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Hands-On グラスヒュッテ・オリジナル セネタ・コスモポリトで帰路につく

ザクセンを訪れることは、5年前に発表されたまま価値を見いだせていなかった時計を再訪する絶好の理由となった。

 グラスヒュッテ・オリジナルのセネタ・コスモポリトは5年前に登場した。あくまでも個人的な意見だが、この時計を家に持ち帰るまでは真に理解していなかったし、というか正直に言うとブランドそのものさえ理解していなかった。ザクセン州にあるドイツの時計製造の中心地、グラスヒュッテは私の故郷ではない。だがグラスヒュッテ周辺は、ある意味私の故郷であるウィスコンシン州に似ているところがあった。厳格で心豊かな人々が、なだらかな丘陵地帯の農耕地で農業を営んで暮らしており、これまで訪れたことのない国をぶらぶらと歩けたことがとても快適だった。

グラスヒュッテ・オリジナル セネタ・コスモポリト
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 一方、街そのものは、グラスヒュッテ・オリジナル、A.ランゲ&ゾーネ、チュチマといった多くのブランドの歴史が交錯する魅力的な場所である。これらすべての時計メーカーは、東ドイツが歩んできた歴史に大きく影響を受けている。東ドイツの国営企業(Glashütter Uhrenbetriebe、通称GUB)として彼らが統合されたあと、ベルリンの壁が崩壊し、多くの時計職人がそれぞれ独自の道を進んだ。その多くは、再び過去のブランドを立ち上げていく最中にバラバラになって姿を消していった。ただそのあいだも、グラスヒュッテ・オリジナルだけは存続していた。

グラスヒュッテ・オリジナル セネタ・コスモポリト
グラスヒュッテ・オリジナル セネタ・コスモポリトのムーブメント
グラスヒュッテ・オリジナル セネタ・コスモポリトのリストショット

 しかし今日では、各ブランドは地理的な距離で非常に近く、あるブランドから別のブランドへは歩いて数本というくらいだ。グラスヒュッテ・オリジナルは、その深い歴史とムーブメントや文字盤製造の強みを生かし、昨年発売されたダイバーズクロノグラフ SeaQのように近年は本当に素晴らしい時計を製造している。しかし、グラスヒュッテ(の歴史)に立ち返る旅には、トラベルウォッチに手を伸ばすほうがが理にかなっていたのだ。

 セネタ・コスモポリトについて、本当にあまりイメージが湧かず、よくわからなかった。ただ直径44mm、厚さ14mmというサイズは、より小さく、より薄い時計を好む人にとってはなかなかハードルが高いということだけはわかった。ムーブメントの写真を見ても、売れるわけがないだろうと、そう思っていたのだ。もちろん、グラスヒュッテの時計製造の要ともいえる、伝統的な4分の3プレートで覆われたムーブメント、グラスヒュッテストライプ、スワンネック緩急針で美しく仕上げられており、マイクロローターの採用も素晴らしいものだ(まあ39mmのムーブメントでマイクロと言っていいものかは謎だが)。しかし私が本当に求めていたものは、その下にある複雑さを示すものだった。その“カッコよさ”は、文字盤という枠を超えたものだったのである。

グラスヒュッテ・オリジナル セネタ・コスモポリトのリストショット

その時計を持って、ドレスデンにあるザクセン王国の君主たちを描いた“君主連の行進(フュルステンツーク)”の磁器の壁画へ赴いた。

グラスヒュッテ・オリジナル セネタ・コスモポリト
グラスヒュッテ・オリジナル セネタ・コスモポリトの裏蓋

 なぜセネタ・コスモポライトがこれほどまでに良いのか、真に理解するのは難しいのかもしれないが、説明させて欲しい。まず、文字盤をご覧いただき、その内容を理解するところから始めよう。この時計は、ふたつの独立した時針と分針によるトラベルタイムだ。12時位置の小さなサブダイヤルで、あなたのホームタイムを表示する(パワーリザーブ表示とホームタイムゾーンの昼夜を示す小さな開口部付き)。そして、通常通り、中央のもう1本の針がトラベルまたはカレントタイムゾーンを示す。さらに、文字盤の9時位置にはビッグデイトとデイ/ナイト表示があり、サマータイムタイムゾーンとスタンダードタイムゾーンを示すふたつの表示窓があることにも気づ降ろう。あまりに多くの情報を処理する必要があると思われるかもしれないが、案外シンプルなものなのだ。

グラスヒュッテ・オリジナル セネタ・コスモポリトの12時位置周辺
グラスヒュッテ・オリジナル セネタ・コスモポリトの6時位置周辺

 時計の設定は簡単だ。右上のリューズから時計回りに始めてみよう。まずはそのリューズで、昼夜表示に気をつけながら12時の位置にホームタイムを設定。右下のリューズでローカルタイムを設定するのだが、ここからが楽しいところだ。中央の分針は15分間隔でジャンプし、クォータータイムゾーンやハーフタイムゾーンを選択することができる。つまりインドやニュージーランドのチャタム諸島など、変則的なタイムゾーンにお住まいの方やそこへ旅行される方には、トラベルウォッチとして稀に見る素晴らしいオプションがあるというわけだ。それに針のジャンプも満足のいくものだと思う。

 文字盤の右下にあるリューズで、35のタイムゾーンのうち、主要な空港コードに基づくタイムゾーンを設定する。ただ、私と違って、タイムゾーンがサマータイムであるかどうかを覚えておくようにご注意を(あるいは、旅先のタイムゾーンにそれを設定することを検討してもよいかもしれない)。また、ケースの9時位置には、日付を設定するための小さなプッシャーがある。4つのステップを踏むだけで、旅に役立つ時計になるのだ。

グラスヒュッテ・オリジナル セネタ・コスモポリトのムーブメント
グラスヒュッテ・オリジナル セネタ・コスモポリト

 私は認めたくないのだが、24時間の時間を精神的に変換するのに苦労している。だから、普通のGMTウォッチを見るときは少し計算しなければならない(えーっと、17から12を引いた値は何だっけ?)。その苦労を公にするのは実際に苦労しているときよりも、ほんの少しだけバカになったような気がする。エルベ砂岩山地の上にあるバステーと呼ばれる岩層を歩いたり、ヨーロッパ最大級の丘の上の要塞であるケーニッヒスシュタイン要塞を訪れたりしながら、ザクセン州の名所を歩いていると、自宅の時刻と自分がいる場所の時刻がわかるようになった。旅をしていると、自分がどの星にいるのかわからなくなることがあるが、それは当たり前のことなのだ。

グラスヒュッテ・オリジナル セネタ・コスモポリトのリストショット

ケーニッヒスシュタインの川の眺め、いや、私の手首が視界を遮っているようだ。

グラスヒュッテ・オリジナル セネタ・コスモポリトのリストショット

バステーのようなクールなものには、なぜか手首がいつも邪魔をする。想像力を働かせてください。

グラスヒュッテ・オリジナル セネタ・コスモポリト

 そのエレガントで複雑な機能によって、私はこの時計をまったく新しい視点で見ることができた。ステンレススティールのケースは、私の好みからするとまだ少し大きいのだが、これほど複雑な時計には必要なものだと確信したし、3回目のブラートヴルスト(ソーセージ)を食べながら、私の手首の大きさが44mmのケースに追いつくのも近いかもしれないなどと考えた。確かに、4分の3プレートムーブメントが、時計を操作するために必要なレバーや歯車のシステムをまだ覆い隠しているという事実を、私はまだ残念に感じてしまう。しかし、現地で時間をかけて時計製造の歴史を学び、ちょくちょく時計を眺めているうちに、グラスヒュッテ・ストライプ(ジュネーブ・ストライプではない)を新たに評価するようになった。マイクロローターも魅力的で、背中合わせのダブルGロゴ(未来と過去に目を向ける)が、私の手首の上でグルグルと回転していた。そして、この時計の操作方法を理解することで、私は文字盤を見ることができるようになったのだ。文字盤には、沈んだサブダイヤル、開口部、ブルーの針に見事にマッチしたブルーインデックスなどで構成されている。この複雑な文字盤を作成するグラスヒュッテ・オリジナルの能力を今では私は高く評価している。

 グラスヒュッテでの滞在が終わり、ブラートヴルストやシュニッツェルを食べた量以上に、なんだか申し訳ない気持ちになりました。確かに、私は現在299万2000円(税込)の時計を買う気にはなれないが、セネタ・コスモポリトは、もう二度とこんな面白いことに5年も遅れたくないということを証明してくれた。

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HODINKEE SHOPはグラスヒュッテ・オリジナル・ウォッチの正規販売店として、コレクションをご紹介しています。

グラスヒュッテ・オリジナルについては、公式サイトへ。