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オメガ スピードマスター 「ファースト オメガ イン スペース」をヴィンテージ時計マニアが徹底解説

1962年10月、マーキュリーアトラス8号のミッションに参加した宇宙飛行士ウォーリー・シラーが着用したRef.2998をベースにしたこのナンバード・エディションの時計は、ヴィンテージスピードマスターを時計の真髄と考える時計ファンの心を掴むことを目指し、そして成功したと私は信じている。

※本記事は2012年5月に US版で公開された記事の翻訳です。 

1つだけはっきりさせておこう - 上の写真の「ファースト オメガ イン スペース」スピードマスターは見事なものだ。 2012年3月のバーゼルワールドで発表されたこのモデルは、まさにヴィンテージスピードマスターの一つに見える。 1962年10月、マーキュリーアトラス8号のミッションに参加した宇宙飛行士ウォーリー・シラーが着用したRef.2998をベースにしたこの時計は、ヴィンテージスピードマスターを時計の真髄と考える時計ファンの心を掴むことを目指し、そして成功したと私は信じている(誰にでも聞いてみるといい。今までに作られた中で最も偉大な時計は何かと聞いたら、ヴティライネン やパテック フィリップの愛好家だって、1960年代のスピードマスターときっと答えるだろう)。 

 この1962本のナンバードエディションは39.7mmのサイズで、記念ボックスが付属しているが、何よりも重要なのはリューズガードがないこと。初期のスピードマスターは、初期のサブマリーナーのように、リューズを守るものが無く、コレクターにとってはそれが魅力なのだ。 オメガがこのことに気付き、この時計を製作するにあたってシラーの2998スピードマスターに忠実であろうと決めたことを、本当に嬉しく思った。

 しかし、よりマニアックなヴィンテージ時計のフォーラムでは、オメガのレジスターの針が間違っていたこと、つまり2998スピードマスターのレジスターの針が全て「リーフ」だったことに不満を語っている人もいる。 そして、確かに、よりよく知られているRef.2998スピードマスターの多くは、実際にリーフハンドを備えていた。 しかし、人々が理解していないのは、2998スピードマスターには異なるサブリファレンスが存在し、シラーが宇宙で身に着けていた時計は、実際には後のRef.2998(-5または-6のいずれか)であり、レジスターの針は、多くの人が信じているようなリーフではなく、シンプルでストレートなポインターだったということだ。 シラーが実際に着けた時計は以下の写真で見て欲しい。

 宇宙飛行士ウォルター・シラーが所有していたオメガ スピードマスター Ref.2998では、3つのレジスター全てで薄く尖った針が見える。最近のフォーラムで新しい人たちが、シラーの時計ではリーフ針を通常の尖った針と交換したと言い、それは珍しいことではないと言うが、私はそうは思わない。シラーの時計は、その後のRef.2998にそっくりだと思う。

 ということで、宇宙で最初に着用されたオメガとファースト オメガ イン スペースを比較してみると、全く同じなのだ。オメガが秒針にリーフ針を使用し、クロノグラフカウンターに使用しなかったのは少し不思議なことだが、もしかすると彼らは(他の多くの人と同じように)どちらの針がシラーの時計のオリジナルなのか分からなかったため、賭けをせずに両方の針を採用することにしたのではないだろうか。   歴史的に、それは正確ではない - シラーの時計はストレートハンドのみをだったようなので、それは少し奇妙である - しかし、それはあら探しというものだ。

 ヴィンテージ時計ファンたちは、この2012年製オメガ スピードマスター " ファースト オメガ イン スペース " リエディションについて、他のスピードマスタープロフェッショナルのようなヘサライトクリスタルの代わりに、サファイアクリスタルを使用していることに気づくだろう。 確かにサファイアは、より堅牢な材料であり、より近代的だが、他のムーンウォッチのオリジナルがヘサライトを使用している限り、この時計もそれに忠実でないといけないと思う。おそらくそれは単にサプライヤーの問題であり、オメガはこの小さいサイズのヘサライトクリスタルを手に入れることができなかった(標準的なプロフェッショナル ムーンウォッチはこの時計よりも約3mm大きい)ので、別の時計から通常のサファイアクリスタルを借りたのだろう。大したことではないが、注目すべき点だ。

 このスピードマスターの復刻版の内部には、手巻きのCal.1861が搭載されている。これは実に堅牢なムーブメントであり、この場合も全く問題ないが、ヴィンテージのCal.321ムーブメントを入手して搭載することが可能だったかどうかを考えずにはいられない。321はまさに伝説であり、1968年頃までスピードマスターに使用されていたムーブメント(レマニアをベースとし、コラムホイールを搭載した、これまでに製造された中で最も優れたムーブメントの一つと多くの人が考えている)なのだ。 明らかに、調達は困難だが、もしオメガがそのようなムーブメントを確保していたなら、何年にもわたって称賛を得ていただろう。 一方で、パテックが新しい時計用にヴィンテージのクロノムーブメントを調達することができるならば、他のメーカーにも出来るだろう。

 また、オメガが初期のスピードマスターの最も顕著な特徴の一つである12時位置のアプライドロゴを用いたことを私は本当に気に入っている。また、この時計のためにタキメーター上の "90 "の上に "ドット "を持つ特別なベゼルを生産していたならば(ベゼルがオリジナルであると仮定して、時計が初期のスピードマスターであるかどうかを見分けるもう一つの方法)、それは非常に見事だっただろう(まあ完全に非現実的だが)。 

 結論として、この新しいスペシャル・エディデョンのスピードマスター ファースト オメガ イン スペースは、全体的に全てを正しく再現した忠実なオマージュだといえる。確かに、あちこちに完璧ではない点があるが、この地球上で完璧といえる時計はほんのひと握りであり、それらは全て大昔に作られたものだ。この時計は、手巻きのスピードマスターを手に入れたいが、ヴィンテージを購入する手間をかけたくないという人には本当に最適な選択だと思う。この時計の価格は53万円(税抜)。詳しくはこちらをクリック