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Auctions アンティコルム ジュネーブオークション速報 VOGA Museum Collections注目ロットの落札結果と謎多きLot 133の評価

先日開催されたアンティコルム ジュネーブオークションが終了し、出品されたVOGA Museum Collectionsも無事すべて落札された。さて、気になる注目ロットの結果はどうだったのか?

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2025年5月10日から11日にかけて実施されたアンティコルム ジュネーブオークションが無事、幕を下ろした。先日公開の記事でも紹介したように、このオークションにはVOGA Watch Museum(島根県江津市)所蔵のコレクションが200本以上出品されており、VOGA Museum Collectionsの注目ロットをいくつか掲載した。では、その結果はどうだったのか?

 まず、出品されたVOGA Museum Collectionsのなかで最も高値が期待されていたのが、Lot 171のロレックス サブマリーナー Ref.6538 “ビッグクラウン”だ。“ビッグクラウン”は、サブマリーナーのなかでも人気があるモデルのひとつ。特にRef.6538の“ビッグクラウン”は、ディーラーやコレクターが“ジェームズ・ボンド”の称号を与え、唯一“ボンドサブ”と呼ぶ代表的なリファレンスである(Ref.5510にもビッグクラウンの個体はあるが、それはショーン・コネリーが映画『007』シリーズでつけていた時計ではない)。

 現在、ヴィンテージロレックスの市場では、よほどコンディションのいい個体やレアピースでない限り、デイトナ以外ではそれほど高値がつかない傾向にあるが、それでも本個体はハイエスティメートとなる10万スイスフラン(約1750万円)で落札された。

 そのほかの注目ロットについても、おおむねエスティメートどおり、ないしはエスティメートを上回るいい数字をマークした。その落札結果は以下のとおりだ。

Lot 8:ギャレ クラムシェル クロノグラフは、落札価格4500スイスフラン(約79万円)。
Lot 13:ブライトリング クロノグラフ Ref.175 回転ベゼルは、落札価格2600スイスフラン(約46万円)。
Lot 68:ユニバーサル・ジュネーブ トリコンパックス Ref.881101/3 “エキゾチックグレーダイヤル”は、落札価格2万1000スイスフラン(約368万円)。
Lot 125, 127, 129:パテック フィリップ カラトラバ Ref.96の落札価格は、Lot 125が1万6000スイスフラン(約280万円)、Lot 127が9000スイスフラン(約158万円)、そしてLot 129が 8000スイスフラン(約140万円)。
Lot 134:チューダー サブマリーナー Ref.7924 “ビッグクラウン”は、落札価格4万2000スイスフラン(約735万円)。
Lot 179:ロレックス GMTマスター Ref.1675/8は、落札価格2万1000スイスフラン(約368万円)。

 また、ロレックスのバブルバックや一部のレアピースがエスティメートを上回る数字をマークし、最終的には出品されたすべてが落札され、結果は合計で127万5750スイスフラン、日本円で約2億2333万円(バイヤーズプレミアム含まず)と当初の予想を大きく上回る結果となったことを報告しておこう。


謎多きLot 133、チューダー サブマリーナー Ref.7924 “ビッグクラウン” モイスチャーインジケーターの評価

 公式サイトでも明らかにされているが、チューダー サブマリーナー Ref.7924は1958年に登場したリファレンスだ。ロレックスでは、8mmの大きなリューズを持つサブマリーナー Ref.6538は“ビッグクラウン”と呼ばれるが、これはチューダーにおいても同様。同個体はチューダー版“ビッグクラウン”である。一見すると前モデル(Ref.7922と7923があるが、前者は1954年に登場した自動巻き仕様、後者は1955年に登場した手巻き仕様)と似ているが、Ref.7924は防水性が2倍の200mに向上した高性能モデルであった。このスペックを獲得するために、37mmのケースは前モデルよりも厚くなり、前述のようにねじ込み式の“ビッグクラウン”を装備。そしてより厚くドーム型の形状を持つ新しいトロピックタイプのプレキシガラスクリスタルが取り付けられた。なお、ムーブメントはRef.7922と同じ自動巻きCal.390を搭載し、ダイヤル6時位置に“200m = 660ft”と印字されている。

 興味深いのはチューダー サブマリーナーがフランス海軍に採用されていたということ。Ref.7922と7923に続き、この7924もそれに該当する。そしてアメリカ海軍においてもチューダー サブマリーナーは採用された。1958年からアメリカ海軍(USN)は隊員向けにRef.7924の支給を開始。1980年代までチューダーはダイバーズウォッチの支給を続けていたと言われている。コレクターたちの長年にわたる研究によると、フランス海軍のものとは異なり、USNで支給された時計は裏蓋の刻印が統一されておらず、識別が容易ではなかったようである。

 そしてコレクターの研究により、実は支給された一部には、ダイヤルの下半分に湿度に反応して色が変化するモイスチャーインジケーターが施されたモデルが存在していたということが分かった。ただし、それはRef.7924ではなく、7928だったと言われている。

 前置きが長くなってしまったが、Lot 133のチューダー サブマリーナー Ref.7924 “ビッグクラウン”を見て欲しい。同個体のダイヤルには、モイスチャーインジケーターらしきものが施されているのだ。だが、同個体はディテールから判断してもRef.7924であり、ケースバックにはコレクターたちが言うような軍用を示すコードの刻印も見当たらない。筆者はVOGA Museum Collectionsのなかでこの時計を見つけてから、どんな来歴を持つ個体なのかを調べてきたが、ついにその正体は分からなかった。今回、もしかしたらこの時計がとんでもないレアピースとして話題になるのではないかと密かに期待していたのだが…。どうやら今回のオークションでは、単なるチューダー サブマリーナー Ref.7924 “ビッグクラウン”としての評価しか得られなかったようである。

 Lot 133はチューダー サブマリーナー Ref.7924 “ビッグクラウン” モイスチャーインジケーターはハイエスティメートではあったものの、落札価格は1万9000スイスフラン(約335万円)だった。今後、研究が進み、同個体の出自が明らかになることを期待して、時計のディテールを以下に紹介しておこう。ぜひ、チューダー サブマリーナーに詳しい方がいたら連絡をいただけると幸いである。

Photos by Kyosuke Sato

オークションの詳細は、アンティコルムのWEBサイトをご覧ください。

特に記載のないものはすべてPhotos by Keita Takahashi

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