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VINTAGE WATCHES エルトン・ジョンがヴィンテージショパールの価値を見直す機会を与えてくれた

“Goodbye Peachtree Road”のオークションプレビューに参加したあと、私はショパールの底なし沼にハマってしまった。

先週の水曜日、クリスティーズでエルトン・ジョン(Elton John)の“Goodbye Peachtree Road”のオープニングセールが開催された。結果、エルトン・ジョンのアイテムらしい、大きな赤いEとJのイニシャルがあしらわれたシルバーの厚底ブーツは9万4500ドル(日本円で約1425万円)、レオパード柄のロレックス デイトナは17万6400ドル(日本円で約2660万円)で落札された。900以上のロット(一部は今週のオークションにかけられるものもある)は、ヴェルサーチェの磁器食器からスパンコールで装飾された舞台衣装、また個人所有者がこれまでに販売したものとしては最も多岐にわたる近代写真コレクションに至るまで、個人所有のアイテムを中心に豪奢な品々で構成されている。これはエルトン・ジョンがただのキャンプ(過度な装飾や派手なファッションを好む人)ではなく、過度に好奇心旺盛なコレクターだと言うための前置きである。自身の奇抜さを受け入れ、(ファッショナブルな)皮肉という計算された意図を持っていない、人生を楽しんでいる人物だ。彼は自分の好きなものを熱心に好む。極めて開放的なアプローチである。

Elton's Chopard Imperiale watches

エルトン所有のインペリアーレ クロノグラフ。Image courtesy of Christie's

 数週間前のプレビューには、サファイアセットのカルティエ タンク ノルマル、ダイヤモンドセットのA.ランゲ&ゾーネ サクソニア、ヴァシュロン・コンスタンタンのシャッターウォッチ、その他約20種類のアイテムがあり、どれも非常に魅力的な時計だった。なかでもエルトンの時計のなかで一番好きだったイエローゴールドにサファイアとダイヤモンドをセットしたショパール インペリアーレ クロノグラフを見つけた。それはあまりにも華美で、浮世離れしていて、(派手の代名詞的存在である)リベラーチェのようなものだった。それが引き金となり、私がなぜプロとして仕事をしているのか、その理由を思い出した。突然、私はすべての時計が少し派手で宝石がセットされ、普通ではない形(この例ではパシャ)であってほしいと思うようになった。私が求めていたのは華やかな魅力であって抑制ではなかったのだ。

 一番好きなものといえば、エルトンのコレクションのなかには、大きなダイヤモンドスカルがあしらわれたショパールウォッチがあったが、それは趣味のいい、あえて言えば“クワイエットラグジュアリー”を著しく無視していると受け取られかねなかった。私はそれを、ほかの人が本来軽蔑するような美学に寄り添うことができる不思議な能力だと考えている。例えば子どもたちがハロウィン以外の日に、人前でコスチュームを着るのをよろこんでいることと同じようなものだ。

 これらの非常に風変わりなショパールウォッチが、私を非常に長い深夜の(ショパールがテーマの)インターネットサーフィンへと導いた。私はショパールのジュエリーウォッチのクロスオーバーアーカイブに、ほかにどんな貴重な金塊が隠れているのか調べる必要があった。70年代の幾何学的なストーン文字盤の時計や、90年代のハッピーダイヤモンドのハート型ウォッチは見たことがあったが、世の中にはもっと知られていない、話題になっていない逸品があるに違いないと思ったのだ。カルティエ、ブルガリ、ピアジェ、ブシュロンは、ごく最近まで“ジュエリーブランド”として鼻であしらわれていた。ショパールにも同じように、時計好きの光が当たるときが来たのだろうか?


ジュエリーウォッチ
Vintage Chopard Link bracelet watch and snake watch

(左)ショパール レディス バングルリストウォッチ、18KYG、1972年製。(右)ショパール レディスウォッチ、18KYGとダイヤモンド、1986年製。Image: courtesy of The Keystone.

 バングルカフ、ジュエリーウォッチのハイブリッドモデルが昨年オークションに出品されるなど、70年代製の時計への関心が高まっている。70年代は、あらゆる面において実験的なデザインが登場した。アンドリュー・グリマ(Andrew Grima)によるあいまいなシェイプ、ジルベール・アルベール(Gilbert Albert)によるパテック フィリップのためのアシンメトリックなシェイプ、そしてピアジェによる大量のストーンダイヤルなどだ。ショパールもまた、デザインの独創性(見方によっては狂気)を競うレースの一員であった。下の写真のバングルウォッチは、70年代の美学をよりエレガントに表現するのに特に魅力的な例である。私はシャーロット・ランプリング(Charlotte Rampling)の手首にゆったりと、そしてさりげなく、金無垢モデルがつけられている姿を想像した。確かに70年代はいまや陳腐なスタイルになりつつあるように感じるが、これは実際に何を落札するかよりも、かつてのリスクを称えることなのかもしれない。

Chopard cuff watch

ショパール レディス バングルリストウォッチ、18KYG、ダイヤモンド&オニキス&コーラルセッティング、1978年製。Image: Courtesy of Monaco Legend Auctions.

 コーラルとオニキスをあしらったこのカフウォッチは、カルティエのハイジュエリーカタログに載っているようなものだ(私たちが普段見慣れているカフウォッチよりも熱狂感は低い)。飾られることを楽しみ、それでいて洗練された人物、例えばダイアナ・ヴリーランド(Diana Vreeland)やルル・ド・ラ・ファレーズ(Loulou de La Falaise)、あるいはニューヨーク社交界の有名人、故ナン・ケンプナー(Nan Kempner)のような魅力的な女性たちにふさわしい。

 私は自称セルペンティの狂信者であり、ブルガリへの忠誠心は揺るぎないものだ。ただこのジェムセットされたショパールのスネークウォッチに魅せられずにはいられない。ヘビはデビッド・ウェッブからカルティエまで、ハイジュエリーブランドのモチーフとして常にあしらわれてきた。彼女たちが成功したのは、上品だからではなく、明確に女性的だからではないだろうか。ガーリーさがなく、センシュアルで力強いのだ。

Chopard Imperiale

インペリアーレ クロノグラフ、18KYG、フルダイヤモンドセッティング、サファイアカボション、1990年代後半製。Image: courtesy of 1st Dibs. 

 “控えめ”とは正反対のエルトン・ジョン(ヴェルサーチェの布張りの家具とアラン ミクリのサングラスが好きな過激主義者)のように、私はある種の派手な主張を楽しんでいる。インペリアーレコレクションは1994年に発表され、上の時計は私にとって、90年代のドリームピースである。宝石をふんだんにあしらったこの時代のインペリアーレには、いずれもラグにカボションをあしらっており、(ヴァンドーム広場にある)ナポレオンの像が立つ円柱を想起させる。“この豪華さが気に入っている”。そう語るのは、Four + Oneにも登場した、時計ディーラーのゾーイ・エーブルソン(Zoe Abelson)だ。“ジーンズに似合う時計としてつくられていないが、もしそれに合わせたらとても素敵に仕上がるだろう”。


タイムゾーンウォッチ

 デイリーユースとして取り入れるのが難しく、悪趣味の境界線ギリギリにあるものに目を向けるのは、得意客しか知らないようなロエベの靴を自宅で嬉々として楽しんでいる女性へのアプローチなのだろう。あるいは、これらの時計は気味の悪さとクールさが完璧に交差したものなのだろうか? きっとミセス・プラダなら、“醜くも美しい”と言うのだろう。

4 time zone watch Chopard

18KYG、セカンドタイムの“デュアルタイム”、1971年製。Image: courtesy of Bulang and Sons. 

 そもそも心を揺さぶる美しさとは、一体誰が決めるのだろう? たとえシンプルで丸みを帯びたものを好む傾向であっても、気概を持って何かを評価してもいいのではないだろうか。私はそれを物質的な公平無私と呼びたい。“33~36mmという完璧なサイズであり、レザーストラップがついた時刻表示のみのドレスウォッチ”、というようなメッセージがきちんと綴られたオブジェをつくるのではなく、 自信をもって奇妙なことを受け入れることが重要だ。これはまさに70年代的アプローチであり、ウォッチメイキングにも社会にもルールがなかった時代である。

 ショパール クアドラプルタイムゾーンウォッチは、基本的に同社のデュアルタイムモデルをふたつ組み合わせたバージョンであり、4つの個別ムーブメントで構成されている。このようなモデルは、時計学の革新の道を歩んだ過程のなかで生み出されたものでないことは認める。これらは、ジュエリーと時計のハイブリッドメゾンとして認定されたメゾンによるデザインステートメントなのだ。“ヴィンテージショパールは、まだ過小評価されていると思う。このブランドは長いあいだ、コレクターに見過ごされてきたのだ”と、パリを拠点とするディーラー、ジュリアン・トレット(Julien Toretto)は言う。“ショパールの強みはそのデザイン、 特にデュアルタイムにある”。

Vintage Chopard Watch

クチンスキー デュアルタイム、ホワイトゴールド、オニキス&ターコイズ&ストーンダイヤルセッティング、1970年代後半製。Image: courtesy of  Watches of Knightsbridge. 

 トレットのお気に入りのひとつであり、今では私のお気に入りのひとつでもあるのが、上のRef.5093だ。“これは1970年代、クチンスキーブティックのために極めて絞って生産されたモデルだ(約20本)。サイズは46mm×24mmと当時としては超特大である。さまざまな組み合わせが存在するが、ケースに施されたテクスチャーの遊び文字盤に用いられたプロポーションが、この時計をショパールならではの真に特徴的なデザインにしている”。私と同様、トレットもファッションマニアだ。やや大げさなものとエレガントのあいだにある適切なポイントを突くことは、実は過小評価されるべきではない、非常に大きな偉業であると彼は理解している。

Dual time watch

デュアルタイム、18KYG、1970年代製。

 “ショパールは、ピアジェ、ブルガリ、カルティエの系譜に完璧に当てはまる。しかし、これらのブランドの多くがそうであるように、ジュエリーとウォッチメイキングがクロスオーバーしているにもかかわらず、真剣に受け止められていない” 。私もこれに同意する。インターネットを徘徊していたときに出合った、大量のスリーパーヒットを見ればそう感じる。だから私たちは、昨シーズンのクリスティーズ・ジュネーブにて5万スイスフラン(日本円で約860万円)で落札されたクッサンバンブーや、13万8600スイスフラン(日本円で約2375万円)で落札されたカルティエ ロンドン “ダイス”といった、カルティエという名の祭壇を崇拝している。あるいは、1060万円(税込予価)するリバイバルピアジェ ポロが脚光を浴びているあいだに、ショパールのアーカイブに目をとおし、より手頃な価格の代替品を探してみる価値はあるかもしれない。


サンモリッツウォッチ

 1980年、ショパールはアルパイン イーグルの前身であるサンモリッツを発表した。コレクション名の由来となった、有名なアルペンスキーリゾートの町と密接に結びついた、セクシーで若々しいラグジュアリーなライフスタイル製品を提案するブランドの試みだった。それまでジュエリーと金無垢のドレスウォッチだけに集中していたショパールにとっては、左翼的な動きだったかもしれない。しかしステンレススティール製のスポーツウォッチが市場を支配するトレンドに乗ることは納得できる。1980年は、このような製品が誕生した時間軸のなかでも最後のほうであることは認めるが、その時点で誰が先駆者だったかを気にする必要はあるだろうか?

 サンモリッツの物語は1980年に始まる。その後1982年のバーゼルで発表され、1983年末に店頭に並び、SS、ツートン(SSとYG)、金無垢YGの3種類で販売された。そのあとジェムセッティングや、スケルトン加工が施された興味深いモデルも登場した。

Chopard Skeleton

サンモリッツ スケレット、1980年代製。Image: courtesy of Phil Toledano. 

 “70年代すぎず、ちょうどいい。十分なおもしろさがあって美しい。ちょうどいい驚きがある”。そう話したのはTalking Watchesのゲストでありコレクターのフィル・トレダノ(Phil Toledano)だ。自身が最近購入したというサンモリッツ スケルトンについてこう語る。噂によると、スケルトナイズは実際にはアーミン・シュトロームによって行われたというが、私はこの事実をまだ確認していない。

 “(初期の)スケルトンウォッチで重要なのは、スケルトナイズすると、ほとんどのスケルトンウォッチが同じように見えるということ。このデザインは、信じられないほどの汎用性を持っているのだ”。トレダノは続けて、“私が本当に驚いたのは、その時計のベゼルだった。ショパールのことは何も知らなかったが、スケルトナイズされたサンモリッツを見たとき、全体を引き立てていたこの非常に興味深くて珍しいベゼルの形状に引き込まれたのだ”。

St Moritz Rainbow

サンモリッツ レインボー、1984年製。Image: Courtesy of 1st Dibs. 

 1984年、ショパールはサンモリッツのオリジナルモデルに続いて、ダイヤモンドとカラーストーンをセットしたサンモリッツ レインボーウォッチを発売。レインボーセッティングの登場としては信じられないほど早かった。もちろん、レインボーロレックス チェリーニはこの10年のごく初期に登場したと思われる。

 ショパールは70年代から80年代にかけて、私たちの好きなブランドと同じデザインのアイデアをたくさん持っていた。これらの時計は、ロレックスのように宝石をセッティングし、ピアジェやパテックのようにブレスレットやケースに金属細工を施したものと同じである。トレットはこれを“ファンタジーウォッチ”と呼んでいるが、このセグメントはあまり評価されておらず、むしろしばしば否定されている。エルトンのようにショパールを探して、エキセントリックな一面を受け入れてみてはいかがだろうか。現代的な型にはまらない、少し自由なヴィンテージを探してみては。

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