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Introducing MB&F スペシャル・プロジェクト・ワン

ブランド史上もっとも小さく、もっともスリムな時計は、マクシミリアン・ブッサー氏が考えるドレスウォッチのひとつの形だ。

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我々が知っていること

MB&Fが過去に発表したなかで最も小さく、そして最も薄い時計が新たに登場した。その正体は、まさかのドレスウォッチ。いや、本当なのだ。表示機能は時刻のみ、ケース径は38mmで、素材は2種類から選べる。とはいえ、これはあくまでMB&Fの時計である。一般的なブランドが想像する“ドレスウォッチ”とはまったく異なる意味合いで、この言葉が使われている。しかしその意図は明確だ。この新作、スペシャル・プロジェクト・ワンはブランド史上もっともコンパクトで、ある意味ではもっともシンプルなモデルなのである。ケースはプラチナまたはローズゴールドから選べ、丸みを帯びたその形状は、まるで独立したラグのフレーム内に浮かんでいるかのように見える。ラグはケースバックに接続されており、本体からは分離されたような構造だ。

 38mm径のケース厚は12mm。ドレスウォッチとしては決して薄くないが、MB&Fとしては非常にスリムな部類に入る。リューズは10時位置に配置され、それ以外には余計なものはない。MB&Fとしては極めてシンプルで、従来の文法に沿ったケースデザインであり、まさにそれこそがこの時計の真髄だといえる。

Laying on its side SP One
SP One Floating
Tilted dial of SP One

 ケース内に収められたものこそが、まさに本作の主役である。そしてそれをダイヤルと呼んでよいのかは、正直ためらうところだ。正面に鎮座するのは、スペシャル・プロジェクト・ワン(SP One)のムーブメントであり、これはMB&Fが完全自社開発したものである。このムーブメントは、ダイヤル内に3つの円を配置するというスケッチを起点に構想された。その設計に基づき、香箱、テンプ、そして実際に時刻を表示するダイヤルという3つの円が“浮かぶように”配置されている。このムーブメントは本作のためにゼロから設計されており、ムーブメントの多くの構成部品は意図的にこの3つの円の下に隠されている。それら3つを視覚的に結びつけるのが、中央を貫く3本スポークのブリッジである。

 時刻を示すダイヤルは、6時位置に配された小さな円で、装着者にもっとも近い位置にある。サーキュラーブラッシュが施され、表面にはブラックDLC加工によるサンレイ仕上げが与えられている。さらに、面取りされたアプライドのアワーマーカーが配置されている。わずかに傾斜を持たせて設置されているため、針の駆動には円錐状の歯車を用いた追加の機構が必要となった。スケルトン仕様の針は、上面にトランブラージュ(tremblage)加工によるテクスチャーを施し、そのほかの鏡面仕上げ部分とのあいだに鮮やかなコントラストをもたらしている。このサイズの針としては異例の処理であり、視認性を大いに高める役割を果たしている。

Movement shot

 ムーブメント全体はコンテンポラリーな構造を持ちながらも、随所にクラシカルな仕上げが施されている。メインブリッジ上には、ゴールド製のシャトンにセットされたルビーが3石、視認性高く並び、装飾性と機能美を両立させている。時計を裏返すと、さらに深さの異なる複数のシャトンが目に入り、層状に構成された奥行きのあるデザインとなっている。歯車類はすべて手作業によるアングラージュ(面取り)仕上げが施されており、細部までこだわり抜かれている。このモデルがSP One(スペシャル・プロジェクト・ワン)」と名付けられたのは、オロロジカル・マシンのような突飛なフォルムとも、レガシー・マシンのような古典主義的スタイルとも異なる、ちょうどその中間に位置する存在だからだ。

 ケースのシルエットはシンプルではあるが、ムーブメントには依然としてMB&Fらしさが色濃く息づいている。キャリバーの外周は“アンフィシアター(円形劇場)”と呼ぶべき面取りを施したフランジが取り囲み、プラチナモデルにはスカイブルーの色調、ローズゴールドモデルには温かみのあるアンスラサイトカラーのニュアンスが添えられている。上下両面には反射防止コーティングが施されたサファイアクリスタルが装着されており、ムーブメントの造形美はもちろん、装着者の手首の産毛にいたるまで、驚くほど鮮明に映し出される。

 SP OneはMB&Fの正規取扱店にて販売され、価格は18Kローズゴールドモデルが7万6000ドル(日本円で約1100万円)、プラチナモデルが8万2000ドル(日本円で約1190万円)に設定されている。


我々の考え

MB&Fは創業20周年を迎えた今年、次々と話題作を打ち出しており、このSP Oneもまさに節目の年にふさわしい一本となっている。常に“異端”を生み出してきたブランドが、またしても異なる方向性を示した一作である。これまでレガシー・マシンやオロロジカル・マシンといったモデルに親しみを感じにくかった人々にとって、SP Oneはその絶妙な“中間点”のように感じられるはずだ。複雑機構、時計製造技術、デザインのいずれにおいても、これまでのMB&Fほど極端に踏み込んではいない。しかし、それこそが本作の狙いであり、その意図は極めて魅力的な形で実現されている。

SP One Wristshot

 幸運にも私はこの時計を何度か実機で見る機会に恵まれたが、ケース厚12mmという数値はこの記事を書くにあたってスペックを見直すまで、まったく記憶に残っていなかったほど現実味がない。実物を見る限り、本作は明らかにコンパクトな時計である。ただし、ひとつだけ個人的な難点を挙げるとすれば、ケースバックが“開きすぎている”点だろう。浮遊構造のムーブメントが生み出す大きなすきまは、ちょうど自分の時計焼け跡の上に広がってしまう。これは時計そのものの問題ではなく、あくまで自分の手首の問題だが、それでもこの空間がもう少し引き締められていたら、あるいは色付きのサファイアクリスタルなど、ケースバックにひねりが加えられていれば……と思わずにはいられない。

 とはいえ、MB&Fがまたしても独自のアプローチで時計製造の地平を広げてみせたことに変わりはない。ブルドッグ型ケースに童心を呼び起こされるような遊び心も、大胆な傾斜ブリッジに支えられた巨大なテンプが放つ舞台装置のような迫力も、ここにはない。だが、常に型破りなケース形状や複雑機構で知られるこのブランドがそのエッセンスを凝縮し、ブランド最小の時計に落とし込んだという事実は、また別種の創造性に裏打ちされたものなのである。


基本情報

ブランド: MB&F
モデル名: スペシャル・プロジェクト・ワン

直径: 38mm
厚さ: 12mm
ケース素材: プラチナ950 または 18Kローズゴールド
文字盤色: スカイブルー、もしくはアンスラサイト
インデックス: アプライド
夜光: なし
防水性能: 30m
ストラップ/ブレスレット: カーフスキンストラップ

Max Busser sketch

SP Oneのすべての出発点となった、マクシミリアン・ブッサー氏によるスケッチ。


ムーブメント情報

キャリバー: SP One
機能: 時・分表示
パワーリザーブ: 72時間
巻き上げ方式: 手巻き
振動数: 1万8000振動/時
石数: 31


価格 & 発売時期

価格: 18Kローズゴールドモデル 7万6000ドル(日本円で約1100万円)/プラチナモデル 8万2000ドル(日本円で約1190万円)
発売時期: 発売中
限定: なし

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