする。父親のGMTマスターは彼の細い手首にぶら下がっていた。

 もちろん、ここで少し不信感を抱く可能性があるだろう。計算してみると(イライラして頭が痛くなるのでやめておくことをおすすめする)、16750はマグナムが少年だった頃にはまだ製造されていなかっただろう。最初に発売されたのは、番組が始まった年と同じであるため、つまりは存在していなかったことになる。が、しかし、これはテレビだなのだ。一般の時間の法則は適用されない。

 GMTマスター16750自体は、GMTマスター(とロレックスのスティール製スポーツウォッチ)の真髄といえるだろう。今日では、このモデルの価値の上昇と共に、インデックスが焼けてベゼルはおかしな色に変色しているような個体を目にすることがあるだろう。番組の中では時間は止まっており、この時計はもっとも良い時代のまま永遠に存在する。マグナムが悪者を倒し、事件を解決する助けとして。

 セレックはかつてこの時計について公言している(彼はそれを1675と言っていたが)。フェラーリを含む多くのクールな小道具の中で、彼がその後もキープしたのは「ペプシGMT」だったことを認めている。FHHによると、彼は次のように述べている。

 「あの時計がずっと好きだったんだ。マグナムとの相性は抜群だったよ。アクションが好きな時計なんだ、本当に。これまでスポーツ用の時計は何本も所有してきたが、ロレックスほどタフな時計はなかった。水中でも、砂に埋もれても、何度叩かれても、何の問題もない。ベゼルの色がペプシのロゴと同じなのでペプシと呼ばれているが、個人的には、赤はフェラーリと相性が良く、青はハワイのラグーンや空にマッチしていると思ったものさ」

 その通り。完璧なマグナムの時計は、マグナムが自分のために持っておくと決めた時計なのだ。