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ここ数年のゼニスは、デファイの登場によりまさに破竹の勢いで快進撃を続けた。ブランドの象徴であるエル・プリメロとそれを搭載するクロノマスターに加え、デファイという大きな柱を築いたことは同社にとって大仕事だっただろう。しかしゼニスはその手を休めない。2020年は、レディスモデルを拡充しさらなる飛躍を目指すのだ。
実はゼニスは、そもそもレディスに強いブランドだった。2001年〜2009年まで同社を牽引した、ティエリー・ナタフCEOの時代は売上の約40%をレディスが占めていたそうだ。現在のクロノマスターのようなオープンモデルも存在し、ハート型にくり抜かれたダイヤル上の窓がとてもアイコニックなデザインだった。
今回発表されたのは、エリート クラシックに追加された36mmサイズの3針とムーンフェイズモデル、それにデファイ クラシック ミッドナイトだ。エリー卜には、それぞれSSと18KRGモデルが用意され、金無垢モデルにはダイヤがセットされる。特にオススメなのはムーンフェイズで、見事なギヨシェ文字盤はおそらく同価格帯の他の時計であまり見ることができない出来栄えである。SSモデルでダイヤなしだったら、この36mmは実は多くの日本人男性に勧めたい時計だ。
また、ナタフ時代のように派手なデザインを用いているわけではないが、デファイ ミッドナイトはその名のとおり夜空を連想させる煌めきを持つグラデーションダイヤルが上品である。ロゴ部分に輝く天頂の星が一層際立つデザインになっており、たおやかな魅力をたたえている。ダイヤル色は、ブルー、グレー、MOPの3種が用意され、特許を取得したストラップのインターチェンジャブルシステムと相まって、女性の幅広い趣向に対応可能となっている。
一方でメンズモデルでもエリートに40.5mmの3針とムーンフェイズモデルが登場。さらに、デファイにランドローバーや、DJ界のレジェンドであるカール・コックスとのコラボモデルが、またパイロット タイプ20にも新モデルが発表された。
個人的な好みとしては、これまでのデファイ21のイメージからやや離れたデザインのランドローバーモデルが好印象。名車ランドローバー・ディフェンダーの新型の意匠を表現したという本機は、チタンケースにゼニス初となるマイクロブラスト加工が施されており、非常にマットな質感が特徴だ。それでいて軽い。タフでありながら機動性に優れるデフェンダーのイメージそのままだ! と実機を見て僕は膝をうった。余談だが、ローバーのロゴはローターのブリッジ部分に密かに配されているだけというのも、時計自体が尊重されていて好感を持った。147万円で世界250本限定となるので、実際にお目にかかれる機会は多くなさそうである。
さて、上写真のエル・プリメロ A384リバイバルは厳密には新作ではない。昨年、リバース・エンジニアリングを駆使して復刻されたモデルのブレスレットタイプである。見て分かるように、現代の時計にはあまり見られない、中ゴマの空いたデザインが採用されている。これも件のリバース・エンジニアリングによって、当時のブレスを忠実に再現したものだ。37mmの小ぶりなケースにフィットしてかなり軽快な組み合わせとなっており、ゼニスは当時の着け心地まで再現したのだと思わされる。
先日、ウブロがビッグ・バンを引っ提げて、ブレスレット戦争に参入したという記事を書いたが、ゼニスはその界隈で新しい視点を加えたのではないだろうか。現代のブレスレットは、耐久性や着け心地に優れ、貴金属としての重厚感や美しさを兼ね備えることが最適解とされている。しかし、このA384に搭載されたブレスレットはその理想からはとてもかけ離れたものである。ただ、とても軽量で、古くないのに懐かしい着け心地を提供している。これは、人気のモデルが一極集中する傾向にある今の時計業界において、ちょっとした気付きになると思う。着け心地という感じ方に個人差のある曖昧なものに、色々なアプローチでその感触の違いが生まれると楽しそうだ。
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