Just Because 偽ノーチラスのスキャンダルに巻き込まれたリル・ベイビーへのアドバイス

　Spotifyで8億3000万回再生されたリル・ベイビーの「Drip Too Hard」を聴いたことがある人なら、曲が始まると15秒も経たないうちにブランド名が現れることからも、このアトランタのラッパーがPPファンであることを知っているだろう。彼が「新しいパテックを買った」と言ったとき、おそらく彼は本物のパテックを買ったと思っていたのだ。

　レッドカーペットで、彼はパテック フィリップのノーチラス 5711/1P “40周年記念モデル”と思われる時計を着用していた。2016年に発売された、プラチナ製でバゲットカットダイヤモンドのアワーインデックスを備えたこの時計は、700本の限定モデルで販売価格は11万3400ドル（日本円で1375万9200円。当時の8%税込価格）だった。なんという発見！　リル・ベイビーは、これをニューヨークのジュエラーであるRafaello & Co.から最近手に入れ、40万ドル以上を支払ったと言われている。

　ただ、一つだけ問題があった。その時計は偽物だったのだ。ニセモノ。正真正銘のレプリカだった。

　偽物であることを知らされたリル・ベイビーは、インスタグラムでRafaello & Co.を罵倒するとともに、パテック フィリップにコメントを求めた（これは記事にするべきだろう！）。その後、 Rafaello & Co.は、公式に謝罪し、リル・ベイビーに代金は全額返済し、お詫びに2つの指輪を贈ったという声明を発表した。

　これで問題解決？　今のところは。しかし、我々はこの機会に、リル・ベイビーをはじめ、高級時計を買おうとする人たちにこのようなことが二度と起こらないように、いくつかのヒントを提供したいと思う。

　最近では誰もがお金を稼ぎたいと思っているが、それが評判を落とすことになってはいけない。次のパテック フィリップを購入する前に、このチェックリストを確認してみてほしい。

• オリジナルの書類や、パテック フィリップのアーカイブス（別名、原産地証明書）は付いていたか？　正規販売店で購入した場合（幸運にも）は別だが、これが一番の確認事項だ。
• 日付を確認する。最近の偽物のノーチラス（ノーチリー?）では、日付表示窓がひとつの目安になっている。本物の5711/1Pの画像とリル・ベイビーが投稿した画像を比較してみると、“1”の端に違いがあることがわかる。本物の5711/1Pでは、カーブがないはずだ。
• 少しでもおかしいと思ったら、やめておく。画像では判断できないが、ほかにもいくつかの簡単でわかりやすい方法がある。秒針の動きはスムーズか？　ムーブメントに青ネジが使われているか？（パテックは決して使わない）　重さはどんな感じか？（プラチナだから重いはず）　実物の仕上げはどうか？　リューズにはサインが入っているか？　最近は偽物もよく出来ているが、些細な点が重要だ。5000万円近くのお金を出すのだから、ゆっくりと時間をかけよう。
• ほかの何かがおかしかったら、外部の目を借りよう。友人に電話してみて欲しい。私のメールは logan@hodinkee.comだ。私はパテック フィリップの専門家ではないが、専門家の方に喜んでお繋ぎしよう。

　正直なところ、我々が本当に知りたいのは、その時計が入っているのがレプリカのコルクボックスかどうかだと思う。

　私はRafaello & Co.を知らないし（私のダイヤモンド・ディストリクトでの経験といえば、映画『アンカット・ダイヤモンド』に限られている）、困難な数日間を過ごしたに違いないのに、さらに余計な陰口を叩きたいとは思わない。また、宝石店側の対応も真摯なものに見えるし、今回の件が単なるミス以外の何物でもないと考えたい。

　しかし、もっと良い方法があるはずだ。莫大なお金がからんでくるし、関わらない方がいい怪しげな裏事情のある時計が出回りすぎている。そして、リル・ベイビーがその時計を買わなかったとしても、ほかの誰かが遅かれ早かれ手に入れていただろう。それが最近の時計市場の状況なのだ。時計に大金を投じるのなら、本物であることを保証し、このような大人気時計についてミスを犯さない店で購入したいと思わないだろうか？　例えば、HODINKEE Pre-Ownedのような。

　HODINKEE/Crown & Caliberでなくても、信頼できる販売者はたくさんある。そのような所では今回のような大きな買い物をする際に必要な知識と評判を備えている（さらに重要なのは、今回のような事件が起こらないようにするための保護措置をとっていることだ）。我々もあなたの助けになろう。

　高級時計の中古市場は、今日では独自の生き物で、最も重要な要素は信頼だ。リル・ベイビーはソーシャルメディアで騒ぎになった後、40万ドルを回収することができたが、同様な結果を得るためにコミュニティの怒りを利用できる人は限られる。

　リル・ベイビーのスキャンダルの1週間前に投稿された、シカゴを拠点とするヒップホップアーティスト、リル・ダークのInstagramストーリーは、それだけで予見可能と感じさせる。

 「何も知らずに宝石を買い漁るのはやめよう。偽物も多いし、法外な値段もある。1つの宝石店にしぼって買えばいい。 真実が明らかになったとき、君たちは怒るだろうな」

アーメン。

Lead image, Getty. 

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