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Three On Three ノモス、ジン、ヴェンペ 自動巻きムーブメントとスティールブレスレットを備えたアンダー40万円のドイツ時計を徹底比較

スイスでも日本でもなく、ドイツの時計ブランドをテーマに、機械式時計初心者や初めてドイツ時計を手にする方にもおすすめの、アンダー40万円で手に入れることができるモデルをご紹介します。

スリー・オン・スリーは、ひとつのテーマの下に3本の時計を比較レビューするシリーズです。今回は、ドイツ時計ブランドを主軸に自動巻きムーブメントとスティールブレスレットを備えたモデルを比較しご紹介します。

 この企画のために選んだのは、その中でもアンダー40万円のモデルたち。この価格帯であれば、初めての機械式時計の選択肢として、そして初めてのドイツ時計の候補としてもぴったりです。スイスや日本の時計とは違った楽しみもこの3本から見つかるでしょう。


ノモス グラスヒュッテ クラブ・ネオマティック・キャンパス
By Masaharu Wada
ファースト・インプレッション

 ノモス グラスヒュッテは、ベルリンの壁が崩壊した2ヵ月後、1990年に創業した時計メーカーです。バウハウスの影響を受けたミニマルなデザインが特徴で、現在ではドイツを代表するブランドの一つとなっています。ドイツのものづくりといえば、シンプルかつ機能的で質実剛健なイメージがありますが、僕がノモスに抱いていたイメージもまさにそれでした。

 ノモスには、同社のフラグシップモデルである「タンジェント」、様々なデザインコンペティションで勝利を収める「メトロ」、ローマ数字インデックスを配してよりクラシカルなデザインをまとった「ラドウィッグ」やスクエアケースの「テトラ」など本当に様々なシリーズがラインナップされています。その中でも「クラブ」は、他のモデルよりも少しスポーティでカジュアル、さらに「クラブ・キャンパス」は、学生や新卒社会人といった若い世代をイメージしてデザインされたシリーズ。最初に手にとったときは、ミニマルな美学の中にアクティブさと楽しさをもちあわせたモデルだなと感じました。

文字盤

 クラブ・ネオマティック・キャンパスの文字盤は、アラビア数字とローマ数字を組み合わせたカリフォルニアダイヤルを備えています。カリフォルニアダイヤルといえば、通常上半分がローマ数字、下半分がアラビア数字の構成で、多くの場合シンプルな2針かセンターセコンドの3針と組み合わされます。ですが、本モデルでは上下の数字の種類が逆、さらにスモールセコンドと組み合わせがユニークな印象を与えます。

 これは僕の勝手な推測ですが、上下を入れ替えたデザインにしているのは、12時位置にあるブランド名やモデル名(アルファベット)と、6時位置のサブダイヤルのインデックス(アラビア数字)のバランスを取るためではないかと思いました。

 針とインデックスには、シルバー色に染められた夜光が塗布されており、夜間の視認性もしっかりと確保されています。また、インデックスはアプライドではありませんが、たっぷりと夜光が載っているため立体感があります。白銀仕上げの文字盤上にあるカラーは、基本的にローズゴールドとシルバーのカラーリングだけ。おまけに日付表示もありません。全体的にノモスらしいミニマルな雰囲気を体現しています。

ムーブメント

 クラブ・ネオマティック・キャンパスが、他の2本に比べて誇れる点の一つは、このムーブメント。他の2モデルが、セリタやETAベースのものであるのに対して、本モデルが搭載するのは、自社製キャリバーDUW 3001。汎用ムーブメントが悪いとは全く思いませんが(確かにヴェンペのクロノメーター仕様のチューニングはクールです)、ノモスによってデザインされ作られたムーブメントが収められているのは特別感があります。

 仕上げも4分の3プレート、グラスヒュッテストライプなど美しいグラスヒュッテ様式が取り入れられています。本モデルの裏蓋は、ソリッドケースバックかトランスパレントバックかを選択が可能です。前者であればパーソナルな刻印を施すことができ、後者であれば、内部に搭載されているムーブメントを鑑賞することができます。記念日の刻印やメッセージを入れないのであれば、トランスパレントバックにしない手はありません。

ケースとストラップ

 ケースは、直径37mmと比較的小ぶりで、薄型のDUW 3001の恩恵を受け、厚さは3モデルの中で最も薄い8.3mmです。丸みを帯びたケースには、スラリと伸びたラグが特徴的。

 また、本機は、同社で初めてステンレススティール製のブレスレットが採用されたモデルでもあります。非常にシンプルなNOMOSらしいデザインで、リッチなブレスレットではありませんが、逆にオールドスクールであるとも言え、この時計にピッタリとあっています。

 サイズの調整に工具は不要でスライダーを操作するだけ。またアビエ式でワンタッチで取り外すこともできるため、手持ちのストラップに交換して楽しむこともできます(バネ棒は別途必要ですが)。最近よく妻と時計をシェアする僕としては、これらの仕様は本当に嬉しいポイントです。

結論

 クラシックなラウンドケースの外観ながらユニークなカリフォルニアダイヤルを備え、ブレスレットがアクティブな印象を演出。小ぶりで薄型なケースはとても着け心地が良く、時計に対して少し長めに感じるラグが手首の上で存在感を強調してくれます。

 20気圧の防水性能を備え、ちょっとスポーティでちょっとカジュアルなクラブ・ネオマティック・キャンパスは、毎日使うのにぴったりの時計です。今回ご紹介する3本は、正直なところどれも魅力的で甲乙つけがたいです(実際これらの時計の中からどれか2本選べば、完璧な時計2本コレクションになると思います)。ですが、ノモスの魅力、ひいてはドイツ時計の魅力をケース、ムーブメント、そしてブレスレットと余すとこなく楽しめるクラブ・ネオマティック・キャンパスが僕の一番のお気に入りです。

ノモス クラブ・ネオマティック・キャンパス 33万5000円(税抜)


ジン 105.ST.SA.UTC.W
By Yu Sekiguchi
ファースト・インプレッション

 僕の個人的な趣味としては、ジンというブランドは完全にその範囲外にあった。いわゆるツールウォッチ的な時計が得意なメーカーであるが、その企業姿勢は本気そのもの。装身具にはもう少し遊びが欲しいと考える僕としては、ちょっと垢抜けない印象が拭えなかった。この時計に出会うまでは。

文字盤

 ダイヤルはマットなホワイトとブラックの2色を用意。ここまでミニマルで、かつ特徴的なバーインデックスや柔和な印象のフォントで記されたUTCのサインなど、これまでのジンと一線を画したデザインが採用されている。僕としては好印象だ。特にホワイトが好みで、UTC針のオレンジとのコントラストが効いている。ここまではっきりと明るいホワイトはとてもモダンな印象であり、ヴィンテージ風なモデルの多い2021年では他と大きく差別化できている要素である。

ムーブメント

 UTC仕様のセリタSW 330-1を採用。4Hzで駆動し約40時間パワーリザーブを備える必要十分なムーブメントであり、仕上げに特筆すべきものはないものの実用時計として過不足ないクオリティとなっている。個人的にはこのムーブメントであればクローズドのケースバックであったほうがジンらしいと思わなくもないが、ダイヤルデザインをポップにしたことで、より幅広い層にウケそうな裏スケという選択は責められるものではないと思う。

ケースとブレスレット

 僕は、この手のツールウォッチのマットな質感が大好きだ。ハミルトンのカーキ サブ ダイバーを愛用している話は先日のライブ配信でもお伝えしたが、SSにサンドブラストが施されたこの雰囲気は道具としての腕時計を想起させてくれる。41mm径、11.9mm厚というサイズは大多数の人にマッチする大きさで、日常使いに絶妙だ。
 特筆すべきはベゼルで、ジンのお家芸である耐傷性を高めるテギメント加工が施されている。このベゼルは若干ヌメッとした、マットな質感になっているのも面白い。ツールウォッチのベゼルは傷付いてナンボだけれど、ジンのテギメント加工は試してみたいスペックのひとつだ。かなりオーソドックスなケースを採用する他の2本に比べ、ジンならではの意匠と技術が反映されたこの105.ST.SA.UTC.Wは、分かりやすく所有欲を満たしてくれると思う。

ブレスレットにはエクステンション機構が付いている。

 さて、ブレスレットはケースと同様マット仕上げでH型で腕にフィットしやすい形状となっている。ただひとつ残念な点は、バックルのつくりがいかにも汎用品のような感じがするところ。40万円アンダーの時計にそこまで求めるのも酷かもしれないが、そこまで用意してくるブランドもある。ジンの場合、より実用的で独自のテギメント加工などにコストが振り分けられていそうだが、見た目と装着感に大きく作用するポイントだけに今後に期待したい。

結論

 ジンはこのところデザインや文字盤の仕様に非常に力を入れている印象を受ける(僕好みのものが多くなってきた)。この105.ST.SA.UTC.Wもそうだし、日本限定で発売されているEZM3.F.Vもそうだ。見た目が考慮された時計には、何か考え抜かれたストーリーが宿されていると思うし、だからこそ所有欲を掻き立てられる。ドイツ時計らしい質実剛健さの化身のようなジンが、装身具としての魅力を高めているのだから、40万円アンダー・ジャーマンウォッチのベストとして推したい。

ジン 105.ST.SA.UTC.W 32万円、レザーストラップモデル: 29万円(全て税抜)


ヴェンペ アイアンウォーカー オートマティック 36
By Kyosuke Sato
ファースト・インプレッション

 情報通の方ならご存じだろう。ドイツの老舗高級時計宝飾店として知られるヴェンペでは、以前からハイクオリティなオリジナルウォッチを展開している。昨年、そんなヴェンペが約10年ぶりに新シリーズとなるアイアンウォーカーをリリースすると知り、心を躍らせていたのだが、本国の広報画像を見て愕然としてしまった。なんてイマイチな時計なのだと。だが、実物を見た瞬間にそんな気持ちは吹き飛んでいた。断言しよう。実物を見てがっかりしてしまう時計は少なくないが、これはその逆。実物の方がはるかによく見える、なかなか珍しい時計なのだ。

文字盤

 フラットなダイヤルにペンシル型の時分針とアプライドのバーインデックスを合わせたシンプルなスタイルで、カラーはブラック、ホワイト、ブルーをラインナップする。ダイヤルにはサンレイ装飾が施されているが、その表面はそれを美しく強調するような仕上げとはなっていない。おそらくは視認性やスポーティな雰囲気を重視したからだと思うが、シンプルなスタイルと相まって精悍な顔つきを生み出している。個人的には、もう少し仕上げをキレイに見せる仕様でも良かったのではないか思うが、このあたりは好みが分かれるかもしれない。ちなみにブルーは3色の中でも比較的装飾が目立つ。筆者は装飾の美しさが強調されないのであれば、いっそのこと目立たない方が良いと考えているのでブラックが好みだ。
 なお、針とインデックスにはスーパールミノバ夜光が塗布されており、暗所や夜間においても優れた視認性を発揮する。

ムーブメント

 他の2本と比較して、アイアンウォーカーが特に優れていると感じているのがムーブメントだ。搭載するのはETA社のCal.2892-A2。2万8800振動/時、42時間パワーリザーブを備える薄型自動巻きである。

 「それのどこが良いの?」 という声が聞こえてきそうだが、おっしゃるとおり。これは多くのブランドが採用するありふれたムーブメントだ。自社製ムーブメントのノモスの方が魅力的じゃないかと言う方もいるだろう。ノモスのCal.DUW 3001に見られる自社開発の脱進機(ノモススウィングシステムと呼ばれている)は、安定性に優れたダブルブリッジ方式のテンプ受けを備えた頑強構造。また、クロノメーターこそ取得していないが、6姿勢調整であることからも精度への自信がうかがえる。だが、アイアンウォーカーが搭載するCal.2892-A2は、一般的なものとは全くもって異なる特別仕様なのだ。それこそCal.DUW 3001と甲乙つけ難いスペックを備えている。

 ひと口にCal.2892-A2といってもグレードがあり、グレードが異なると使用部品の材質も異なる。そのため、トップ(高級品用)かクロノメーター(クロノメーター用に調整されたもの)でなければ、基本的にクロノメーター認定は通らない。ヴェンペではクロノメーターグレードのものが使用されているが、スウォッチグループ以外に供給されるのは極めて異例である。
 加えて、既存のツァイトマイスターコレクションと同様、ヴェンペでは緩急装置はトリオビス、耐震装置はキフショックとより高級なものへとブラッシュアップ。さらにムーブメントは一度全て分解し、ドイツクロノメーター規格(基本的にスイスのCOSCと同じだが、こちらはケーシングされた状態でテストされる)をパスするために自社で徹底的にチューニングされている。 そこまでやったら普通はシースルーバックにして見せたくなるものだが、そうしないところは、いかにも質実剛健なドイツブランドらしい。

ケースとストラップ

 フロント部分は基本的にヘアライン仕上げ(ベゼルはポリッシュ仕上げ)で、エッジにはポリッシュ仕上げを施す。巧みに仕上げを使い分けることで、薄型でありながらも立体的な造型のケースとブレスレットを実現。スポーティでありながら高級感を感じさせる作りになっている。立体的に見えるので伝わりにくいかもしれないが、自動巻きモデルとしては薄めの9.75mm厚で、フィット感も良好だ。
 特に感心したのはブレスレットの作り込みだ。H型のコマで構成された耐久性重視の作りで、調整は片側ネジ留め仕様。太いネジでコマを固定するが、これも耐久性を考えてのことだろう。この仕様は自分でもブレスレットのコマ調整がしやすいのもありがたい。加えて、各コマはきっちり過ぎず緩すぎずの程良い間隔で固定されているので、動きも非常に滑らかで着け心地が良い。また、バックルはパテック フィリップのノーチラスを思わせるような、小振りな作り。これがスポーティになりすぎず、程よく上品な印象を与えている。

結論

 この時計は実物の方がはるかによく見える。着けてみると、それをより一層強く感じられた。ただ、本当に悩ましいのがサイズだ。実はアイアンウォーカー オートマティックには40mmと36mmの2サイズが用意されている。カラーバリエーションに違いはなく、本国サイトを見ると40mmは男性用、36mmは女性用という位置づけのようである。

左が36mm、右が40mm。

 試しに両サイズ着け比べてみたが、欧米人のようながっしりとした体格でなければ、男性でも36mmサイズは違和感なく着けられる。むしろ、40mmは少し重く感じられたので、個人的には36mmの方が着けやすかった。しかも、36mmの方が40mmよりも1万5000円(税抜価格で)安く買うことができる。筆者は断然36mm派だ。

ヴェンペ アイアンウォーカー オートマティック 36: 34万5000円、40mmモデルは36万円(全て税抜)