trophy slideshow-left slideshow-right chevron-right chevron-light chevron-light play play-outline external-arrow pointer hodinkee-shop hodinkee-shop share-arrow share show-more-arrow watch101-hotspot instagram nav dropdown-arrow full-article-view read-more-arrow close close email facebook h image-centric-view newletter-icon pinterest search-light search thumbnail-view twitter view-image checkmark triangle-down chevron-right-circle chevron-right-circle-white lock shop live events conversation watch plus plus-circle camera comments download x heart comment default-watch-avatar overflow check-circle right-white right-black comment-bubble instagram speech-bubble shopping-bag

In-Depth オリス キャリバー400が長寿命な理由

この強力なムーブメント(アクイスデイトにも搭載されている)により、オリスはシンプルさを美徳とした。


ADVERTISEMENT

昨年10月、オリスは新しい自社製ムーブメント、Cal.400を発表した。Cal.400は、2010年に先行して発表された10日間の珍しいノンリニアパワーリザーブインジケーター(主ゼンマイの巻き上げに伴い、1日を表す弧の大きさが大きくなる)と、非常に大きな1本の主ゼンマイ香箱を備えた手巻きムーブメントCal.110に続く、オリスにとって2つめの自社製ムーブメントだ。

 一方、Cal.400は、2つの香箱をもつ自動巻きムーブメントで、最大限の効率性と長寿命を目指して設計されている。この時計は5日間のパワーリザーブを備えており、驚くべきことに、オーバーホール推奨間隔は10年だ。

 そのアイデアは、時計製造においてトラクターと呼ばれるものを作ることだった。これはさまざまな時計に使用できるサイズのシンプルで強力なムーブメントであり、多くのオリスの時計が搭載するムーブメントから真の技術的ステップアップを提供するものだ。供給されるキャリバーを使用することは、オリスが手ごろな価格を維持するための大きな要素だが、新しいCal.400は単に自社の自慢するべきものではなく、考え抜かれたエンジニアリングであり、例えばアクイスのダイバーズウォッチのように、このキャリバーを使用する時計の所有者に大きなメリットをもたらすものだ。

 40万円以下のダイバーズウォッチの世界では今、激しい競争が繰り広げられているが、ダイバーズウォッチのキャリバーと同じくらい真面目なムーブメントを搭載した時計を探しているなら、アクイスをリストに加えるべきだろう。

 ムーブメントをイチから設計し始めるときにどこから始めればいいか疑問に思っている場合、その答えは次のとおり。サイズが重要だ。 ムーブメントのサイズは、それを使用できる時計の範囲を決定するものであり、サイズの問題が解決するまで、キャリバーのほかの部分を最終的に決定することはできない。

 「サイズは非常に重要です」とオリスCOOのビート・フィッシュリ氏は語る。「もし構造レベルでサイズを確定していなければ、製造前にこの定義をしなければなりません。そして、私たちのキャリバーの直径は30mmです。例えば、(セリタのキャリバー)SW-200よりも大きくしました。これは、単にセリタのムーブメントと互換性のあるものを作ったのではないことを明確に示しています。したがって、製造前から直径38mmのケースまで完璧なプロポーションで収めることができることが分かっていたのです」

 このムーブメントを開発した技術者と時計職人の目標の一つは、磁気耐性を平均以上にすることだった。Cal.400にはシリコン製のレバーとヒゲゼンマイが使われているが、シリコン製のヒゲゼンマイは使われていない。それにもかかわらず、このムーブメントは2550ガウスの磁界にさらされた後、日差10秒以下の精度を示した。“耐磁”時計の国際規格であるISO764では、200ガウスの磁場にさらされた後、日差30秒の精度を規定している。

 フィッシュリ氏は、素材に加えて、ムーブメントの物理的構成も、磁気耐性に驚くほど大きな影響を与えると説明する。

 「驚かされることもあれば、期待していたことが正しく立証されることもあります。磁気、その特性、磁場のなかでのムーブメントの振る舞い、そして何よりも磁場にさらされた後にどうなるか、それは素材選択の前から始まっています。それはすでにムーブメントの全体的なレイアウト、デザインに大きく影響されているのです。何層になっているのか? 歯車はどんなものか? 全体の構造そのものです。信じられないようなことですが、その影響はとても大きいのです。初期の段階でこのレイアウトのCal.400を用いて、ETAやSellitaの標準的なムーブメントとの比較テストを行いましたが、これが最初の重要なポイントであり、また少し驚くべき点でもありました」

 自動巻きムーブメントで最も摩耗しやすいのは巻上げ機構だ。特に巻上げローターのベアリングは常に動き続けており、時計のなかで最も大きな機械的負荷が発生している。また、両方向に巻き上げるムーブメントに必要なリバーサー機構も、摩耗や故障の原因となる。部品点数を減らし、信頼性を向上させるために、オリスは一方向に巻き上げる機構(リバーサーなし)を採用。また、通常のボールベアリングを排除し、スリーブ(アーム)とクリップで取り付ける方法(ボールベアリングなし)を採用した。

ADVERTISEMENT

 「そして、巻き上げ機構です」とフィッシュリ氏は言う。「私たちはアフターセールスにも長年の経験があります。自動巻きムーブメントを搭載した時計が修理に来たとき、最も頻繁に起こる問題のひとつが、ボールベアリングと回転ローターの方向を整流する反転システムを備えた巻上げ機構に関係しています。私たちの戦略では、これをもっとシンプルにしました。これらの種類の部品は省いただけです。一方向回転のローターを使っているので、反転装置は必要ありません。また、ボールベアリングをやめて、スリーブベアリングを採用しました」

 フィッシュリ氏は、ロングパワーリザーブとロングサービスインターバルの秘訣の一つは、単純にムーブメントの効率を最大限に高めるように設計することだと説明する。Cal.110の心臓部である香箱とは対照的に、2つの主ゼンマイ香箱は比較的低いトルクで作動する。「この2つの香箱は連続しているため、非常に長い主ゼンマイが得られるのです」とフィッシュリ氏は言い、「そして、ここで私たちが行ったことは、このムーブメントで解放される力を、本当に、というより劇的に減少させることでした。この主ゼンマイによってもたらされるトルクは非常に小さいものです」と語る。

 歯車の歯形や低慣性の脱進機など、すべての要素が効率化に貢献している。「ゼンマイから針までの効率比は85%。標準的なムーブメントの効率比は通常70%程度です」とフィッシュリは説明する。

 Cal.400は非常にシンプルな構造をしている。部品点数の多さがマーケティング部門の自慢になりがちな時計の世界において、Cal.400はその逆を行っているのだ。優れたエンジニアリングとは、一般的に必要最小限の部品数にとどめるものだということを思い出させてくれる。

 Cal.400は、特にブレスレット付きで37万4000円(税込)で販売されているアクイスデイトのような時計に搭載されており、スポーツウォッチに見ためと同様のタフさと信頼性を求める人にとって、非常に優れた付加価値を提供する。

アクイスデイトの詳しい仕様と価格については、Introducing記事をご覧ください。

All photos, Tiffany Wade.