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Photos by Mark Kauzlarich
時計にぴったりのブレスレットが欲しいけれど理想のものが見つからないとき、皆さんはどうしますか? そもそもその時計にブレスレットが存在しない場合はどうでしょう? 私のような人間であれば、同僚に聞いたり、HODINKEEをチェックしたり、時計フォーラムを深掘りしたり、eBayにないか賭けてみたりするものです。しかし、アーモリーとドレイクスのオーナーであるマーク・チョー(Mark Cho)氏は自分で作ってしまうという方法をとりました。
HODINKEEの熱心な読者であれば、チョー氏がメンズウェア業界でのキャリアを通じて見事な時計コレクションを築いてきたことをご存じでしょう。そして今、彼は個人的な欲求から生まれた特注の18Kゴールド製時計ブレスレットの製作という、新たな時計の領域へと踏み出しています。 「ずっと、私のタンク モザイク タイルに合うマルチカラーのゴールドブレスレットを作りたいと思っていたんです」とチョー氏は語ります。このプロジェクトは彼のブレスレットに対する思いに加え、1970年代製のホワイトゴールドのブレスレットが付いたカルティエ サントレとの偶然の出会い、そしてほぼ引退しかけていた金細工職人との邂逅といった複数の要素が重なって具現化されました。「最初は完全に個人的なプロジェクトで、10本だけ作ったんです。私用に1本、残りの9本はアーモリーのVIPのためでした」。 しかしInstagramに投稿したことで予想外の反響を呼び、現在ではアーモリーのウェブサイトを通じて注文が可能となっています。
チョー氏のデザインには時計の歴史、とくに“ヴィンテージのカルティエ タンクのブレスレット”や“1990年代のアンティコルム・オークションの写真”から多大な影響を受けています。ジョン・ゴールドバーガー(John Goldberger)氏による素晴らしいコレクションもまた、インスピレーションの源となりました。
製造において、チョー氏が何より重視しているのは品質です。 「とにかく、私たちはソリッドゴールドのブレスレットを作りたかった。中空のゴールドブレスレットも検討しましたが、カルティエにはふさわしくないと感じました」と彼は説明します。 「カルティエの重厚感を考えると、やはりソリッドゴールドであるべきです。だから妥協は一切していません。リンクもすべてソリッドゴールドです」
製作工程にも細部へのこだわりが光ります。 「まず真鍮でテストして、見た目も可動も問題がなければ、ゴールドで作ります。そして手作業で仕上げるんです。この手仕上げの工程は非常に手間がかかります。なぜなら、すべてのパーツをひとつずつ仕上げる必要があるからです」。 それぞれのブレスレットは、ヴィンテージモデルには見られないネジ式のリンクを末端に採用するなど、現代的な改良が加えられています。カルティエの歴史的な個体に倣いながらも、これらのソリッド18Kゴールドブレスレットは7連リンク構造で設計されており、特定の時計モデルに合わせて調整されています。たとえば、タンク ルイ カルティエにはやや厚みのあるリンクを、タンク サントレにはスリムなリンクを採用。ソリッドゴールドのエンドリンクは時計のケースにぴったりとフィットし、バタフライクラスプによってしっかりと装着できる構造となっています。
このブレスレットはイエロー、ローズ、ホワイトの各ゴールドから選ぶことができ、所有するカルティエがプラチナ製ならロジウムめっき仕上げを推奨しています。また、2022年に登場した特別仕様でモザイクダイヤルのタンク ルイ カルティエに合わせたトリカラーゴールドバージョンも用意しています。時計ケースの6時・9時位置と調和するサテン仕上げが基本ですが、希望があれば鏡面仕上げも可能。すべてのブレスレットは香港で受注生産され、納期はおよそ4ヵ月ほどとなっています。
時計関連のプロダクトという専門的な世界に足を踏み入れるのは、決して簡単なことではなかったとチョー氏かは語ります。 「本当に緊張しました。時計製造には優れたクラフツマンシップと深い専門知識が求められますからね。自分の実力以上のことをしないよう、常に慎重に進めてきました」と彼は振り返ります。 「ただ私たちが作ったブレスレットは、価格に見合った非常に高品質なものだと自負しています」。 この分野で彼のメンズウェアにおける経験が大いに役立っています。テーラリングと同様に、時計のブレスレット製作も美学と技術の両立が求められる世界です。どの要素をどのように調整するかを、見極める力が必要なのです。 「私たちのブレスレットより優れたものを、より安価に作れるとはちょっと想像できません。私たちは、価格と品質のバランスが取れた製品を提供することを目指してきました」。 ソリッドゴールドブレスレットの“価値”とは、それまで存在しなかったものを皆がどれほど欲するかにかかっていると考えています。価格は単色モデルで2万500ドル(日本円で約300万円)から、トリカラーモデルで2万4500ドル(日本円で約360万円)となっており、支払いは50%の前金、納品時に残りの50%という形を採っています。
時計文化という成熟した領域に新たな製品を導入する難しさについても、チョー氏はこう語ります。「歴史が長く、保守的な傾向が強いこの業界において、新しいものをどうやって紹介するか。それが常に課題なんです。型破りすぎると、誰も買ってくれません」
「かといって、単なるヴィンテージの焼き直しを作るのもそれほど刺激的ではありません。私たちのように“おもしろいものを提案して買ってもらう”という仕事において、すでに存在していたものを再構築するだけでは、私たち自身のモチベーションも高まりません。ただし、このブレスレットに関しては例外でした。本当に欲しかったのです」
今後、彼は最大11リンクまで増やした繊細なデザインのブレスレット、メッシュのような外観を持つ新作にも取り組む予定とのこと。また、カルティエ以外の時計ケースにも対応する丸型エンドリンクのブレスレットも開発中で、特注のダトグラフ用モデルも手がけています。
変化に保守的なこの時計業界において、チョー氏は時計製造の伝統を尊重しつつ、コレクターたちの真のニーズを満たす製品を生み出すという、独自の領域を切り拓きました。夢に描いたブレスレットを形にすれば、それはきっとほかの誰かも望んでいるはずだと考えています。そしてその事業の出発点は、いつもマーケット分析ではなく、彼自身の情熱にあります。「こういうのがあったらいいな、という私の欲求が多くの製品の原動力なんです。そして、“自分で作れるかもしれない”、“何人かには売れるかもしれない”と考える。それがたいてい、アーモリーの製品づくりの始まりなんです」
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