Introducing シャネル　マドモアゼル プリヴェ ピンクッション

　シャネルのウォッチコレクションは、ふたつに大別することができる。ひとつはJ12や、ボーイフレンド、ムッシュー ドゥ シャネルといった定番のコレクション群。そしてもうひとつが、シャネルが自社工房で開発・製造する自社製ムーブメントを搭載するモデルや、ダイヤモンド、サファイア、ルビーなどのプレシャスストーンを大胆に用いたストーンセッティングウォッチ、そして芸術的な職人技の粋を注ぎ込んだメティエダールウォッチなどをラインナップするオートオルロジュリーコレクションだ。2023年、そのコレクションに内包される新たなモデルとして、シャネルはマドモアゼル プリヴェ ピンクッションを発表した。

　その名のとおり、このコレクションは布に針を打ち、縫製をするクチュリエール（お針子さん）に欠かせない仕事道具である“ピンクッション”が、インスピレーションの源。ピンクッションは、通常、金属製のカフの上に大きなドーム型のクッションをのせた形をしており、作業がしやすいように常に視界に入る手首に巻き、ピンや針を整理するドレスメイキングに不可欠なこのツールである。本コレクションは、そんなクチュリエールの手首を飾る機能的なジュエリーをイメージし、ピンクッションが持つスピリットを腕時計に取り入れた。手がけたのは、シャネル ウォッチメイキング クリエイション スタジオ ディレクター、アルノー・シャスタン氏だ。彼は次のように語る。

 「その構造は大胆なまでにシンプルである一方、オーバーサイズの文字盤は、メゾンの創造力を発揮する最高の舞台です。私はこのウォッチをメティエダールの技術的挑戦を表現するキャンバスにしたいと考え、5つのデザインを提案しました」

　彼が提案したのは、レースで表現されたカメリアの花、制作過程のジャケットのパターン、アイコニックなキルティングバッグ、宝石がちりばめられたブラックツイード、そしてダイヤモンドの刺繍と、異なる5つのモチーフから生み出されたデザインだ。それぞれの詳細については後述するが、レース モチーフとツイード モチーフでは、シャネルが株式の一部を所有し、友好な関係を築いているF.P.ジュルヌ所有のサプライヤー、カドラニエ・ジュネーブ製の文字盤を初めて採用した。では、それぞれまったく異なる個性を備えた5つのデザインの詳細を見ていくことにしよう。

　3つのメティエダールの技術を組み合わせ、カメリアのレースの魅力を表現したのが、このレース モチーフ。イエローゴールド製文字盤表面に独特の質感を与える手彫りを施し、それを半透明のグラン・フー エナメルの層で覆うことで、彫刻の繊細さを際立たせるとともにその質感に深みを与えた。そして、クリエイション スタジオがカメリアのレースを文字盤に描くために用いたのは、伝統的なデカール（転写）技術だ。さらに仕上げとして、繊細なデカールの連続した層によるカメリアのレース模様の上に、小さなパールと5つのダイヤモンドが散りばめられている。

詳細情報
・ブラックデカール（写し絵）でカメリアモチーフのレースを描いた18KYG製グラン・フー エナメルダイヤル（F.P.ジュルヌ所有のカドラニエ・ジュネーブ製）に、パールと5個のブリリアントカットダイヤモンド（～0.05ct）
・ダイヤル外周に120個のブリリアントカットダイヤモンド（～0.71ct）と18KYGのミニチュアパール装飾
・18KYG製時・分針の中心に1個のブリリアントカットダイヤモンド（～0.01ct）
・18KYG製リューズに10個のブリリアントカットダイヤモンド（～0.03ct）
・ダイヤモンド合計：392 個のブリリアントカットダイヤモンド（～3.87ct）

　ツイード モチーフでは、宝石をあしらった希少なツイードジャケットの制作過程のパターンを表現。ツイードの質感を見事に再現したジャケットは、ブレード（縁取り）に92個のダイヤモンドをセットし、ボタンを小さなパールで飾っている。ハサミ、指ぬき、メジャーといった、クチュリエールに欠かせないツールが、彫刻されたゴールドによって繊細に、そして生き生きと再現されている。文字盤外周には、シャネルのジャケットが持つ完璧なシルエットを演出するために内側に縫い付けられるチェーンと同様、ミニチュアサイズのチェーンによる繊細な縁取りが施された。

詳細情報
・真鍮にツイードエフェクト施しパターン段階のジャケットを描いたブラックラッカーダイヤル（F.P.ジュルヌ所有のカドラニエ・ジュネーブ製）
　―ジャケットの縁取りに92個のブリリアントカットダイヤモンド（～0.96ct）、4個のパールボタン
　―18KYG製の裁縫道具（ハサミ、メジャー、指ぬき）モチーフに1個のダイヤモンド（0.01ct）
・ダイヤル外周に120個のブリリアントカットダイヤモンド（～0.71ct）と18KYGのミニチュアチェーン装飾
・18KYG製時・分針の中心に1個のブリリアントカットダイヤモンド（～0.01ct）
・18KYG製リューズに10個のブリリアントカットダイヤモンド（～0.03ct）
・ダイヤモンド合計：480個のブリリアントカットダイヤモンド（～4.78 ct）

　重なるようにデザインされた、5つのアイコニックなハンドバッグが印象的なキルティング モチーフ。ハンドバッグモチーフはキルティング模様を彫刻したブラックマザー・オブ・パールの象嵌で表現。彫金で再現したゴールドのチェーンにはダイヤモンドのチャームを、バッグのクラスプにはバゲットカットのダイヤモンドをあしらい、華やかなアクセントを添えた。

詳細情報
・18KYG製ダイヤルにキルティング模様を彫刻したブラックマザー・オブ・パールの象嵌細工
　―18KYGでバッグ外周の縁取り
　―18KYG製のチェーンに9個のブリリアントカットダイヤモンドチャーム（～0.27ct）
　―5つのクラスプにバゲットカットダイヤモンド（～0.30ct）
・ダイヤル外周に120個のブリリアントカットダイヤモンド（～0.71ct）と18KYG製のミニチュアパール装飾
・18KYG製時・分針の中心に1個のブリリアントカットダイヤモンド（～0.01ct）
・18KYG製リューズに10個のブリリアントカットダイヤモンド（～0.03ct）
・ダイヤモンド合計：401個（～4.38ct）

　パール モチーフでは、ブラックツイード調の文字盤にロングネックレス、チェーン、ビザンチンモチーフのブローチがちりばめられた。イエローゴールドに手作業で宝石やラッカーの装飾を施したミニチュアのジュエリーは、ブラックツイードの質感を表現した立体的な文字盤の上に慎重に配置。外周に配した120個のブリリアントカットダイヤモンドと小さなゴールドパールの縁取りが、文字盤上のモチーフを引き立てる。

詳細情報
・ブラックツイード調ダイヤルに18KYG彫金で表現したジュエリー
　－1本のロングネックレスにパールと5個のブリリアントカットダイヤモンド
　－1本のロングネックレスにブラックラッカー装飾
　－2個のビザンチンモチーフのブローチにオニキス、2個のブリリアントカットダイヤモンド（～0.20ct）
・ダイヤル外周に120個のブリリアントカットダイヤモンド（～0.71ct）と18KYGのミニチュアパール装飾
・18KYG製時・分針の中心に1個のブリリアントカットダイヤモンド（～0.01ct）
・18KYG製リューズに10個のブリリアントカットダイヤモンド（～0.03ct）
・ダイヤモンド合計：394個のブリリアントカットダイヤモンド（～4.08ct）

　シャネル ウォッチメイキング クリエイション スタジオがこのエンブロイダリー モチーフの製作に際してイメージしたのは、スパンコールが刺繍されたブラックファブリックのエレガントな雰囲気。ブラックコーティングを施したホワイトゴールドにスノーセッティングでちりばめたダイヤモンドの輝きと存在感を強調するために、かすかなカーブを描く凸面文字盤を採用。ダイヤル外周に手作業でセットした小さなゴールドビーズと、黒地の上で光り輝く白いダイヤモンドがコントラストを描く。

詳細情報
・ブラックコーティングを施した18KWG製ダイヤルにスノーセッティングされた650個のダイヤモンド（～9.83ct）
・ダイヤル外周に18KYGのミニチュアパール装飾
・18KYG製時・分針の中心に1個のブリリアントカットダイヤモンド（～0.01ct）
・18KYG製リューズに10個のブリリアントカットダイヤモンド（～0.03ct）
・ダイヤモンド合計：917個のブリリアントカットダイヤモンド（～12.93ct）

　シャネルのウォッチメイキングには、一貫して、創業者ガブリエル・シャネルへのオマージュにあふれている。ガブリエル・シャネルは「黒にはすべてがある。白も同じ。その美しさは絶対なもの。それが完璧なハーモニーとなる」という名言を遺しているが、シャネル初のスポーツウォッチにして、黒と白のセラミックを使用したJ12は、まさにそれを体現したコレクションである。ほかにもボーイフレンドの持つ特徴的なケースは、シャネルのアイコンでもある香水「シャネル N°5」のボトルストッパーにインスピレーションを得たもの。そしてムッシュー ドゥ シャネルのムーブメントにあしらわれているほか、文字盤などにもライオンモチーフがよく使われているが、これはガブリエル・シャネルが獅子座生まれだったからにほかならない。

　マドモアゼル プリヴェ ピンクッションも、その例に漏れない。5つの文字盤デザインモチーフはすべてガブリエル・シャネルが生み出したシャネルの代表的なクリエイションであるし、ピンクッションが今回、腕時計のスタイルとして取り入れられたのも、彼女がパリ・カンボン通りのアトリエで過ごす際に、リボンを通してネックレスのように首から下げたハサミと、ピンクッションを常に身に着けていたというエピソードゆえだ。

　歴史あるラグジュアリーブランドはいくつかあるが、シャネルほど、ものづくりに創業者への尊敬と愛情を強く感じさせるブランドというのは珍しい。そう、ガブリエル・シャネルその人こそが、シャネルのエスプリでもあり、シャネルというブランドそのものなのだ。今なお、ものづくりのなかで生き続ける彼女のクリエイションがシャネルの魅力のひとつであることは言うまでもないが、きっと多くの人が、ファッションデザイナーとして、そして企業家として大きな成功を収めたガブリエル・シャネルその人に魅了されているのだと思う。マドモアゼル プリヴェ ピンクッションは、まさにそんなシャネルらしい魅力に満ちあふれた新作だ。

ブランド： シャネル（Chanel）
モデル名： マドモアゼル プリヴェ ピンクッション（Mademoiselle Privé Pincusion）

直径： 55mm
ケース素材： 18Kイエローゴールド×ブラックコーティングを施したチタンケースに211個のブリリアントカットダイヤモンド（～2.79ct）、18KYGケースバック
防水性能： 30m
ストラップ/ブレスレット： マットブラックのグログラン織ストラップ、バックルに45個のブリリアントカットダイヤモンド（～0.27ct）

キャリバー： 高精度クォーツ
機能： 時・分表示

価格： レース モチーフは2431万円、ツイード モチーフは3465万円、キルティング モチーフは2849万円、パール モチーフは2915万円、エンブロイダリー モチーフは2497万円。すべて税込
発売時期： 発売中
限定： 各世界20本限定

詳細は、シャネルのウェブサイトをクリック。