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Auctions HODINKEE編集部でNYファンタジーオークションドラフトを開催

HODINKEEの大のヴィンテージファン3人が、ニューヨークオークションをプレビューしながら10万ドルの予算で対決をする。果たして誰が最高のコレクションを築き上げるのだろうか?

オークションといえばジュネーブが注目される。次は香港で、今年は“The OAK Collection”の初セールや、その他オークションのパフォーマンスが主に注目され、一部では軟調な市場の兆候と見られていた。しかし今シーズン最後の大きなオークションのために、各ハウスは私たちの小さな国、古きよきアメリカへと戻ってきた。

 プレビューの醍醐味のひとつは、100万ドルの予算がなくともレーダーの目をかいくぐって、クールなものを手に入れたりコレクションを作ったりできるような、手頃な価格のロットが探せることだ。そこで私はこんなことを思いついた。HODINKEEのヴィンテージ愛好家3人である、リッチ・フォードン、トニー・トライナ、そして私が、もし10万ドルの予算のなか、クリスティーズ、サザビーズ、フィリップスのオークションで好きなものを入札できるチャンスがあったとしたら、何を競り落とすだろうか? ということだ。私たちは、よりリーズナブルな見積もりの“手頃な”ロットを集めた。リッチ・フォードンは、それらを比較的興味深く、挑戦的な組み合わせになるようピックアップを手伝ってくれた。雨の降るニューヨークの金曜午後、私たちはZoomに飛び乗って交代で演壇に立ち、全部で1時間くらいかかった。シートベルトを締めて!

 基本のルールはこうだ。

  • ひとり当たり10万ドル。外部資金も保証人も信用も、そして借金を肩代わりするために将来のオークションに自分の時計を出品することはない。
  • すべてのオークションハウスはバイヤーズプレミアムを快く放棄しているので、最終的な落札額がオールイン価格。諸々の計算は必要ない。
  • オークショニアは自分のロットに入札できる。“シャンデリア入札”(オークショニアによる架空入札)ではないが、小槌を持っているかどうかに関係なく、欲しければ買うことができる。

 売買条件を読んだところで、入札に入ろう。


クリスティーズ ロット94: パテック フィリップ プラチナ製懐中時計、ダイヤモンドインデックス、シカゴのSpaulding Gorhamによる販売とサイン

マーク: HODINKEEオークションへようこそ。ここでは多くの関心を集めているパテック フィリップを始めとした、他人のものを多く販売している。その関心は、懐中時計で物事を始めるという事実に対する一般的な混乱だけではない。私のショー、私のルールだから、懐中時計があるのは知っているだろう。みんなパドル(入札札)の準備はできた? トニー、君は1013番だね。

トニー: これはどの懐中時計だったかな? ああ、これが欲しかったんだ。スポルディング(Spaulding)社はシカゴの小売店だった。

マーク: ああ、このなかにシカゴ男性がふたりいるから、これはおもしろいかもしれない。

トニー: 6000ドルなら確実に買うね。

リッチ: 8000ドルだ。“ローワー・イースト・サイド”で裏にLESと刻印があり、しかもニューヨークとシカゴ!

トニー: 私は降りるよ(笑)

マーク: 8000ドルで落札だ。私は7500ドルで落札しようと思ったが、8000ドルで落札するのが妥当だと思うし、オークションはまだたくさん残っている。このロットはリッチ・フォードンが8000ドルで勝利した。好調な滑り出しだね。

トニー: 見積もりをすっ飛ばすとはなんて素晴らしい戦略なんだ。8000ドルまで跳ね上がり、彼はこのロットを獲得した。


クリスティーズ ロット62: IWC 18K手巻きセンターセコンド時計、クロワゾネエナメル文字盤

マーク: 次のロットは、美しいクロワゾネダイヤルが付いたIWCのセンターセコンドウォッチだ。認めたくはないが、この時計が欲しいんだ。でもリッチのほうがこの時計のコンプをよく知っているような気がするから、頭痛の種になるかもしれない。これはスターンダイヤルだろうか?

リッチ: 間違いないね。

マーク: これは買おう。このようなクロワゾネ文字盤がずっと欲しかったのだが、クリスティーズはケースから出していなかったので知らなかった。1万5000ドルで参加しよう。

リッチ: この時計はとても気に入っているが、この時代のクロワゾネ文字盤のなかでは少しつまらないと思わないか? 最近フィリップスで販売されたような、この時代のほかの文字盤が持つポップさがない。あまり多くの情報を伝えたくはないのだが、こちらは36mm径、搭載しているのはCal.89で、より興味深いラグが付いている。だからコンプを捨てるべきだとは言わないが…1万6000ドルで行こう。

マーク: では1万7500ドル。

リッチ: オーケー、2万ドルだ。

マーク: うーん...今カタログをチェックさせて欲しい。ほかに何が出てくるのか確認したい。これは欲しい時計なんだが、あとから資金が必要になるかもしれない。

トニー: あまり時間をかけすぎないでね。ほかの入札者がフェアじゃない。

マーク: うわー、大変なお客様がいるね。では2万ドルで売ろう。ああ...行っちゃった。売れた。

リッチ: いい買い物をした。その場にいる人たちや欲しい人にもよるが、これは3万から4万ドルの時計だと思う。風防にもクラックがある。とても独創的だ。注意しなければならないのは、これらの時計を実際に見たことがないということだが、それでもここから見る分には素晴らしい。うれしいよ。


クリスティーズ ロット92: カルティエ タンク ルイ ウルトラシン“ロンドン” イエローゴールド ヘリンボーン ブレスレット、1971年製

マーク: クリスティーズの最後は、すでに多くの関心を集めている時計をピックアップした。有名な紳士の所有物であり、YG製ケース&ヘリンボーンブレスレットを備えた、ロンドン製カルティエ タンク ルイ “ウルトラシン”だ。職人技が光るブレスレット、サイズ感も抜群だ。完全なロンドンホールマークもある。私が夢見るようなタンクではないかもしれないが、いいものだ。

トニー: それなら入札に参加しなくてもいい。私がそれを受け取るだけだからね。

マーク: さて、いくらから始めようか?

トニー: では最低価格の1万5000ドルから。

マーク: 2万ドルだ。

トニー: 信じられないな。2万5000ドル。

マーク: 2万5000ドル? そうか…ブレスレットのサイズが心配なんだ。余分なリンクは買えないし。

トニー: そうだった、サイズは何に合うのか?

ッチ: 175cmだから、ほぼ7インチだ。

マーク: 3万ドル出そうかと思っていたのだが、そんな身につけられないような時計が欲しいだろうか? まあ、前からカルティエが欲しかったんだけど。わかった、3万ドルだ。

トニー: 3万5000ドルだ!

マーク: 今、あなたと争いたくなったよ。4万ドル。

トニー: 割引入札をお願いしたいね。4万2500ドル。

マーク: …着用できない時計に4万ドル払わなくて済むだけでもありがたい。それに、前に自分の入札をぶつけたじゃないか。

トニー: コンディションレポートによると、文字盤がわずかに右に傾いているのが気になるが、まあ、すでに私の時計になったからいい。

マーク: よし、ハンマーが上がった。ほかに入札者はいない。これが最後のチャンスだ。4万2500ドルで新しい紳士が落札した。おめでとう。


フィリップス ロット16: オメガ Ref.2582/2583 コンステレーション “新古品”

マーク: 次はフィリップスに移ろう。まずは1956年頃製の18KYG、“新古品”コンディションのオメガ コンステレーションだ。この日の最安値である4000ドルからスタートしよう。そろそろ手を出したい気分ではある。過去に、本当に気に入っていた個体を2本逃してしまったことがあったが、それでもコンステレーションが私に合うかどうかわからない。強く思ったことはない。うわー、ここで入札者を誘惑するとは、本当にいい仕事をしているな。

リッチ: 心配しないで。この時計はオーレル・バックス(Aurel Bacs)が販売前に、いかにヤバいコンディションであるかをInstagramで公開予定だ。“世界最高のコレクターは皆、コンディションにこだわる”。これはそんな時計になるかもしれない。2万5000ドルくらいで取引されそうだ。

マーク: ああ、オーレル、あなたは私を説得してくれた。7000ドルから始めよう。

トニー: 次の刻みは? 8000ドルか?

マーク: そうだね、8000ドルかな。<沈黙>...本当に? 誰もいない? 最後のチャンスだよ。頼む。オーレルが私に競り負けると確信した時計に7000ドル費やしたことに後悔し始めている…でも、まあいい。7000ドル支払おう。


フィリップス ロット18: ホイヤー オータヴィア オリーブグリーンPVDをノーリザーブで提供

マーク: さて、リッチが入札をまとめるのに素晴らしい仕事をしてくれたので、ほかに演壇に立ちたい人はいる?

トニー: 1回やってみるよ。次はリザーブなしのロットだ。聞いただろう! リザーブなしだ。珍しいオリーブPVDコーティングのステンレススティール製ホイヤー オータヴィアだ。この入札は5000ドルのリザーブからスタートだ。6000ドルはどう?

マーク: 6000ドル? それならやろう。

トニー: ああ、申し訳ないが今7000ドル入った。リザーブがないことが、この時計への関心を集めたのだと思う。PVDケースを見て。こんなのなかなか見つからないよ。普通は死ぬほど傷だらけだ。8000ドルだとどう?

マーク: 1万ドルだそう。結構気に入ってるんだ。これのイスラエル国防軍用バージョンは、もっと高い値段で売られている。でも、君の言うとおりこれはいい時計だ。1万ドルで売って欲しい。

トニー: どうやらほかの予約入札者をノックアウトして、長身の紳士が1万ドルで落札したようだ。


フィリップス ロット39: A.ランゲ&ゾーネ Ref.310.025F ランゲマティック・パーペチュアル

トニー: 今日のセールのランゲまで到達した。待って、カタログのページをめくらせて...美しいA.ランゲ&ゾーネのパーペチュアルカレンダーウォッチだ。しかも素晴らしい。それに何か装備されている…ストライキング機構がついている? 本当?

マーク: いや、とにかく素晴らしいコンディションというだけだ。時計オークションにアート部門の人間を参加させたからこうなったんだ。

トニー: 混乱させてしまってすまない。いいだろう。とにかく全体的に良好なコンディションだ。すでに2万8000ドルの入札が入っている。2万8000ドルだ。3万ドルはどう? 3万ドルはいるか。

リッチ: 入札!

トニー: 3万ドルで入札。3万2000ドルは? あ、3万2000ドルが入った。3万5000ドルは?

リッチ: 3万5000ドル。

トニー: 3万5000ドルが出た! 4万ドルはいる?

マーク: 4万ドルだ。

トニー: おお、4万ドルまで来た。私の入札は全滅だ。4万5000ドルは?

リッチ: 4万5000ドル。

トニー: ランゲのこの素晴らしい、私が言うところのパーペチュアルカレンダーに、4万5000ドルかけた入札者が2人いる。4万5000ドルだ。そう言ったかな? 追跡するのは難しい。現在の入札額は4万5000ドルだと思う。

リッチ: はっきりさせておこう。私は今、この時計を落札している。

マーク: 5万5000ドルまで上げよう。5万5000ドルだ。迅速な入札をありがとう。後ろの背の高い紳士。6万ドルはいかが?

リッチ: 電話を切るよ。

マーク: 本当に? プラチナのウェレンドルフブレスレットなのに?

トニー: 素晴らしいパーペチュアルカレンダーとお揃いのプラチナブレスレットで5万5000ドルか。いいものを手に入れたな。


フィリップス ロット47: パテック フィリップ パーペチュアルカレンダー懐中時計、1891年製

トニー: パテックを手に入れたよ。資料はないようで、古いパテック フィリップのパーペチュアルカレンダー懐中時計だというだけだ。古い懐中時計を持っているね。

マーク: 本当に興味をそそられるよ。

トニー: ただ注意して欲しい点がある。コンディションレポートには記載されていないようだが、7時と8時位置のエナメル文字盤にクラックがある。さて、1891年につくられたこの美しいパーペチュアルカレンダーを開けるために、1万ドルを用意した。1万2000ドルの人はいるか?

マーク: 1万2000ドルで入札。

トニー: 著名かつ尊敬される懐中時計コレクターから1万2000ドルで入札された。1万4000ドルはいるか? 電話入札では1万4000ドルがいる。感謝しよう。香港からは1万4000ドルで入札。1万6000ドルはいるか? 1万6000ドルだ。懐中時計コレクターはどうか。

マーク: 1万6000ドル? 1万6000ドルか…。

トニー: 1万6000ドルだ。どうだろう。

マーク: 入札するつもりはなかったが、声に出して独り言を言わないようにといういい戒めになったよ。

トニー: パドルが上がったのを見た。1万6000ドルで落札だ。

マーク: おいおい、予算がすぐになくなってしまった。でも悪くないね。


フィリップス ロット48: ヴァシュロン・コンスタンタン クロノグラフ Ref.4072 イエローゴールド、ゲイ・フレアーブレスレット

トニー: 次はヴァシュロン・コンスタンタンのクロノグラフ、Ref.4072だ。美しいゴールドに揃いのゴールドブレスレット、ツートンダイヤルを備える。私から入札を始めよう。2万ドルだ。2万5000ドルの人はいるか?

リッチ: 2万5000ドルで入札。

トニー: では3万ドルで。この美しいゴールドのヴァシュロン・コンスタンタン クロノグラフに3万5000ドル出す人はいるだろうか? 3万5000ドルはいないか? これは本当にいい。よし、3万5000ドルだ。持って帰るよ。3万7000ドルで礼儀を尽くそう。では4万ドルは?

マーク: 予算が残っていない。

トニー: 多分そんなことはないだろう。だから3万7000ドルで済みそうだし、これで私もおそらく脱落だ。ここから先はリッチ・フォードンの独壇場になるだろう。


フィリップス ロット49: パテック フィリップ Ref.96 インダイレクト・センターセコンド&セクターダイヤル

トニー: 次は美しいパテック フィリップ Ref.96のインダイレクト・センターセコンド&セクターダイヤルだ。まずは2万ドルから。2万5000ドルの人はいる?

リッチ: (しばらく間を置いてから)入札するよ。

マーク: ここで早くに大金を使ってしまったことを後悔しているよ。あのオメガを返せたらいいのに。

トニー: ああ、もう8万9000ドル使っているね。

リッチ: あのときは本当に熱い瞬間だった。4つのロットを連続して落札したんだ。

トニー: まあ、どうせあと3万ドルあるんだから、リッチは何が欲しいんだ? このパテックに乗るか乗らないか?

リッチ: 3万5000ドルまでならいくよ。この時計に関してはそれが妥当だと思う。

マーク: 私も賛成だ。これの大ファンだからね。これとIWCは確かに狂っているが、リッチはここでそれを正しくした。あの男性に売ってくれ。


フィリップス ロット124: ロレックス Ref.4062 クロノグラフ “モネーテ”

マーク: よし、これは私が引き継ごう。次は魅力的なSSとローズゴールド製ツートンロレックス Ref.4062 “モネーテ”クロノグラフ。素晴らしいコンディションだ。とても魅力的な文字盤で、美しくふくらんだ夜光も素敵だ。ケースにはコインエッジ装飾が施され、ラグは幻想的な形をしている。2万5000ドルからとなっているが、このロットに興味がある人は?

<反応なし>

マーク: ああ、見てくれ。時代錯誤の奇妙な形をしたクルマに乗ってやってきた、オーバーオールを着た英国紳士がいるが、彼は入札する気満々のようだ。奥の男性は3万ドル、帳簿には3万5000ドルとある。では4万ドルはどうだろう? 奇妙なネオヴィンテージウォッチと、パテックのガレージドアのコレクターにとっては4万ドルだ。今、4万5000ドルの電話入札があった。次は5万ドルだ。ハンマーが上がった。最後のチャンスだ。これは公正な警告だ…5万ドルでミスター・マニア、フィル・トレダノ(Phil Toledano)が勝利。


フィリップス ロット122: ジャガー・ルクルト Ref.E168 アンチマグネティック クロノメーター

マーク: 残り3ロット、誰が手に入れるんだ? 間違いなく私ではない。君たちは私に競り勝つことができるからだ。しかし次に紹介するのは、素晴らしいジャガー・ルクルト ジオフィジックだ。Ref.E168のこの個体には、ここにいる入札者から関心が寄せられているようだ。センターセコンドと夜光針が美しい、クロノメーターの腕時計である。

トニー: 2万ドルから始めよう。

マーク: 私たちの低い見積もりから大きくジャンプした。ここに競争相手がいるとは思えない。変わった時計でおもしろいが、あと2ロットあるから2万ドルにて速攻手を打とう。


サザビーズ ロット55: カルティエ ベニュワール、チャーリー・チャップリンが妻のウーナ・(オニール・)チャップリンに贈ったモデル

マーク: さて、リッチフォードンの独壇場だ。トニーは予算を使い果たし、私は1万1000ドル残っていて、これを私から盗むかどうかは君次第だ。このカルティエ ベニュワールには、刺激的な来歴がある。チャーリー・チャップリン(Charlie Chaplin)が妻のウーナ・オニール・チャップリン(Oona O'Neill Chaplin)にプレゼントした時計なのだ。そして私はベニュワールの大ファンだ。リッチ、何か言うことは?

リッチ: 正直に言うと、私はお金を持っているし、ここの実績のために追加料金を払うのは正当だと思う。これは2万7000ドルくらいになると思う。そう言っておこう。

マーク: 言いたくないけど、リッチの言うとおりだろう。私もこの時計を実際に見たことがあるが、使い古されてはいるもののまだまだ綺麗な状態だ。さて、私たちの尊敬するヴィンテージ愛好家に、2万7000ドルを。最後のロットに移ろう。


サザビーズ ロット113: ティファニー カレンダー クロノグラフ ゼニス3019 “ハンマーコレクション”

マーク: リッチ、これにフラグを立てたのは君だと思うから、君と私にかかっているだろう。私は1万1000ドル、あなたは1万ドルくらいか。ティファニーブランドの時計のなかに、ゼニスのエル・プリメロムーブメントが入っている。その気になればハントできるんだけど、どう思っている?

リッチ: 率直に言って、1万ドルでもいい。だから君が遠慮してもいいなら…

マーク: 聞いて欲しいのだが、私はこの時計に強い思い入れはないし、すでにいくつかの時計を所有している。それならよろこんでお任せしよう。ティファニーのエル・プリメロが1万ドルだ。おめでとう。

 これでオークションは終了だ。ホワイト・グローブ・セール(オークションに出品された全ロットが落札されること)のお祝いに、奥でシャンパンを用意しよう。時計の回収のため、できるだけ早くご精算をお願いしたい。しかしその前に報告しよう。トニー、君は10万ドル使って3本の時計しか手に入れなかったけど、どれもいい時計だったよ。リッチ、君は10万ドル全部を5つの時計に使った。一方、私は時計を4つしか買わなかったのに8万8000ドルも使った。お金が残っているのは私だけなので、みんなをP.J.クラークスのハンバーガーに連れて行くことにしよう。入札についてのみんなの感想は、以下のレポートをご覧あれ。


トニー・トライナ

 厳格な規律を守りながら、今シーズンのオークションの入札に数本の時計を割り当てた。それが戦略であれば、欲しいものを手に入れるためにほとんどお金を惜しまなかったということになる。3本の時計にお金を使いすぎただろうか? いや、最悪の場合、私は単に“適切な”価格を支払うのが早すぎただけだと思いたい。コンディションのいいクラシックウォッチに、高すぎる値段はつけられない。

カルティエ ロンドン タンク: 4万2500ドルで落札

 時計市場が減速しているとはいえ、カルティエはまだまだ熱い。私はタンクが大好きで、何年も前からいくつか所有しているが、カルティエ ロンドンの例が欲しいと思っていた。ジャック・カルティエ(裏蓋に刻まれた“JC”のホールマークが気に入っている)と、デザイナーのルパート・エマーソンによるコラボレーションは、カルティエの中で最も奇抜な腕時計を生み出した。そのデザインは生真面目なカルティエ・パリに比べると、それほど真剣ではないように見える(そして同じ価格で推移する現代のカルティエウォッチよりも、これに4万ドルを費やすほうがマシだ)。

ヴァシュロン・コンスタンタン 4072: 3万7000ドルで落札

 ヴァシュロン・コンスタンタン 4072は、私のお気に入りのヴィンテージクロノグラフのひとつ。どう見てもパテック 130だが、価格は数分の1だ。その小さなサイズと文字盤の名前のせいでニッチな魅力を備えるが、私にはちょうどいい。それでも、11月には珍しいツートンカラーの個体が10万ドル近くで(本当に)落札されている。そう考えると、ゴージャスさとゲイ・フレアー社製ブレスレットがマッチしたこの例がこの金額というのはお得だと思う。ツートンダイヤルにはアプライドインデックスがある。私が“タイプ4”ダイヤルとして記録しているシリアル番号の範囲内に収まっており、状態もよさそうだ。まだまだ言いたいことはあるが、これだけ言っておけば十分だろう。この収穫に感激している。

JLC ジオフィジック: 2万ドルで落札

 最後に、少しお金が余ったので、ジャガー・ルクルトのジオフィジック E168に使った。私はJLCのヴィンテージウォッチにますます興味を持つようになったが、なかでもジオフィジックはパテック 3417やロレックス ミルガウス、IWC インヂュニアと同世代の耐磁時計として、最も興味深いもののひとつである。先月、別のE168が3万1000スイスフラン(日本円で約521万4000円)で落札されたが、それはより望ましいとされる“エクスプローラー”ダイヤルを持っていた。市場は軟調で、私はこのクリーンかつシンプルな美しさが好きだ。さらにJLCによると、SS製のE168は1038例しか生産されておらず、かなりの希少性があるという。


マーク・カウズラリッチ

 私はオークションでやってはいけないことの完璧な例だったような気がする。しかし、誰かがそうなるはずなのだろう。特に、ファンタジーシナリオではお金は架空のものであり、ポイントは重要ではない。オークションの前によく調べて、自分が本当に欲しいロットと使ってもいい金額を自分で決めるのではなく、私はオークショナーの夢を見て、重要なロットを逃したという感情に流され、気分をよくするためにほかのものを買っていた。仲間に囲まれていると思っていたが、実際はサメと一緒に泳いでいた。

 今にして思えば、クロワゾネ文字盤のIWCをもっと強く入札すべきだった。もし私が時計に高いお金を払うのであれば、あれは私がよろこんでそうした時計だった。パテックのRef.96も同様だ。これらの時計はしばらくのあいだ、私のレーダーにあった。市場で見る平均的なものよりはるかに興味深く、文字盤も(写真で見る限り)素晴らしく、YGケースも素晴らしかった。その代わり、オメガ コンステレーションに声をかけられて入札の封印を解いてしまい、そしてその次のいくつかのロットに勢いよく入札してしまったのだ。

 ランゲマティック・パーペチュアルが一番好きというわけではないが、圧倒的にベストバイだったと言える。ウェレンドルフのブレスレットはもう製造していなく、人々は1コマのリンクにさえとんでもない金額を提示している。さらにプラチナ製で、文字盤はドイツ製、取り外し可能なブレスレットが付いていて、理論的には別の時計にも使えるので、実際のオークションだと9万ドル(日本円で約1325万円)はくだらないと思う。

 私のお気に入りは、オータヴィアと、パテックのパーペチュアルカレンダー懐中時計の2本だ。PVDコーティングされた時計が大好きで、これはホイヤーの素晴らしいウェアラブルオプションである。払いすぎたかもしれないが、相場は流動的なので何とも言えない。懐中時計に関しては、もし私がこれを買わなかったらどうなっていただろう? リッチとは事前に話していたし、文字盤にクラックが入っていたからといって、彼が私と戦うことはないだろうと思っていたが、そんなことは気にならなかった。文字盤は1891年製の時計にしては悪くなかったし、時計製造技術は今でも素晴らしく、優しく修復すれば文字盤のクラックを除去して目立たなくすることもできるだろう。私はドレスウォッチもスポーツウォッチも、さらにはヒストリカルピースも手に入れたのだから、あまり悪い気はしないはずだ。


リッチ・フォードン

 天才でなくとも、今日はこれらを乗せたことに気づくだろう。私は今回のファンタジードラフトの前に、下調べと予習をしていて、何もかもが明白だった。私たちは皆、トニーがカルティエのブレスレットを高値で買おうとするのは、彼の細い手首にしか似合わないことを知っていた。そしてマーク、私は彼がリストに載せていなかった、あるいはニセモノの壇上に上がる前に存在すら知らなかったランゲ・パーペチュアルを、5万5000ドルまで引き上げた。そこから先は、実際に素晴らしい時計を落札し、0ドル残して家に帰るという、完璧なファンタジーオークションの日を成し遂げた。

パテック フィリップ プラチナ製懐中時計: 8000ドルで落札

 最初のロットだったので、小さな練習としてこのロットで観客の様子をうかがった。マークは懐中時計の夢を見ているし、トニーはシカゴに住んでいる。だから、ここにはそれぞれのための何かがあった。彼らがどれだけ安く買うかを見るべく、多めの増額をして遅れて飛び込んだとき、すぐに理解した。オークションに出品する前なら、この時計は私のトップ5には入らなかっただろうが、8000ドルでプラチナのパテックを手に入れ、優位性を主張することができて大満足だ。さらに私はシカゴ出身で、トニーはまだそこに住んでいるかもしれないが、彼はインディ出身なのだ。これは私の時計だ。

IWC クロワゾネエナメル文字盤: 2万ドルで落札

 観客が少なくなっているのを感じ、私はオークションで最も欲しかった“手頃な”時計に、自信を持って入札できると感じた。事前準備の段階でリストに入れ、手に入れるために必要なものは何でも支払うだろうと最初から思っていた。必要ならもっともっと上に行くつもりだったのに、気づかなかったのは彼らのせいだ。私は長いあいだ、IWCの特別なCal.89が欲しかったのだが、アダム・ビクター(Adam Victor)との最近のやり取りのなかでクロワゾネも欲しくなったので、これは完璧だった。Zoomチャットで言い負かしたけど、この文字盤の色がロロ・ピアーナらしくて好きなのだ。もしファンタジーオークション以外でこのくらいの数字を叩き出せば、近いうちに私のInstagramで見かけることになるかもしれない。

IWC Cloissone

リッチの寝耳に水だった、IWC クロワゾネ。

フィリップスのロット16とロット39について

 私が独断で、マークの予算のうち6万3000ドルを使わせたことを気づかれないようにした。

パテック フィリップ Ref.96、カルティエ ベニュワール、ティファニー クロノグラフ: 3万5000ドル、2万7000ドル、1万ドルで落札

 最後の3本の時計をひとまとめにする。簡単に言えば、私はこのオークションの前半を圧倒的に支配していたので、後半に私が欲しいと思った時計に誰も入札できなかったのだ。この96はゴージャスで、私がいつも96に求めるダイヤルを持っているだけでなく、小振りなヴィンテージカラトラバにふさわしいYGケースも備えている。これは数日後にフィリップスでプレビューを見る予定だ。この文字盤とケースを実際に見たら、私がどれだけうまくやったかがよくわかるだろう。ベニュワールは、本当におもしろい出自を持っていて、小さく、本当に女性サイズであるために見逃される可能性があると思った。これは今回のニューヨークオークションシーズン中、私が実際に注目しているロットのひとつであり、喜んで2万7000ドルを支払おう。最後の時計は自身の勝利を証明するために買った。言うなれば優勝トロフィーだ。