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我々が知っていること
今日は、ダニエル・ロートが正式に復活した日、あるいは少なくともラ・ファブリク・デュ・タン(今日までルイ・ヴィトンのためだけに時計を製造してきた時計製造施設)チームがロート名義で製造する最初の時計の公式レンダリングを見ることができる日だ。
ここ数年、ロートによる初期作品の人気が高まった結果、その価値も高まっている。ブレゲの復活に尽力し、そのノウハウとクラシカルな古典的時計デザインのセンスを活かして、自身の名を冠したブランドを立ち上げた時計師の話である。その後、彼のブランドは売却され、やがてブルガリの傘下に入った。そしてブルガリはLVMHの傘下に入り、現在ロートはラ・ファブリク・デュ・タンに属している。
オリジナルのダニエル・ロートブランドにおける最初の約6年ほどが、コレクターが最も夢中になっている期間で、時計師のロート氏が真のインディペンデントブランドを運営していた1980年代後半から90年代半ばまでがそれに該当する。このような背景が、今回のリリースにインスピレーションを与えたのだ。そして翻って現代、ロートブランドがラ・ファブリク・デュ・タン ルイ・ヴィトンに移籍し、再生を果たすこととなった。
我々はロートが復活を遂げるというニュースを、1ヵ月ほど前に紹介した。そのなかで、ロートの初期作品のひとつであるC187(ロンドンのリテーラーであるアスプレイのために製作されたトゥールビヨンウォッチ)に特に注目している、とトニー・トレイナは述べていた。なるほど、彼は何かを察していたのだ。このC187は、ロートブランドの新しい方向性に大きな影響を与えたようだ。そして本日発表された時計こそ、かのトゥールビヨン・スースクリプションだった。
LVチームは、ロートを正しい方法で復活させることに真剣で、このリリースでそれを確認することができた。ダニエル・ロートが数十年前にトゥールビヨンを製作した当時、トゥールビヨンは、特に独立系(ロートは初期の数少ないうちのひとりだった)の会社ではあまり見られないものだった。だからこそ、ロートのDNAがこの新しい作品に反映されていると確認できたのは、とても素晴らしいことである。
まずは、現在の時計づくりについて話そう。この業界のふたりのレジェンドである、 ミシェル・ナバス氏とエンリコ・バルバジーニ氏がその指揮を執っている。彼らはロート氏と同時代に活躍した時計師であり、彼の友人でもある(ロート氏はこのブランドを所有こそしていないものの、自身の名を冠したブランドの最新章に参画している)。
次に38.6mm×35.5mmのダブルエリプスケースについてだが、これはこのブランドのファンのあいだでは象徴的な存在となっている。ラグは手作業でハンダ付けされ、より人間工学に基づいたデザインになるよう、わずかに形状が変更された。文字盤もロートをロートたらしめているものはそのままに、わずかにリファインされている。つまるところ、LVの時計職人たちは、真のリバイバルと考え得るものを作り上げ、細部にまで気を配ったのだ(時計の厚さはわずか9.2mmだ)。
このような時計ではディテールが重要なので、話を続けよう。文字盤は、イエローゴールドの無垢板で形成されており、オリジナルモデル同様、クル・ド・パリ ギヨシェ装飾が施されている。しかし、それだけに留まらない。この文字盤は、ロート氏の製法に敬意を表し、現在最も有名な独立時計師のひとりであるカリ・ヴティライネン氏の工房で製作されている(これは誇張ではない)。
もちろん、この時計は単なるカーボンコピーではない。ある部分において、この時計を最新のものにするために微調整(文字盤のタイポグラフィの合理化など)が行われた。そして文字盤の下には、この新しいダニエル・ロートブランドのためだけに考案され、ラ・ファブリク・デュ・タンですべて製造されたマニュファクチュールキャリバー、DR001が搭載されている。
ナバス氏とバルバジーニ氏が、ひとつひとつの作品の制作を自ら監修している。そのため作られるのは20本だけだ。DR001が特に素晴らしいのは、ダブルエリプス(二重楕円の)ケースの形をしたムーブメントであることだ。これは現在では珍しく、また実現するのも容易ではない。このムーブメントは80時間パワーリザーブを備えた手巻きムーブメントで、鏡面仕上げとブラックポリッシュを組み合わせて、すべてが手作業で仕上げられている。
トゥールビヨンは1分間に1回転するため、秒を計測することができる。このトゥールビヨンは、3本のアームを持ち、青焼きされた秒針は文字盤上の3分割された秒目盛りと組み合わせて読むことができるが、これもオリジナルのロートトゥールビヨンにちなんだものだ。さらにこれだけでは不十分なため、ディテールを追加している。秒針の各アームは、秒スケールの各セクションに合わせて変化。そして両側はコート・ド・ジュネーブ装飾のプレートで縁取られ、下のプレートにはフロスト加工が施されている。
もちろん、これがスースクリプションと呼ばれるのには理由がある。購入を希望するコレクターは、2024年初頭に残額を支払うというデポジットで申し込む必要があるのだ。価格は税別で14万スイスフラン(日本円で約2000万円)だ。
我々の考え
資料を読む限り、これはまさに非常にクールなものだ。そして、これを読んでいる多くの人が“20本限定”やスースクリプションモデルであることを確認した瞬間に、立ち去るかもしれないということを私は知っている。しかしこの趣味には、実際に時計を買わなくても楽しめる部分があるのだ。これは、そのような瞬間のひとつだと思う。
LVMH傘下のラ・ファブリク・デュ・タン ルイ・ヴィトンのような施設が、ダニエル・ロートのような独立系ブランドの復活に力を入れ、それを細心の注意を払って実行することは、ある意味大事件だ。これは時計業界全体をどのように文脈化していくかを物語っている。タグ・ホイヤーのフォーミュラ1やルイ・ヴィトンのカルペ・ディエム・オートマタを手がけた同じグループが、ごく最近、愛好家やコレクターのあいだで人気のあったブランドの復活に力を注いでいるのだ。
私が最も評価するのは、オリジナルのダブルエリプスケースの活用と、DR001ムーブメントへの配慮だ。そして、ここが私にとって非常に興味深いところでもある。このような復活を遂げ、業界のレジェンドたちによる監修のもとで作られたムーブメントは、特にその形状からして誇示したいと思うだろう。私はこのムーブメントを金無垢の裏蓋の下に収めるという選択がとても気に入っているし、これは正しいと思う。
これがラ・ファブリク・デュ・タンにとってまったく新しい方向性を示す最初の作品であるということを除いて、この時計の実物を見ずに語ることはあまりない(そう遠くない将来、この実機が見られることを望んでいる)。そして、この20本すべてがそれぞれ収まるべき場所へ届くとき、このトゥールビヨン・スースクリプションは間違いなくそれ自体がコレクションとなることだろう。ダニエル・ロートの次の章が展開されるのを、どうぞお楽しみに。
基本情報
ブランド: ダニエル・ロート(Daniel Roth)
モデル名: トゥールビヨン・スースクリプション(Tourbillon Souscription)
型番: DR0011YG-01
直径: 38.6mm×35.5mm
厚さ: 9.2mm
ケース素材: 18Kイエローゴールド
文字盤: 18KYGにクル・ド・パリギヨシェ
防水性能: 30m
ストラップ/ブレスレット: レザーストラップ
ムーブメント情報
キャリバー: DR001
機能: 時・分表示、ワンミニッツトゥールビヨン
直径: 31mm×28mm
厚さ: 4.6mm
パワーリザーブ: 80時間
巻き上げ方式: 手巻き
振動数: 2万1600振動/時(3Hz)
石数: 19
価格 & 発売時期
価格: 14万スイスフラン(日本円で税別約2000万円)
販売: スースクリプションモデルで、一部の販売店にて購入可能
限定: 20本のみ生産予定
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トゥールビヨン・スースクリプションの詳細はこちら。ダニエル・ロートは、LVMHウォッチグループ傘下のブランドです。LVMH Luxury VenturesはHodinkeeの少数株主ですが、編集の独立性は完全に保たれています。
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