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Editorial ヘンリー・グレーブスJr.の愛孫が所有していたユニバーサル・ジュネーブをサザビーズで落札した理由

あまりにも素晴らしく、みんなにシェアしない理由がない。

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本稿は2012年6月に執筆された本国版の翻訳です。

やあ、みんな。ベンだ。私は自分のために買った時計の話はあまりしない。率直に言って誰が気にするだろうと思っている(しかし私のTwitterやInstagramをフォローしてくれていれば、日常的に何をつけているかよく知ってくれているはずだ)。ただ昨日買った時計はすごく気に入っていて、その時計を紹介しなければならない理由がいくつかある。その理由が知りたい方はこのまま読み進めて欲しい。

 昨日、ニューヨークのサザビーズで行われたヘンリー・グレーブスJr. / レジナルド“ピート”フラートン Jr.(グレーブスの孫)コレクションのオークションに参加してきた。私はこの歴史的なセールの取材に本当に興奮していた(我々がどれだけ大げさに、恥ずかしくなるほど誇張していたかわからなかった人もいるかもしれないが)。ご存じのとおり、グレーブスのコレクションはウォッチコレクターにとって、そして業界全体にとって特別なものだ(とはいえ今日のブランドで働く多くの人がそれを真に理解しているとは思えない)。だからその一部を自分のものにしたかったし、そして今私はそれを手に入れたのである。

ユニバーサル・ジェネーブ トリコンパックス クロノグラフ

 ヘンリー・グレーブスとジェームズ・W・パッカードのライバル関係は、その輝かしいパテック フィリップの歴史のなかで、最も困難な時期を存続させた。グレーブスは彼らに大量の時計を注文し、それを現金で支払っていたのだ。覚えておいて欲しいのは、1932年にパテック フィリップがスターン家に売却されたのとほぼ同時期に、グレーブスが歴史的なスーパーコンプリケーションをパテックに発注したということだ。新オーナーが誕生した矢先のこの大規模なオーダーは重要な意味を持つに違いないが、今パテックが売りに出されるなんて誰が想像できるだろう? そんなことは絶対に起こらないだろうし、それだけでも当時の時代がいかに大きく変わっていたかがわかるはずだ。

ユニバーサル・ジェネーブ トリコンパックス クロノグラフ

 パテック フィリップの地位向上に貢献したのがグレーブスであり、現代の腕時計(パーペチュアルカレンダー、パーペチュアルカレンダークロノグラフ、スプリットセコンドクロノグラフ、ミニッツリピーターリストウォッチなど)の先駆者となったのがパテックであるなら、世界で最も複雑な腕時計を所有したいという願望を抱いていたヘンリー・グレーブスが、非常に現実的な方法で業界全体を押し上げたと言っても過言ではない。

 そのため昨日のオークションが、近代時計産業の勃興期を築いた人物のコレクションの一部を所有できる最後のチャンスだと思った。何らかの形で参加したいとは思っていたのだが、ただちょうどいいロットを見つける必要があった。

ユニバーサル・ジェネーブ トリコンパックス クロノグラフ

 さて、オリジナルのグレーブスの時計は、私の手の届かない価格帯のものばかりだったためすべて断念せざるを得なかった。カタログを何度も何度も読み返し、サザビーズでいつもお世話になっているジョン・リアドンに相談をして、そしてついに私が本気でお金を費やす覚悟を決めたロットを見つけた。それはピート・フラートンが所有していた、1940年代製のユニバーサル・ジェネーブ トリコンパックス クロノグラフである。

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 この時計には心引かれるポイントがたくさんあった。まず何度もお伝えしているように、ユニバーサル・ジュネーブは真のヴィンテージウォッチマニアが喉から手が出るほど欲しがる時計だ。彼らは1940年代から1960年代にかけて、スーパークラシカルかつハイエンドなコンプリケーションウォッチを製造するなど素晴らしい歴史(初のマイクロロータームーブメントの開発、ジェラルド・ジェンタに最初の大きなチャンスを与えたこと、そしてフランスではエルメス、アメリカではアンリ・スターン・ウォッチ・エージェンシー/別名パテック フィリップ USA が販売し、さらにポツダム会談ではハリー・トルーマン大統領が着用していた)を持っていながら、今日時計を買うほとんどの人の選択肢には入らない。つまり価格が非常にリーズナブルなのだ。

ユニバーサル・ジェネーブ トリコンパックス クロノグラフのムーブメント

 私はユニバーサルが大好きで、以前からトリコンパックスが欲しかったのは事実だ。しかし理由はそれだけではない。このスティール製クロノグラフは1945年製で、ピート・フラートン(グレーブスの孫)が18歳だった1948年頃に購入したものなのだ。これは彼が自分のためにアンリ・スターン・ウォッチ・エージェンシー(HSWA)から直接買った最初の時計だった。よくよく考えてみれば、1948年はちょうど彼の祖父がパテック フィリップの最後の腕時計のいくつかを納品していた時期であり、そのなかには昨日のオークションで35万ドル(当時の相場で約2795万円)以上で落札された巨大でユニークなプラチナ製腕時計も含まれており、それもまったく同じ会社(HSWA)から入手したものだった。このとき私の頭のなかでは、ピート・フラートンが祖父と一緒にHSWAを訪れ、グレーブスが信じられないほど複雑な時計を注文するのを見て、私財の150ドルを投じて自分用の複雑時計を買っていた姿が浮かんだ。この原稿をタイピングしている今、私の腕にはユニバーサル・ジュネーブ トリコンパックスが装着されている。

ユニバーサル・ジェネーブ トリコンパックス クロノグラフのリストショット

 このUG(ユニバーサル・ジュネーブ)はフラートンが最初に購入した時計だ。またのちにパテックのプロトタイプを購入することになるのだが、祖父が20世紀で最も重要な時計を注文していたのと同じ場所で、祖父の生前に購入したものでもある。偉大な時計コレクターであった祖父が、時計を何本も購入するのを見ていたのと同じ場所からこの時計を家に持ち帰ったあの日、ピートがどれほど誇らしい気分になったかを考えてみて欲しい。これこそが時計の本当にいいところだろう。そして私を時計に目覚めさせてくれたのも祖父だった。

 フラートンとグレーブスのつながりは、私がこの時計を真に欲しがる十分な理由であったが、来歴をすべて隠した単体のアイテムとして見ても、私の目にはとても美しく映る。1950年以降、HSWAによって定期的にサービスを受けており、ケースが磨かれているわけでもなく、完璧に動作する。なによりこのトリコンパックスには、私が愛してやまない、実に興味深い特徴が詰め込まれている。例えばムーンフェイズの輝きだ。

ユニバーサル・ジェネーブ トリコンパックス クロノグラフのムーンフェイズ

 それから数字に使われているフォントも超珍しい。実際、このフォントが別のユニバーサルで使われているのを見た記憶すらない(7時位置を見て!)。またこの個体は軍用時計で大砲の測距によく使われていた、テレメータースケールという珍しい文字盤を備えている。これもトリコンパックスではめったに見られない特徴だ。

ユニバーサル・ジェネーブ トリコンパックス クロノグラフのフォント
ユニバーサル・ジェネーブ トリコンパックス クロノグラフのテレメータースケール

 さらにこのムーブメントには、HSWAを通じて販売されたすべてのパテックとユニバーサルに施されているオリジナルの“HOX”の刻印があるため、この時計は間違いなくアメリカ市場向けに作られたものだったことがわかる。

ユニバーサル・ジェネーブ トリコンパックス クロノグラフのムーブメントに刻印された“HOX”

 オールドクロノグラフは小さくてボロボロになりながらも完璧に機能する。これを自身のコレクションに加えられることができるのは大変光栄なことだ。またピート・フラートンと彼の祖父ヘンリー・グレーブスJr.との絆が、ただでさえ美しいこの時計を私にとってさらに特別なものにしてくれる。これのためにもっとお金を費やす覚悟はできていたのだが、昨日のオークションでのハンマープライスは2200ドル(プラス手数料2750ドル、当時の相場で約40万円)であり、掘り出し物のひとつだったと思う。またフラートンのコレクションのなかでは、グレイブスとのつながりが最も確かなものだったと思う。それも入札を選んだ理由のひとつだ。

 ともあれ、私の最新時計購入体験を楽しんでいただけたなら幸いだ。きっとこのことはすぐに忘れることはない。もしInstagramで私がボロボロの古いトリコンパックスをつけているのを見かけたら、それをどこで手に入れたかわかるだろう。

ユニバーサル・ジェネーブ トリコンパックス クロノグラフ