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Hands-On ロレックス GMTマスター II Ref. 126720VTNRを実機レビュー

新しいエアキングは見た目よりも刺激的だったが、奇妙な新作のサウスポー用GMTマスター IIは、実はかなり理にかなったものだった。

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新しい時計が発売されたとき、私はいったん判断を保留するようにしている。第一印象で判断するのはいいことだし、この生業には必要なことでもある。そして、一度手にした時計は、とことんまで自分の意見にこだわることだって可能だ。でも、実物を見る前から「すごい」派と「ダサい」派に分かれるのは、どうにも納得がいかない。

Rolex GMT-Master II ref. 126720VTNR

 そこで、Watches & Wondersで最も話題になった新作、グリーンとブラックのロレックス GMTマスター II Ref.126720VTNR(リューズと日付が左側に配置された)に初めて出会ったとき、私はどちらかの派閥に入るアプローチを避けようと思ったのである。ロレックスの会議室を出るまでに、ようやく結論が出たので、ここで紹介することにする。その前に、私がどうやって結論に至ったかを説明しよう。

カーテンの裏側を覗く

 見本市でのハンズオン記事を読むときは、通常、細かく抽出された製品についての情報を読むことになる。しかし、我々が実際に時計と向き合っている現場がどのようなものであるかということについては、ほとんど触れられていない。そして、ブランドとの対話の体験が、製品と同じくらい魅力的であることもあるのだ。

Rolex GMT-Master II ref. 126720VTNR

 ロレックスの新作時計を見るためのアポイントメントは、あることを除けば、他のブランドでのそれと同様だ。あることとは細部に至るまで、しっかりと管理されているということ。見本市は大抵の場合混沌としているのだが、ロレックスはそのカオスをすべて排除している。まずは長いテーブルに座らされる。そして、スティルウォーターかスパークリングウォーターが配られる。そして、それぞれの新作についての正式なプレゼンテーションが行われるのだ。

Rolex GMT-Master II ref. 126720VTNR

 私の場合は、アメリカの広報・マーケティング部門のロレックス担当者2名がプレゼンテーションをしてくれ、本社スイスのプロダクトデザイナー1名が技術的な質問に答えるという形で進められた。我々は各リリースについて議論し、米国チームは時計の詳細、歴史、アップデートに関する情報を共有した。私は、新しいGMTマスター IIが回ってくるまで、ただ座ってその様子を観察していた。

 時計を見てみると、GMT針には鮮やかなグリーンが、ベゼルにはサブマリーナー デイトとまったく同じグリーンが使われているのがわかった。そこから私は、ロレックスがなぜ今回のモデルでグリーンを採用したのか、なんとなく仮説を立てた。

Rolex GMT-Master II ref. 126720VTNR on wrist

 セラクロムベゼルを搭載した最初のサブマリーナーは、2008年にデビューしたブルーのRef.116619Lだ。その後、ブラックベゼルを備えたサブマリーナー Ref.116610LN、グリーンベゼルのサブマリーナー Ref.116610LVが2010年に発表された。ブラック、グリーン、そしてブルーセラミックベゼルがトリニティーを形成している。

 さて、ここでGMTマスター IIのセラクロムベゼル搭載モデルの歩みをおさらいしておこう。インターネット上における最も詳細な内訳を示した記事のひとつがこちらの「ロレックス GMTマスター 歴代モデル〜65年の歴史の中から珠玉の30本超を徹底解説」だ。ここでは凝縮してお伝えすることにする。

Rolex GMT-Master II ref. 126720VTNR

 2007年、初めてフルブラックのセラクロムベゼルを目にした。2013年には、ブルーが初登場し、その後、ブルー&レッド、そして“ルートビア”カラーが登場。では、ロレックスはそこからどこへ向かったのだろうか。

 もしGMTマスター IIがサブマリーナーのカラーパターンを踏襲して導入しているとしたら、今年に入り、唯一ラインナップから外れたカラーはグリーンだったはずだ。そのヒントは、ずっとそこにあったのだ。今にして思えば、当たり前のようにも思えてくる......。

Rolex GMT-Master II ref. 126720VTNR on wrist

 しかし、何が明白でないかおわかりだろうか? リューズをケースの左側に、日付窓を他のGMTマスター II(またはオリジナルのGMTマスター)のように3時位置ではなく9時位置に配した、左利き用にされた理由だ。

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ロレックス、サウスポー、そしてミステリー

 ダニー・ミルトンが執筆した最初の記事「ロレックス GMTマスターⅡ Ref.126720VTNR グリーンとブラックのベゼルを備えた左利き用モデル 2022年新作」のなかで、ロレックスの工場で作られる左利き用モデルには歴史的な前例があると述べている。

Rolex GMT-Master II ref. 126720VTNR

 オークションファンたちは、2018年のジュネーブと香港の両オークションで、フィリップスがふたつのユニークピースと思われるロレックスのGMTマスターを出品したことを覚えていることだろう。Ref.6542のうち、ひとつはクラシックなペプシ仕様、もうひとつはゴールドにブラウンベゼルのモデルだった(いずれもリューズガードなし)。しかし、これらは試作品であった可能性が高い。実際、ゴールドモデルは支給品であったようだ。このふたつの左利き用ヴィンテージモデルは、技術的にはデストロの前例となった(チェリーニやサブマリーナーのレフトハンドモデルの存在によって、さらに強化された)。

 これらの例はすべて、ロレックスの「デストロ」モデルのなかで最も有名なものに先行している。チャーリー・チャップリンのために作られたものだ(詳細は記事「左利きモデルの腕時計の謎を解き明かす。左利き用の腕時計が、なぜ左利きのためだけではないのか」参照)。

 左利きのためのロレックス。これはもう正真正銘の本物なのだ。

 正直に言うと、新しいデストロGMTを試させてもらっていたとき、私は時計を右手に装着していなかった。しかし、左手に装着しているときに、ケースの左側にあるリューズがどの程度気になるかを注意深く観察してみたのだが、答えはまったくもって「あまり気にならない」だった。左手に時計をつける場合でも、これは問題ないと自信をもって言える。リューズとリューズプロテクターが太く短めなので、気にならないのだ。

Rolex GMT-Master II ref. 126720VTNR

 また、左手でタイムゾーンを操作してみたところ、肉体的にも精神的にも不思議な感覚を覚えた。右利きの人がサウスポーの時計を合わせると、違和感を覚えるだろう。これはトラベルウォッチであることを考えるとさらに奇妙で、あなたがジェットセッターなら、ジャンピングアワー機能を頻繁に操作することになる。しかし、それは単に慣れの問題でもある。

 どんな感じなのか気になる方は、友人のGMTマスター IIを借りて(あるいは非売品のサンプルモデルを置いているロレックスブティックを探してみてみるといいかも。アメリカ、そして日本ではこの方法を拡大しているそうだ)、左手首に逆さまに装着してみる。そうすることで、より装着しやすくなることがおわかりいただけると思う。

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旗を立てる

 私はモダンGMTマスター IIのファンだ。2年前から所有していて、普段使いの時計として使っている。生コンクリートを使って作業するとき以外は、常に手首につけている。正直、この時計をあまり大切にしていない。なぜか? それは、そのように使う時計として出会ったからだ。現代の誇大広告に踊らされるのではなく、限界に挑戦する人たちの腕にあるのを観察するなかでこの時計に出会ったのである。HODINKEE Magazine Vol.9で執筆した『ロレックス GMTマスター IIにとって最悪なのは、金庫に入れっぱなしにすることだ』(The Worst Thing You Can Do To A Rolex GMT-Master II Is Put It In A Safe)という記事のなかで、GMTマスター IIに対する私の見解を述べている。

Rolex GMT-Master II ref. 126720VTNR

 GMTマスターとGMTマスター IIの赤と青のベゼルは、冒険を意味し、科学、探検、航空と結びついていた。チャック・イェーガーのほかにも、ベルX-1に搭乗した実験的テストパイロットのスコット・クロスフィールドが着用していた。アポロ14号では、エドガー・ミッチェル宇宙飛行士が着用。ジェミニ7号、ジェミニ12号、アポロ8号、アポロ13号に搭乗したジム・ラヴェル宇宙飛行士も着用していた。90年代のシャトルミッションでは、ロイド・ブレイン・ハモンドとリロイ・チャオの両宇宙飛行士の腕にあった。ベトナム戦争では、回転翼機と固定翼機のパイロットがこの時計を身につけていた。メキシコの元大統領ホセ・ロペス・ポルティーヨは、ジミー・カーター大統領やロナルド・レーガン大統領との会談でこの時計を身につけていた

 しかし、GMTマスター IIが400万円近い価格で売られているこの世界では、金庫に閉じ込め、冒険のために作られたのにも関わらずその機会を奪ってしまいたい誘惑に駆られるのだ。これは時計学上の悲劇だと思う。この時計が持つ倫理観の軟化と、誇大宣伝された投機市場における天文学的な価格の上昇に寄与しているのだ。

 そんな心構えで、腕にはめた新しいGMTをひと目見て、すぐに外にいる自分を想像した。グリーンとブラックは、冒険的な感じがする。カジュアル。真面目すぎない感じだ。スーツにネクタイ、あるいはパーテーションだらけのオフィスでは使いたくない、という感じ。私もそうだ。

Rolex GMT-Master II ref. 126720VTNR on wrist

スーツにこの時計はちょっと......。

 グリーンとブラックのベゼルと、ケース左側のリューズとデイトの組み合わせの不遜さに引かれるのだ。典型的なロレックス式の奥義を破るところがいいじゃないか。

 この時計に引かれるのは、異常性を感じるからかもしれない。私のなかにいる実利主義の自分は好まないが、コレクターとしての自分は、ロレックスが左利き用のGMTマスター IIを出したことが好きなのだ。これはロレックスらしくない動きだ。マトリックスの不具合は人生を面白くするものであり、これはそのひとつであるように感じられる。とはいえ、今後数年のうちにデストロバージョンと並行してスタンダードバージョンを発表するのは、いかにもロレックスらしいといえると思う。なにしろ、姉妹ブランドのチューダーから発売されたペラゴスLHDは、発売以来、ペラゴスのスタンダードモデルと並んでカタログに掲載され続けているのだから。

Rolex GMT-Master II ref. 126720VTNR on wrist

 最後にレフトハンドとは関係ないことをひとつ。もし私がこの新しいデストロを所有していたら、何か冒涜的なことをするだろうと思う。スティールブレスレットを外して、ラバーのトロピックストラップを付けたい。これは、それをするのに最適なGMTマスター IIのように感じられる。キャンプに連れて行ったら、最高だね

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