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トラベルウォッチのためだけにHODINKEEのサブサイトを立ち上げようとしているかのように思われることもあるが、それでも僕は飽き足りないだろうと思う。競争力のある新しいGMTウォッチが僕を突き動かさない日があるならば、その日はきっと地獄のように冷え切っていることだろう。GMTウォッチにとってはここ数年驚くべき状況が続いており、価値と競争という点から市場はさらなる広がりを見せている。そんななか、ロンジンは今年の初めにロンジン スピリット Zulu Timeの39mmバージョンを発表し、スピリットシリーズの一層の充実をアピールした。ハンサムで機能的なトラベルウォッチであるZulu Timeが、やや小ぶりなプロポーションで登場したのだ。言うまでもなく、僕たちは手に取って見てみる必要があった。
39mmのスピリット Zulu Timeは今年6月に、日常的に使えるパイロットのスポーツウォッチとしての魅力と、ロンジンの輝かしい過去からインスピレーションを得た新しいヴィンテージスタイルを融合させた、さらなる広がりを見せるロンジン スピリットのコレクションに加わった。ロンジン スピリットシリーズにはフライバッククロノグラフ、フィールドウォッチ、そして42mmバージョンのスピリット Zulu Timeなどいくつかの形式がある。
6つのバリエーションで展開される新しい39mm径のスピリット Zulu Timeは当然のことながら、ロンジンが42mm径のオリジナルモデルで確立したものをさらに小型化したものだ。SS製ケースの直径は39mm、厚さは13.5mm、ラグからラグまでの長さは46.7mmとなっている。カラーバリエーションには、ブラック(ブルーのアクセント)、ブルー(オレンジのアクセント)、ツートン(ブラックベゼル)、そして今回紹介するブラックダイヤルにゴールドアクセントとダークグリーンのベゼルを組み合わせたものなどがある。
42mm径バージョン(そして最近発表された話題のハイドロコンクエスト GMT)に続き、ロンジンのこのGMTウォッチはCal.L844.4を搭載している。このCal.L844.4は2万5200振動/時、72時間のロングパワーリザーブ、そしてローカルジャンピングアワーこと“フライヤー”GMT機能を備える、最新のETA社製ムーブメントより派生したCOSC認定の自動巻きムーブメントだ。デュアルタイムゾーンウォッチの世界において、フライヤー機能は長らく主要ブランド(ロレックスなど)が打ち出してきた理想の機能だった。ユーザーが時計の一般的な計時や設定に影響を与えることなく、メインの時針を新しいタイムゾーンに更新できることを最優先としている。リューズを引いて、日付け表示と同じように時針を合わせるだけだ。ご期待(希望?)のとおり、Cal.L844.4では午前0時を過ぎると、日付もその前後で更新される。
両方向に回転する24時間表示のGMTベゼルを備えたスピリット Zulu Time(どちらのサイズもだ)は、チューダーのブラックベイ GMTやブラックベイ プロ、ロレックスのGMTマスター IIなど、人気の高いGMTウォッチで確立された機能を踏襲している。基本的には、メインの時刻表示をローカルタイム、24時間針をホームタイム(ベゼルはそのままの位置で)に設定したり、24時間針をUTCタイムに合わせ、ベゼルを回転させて第3のタイムゾーン(ローカルタイム、UTCタイム、UTCオフセット)を表示させたりすることができる。風防はサファイアクリスタルで裏蓋はクローズドケースバック、ラグは非貫通、リューズはねじ込み式、ベゼルのインサートはセラミック(トライアングルマーカー以外は夜光なし)で、防水性能は100mとなっている。
防水性能やダイバーズベゼルが装備された一部のモデルとは異なり、今作はクラシックなGMTトラベルウォッチでありながら、ロンジンの42mm経の大型モデルやマーケットを席巻するチューダー ブラックベイ GMTをはじめとする大型の競合モデルよりも幅広い人々の手首にフィットするサイズとなっている。だけどまあ、ちょっと僕は先走りすぎているようだ。競合の話は後回しにして、今は手元にあるこのモデルに集中しよう。
操作性は非常に優秀でベゼルの動きも素晴らしく、リューズの操作も簡潔で安定感がある。ベゼルの回転音はとても小さく、24の各ポジション間にわずかなクリックが感じられる。デザインは明確にスピリットシリーズを踏襲していて、Zulu Timeのオーソドックスなルックスはまさにその王道を行く魅力的なものだ。しっかりと夜光処理が施されているため視認性は抜群で、個人的には6時位置にバランスよく配置されたブラックのホイールとホワイトのテキストによる日付表示を高く評価したい(マーカーのゴールドトーンに合わせれば、よりまとまった印象になったんじゃないだろうか)。
アラビア数字のインデックスについても言及しよう。アプライドで夜光塗料が塗布されており、マットなダイヤル上に見返しにカットインする形で菱形のマーカーが配置されている点をとても気に入っている。この見返しには読み取りやすいミニッツトラックが配されており、ダイヤルにはロンジンのクレストが植字され、日付の上部にはスピリットシリーズおなじみの“ファイブスター”が施されている。このファイブスターが過去のロンジンのモデルとのつながりを示していることはわかっているが、この時計がUberの評価を受けたように見えることも理解できる。
これはちょっと不当な評価かもしれない。写真で見るとスターは気になるが、この素晴らしいサイズのロンジンにおいては、手首につけたときの印象としてほとんど気にならなかったことを付け加えておく。
さらに趣味の偏向をはっきりさせるために言っておくと、僕はグリーンベゼルモデルのカラーリング(ブラックにグリーン、ゴールド)をあまり好ましく思っていない。10年以上腕時計を取材していながら、僕はまだゴールドのカラーリングに少しも好感を持てずにいる。ブラックとブルーのカラーバリエーションのほうが、大いに好みに合っているのだ。自分の資金を使って購入するならブルーのモデルを選ぶだろう。
手首に装着すると、39mmの直径はスポーツウォッチとしてつけやすいミドルゾーンに位置し、適切なサイズに感じられる。42mm径も悪くないが、僕の手首にはこちらのがしっくりくる。7インチ(約17.8cm)の手首周りに合わせたブレスレットの重さは140gで、39mm径のスピリット Zulu Timeはラグからラグまでの長さが短く、ケースの厚みともうまくバランスが取れている。
この価格帯のブレスレットに期待されるような豊富な機能はないものの、スピリット Zulu Timeのソリッドスティール製ブレスレットは美しく作られている。また、工具不要のクイックリリースを備えていながら、(サイズ調整を容易にするための)片側ネジや何らかのクイック(あるいは工具不要の)マイクロアジャストは搭載しておらず、代わりにフォールドオーバークラスプに伝統的な5ポジションのマイクロアジャストを採用している。
ラグ幅は21mmでクラスプのところで16mmにテーパーしている。1度サイズを合わせればブレスレットの着用感は素晴らしく、ケースのプロポーションと重量感にもよくマッチしている。ケースからブレスレットにいたるまでのより優れた着用感を得る唯一の方法は素材にチタンを採用し、クラスプに何かしらのクイックマイクロアジャストを取り付けることだろう。特にチタンがスピリットのデザイン言語をよりモダンに、あるいは戦略的に表現するのに適しているのであれば、なおさらだ。
前述のとおり、このロンジン スピリット Zulu Time 39mmにはロンジンによるETA社製自動巻きムーブメントであるL844.4が搭載されている。このムーブメントは秒針停止機能、手巻き機能、デイトのクイックセット機能、ローカルジャンプ式のGMT機能、シリコン製ヒゲゼンマイを備え、COSC認定を受けたクロノメーターだ。ロンジンからの貸与品を個人的にテストしたところ、6つのポジションで1日平均+5秒をマークした。
さて、競合について考えてみよう。GMTというカテゴリは、各ブランドが多種多様なGMTウォッチを開発するなかで、全面的な殴り合いの様相を呈している。ロンジンは、新しい39mm径のロンジン スピリット Zulu Timeに48万9500円(ブレスレット込み。ゴールドモデルは66万9900円)の値札をつけた。直接的な競合を検討するなかで、自分のニーズに合わせてできるだけ詳細に分析することを僕はすすめたい。トラベルウォッチはデザイン、機能、価格などの面において、現在進行形で多様化を続けているからだ。
価格を念頭に置きつつ、そのほかのいくつかの要素、特にサイズ(直径39mm程度)、フライヤーGMT機能、24時間ベゼルに注目してみよう。真っ先に思い浮かぶのは、ここ数年の大ヒットモデル、チューダーのブラックベイ GMT(41mm径、ブレスレット付きで56万8700円)だ。また、回転式24時間ベゼルはないがブラックベイ プロ(39mm径、ブレスレット付きで54万7800円)も一考の価値があるだろう。これらふたつの選択肢はロレックス GMTマスター IIによって確立されたプライスレンジ(このモデルの価格は、今回の検討範囲からは大きく外れている)以下の市場をほぼ決定づけた。
ブラックベイ GMTが発売されたとき、フライヤーGMT機能を提供しながらも、その価格帯はそれまでの常識を大きく下回るものであったため(僕からも)大いに賞賛された。確かにより安価なGMTウォッチを手に入れることは可能だが、ブラックベイ GMTが登場した当時、その価格帯に手を出すことはほぼ間違いなく、新しいタイムゾーンのためにローカル ジャンプアワーの調整ができない“コーラー”GMTを受け入れることを意味しただろう。
しかしそれは2018年のことであり、ブラックベイ GMTが新境地を切り開いたことは間違いないが、それ以降は大小さまざまなブランドがその土壌を踏みならしていった。今ではロリエ(Lorier)やベア(VAER)のようなブランドから出たミヨタ9075(またはその類似品)搭載のフライヤースタイルGMTウォッチが1000ドル(約14万8000円)以下で手に入る。つまり、わずか5年後にはこれまでとはまるで違う、いや、はるかに競争の激しい市場になっているのだ。
ロンジンと同じスウォッチグループのブランドであるミドーからもGMTウォッチが発売されている。HODINKEE限定版のオーシャンスター GMTもそのひとつだ。このGMTウォッチは、同様のムーブメントに同様の機能、200m防水で40.5mm径(厚さは13.4mm)、1390ドル(約20万5300円)という価格設定になっている。
ロンジン スピリット Zulu Timeは、高級時計の入り口として知られたスイスの有名ブランドが手がける優れた時計としてその価値を強く主張している。ブレモン、グランドセイコー、タグ・ホイヤー、そしてチューダーなど、同じような市場規模のブランドと比較した場合、ロンジンが競合として手強い相手であることは間違いない。S302とオータヴィア GMTはより高価で、フライヤー機能を備えていない。GSとチューダーの選択肢は単純に価格が高く、ロンジン スピリットのサイジングは(僕の手首には)やや厚めのブラックベイ プロや全体的に大きめなブラックベイ GMTよりも好ましかった。
とはいえ、この市場は頻繁に(今週でさえも)変化する拡大途上のマーケットであり、ロンジンはブランドの全体的なプランに沿った価格設定で縮小されたロンジン スピリット Zulu Timeを市場に投入しながら、独自のコスト削減で著名ないくつかの時計を下回るという素晴らしい決断をしたと思う。トラベルウォッチの購入ガイドを書くことは大歓迎だが(もし読んでくれるなら、コメントで教えてほしい)、このロンジンは特にロレックス以外の時計でも構わないという人々に向けた僕のリストに絶対に入るだろう。
ロンジン スピリット Zulu Timeを39mmにしたこのモデルは、しっかりとした作りでつけやすく、次の旅行にもぴったりのハンサムなデザインだ。どこか素敵なところへ出かけてみないかい?
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