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Auctions グランドセイコーがオークション市場に登場

GSが大成功を収めたことをさらに証明する必要があるとしたら、それはここにある。

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グランドセイコーがフィリップスのジュネーブウォッチオークションに初めて登場する。「ジュネーブウォッチオークション:XIII」では、グランドセイコーのモデルが1つではなく2つ登場するのだ。スイスを中心とした人気ブランドと並んで登場するのは、ロットナンバー16の現代のモデル、グランドセイコー SBGD001と、ロットナンバー173の1972年製ヴィンテージのグランドセイコー 61GS V.F.Aだ。

 グランドセイコーがフィリップスのオークションに初登場したことは注目に値するが、これが初めて登場したセイコーのハイエンドモデルだとは言えない。昨年11月にはクレドールの叡智Ⅱが出品され、当初のエスティメートより高い価格で落札された。クレドールは、塩尻にあるセイコーのマイクロアーティストスタジオから生まれたセイコーの最上級ブランド。プラチナ製ケース、ポーセリンダイヤル、スプリングドライブのクレドールCal.7R14を搭載したものだ。それにしても、GSがこのレベルで活躍しているのは注目に値する。

叡智Ⅱは非常に希少な時計だ。年間20本しか生産されない(グランドセイコーのごく少数のモデルに加え、工房全体で叡智Ⅱを25本程度、残りの5本はクレドールのリピーターモデルだ)。決して“主流”とは言えず、セイコーのコアモデルをよく知るコレクターでも、クレドールの独自の位置づけには戸惑うことが多いようだ。しかし、グランドセイコーに関しては、欧米で非常に集中的かつ意図的にブランドの高級路線化が進められている。

クレドール  叡智II 

 ここ数年、グランドセイコーが市場で存在感を増している理由を、ジョー・トンプソンは詳しく説明してくれた。それは偶然ではなく、セイコーが行った非常に計画的な戦略なのだ。以下はトンプソンの分析から;

 この秋、SWC(セイコーウオッチ株式会社)は米国法人を再編し、新たにGrand Seiko Corp.of America(GSA)という子会社を設立した。GSAの内藤 昭男会長兼CEOは、HODINKEEの取材に対し、次のように語った。「新会社の設立により、この市場でのビジネスモデルを変えていくつもりです。今回の新会社設立は、主力のセイコーではなくグランドセイコーというハイエンド市場への注力を意味しています。ハイエンドは、この市場におけるブランドの将来性を示しています」

 セイコーの企業戦略が功を奏し、セイコーがターゲットとしていた高級志向の購買層から注目されるようになった。

 フィリップスの米国時計部門のトップであるポール・ブトロス氏は、今回のグランドセイコーの出品は、コレクターの要望を反映したものだと言う。「私たちは、提示される時計の70〜80%を拒否しています。ありきたりの時計ではなく、通常の枠に収まらないものを提供したいのです」

 グランドセイコーのフィリップスでの販売については、既存の市場データはない。前例のないことなので、SBGD001のエスティメートを立てるにあたり、元々の小売価格、中古市場の調査、フィリップスの専門家が個人的に買いたいと思う金額などが考慮される。その結果、3万2000ドル〜5万3400ドル(約350万円〜585万円)という予想になった。

グランドセイコー SBGD001

 ベンは、SBGD001についての最初の記事の中で、ブティックで“5万5000ドル(約600万円)前後”で販売されていたことや、前述のクレドール 叡智シリーズと同じように作られていることを紹介している。8日間のパワーリザーブを備えたこの時計は、これまで8本しか製造されていない。つまり、生産量がかなり多いと思われるのにオークションで高値がつくスイスの競合メーカーのモデルとは異なり、実際の生産数が知られているのだ。そのため、出品された際には特に注目したいモデルだ。グランドセイコーがスイスのオークションに登場したことを嘆く人もいるだろうし、目につくようになったことで価値がなくなったと言う人もいるだろう。しかし、考えてみてほしい。このエスティメートは、この時計の本来の小売価格よりも低いのだ。

グランドセイコー SBGD001

 グランドセイコーのコレクターであるダニエル・ヤン氏(通称:ミスター・ザラツ)は、「希少なVFAやプラチナ製のスプリングドライブなどは、かつての“アンダーグラウンド”なグランドセイコーファンの間では、常に高い需要がありました」と語る一方で、「グランドセイコーは、主要な時計コミュニティの間で急速に人気が高まっています。グランドセイコーは、ヨーロッパが真似できない日本独自のものを提供しています。それは、日本のコンセプトにインスパイアされた美的感覚と技術力なのです」

 グランドセイコーが登場するのはフィリップスだけではない。香港のサザビーズでは、先週のインポータント・ウォッチオークションで3点が落札された。HODINKEEリミテッドエディションのSBGM239SBGW033、そしてVFA 6185-8021だ。全ての時計がエスティメートを上回る価格で落札され、SBGW033はエスティメート3万香港ドル(約45万円)に対し、その倍額で落札された。

サザビーズで落札されたSBGW033とVFA 6185-8021。

 さらに、クリスティーズのレア・ウォッチオークションでは、グランドセイコーの2つのヴィンテージモデル、Ref. 6186-8000-GRef. 4580-7000が出品されている。

 「The Grand Seiko Guy」を運営するグランドセイコー研究家であり、ディーラーでもあるジェラルド・ドノヴァン氏は、オークションに出品される2つのVFAリファレンスに匹敵する別のVFAリファレンスが、グランドセイコーブティックの旗艦店である「和光」で約3万ドル(約330万円)で販売されていることを指摘し、「重要なのは、今シーズン、グランドセイコーのヴィンテージモデルの頂点を表すと考えられているもの(実際、グランドセイコー全モデルの頂点と言ってもよい)、つまりVFAが、3大オークションハウスに登場したことです」と述べている。

 オークションハウスは、コレクターの世界のトレンドを追うが、必ずしもトレンドを作るわけではない。グランドセイコーはここ数年、PRに多大な投資をしてきたので、知名度が上がったのは当然と言えるだろう。

グランドセイコーブティックの旗艦店「和光」。

 「これらの時計が、銀座の和光で現在販売されている6186-8000 VFA(フィリップスで販売されているのと同じリファレンス)の価格に達するかどうかは分かりませんが、近年、グランドセイコーは、急速に増加しているコレクター層に向けて、ヴィンテージウォッチの歴史的価値や意義を伝えることに大きく貢献していることは明らかです」とドノヴァン氏は語っている。

 「フィリップスとクリスティーズがVFAをジュネーブの権威あるオークションに出品する価値があると認めたことは、歴史的・文化的に見ても見逃せません」とドノヴァン氏は言う。「1960年代後半、セイコーがヌーシャテルとジュネーブのクロノメーター試験に参加したことがきっかけで生まれたVFAが、半世紀を経て再びスイスに戻ってきたというのは、まさにふさわしい出来事と言えるでしょう」

フィリップが主催する「ジュネーブウォッチオークション:XIII」は5月8日~9日に開催予定。クリスティーズの「レアウォッチズ」は5月10日に開催予定だ。