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VINTAGE WATCHES パテック カラトラバであまり知られていない7つのリファレンス

そして、なぜそれを詳しく調べるのかについて。

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あるコレクションについてパテックの公式サイトでは、“ラウンド型腕時計の古典”と表現され、“時を超越した完璧さと洗練された気品により、世代を超えて愛されてきた”とも書かれている。パテック フィリップ自身によるものだけでなく、多くの実績あるステートメントがパテック フィリップを賞賛するために用いている。それはこれまでに作られた時計のなかで、最も規範的なもののひとつだ。カラトラバである。

 20世紀、ほぼすべての時計ブランドは、シンプルな針・インデックスだけを備えたラウンド型の時刻表示のみの腕時計を生産していた。カラトラバを作ったと主張できるのは1ブランドだけだ。パテックは公式で、1985年までカラトラバの名前を主張していなかったが、現在最初のモデルだと考えられているRef.96は1932年に発表された。この名前はもちろん、パテックのカラトラバ十字のロゴを意味している。1950年代から1960年代にかけて、ブランドがこのロゴをリューズやムーブメントに装飾し始めたとき、この十字架は控えめでエレガントなリファレンスに映える、特別な要素のひとつだった。

 ここまではあなたもよく知っているRef.96の概要だ。それとRef.565も、そしてRef.2526も知っているはずだ。知らなくとも、数字はどこかで聞いたことがあるはずだ。Talking Watchesの最中、薄暗いバーでネグローニを飲みながら地元の時計愛好家と話すとき、そしてディーラーと電話をしたら“ああ”と言ってうなずいてくれたり。

A Patek reference 2526

 今ではパテックのカラトラバコレクションと考えられているものには無数のリファレンスがあるが(いや、かなり簡単に数えられるかも)、十分な愛情を注がれていない、あるいはまったく愛されていないといつも感じてきた。アイコンと“Amagnetic”(通称Aマグ)の文字以外、ヴィンテージパテックカラトラバの世界を研究するのは難しい。珠玉のコレクションがあるにもかかわらず、ウォッチコミュニティからは単に“素敵なヴィンテージパテック”と大まかに評価されているものが多い。

 ここでは、私が自信を持って“あまり知られていない”と言える、7つのヴィンテージパテックカラトラバのリファレンスと、それらを記憶する価値があると考えている理由について、紹介する。

 これらのリファレンスをHODINKEE内で検索すると、ほとんど“一致する結果が見つかりませんでした”と表示される。まあ、今日からは違う。


Ref.2533(1952年~1956年製造)
A Patek reference 2533

イエローゴールド製で、針とインデックスに夜光塗料が塗布されている。Image courtesy of Collectability.

 まず時系列順に見ていくと、最初のカラトラバはRef.2533である。565や2508ではなく、フランソワ・ボーゲル(Taubert&Fils)製のケースでないという点で注目される2533は、防水加工がされた初期のカラトラバのラインナップのなかでは忘れられた存在である。

 先に言っておくが、これが珍しい時計であることは知っている。YG製で300本、ローズゴールド製で100本の計約400本が製造されたと推定されている。今回のリストに載っている時計のなかでも、これは最も見つけるのが難しいもののひとつになる。なおRef.2533の兄弟モデルである2532はスモールセコンドを搭載しており、生産本数は2533よりプラス200本程度。我々は合計600本ほどの個体をハントできるというわけだ

 スペック面では、2533のケースは直径34.5mm、ル・ロックルのシャルル・デュボアによって製造された。ケースデザインは565と同様、手にしたとき、そして腕にしたときに感じられる独特のずっしり感がある。より全面的にふっくらとしたラグ形状は、特にポリッシュ仕上げが施されていないケースに立体感を与える。

A Patek reference 2533

ブレゲ数字の植字インデックスを採用した、YG製 Ref.2533。Image Courtesy of Phillips.

 よりスポーティな時刻表示のみのオプションとして提供されていたため、多くの例で夜光針と夜光インデックスが採用されている。これはほかの多くのカラトラバにはないディテールだ。現在、2533(または2532)の優れた個体は2万ドル(日本円で約300万円)台半ばで取引されている。特に興味深いのは、ブレゲ数字を持つ2533が、2018年のフィリップスセールにて4万ドル(当時の相場で約445万円)以上で落札されたことである。


Ref.2525(1952年~1962年製造)
A Patek ref. 2525

A ref. 2525 in yellow gold. Image Courtesy of Christie's.

 Ref.2525は、パテックが時刻表示のみのモデルを刷新した1952年に、Ref.2533とともに発表されたモデル。トレンドと永遠のスタイルを兼ね備えたデザインを提供するブランド力を、完璧に表したものだ。96のシンプルさとは対照的に、ステップケース、フルーテッドラグ、先細りしたインデックスなど、ここでの外観は非常に1950年代的だ。

 直径36mmのウェンガー製ケースは、ディーラー、コレクター、オークションハウスなどから、“この時代としては特大だ”と定期的に言われているが、これは本当だ。まだカラトラバが手で巻かれている時代で、Ref.2525はパテックのCal.10-200と、末期頃にはCal.12-400の、異なるムーヴメントを搭載していた。このカラトラバは2533のような“スポーツ”オプションとして販売はなかったが、ねじ込み式のケースバックを特徴としている。

A Patek ref. 2525

ギュブランのサインが文字盤に入った、ホワイトゴールド製 Ref.2525。Image: courtesy of Phillips

 私の考えでは、2525は“カラトラバプラス”の典型である。本質的にカラトラバはシンプルな時計であるが、パテックは我々が期待する基本的なデザインを維持しつつ、美観的に興味深い時計にするべく、適度に遊びを加える方法を定期的に行っているようだ。コンディションのいい“ノーマル”のRef.2525は、2万ドル(日本円で約300万円)台前半から半ばで見つけられると期待できるが、WG製ケースに、ダイヤルにギュブランのサインが入ったような“スペシャル”な個体だと、2019年のオークション結果がそうだったように、10万ドル(当時の相場で約1090万円)以上で取引される可能性がある。


Ref.2455(1952年~1962年製造)
A Patek reference 2455

文字盤にカルティエのサインが入ったRef.2455。Image: courtesy of Phillips

 “カラトラバプラス”のテーマを忠実に踏襲したRef.2455は、不要なフルーティング(ラグ)よりもクリーンで直線的なラインを好む人のための、1950年代的デザインである。ケースの直径は34mmとスタンダードだが、大きく誇らしげなステップベゼルは、視覚的に時計を大きく見せる効果がある。文字盤は通常、ケースにマッチしたアプライドインデックスと、12時位置のダブルインデックスが配されている。

 このラグのシャープで角ばった性質を考えると、製造されてから今に至るまで、不適切な研磨や再仕上げなどの犠牲になっていないケースを持つRef.2455を見つけることが重要だ。腕時計を手首に巻いたとき、その魅力の多くはすっきりとした長いラグのラインに集約されているため、そこが研磨の際に丸められてしまうと、2455は一気に平らになってしまう。素晴らしい状態を保った例は2万ドル(日本円で約300万円)前後で手に入るが、来月フィリップスで出品されるカルティエのサイン入りRef.2455だけ、その数字をあっという間に超えてしまうと私は予想している。


Ref.2551(1954年~1960年製造)
A Patek ref. 2551

こちらもギュブランのサインが文字盤に入った個体の、Ref.2551。Image: Tony Traina

A Patek caliber 12-600 automatic

パテック Cal.12-600。

 Ref.2551は、より薄い自動巻きのRef.2525と考えていい。このふたつの時計は1950年代のパテックカタログで並んで提供されていたが、初期の2525と後期の2551を隔てる2年のあいだに多くの変化があった。すなわち、2526は最初の自動巻きカラトラバとして投入され、名高いCal.12/600が用意されたということだ。これまでに生産されたなかで最も優れた自動巻きムーブメントのひとつと考えられているその革新的キャリバーを使用して、パテックは時刻表示のみのラインナップを徐々にリニューアルしていった。

 36mmの“巨大”なステップケースもウェンガー製で、2525だけでなく、この時代のウェンガー製Ref.2499のケースに似たフルーテッドラグや隆起したラグを備えている。また2526とは異なり、ここで注目すべきは薄さである。どちらも直径が36mmであるのに対し、2526は頑丈で厚いケースを備えたスポーツ仕様である。これはエナメル文字盤を厚くするために必要なことだった。対照的に、2551は同じく素晴らしいムーブメントを動力源としたエレガントでスリムなオプションである。“PP”ロゴ入りのリューズはこれが初期の自動巻きカラトラバであることを本能的に知らせる。

A Patek ref. 2551

“PP”のロゴ入りリューズに、ダイヤモンドインデックスをあしらったプラチナ製Ref.2551。Image: courtesy of Christie's

 2551が、2526や2499と結びついていることを前提とすると、これらすべてはリストのなかで見られるスタンダードな“素晴らしいヴィンテージパテック”の価格設定よりも、高い市場価値に等しいと考えられるだろう。しかし、それは間違いだ。ソリッドな2551は2万ドル(日本円で約300万円)で取引されている。


Ref.2584(1957年~1960年製造)
A ref. 2584

RG製のRef.2584。

A Patek reference 2584

RG製のRef.2584。

 自動巻きCal.12-600にこだわったRef.2584は、自動巻きカラトラバのアイデアをよりクリーンでシンプルにしつつ、薄く仕上げたモデルだ。ケース、ベゼル、ラグなどすべてが視覚的にスリムである。手首に巻いて時計を真上から見たとき、クラシックなパテックの美学以外のものは何も感じない。しかしそれを横から見ると、ラグは絶妙なデザインを示し、“PP”を冠したリューズがあり、内部のムーブメントが非常に重要であることを物語る。

 2533は珍しく、リストのなかで最も見つけるのが難しいもののひとつになるかもしれないと伝えたが、2584こそ“そのひとつ”に該当する。このカラトラバは、YG、ピンクゴールド、WGのモデルが3年間のうち、約500本生産された。そのうち市場に出回っているのはごく一部である。2584はこの時代の時刻表示のみのパテックのなかで、最も発見例が少ないモデルのひとつとされている。だからといってリストの次の時計に飛ばないように。2584はおよそ1万5000ドル(日本円で約225万円)で手に入る!


Ref.5022(1997年~2003年製造)
A Patek reference 5022

YG製のRef.5022。Image courtesy of Sotheby's.

 1950年代から21世紀の変わり目まで飛ばそう。Ref.5022は、パテック フィリップのデザインのまったく異なる時代を表している。私はこれを“おかしなパテック”と呼ぶ。1990年代から2000年代初頭にかけて、ブランドは美しくもへんてこりんな腕時計をいくつか発表した。それは好き嫌いのわかれるモデルだ。私はRef.5085 ネプチューンやRef.5110 ゴンドーロのようなモデルがとても好きだが、万人が好むものではない!

A Patek reference 5022

WG製のRef.5022。Image courtesy of A Collected Man.

 ネプチューンほどではないが、5022は少し変わっている(黒文字盤のオプションがあるからチェックを)。ブレゲ数字を使ったより標準的なホワイトダイヤルは、このリストのために私が選んだバリエーションだが、もしよりユニークなものをお望みなら手に入れたいなら、どうぞご自由に

 ゴージャスな文字盤だけでなく、5022のケースプロポーションは本当に見事なものだ。33mmというサイズにためらうかもしれないが、よく見て欲しい。長くてスリムなラグにより、ラグからラグまでの長さが38mmになり、さらにストラップ幅は18mmとちょうどいい。もし5022を見かけたら、ぜひ試着してみて欲しい。カラトラバとしては小振りだが、決して小さすぎることはない。ユニークなダイヤルオプションを考慮すると価格は変動する可能性があるが、私が選んだYG製ケースに白い文字盤を組み合わせた例だと、通常1万ドルから1万5000ドル(日本円で約150万円から約225万円)で推移している。


Ref.5134(2001年~2008年製造)
A Patek reference 5134

YG製のRef.5134。アプライドのブレゲ数字インデックスを備える。Image: courtesy of Sotheby's

A Patek reference 5134

WG製のRef.5134。ギュブランのサイン入り文字盤。ギュブラン創業150周年を記念して製作された限定モデルだ。Image: courtesy of Phillips

 厳密にはカラトラバコレクションの一員であるRef.5134は、私の変化球である。おそらくパテックのトラベルタイムの歴史の一部と考えたほうが適切だろうが、この時計は信じられないほど過小評価されていると感じる。Ref.2597(まったく異なる時計だがお付き合いを)のコレクション性を考えると、実際、後継機である5134に対する評価はほとんど見られない。ふたつのデザインはパテックの歴史のなかで大きく異なる時期につくられたものだが、5134はその関係から援けを受けていない。

 直径37mmで、いくつかの異なるダイヤルレイアウトから選べる5134には、気に入るものがたくさんあると思う。私はギュブラン用に作られた“スティック”インデックスの個体が好きだが、スタンダードな5134で推移する2万ドル(日本円で約300万円)弱よりかは、少し割高で取引されている。