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Hands-On ブレゲ クラシック 5177 グラン・フー・ブルー エナメル 

クラシック5177 最新バージョンの特徴は、青いスティール針の色にインスパイアされたエナメルの文字盤である。

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ブレゲといえば? こう問われたほとんどの読者の方の心にはいくつかの答えが浮かぶだろう。もちろんブレゲの名を広く世に知らしめているのは、社名にその名を冠する創業者、史上最高の時計技師の一人、そしておそらく最も高名な熟練の時計芸術家ーーブレゲである。ブレゲの時計はまた、クラシカルなデザインで知られ、そのデザインは歴史的に興味深い懐中時計のデザインを一部踏襲し、腕時計のデザインに活かしたものである。 ブレゲの時計はアブラアン-ルイ・ブレゲ(Abraham-Louis Breguet)自身が生み出したトゥールビヨンをはじめとする複雑な機構でも知られる。さらにその文字盤も名高い。文字盤にはほとんどの場合複雑な曲線模様 (ギヨシェ) が施されている。これらのギヨシェは、ジュウ渓谷のブレゲマニュファクチュールの職人たちがアンティークのローズエンジン旋盤を使って手作業で彫っている (スイス国内外で同じ機械がこれほど利用されている場所を見たことがない)。さて、同社のカタログではそれほど多くは語られていないが、ブレゲの時計で強いインパクトを放つのがグラン・フーエナメル文字盤を持つモデルだ。今日は、美しいブルーの色調のグラン・フーエナメル文字盤を持つ一品を見ていこう。

クラシック5711グラン・フー・ブルー エナメルは2019年初め頃に発表されたが、気づかなかった方も多いかもしれない。ブレゲはバーゼルワールドに参加せず、 公開は2月にそっと行われたからだ。ケースサイズは38mm、ホワイトゴールドの自動巻きドレスウォッチで、ケースバンドには繊細なフルート装飾、リューズにはブレゲの「B」のサインが施されている。ブルーエナメル文字盤のクラシック5177自体は新作だが、 コンセプト自体は10年以上前からあるもので、カタログの主流を占めている。まっすぐで幅の狭いラグ、シンプルを極めたデザイン、ブレゲが”月の形をした針”と呼ぶブレゲ針など、特徴的意匠をいくつも持つ5177は、ブレゲのモダンウォッチの中でも名高いモデルのひとつに入るだろう。

ブレゲのドレスウォッチとしては珍しいことではないが、この時計に潜む抑制の利いたコンサバティブな美しさは落ち着きと安心をもたらす。この美しさは文字盤から最も顕著に感じられる。文字盤の色は、5177の特徴であるブルースティールのブレゲ針にインスパイアされた鮮やかな青である。ブレゲ針の色が文字盤に効果的に反映されている。ロジウム仕上げを施した金属製のブレゲ針は背景からくっきりと際立ち、時刻が非常に読み取りやすくなっている。従来のブルースティールの針も高温で焼いて作られるが、この時計の文字盤はさらなる高温で焼き上げられる。

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グラン・フーエナメル特有の粒子はエナメル粉末を摂氏800℃超の窯で焼いた時に得られる。焼成過程ではエナメル粉末の均質な分布を保たねばならず、さらにエナメル層が反ったりひび割れることがあってはならない。これはもちろん頻繁に起こるが、不良品として廃棄対象になる。本稿の写真はこの特別な文字盤の本質を極めてよく捉えていると思うが、グラン・フーエナメルの文字盤とそのニュアンスも含め本当に分かろうとするなら、実際に手に取るしかない。

 文字盤の6時位置近くに、ブレゲの「シークレットサイン」が エッチングされている。このサインは1795年以降のブレゲ製品のうちブレゲ自身が製作したものに記されていたもので、もちろん注意深く見なければ気づかないものだ。簡単に見えるようならそれはシークレットサイン失格。目を近づけて注意深く調べ、正しい方向から斜めの光を当てて初めて見えるのがこのサインなのである。 

ブレゲには、多くのドレスウォッチのデザインに頑なともいえるこだわりがある。ブレゲ針と独特のブレゲ数字を載せた文字盤のほかに、5177には繊細なフルート模様が施されたケースバンドとラグという2つの特徴が見られる。かつて、ラグが後からつけられた懐中時計のように、5177のラグにもそれを思わせる雰囲気があり、それによってこの時計にはアンティーク的な風情が添えられている。実際5177のラグはケースと一体ではなく、溶接で後付けされたものであり、これにより5177はクラシックラインにふさわしい外観を獲得している。

キャリバー777Qは、伝統的な時計作りに現代的特徴を取り入れたものだ。ブレゲの伝統的技法で美しく仕上げられていながら、ヒゲゼンマイ、ガンギ車、アンクルなどは最新のシリコン素材にアップデートされている。シリコンによって時計が磁気から守られ、より少量な潤滑油で滑らかに稼働できる。ブレゲは早くからシリコン技術を採用しており、その実装に積極的だった。エナメルやギヨシェが施された文字盤とシリコン部品で構成されたムーブメントは、一見、「伝統」と「革新」という正反対のもののようだが、ブレゲはそれを大切にしている。 キャリバー777Qは4 Hzで振動し、パワーリザーブは55時間である。ローターはホワイトゴールドで、美しい波型の模様が施されており、キヨシェのない文字盤を補うかのようだ。

私はブレゲのニューヨークブティックで数分間クラシック5177を装着する機会に恵まれたが、非常に快適だった。5177を着けたことのない人は、ラグの構造が人間工学に微妙で着けにくいのではないかと思うかもしれない。しかし実際にはその快適さに驚くだろう。私の手首は7インチだが、手首に沿うような着け心地だった。本機は、伝統的なブレゲの時計作りにひねりを加えた部分もあるが、同社の愛好家が望むすべての期待に応える一本と言えるだろう。小売価格は257万円(税抜)。

詳細についてはブレゲ公式サイトへ。