私がブルーとブラックのベゼルを持ったロレックス GMT マスター II 126710 BLNR(一部の人からはバットマンと呼ばれる時計)のファンであることは、周知の事実だ。あの時計には不思議な魅力がある。私がこの時計に引かれる理由のひとつは、この時計がモダンロレックスのデザインとマニュファクチャリングによる純粋な作品であると感じられるからだ。ベゼルの色、数字の書体やケースのプロポーションなど、全体的に現代的なスタイリングは、同社が提供するモダンな作品の真髄を表している。これは復刻版でもなければ、古いものを新しく解釈したものでもない。ヴィンテージの前例がないのである。しかし、もしそれがあるとしたらどうなるだろうか?
今年、Watches & Wondersで発表された新しいエアキング Ref.126900は、私のバットマンと同じような印象を受けた。ヴィンテージの書体でヴィンテージの“Air-King”の名を冠しているが、直接的に結びつくような過去作は存在しないのだ。前例がないだけに、まさに“再発明”なのである。
現在、存在しないロレックスのヴィンテージモデルがもし存在したら、どのような姿になるかを想像してみるというひねくれた考えを持つようになったのは、実はこの新しいエアキングがきっかけだった。なぜなら、私の考えでは、このモデルはロレックスから登場したなかで最も奇抜なモデルだからだ。その奇抜さは、たとえばヨットマスター IIのような高級コンプリケーションと組み合わされたものではない(この時計は今日ここでご紹介しないが、私の初歩的なグラフィックデザイン能力では正当な評価ができなかったからだ)。エアキングは時間表示のみの時計だ。そこで私は、たとえば40年前ならどうだっただろうかと考え始めた。
まず思ったのは、カラフルなデザインのため、標準的な34mmのエアキングよりも大きくならざるを得ないということ。ロレックスのエクスプローラー 1016と並べて展示するようなモデルだと考えたのだ。だから、36mmとした。そして、ロレックスは経済的なので、現代のエアキングがエクスプローラーと3、6、9を共有しているように、文字盤デザインも1016のものを多用しようと思いついた。そして、文字盤を飾るパイロットスタイルのアラビア数字には、過去のヴィンテージオイスターパーペチュアルから引用した、ヴィンテージ感溢れる数字を採用してみた。
結果、ヴィンテージの文脈で通用する時計に仕上がったと思う。実際、この時計によって、私の現代的な表現に対する見方はガラッと変わった。ヴィンテージピースにリューズガードを付けることに決め、2022年に行われたリフレッシュは、私の創作世界では実は伝統への回帰だったのではないかと想像した。もしこの時計が本当に存在したら、今日、私はこの時計を違った風に見ることができただろうか? しかし、この36mmのイエローとグリーンのエアキングをコンピュータの画面上に出現させることができたことは、それにもかかわらず、満足のいくものだった。
そうしているうちに、手首のバットマンを見下ろした。やったっていいじゃないか!? ヴィンテージ・GMTマスターにブルーとブラックのベゼルが存在しないことを考えると、この冒険は想像以上に厄介なものだった。それでも私は、Ref.1675BLNRを作り出そうと決心したのだ。
全体的に、少し色あせたベゼル、マットな文字盤、ペイントされたマーカーなど、見た目も気に入った。この時計は、昔、例えば1978年頃に密かにヒットしていたというシナリオが目に浮かぶようだ。でも、それだけでは済まなかった。2022年はレフティの年であり、その象徴ともいえるのがレフティ仕様のGMTマスター IIである。だから、このモデルで遊んでみることにした。正直なところ、これでもいいのだ。タイムマシンをお持ちの方は、これを読んだらすぐに教えてください。でも、もちろん、まだまだありますよ。
ロレックスで最も複雑な時計、スカイドゥエラーで私のPhotoshopセンスに挑戦することを決意した。この時計は、ちょっとクレイジーなデザインに仕上がった。デザインのベースとなったのは、ヴィンテージのフルーテッドベゼルを備えたデイトジャストだ。なぜなら、私にとってスカイドゥエラーで最もクールなのは、機能的なフルーテッドベゼルだから。そして、歴史的に見ると、時計ブランドは34mmという小さなケースで非常に複雑な時計を作っていたことを考えた(90年代のブランパンなど)。今回は“イマジナリーヴィンテージ”ということで、36mmのケースにジュビリーブレスレットを装着したスカイドゥエラーを作ることにした。
結果的にできあがったのは混沌とした、ほとんど無理に思える時計デザインになってしまった。あえて言うなら、36mmのスカイドゥエラーを製造するのは不可能かもしれない。しかし、私のフィクションの世界では、何でも可能なのだ。ここで私は再び、数値的なインスピレーションを得るためにGMTマスターに目を向けた。24時間表示の文字盤には、ヴィンテージGMTのベゼルと同じ数字のスタイルが採用されていることにお気づきだろう。ここで考えたのは、エアキングと同じようなことだった。ロレックスは、タイポグラフィをある程度統一しておこうと考えたという設定だ。
少なくとも、技術的にはヴィンテージの前身となるモデルがあったのだが、私が再考した方法ではそうではなかった。それがエクスプローラー IIだ。ヴィンテージモデルはスティーブ・マックイーンと呼ばれ、ロレックスのラインナップのなかでも異端児として知られている。私は、現代のエクスプローラー IIコレクションをベースに、現行モデルのマーカースタイルとマックイーンのベゼルをミックスさせた新しいデザインを考案した。その結果、ちょっと迷ってしまうような時計が出来上がった。シードゥエラー風のレイアウトに、マットな文字盤の数字(少しパティーナ加工を施して、より効果的に)。
結局のところ、これは単なる楽しい練習となった。私たちは皆、頭のなかでこのようなゲームをして、新しいリリースのたびにデザインを考えている。私はそのアイデアを逆にしてみただけだ。あなたのお気に入りはあっただろうか? また、私が見逃したと思うモダンロレックスのコレクションがあれば教えて欲しい、もちろん、ヨットマスター II以外で。
これらの時計は実在しないため、実際に購入することはできませんが、Hodinkee Shopでは様々な中古のロレックスを扱っています。
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