Watch Spotting: 2021年全米オープンで見た時計のすべて

年間を通して行われるテニスは、ほかのプロスポーツリーグとは比較にならないほどのリズムと流れをもっている。1年のうち11ヵ月近く、毎週、世界中の男女のプロテニスプレーヤーが、クレー、芝、アスファルトのコートに降り立ち、ランキングポイントや名誉、賞金を競い合う。毎年1月に開催される全豪オープンから、9月にニューヨークで開催される全米オープンの閉会式まで、ほぼノンストップで試合が行われるのだ。

　テニスはほかの多くのスポーツと異なり、孤独な活動だ。一対一の勝負で、最後には必ず一人のチャンピオンが誕生する。コート上でシングルスのプレイしているとき、あなたのそばには誰もいない。手に持っているのはラケットだけで、手首にはたぶん、時計だけがある。だからこそ、テニス愛好家と時計愛好家の間には垣根を越えて楽しめる魅力があるのかもしれない。あるいは、すべてのメジャートーナメントでコートサイドに座る富裕層のテニスファンの目を引くためのマーケティング戦略なのかもしれない。実際のところはわからないが、いずれにしても、テニスのメジャー大会では常に多くの時計が目撃され、今年最後のスラム大会である全米オープンでもその期待が裏切られることはなかった。

今年の全米オープンでもロレックスはタイムキーパーを務めた。©Rolex/Jed Jacobsohn

　テニスの試合自体もそうだった。今年、イギリスのエマ・ラドゥカヌという選手が、予選から決勝に進出し18歳という若さで優勝したが、これは男女合わせて全米オープン史上初の快挙だ。彼女は大会期間中、1セットも落とさずに優勝した。男子でも初めて優勝した選手がいる。ダニール・メドベージェフが優勝候補のノバク・ジョコビッチを3セットで破り、自身初のメジャータイトルを獲得した。これによって彼は、ジョコビッチが1969年のロッド・レーバー以来、1年で4大大会を制覇しカレンダーグランドスラムを達成する最初の選手になることを阻止した。メドベージェフはボヴェのアンバサダーを務めているが（時計業界全体のなかで私の好きなパートナーシップのひとつだ）、ジョコビッチはこの14日間、新しいスポンサーの時計を装着し、馴染みつつあった。

　我々はこの2週間、ソファで釘付けになって試合の展開を見守っていた。テニスファンからすれば、ドラマや作戦、信じられないようなプレー、そしてたくさんの時計で埋め尽くされた、近年で最高のトーナメントの一つだった。

　正直なところ、テニスと時計の組み合わせというのは最高ではないだろうか？

ダニール・メドベージェフのボヴェ　ピニンファリーナトゥールビヨンオタンタ・セイ