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Retailer Spotlight 新宿から3代にわたって日本の時計ブームをリードするISHIDAという存在

1990年代のスウォッチ/G-SHOCKブームを牽引し、機械式時計文化を日本に根づかせてきた「BEST新宿本店」が、2021年「ISHIDA新宿」に進化した。時代ごとに形態を変えながら国内最大級の正規時計店に躍進した名店の新たな一手とは?

 巨大なビジネス街や歓楽街が広がる東京・新宿は、時代ごとに独自の流行や文化を発信し、変貌を続けてきた街。いまや乗降客数世界一のギネス記録を持つ新宿駅に程近い「BEST新宿本店」も、時勢に合わせて店舗の形態を変えてきた珍しい正規時計店といえる。

 前身の「石田商店」を石田嘉孝氏が創業したのは25歳のときだった。生まれ育った京都を離れて5年、時計と貴金属の卸会社で働いた経験と見識を生かし、時計や宝石をはじめ、家電、楽器、衣類、雑貨など多彩な商品を仕入れて売った。高度成長期の波に乗って店舗は急拡大し、1979年に株式会社「ベスト販売」を設立。だが、バブル景気がはじけ、ディスカウンターとしての将来に不安を感じていたころ、長男の石田憲孝氏が1992年に入社して大改革を断行した。商材を時計と貴金属に絞り、若者に人気が出はじめていたスウォッチとG-SHOCKのブームをリードする形で知名度は全国に広がる。さらに1995年、ブライトリング・ジャパン設立後の正規店第1号となったのを皮切りに、それまでの並行店から、アフターサービスを含めて“満足が継続する”正規販売店へ路線変更したのである。

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「ディスカウントBOXベスト」の店名を掲げていた1980年代の店舗。

2代目・憲孝氏が入社した頃。増設した店舗には、まだ「毛皮」の看板も。

 時代の一歩先を行く2代目・石田憲孝氏の戦略は見事に成功した。全国に店舗を広げ、2002年には世界初のブライトリング専門店(現在の「ブライトリング ブティック 東京」)を銀座にオープンし、「ISHIDA表参道」、「ISHIDA N43°」(北海道・札幌)など積極展開を続けた。スイス時計界の重鎮とも交流を重ね、本格機械式時計文化を日本に根づかせるために、「BEST」の名が多大な貢献を果たしたのは間違いない。

 ここ数年でも、2019年「ISHIDA WATCH ららぽーとTOKYO-BAY」(千葉・船橋)オープン、2020年12月、創業者の次男・石田充孝氏が3代目社長に就任、2021年1月、BEST新宿本店の大規模拡張工事がスタートし仮店舗営業へ、と矢継ぎ早に仕掛けて業界の話題をさらっている。

「3代目の役割は、天才肌だった父と兄の想いを大きくすること」

 2代目・石田憲孝氏がBESTに入社した1992年に、弟の充孝氏は伊藤忠商事に入社した。「将来的に家業に関わろうとは決めていなかったけれど、いずれ父と兄を外からサポートできればいいな、とぼんやり考えていました」と、充孝氏は当時を振り返る。「ビジネスを理解しながら事業経営の知識を得るには総合商社が最適だと思ったのです。伊藤忠ではオーストラリアやイギリス、シンガポールに駐在して、子会社、関連会社の経営に携わり経営について勉強させていただきました」

 3代目社長に就任する直前には、世界的に有名な食品会社ドール ホールディングスのナンバー3(CFO)を務めた充孝氏。そのグローバルな経営体験を生かして、どんな店づくりを目指しているのだろうか。

 「ゼロから作った父と、それを全く違うものに変えた兄は、いわゆる天才肌でした。3代目の僕の役割は、ふたりの想いを大きくすること。これまではオーナー社長が全部決めて、スタッフはそれに従うやり方だったのですが、僕が同じことをすると、僕のスケールより会社が大きくなれない。だから、スタッフひとりひとりが自分で考える“強い組織”にしていくこと、経営人材を増やしていくことが当面の目標です。そして、お客様が“感動”し、“笑顔”になり、“夢”を実現できるような業界オンリーワンのお店を作りたい。そのために、ブランドコンセプトや歴史など、時計のストーリーを語れるスタッフが、フロアを超えてお客様をエスコートするコンシェルジュ制度を新たに導入しました。いつか全員がコンシェルジュを担うことで、さらにブランドを語ることができるようにしたいと思います。今回の店舗リニューアルを機に、店名も“BEST新宿本店”から“ISHIDA新宿”に改めます」

3代目社長・石田充孝氏が語るベスト販売の未来
ベスト ヴィンテージが意図すること

 3代目・石田充孝社長のスマートで洗練された戦略は、確かに初代・2代目の社長とはテイストが異なる。だが、石田家の血筋なのか、ビジネスに向かう熱き想いはまったく同質であり、周囲を巻き込んでいく不思議な力がある。たとえばヴィンテージ部門における劇的な戦略転換は、大いに社内を刺激し、早くもスタッフの意識が変わりはじめたようだ。

 「我々の強みのひとつは、新品と中古の両方を扱っていること。ただ、正規販売店という手前、地下1Fで展開していた中古専門フロア( USED)は、表舞台には出なかった。その名称を“BEST VINTAGE”に変え、今後は“ISHIDA”という今を語る正規時計部門と、“BEST”という過去を結びつけるヴィンテージウォッチ部門を会社の両輪に位置づけ、未来を作っていくつもりです」

 石田社長のヴィンテージに対するイメージは、誰かが使い古した“中古”ではなく、ブランドや時計の歴史が詰まった価値あるもの。文字盤の焼けも“味わい”として積極的に評価し、正規店ならではのアフターサービスを充実させる。スタッフも固定化せず、時計のストーリーを語れるヴィンテージ部門の人材を、あえて正規部門と入れ換え融合していくことで、ブランドの歴史の語り部となるスタッフがさらに正規時計販売を伸ばすと考えている。

 「BEST VINTAGEは、現在の仮店舗のまま1年ほど様子を見るつもりです。売り場が地下から路面になったことで、すでに店舗スタッフもお客様も変わりはじめました。ブランドによっては、正規店でタブーとされてきた中古時計販売ですが、SDGsの観点から経営を考えると既成概念をブレイクスルーする時期にきているのかもしれません」

【ISHIDA新宿】

■住所:東京都新宿区新宿3-17-12

■TEL:03-5360-6800

■営業:平日12:00~20:00/土日祝11:00〜20:00 ※無休

これまでG-SHOCK EDGEを展開していた隣の場所に、そのまま6フロア分の建物を新設する大規模リニューアル工事を経て、「ISHIDA新宿」が6月19日にグランドオープン。1階から5階までの正規取扱いは、増床した売り場スペースに最新のブランドコンセプトを導入したコーナー展開。特に3階のヴァシュロン・コンスタンタンは、日本最大級の売り場面積となる。

詳細は、ISHIDA公式サイトへ。

Words:Takahiro Ono