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全国的に梅雨が明け、いよいよ蒸し暑い日本の夏が本番を迎えました。今回HODINKEE Japanチームのメンバー3人が、それぞれの観点で5万円という予算でこの季節にぴったりの時計を選んでみました。
おなじみのダイバーズウォッチであるとか、防水性が高い、丈夫であるといったことからは一線を画した、心躍るセレクトをお楽しみください。
シチズン プロマスター マリンシリーズ メカニカル ダイバー200m
選んだ理由
日本の夏は暑い。特に近年は本当に暑い。夏は好きな季節だし汗をかくことは嫌いではないものの、とても汗かきな筆者にとって、夏につける時計選びは毎年の悩みのタネだったする。高級時計を汗でベタベタにしてしまうのは気が引けるし、かといって時計を生業とする身としてはつけないという選択肢はあり得ない。そうしたときにあると便利なのが、値ごろな価格で防水性に優れたガシガシ使い倒せる時計だ。クォーツウォッチなら5万円以下でも割と選択肢があるが、機械式となると非常に選択肢は限られてくる。「何かいい時計はないものか……」と探すなかで見つけたのが、今回取り上げるこの時計だ。
シチズンブランドの一つ、プロマスターのマリンシリーズにラインナップされているモデルである。シチズンといえば太陽光や室内のわずかな光を電気に換えて時計を動かすエコ・ドライブウォッチのイメージが強いが、本機はプロマスターのなかでは数少ない機械式モデルだ。
機械式ということも心引かれたポイントではあるが、特に筆者の琴線に触れたのはブロンズウォッチを思わせるブラウンカラーの外装だ。本物のブロンズウォッチは、安くとも10万円以上する場合がほとんど(アンダーンというブランドに5万円以下で買えるものがあるが、これは例外的な存在)。この時計なら、お手軽にブロンズウォッチ気分を味わえると思ったのだ。実際に本機を手に取って見ると、使用されているブラウンカラーは画像よりも落ち着いた印象。ケースに使用感が出てきたら、ブロンズウォッチ同様、使い古した雰囲気へと“育ちそう”に感じられた。
文字盤
ダイヤルもベゼルやケースと同様、ブラウンカラーだ。といっても、その色味はやや赤みが強いケース、ベゼルとも異なるややスモーキーなトーン。金属ダイヤルの表面にはサンレイ状の筋目が施されており、光の当たり具合でちゃんとサンレイを感じさせる絶妙な表面仕上げを採用する。こうした渋みのあるディテールがカジュアルになり過ぎず、程よく落ち着いた雰囲気を与えるとともに、夏の日差しで映える楽しい表情の変化を生み出している。
一方、本機はもともと逆回転防止ベゼルをもち、ISO規格に準拠した潜水用防水を実現した本格的なダイバーズウォッチだ。針やインデックスにはたっぷりと夜光が施され、ツールウォッチとしての出自とつくりをその身にしっかりと宿している。
ムーブメント
搭載ムーブメントは自動巻きCal.8204。振動数は2万1600振動/時、約40時間パワーリザーブを備えたエントリークラスの機械式モデルに広く使用されているベーシックな機械だ。日差−20~+40秒と精度はまずまずだが、ハック機能つきで、デイデイト表示はともに早送り修正が可能。普段使いの時計としては十分な性能を備えている。
機械式モデルの場合、見栄えのしないムーブメントをシースルーバックにしてしまう時計も少なくないが、本機は実用志向のダイバーズウォッチゆえか、ねじ込み式のソリッドケース仕様。余計なことをしない潔さがいい。
ケースとストラップ
200mの潜水用防水を確保するだけあって、ケース厚は13.7mmとそれなりにあるが、ケースバックはブラウンカラーではないため、自ずとブラウンカラーのベゼルとミドルケースに視線が集まり視覚的にはスリムに見える。
ストラップは蛇腹構造を備えたウレタン素材の本格派。これは水圧でダイバーのウェットスーツ(ないしは腕)が縮んでも蛇腹部分が伸縮することで時計が腕から抜け落ちないように考案されたもの。値ごろな価格の時計でも、ちゃんと潜ることを前提にしたつくりは頼もしい限りだ。
結論
筆者にとって、夏につける時計で重要な要素のひとつは「水洗い」できるかということだ。そうすると、ねじ込みリューズとケースバックを持つ時計、自ずとダイバーズウォッチのような時計となるのだが、今回は特に夏なら少し存在を主張するようなものをつけたら楽しそう! という気分から本機をセレクトした。思わず気分が上がる夏ならもっと派手な色や爽やかな色の時計でもいい気もするが、普段そうした時計を選ばない人には抵抗があるかもしれない。そんな人でも本機のような落ち着いたカラーなら手に取りやすいのではないだろうか? 実際、普段ならこうした色味のある時計は選ばない筆者も抵抗なくつけられたし、何よりつけただけで夏がより楽しみになった。
シチズン プロマスター マリンシリーズ メカニカル ダイバー200m Ref.NY0125-08W 4万4000円(税込) SS(ブラウンカラーめっき)ケース、ウレタンストラップ。41mm径。200m潜水用防水(ISO規格に準拠)。自動巻き、Cal.8204。そのほかの詳細はシチズン プロマスター公式サイトへ。
タイメックス Q Timex マリブ
選んだ理由
これ以上サマーやビーチにふさわしい時計はないでしょう! なんせ、シリーズ名の「マリブ」が表すとおりマリブビーチにインスパイアされたTIMEXなのだ。ベースとなるモデルは現在人気沸騰中のQ TIMEXで、ユニセックスに楽しめる36mmサイズ。2万4200円(税込)と手に取りやすいプライスであり、さらにパートナーと兼用であればより気軽に楽しめそうな、魅惑的な1本になっている。
文字盤
マリブビーチのサンセットを思わせるような全体のカラートーンにおいて、うまくまとまりをもたせているのが、この黒文字盤。ダイヤルだけをとればかなりベーシックなデザインとなっていて、明るいブルーのルミノバと金色のロゴが、男性でもかろうじてつけられそうな雰囲気を醸し出している。もちろん、秒針はピンク色だし、当然夏以外にこの時計をつけたいか? と言われれば、僕の答えはNOだ。でも、オールシーズンのお供になるよう作られた時計ではないわけだし(そうだよね、TIMEX?)夏だからこそ選びたくなる。そして、明るく暑い季節だからこそ、買う側もそんなノリに賛成して買える時計なんだと思う。
ムーブメント
本機には、ほかのQ TIMEXで一般的なクォーツムーブメントが搭載されており、デイデイト機能がついている。僕はあまりクォーツであることに何かの感情を抱くタイプではないが、元々QUARTZのQからコレクション名がとられた本機のこのディテールに関しては、ちょっとした嬉しさがこみ上げる。それは、裏蓋に配された電池交換用のハッチだ。これは電池のセルフメンテナンスを可能にするよう付けられたものだが、自分でやるかどうかは別にして、何かを意図した意匠が残っているところに愛着を抱いてしまう。10円玉で回したくなるような溝、これ自体が中身のクォーツムーブメントよりも価値のあるものなんだと思う。
ケースとブレスレット
ケースにはゴールドIPが施され、ブレスレットは光沢のあるオレンジカラーとゴールドのバイカラーとなっている。ベゼルのオレンジとピンクによるツートンカラーはたしかに派手だが、夏の陽の光のもとでは、割と普通の時計のように見えるから不思議だ。Tシャツ、短パンなど、着こなしが単調になる夏だからこそ、このくらいのアクセントはむしろ必要なのかもしれない。
ブレスレットは、ちょうどバブル期に大きめのシャツのたるみを調節していたアームバンドのように、伸縮する仕様だ。これは、細かなコマ調整が必要なく、男女兼用で使うことも可能にしてくれそうだが、僕にはエクステンションの遊びがやや小さすぎた。手を割とすぼめないと時計がはまらなかったのと、17cmの腕周りの僕にはややフィット感がタイトだった印象だ。あと1コマあれば状況は違かったかもしれないが、まあひと夏のあいだのフィッティングであれば、そう気にする必要もないかもしれない。
結論
今回は、あえて夏を楽しい気分にさせてくれるかどうか、という基準で時計を選んでみた。もちろん、本格的なダイバーズウォッチを選ぶのは大賛成だし、SS製のスポーツウォッチもいいだろう。ただ、“正解”を選ぶような時計選びから離れることができるのも、夏の楽しみのひとつだと思う。衝動買いをして、このシーズンだけでもワクワクする気分を味わえたなら、とても価値のあることではないだろうか。Q TIMEX マリブは、少なくともここ数日間、僕の気分をアゲてくれた時計である。
Q TIMEX MALIBU Ref.TW2U81600 2万4200円(税込) SSケース、36mm径、5気圧防水。クォーツ。7月21日より予約開始、7月28日より販売開始。7月28日〜8月10日には、伊勢丹新宿店にてポップアップフェアを開催。その他、詳細は公式サイトへ。
マラソン ジェネラル・パーパス・ウォッチ メカニカル
選んだ理由
夏といえば、様々なアクティビティの季節。海や川、湖や山などで自然を満喫したり、花火大会や音楽フェスなどもありますよね。そんな夏の色んなシーンに気軽に持っていける時計としてご紹介したいのが、マラソンのジェネラル・パーパス・ウォッチ。モデル名のとおり、多目的に活躍してくれる時計なのです。
マラソン社は、1939年にカナダで設立されたアメリカ軍が採用する時計ブランド。同社の時計はすべてスイスのラ・ショー・ド・フォンで生産され、米軍だけではなく各国の政府や軍に計器や時計を支給している真のミリタリーウォッチです。このジェネラル・パーパス・ウォッチも米軍にフィールド用に支給されているモデルで、夏にガシガシ使うにはもってこいの時計だといえます。
小ぶりな樹脂製ケースに機械式ムーブメントを内蔵し、カラーはブラック、セージグリーン、そして本記事に登場するデザートタンの3色で展開されています。男女問わず誰でもつけることができる時計です。
文字盤
マットな質感のブラックの文字盤は、12時間と24時間(ミリタリータイム)が併記されています。6時位置には、"US. GOVERNMENT"の表記は、アメリカ政府が直接受注・納品されていることを示しています。なお、アメリカ政府が関わっていることが知られてはまずいミッションや他国に納入されるものには、この表記はありません。
本モデル最大の特徴のひとつは、トリチウム・バイアル・テクノロジーを採用している点です。文字盤上9時位置にはトリチウムを示す記号「H3」と3時位置には放射性マークが表示されています。トリチウムは、時分針にガラスカプセルに封入されており、蓄光を必要とせず、約15年間発光し続けることができます(万が一割れても人の肌を貫通しないレベルであるためその点安心ですね)。ブラックの文字盤は視認性が高く、夜光はスーパールミノバほど発光が強くありませんが、確かに発光し続けてくれるのです。
ムーブメント
ケースを裏返すとステンレス製のスナップバックがあり、ミルスペックであることを示すMIL-PRF-46374Gなど様々な刻印が確認できます。刻印が示すとおり内部に搭載されているのは、日本製のムーブメント。セイコーの手巻きつきの自動巻きCal.NH35です。本キャリバーはもともと日付表示付きで、文字盤上には日付表示窓はないものの、操作していると日付が変わる感覚がありそのまま残されているのがわかります。
5万円以内という予算ではなかなか機械式のムーブメント搭載は多くないため、個人的にはとても嬉しいポイントです。パワーリザーブは約41時間、24石、2万1600振動/時で駆動します。
ケースとストラップ
初期のジェネラル・パーパス・ウォッチは、ステンレススティール製でしたが、コストを抑え軽量化するために樹脂ケースへと移行して現在に至ります。正直なところこの樹脂製のケースに高級感はありませんが、それはミリタリーウォッチに求めるものではありません。
横から見ると少しボテッとしたケース形状ですが、USストラップ(ミリタリー業界では、二股のナイロンストラップをNATOストラップ、引き通しナイロンはUSストラップと呼びます)とあわさることで、見た目に反してつけ心地はよくかなり軽快で、文字通りつけているのを忘れるような感覚になります。直径38mmと小ぶりなサイジングは僕のように比較的手首の細い人にはぴったりです。
また、これもミリタリーウォッチならではですが、バネ棒はなくはめ殺しになっています。USストラップが一番合うと思いますし、このタイプの時計にレザーストラップを付けたいという人はいないと思いますが、留意しておく点でしょう。
結論
このジェネラル・パーパス・ウォッチは、米軍規格の真のミリタリーウォッチです。もともと戦地での使用に対しての耐久性を備えながら修理や電池交換などを必要としないディスポーサブルウォッチ、つまり使い捨ての時計として作られたモデル。シチズンやタイメックスのような華やかさはないかもしれませんが、小さいことは気にせず夏のアクティビティを思い切り満喫して、必要な時にだけ呼び出せる、そんな相棒のような時計になることは間違いないと思います。
マラソン ジェネラル・パーパス・ウォッチ、4万2900円(税込)ファイバーグラス混合樹脂ケース、38,1mm径、3気圧防水(マリンアクティビティにはむきません)。自動巻きCal.NH35(手巻きつき)。その他詳細は、マラソン公式サイトへ。
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