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我々が知っていること
イギリスはメイデンヘッドとスイス・のビエンヌ。クリストファー・ウォードの製造拠点を擁する2都市から、本日大きなニュースが飛び込んできた。ブランドの次なる大型リリースとして発表されたのが、新作モデルC12 “ロコ”だ。この新作は同社のケース一体型ブレスレットのスポーツウォッチであるザ・トゥエルブをベースに、手巻き式の自社製キャリバーCW-003を搭載し、テンプを印象的に露出したデザインを採用している。モデル名のロコは、機関車(Locomotive)を意味し、クリストファー・ウォードの進化を力強く牽引する存在であることを示唆すると同時に、時計自体が少し風変わりであることも表している。なお、掲載している撮り下ろし写真の個体は試作機であり、今後ブランドから提供された公式写真も紹介していく予定だ。
C12 ロコに搭載されるCW-003ムーブメントは実に144時間(6日間)という驚異的なパワーリザーブを誇り、バランスホイールは2万8800振動/時で鼓動を刻む。精度は日差-0〜+7秒と、こちらも非常に優秀な数値だ。ムーブメントには特に受け板部分に手作業によるポリッシュ仕上げと面取りが施されており、仕上げ技術へのこだわりが随所に感じられる。裏側はよりすっきりと機能的な印象を与えるデザインとなっており、3本の長いブリッジと、大型の香箱ふたつがむき出しで配置されている。
ケースは従来のザ・トゥエルブをベースに再設計された41mm径のスリーピース構造ステンレススティールケースで、ラグは急角度で落ちる形状にアレンジ。全体の厚さは13.7mmで、そのうち3.55mmが前面のボックス型クリスタル、0.4mmが裏側のクリスタルとなっている。ブレスレットはブランドおなじみのケース一体型デザインで、バタフライクラスプとクラスプ付近にワンタッチ式のマイクロアジャストリンクを備える。
C12 ロコのダイヤルカラーは4種類展開で、アンスラサイトグレー/ブラック、ホワイト、ブライトブルー、ブライトオレンジがラインナップされている。またインテグレーテッドブレスレットの代わりに、ダイヤルカラーにマッチしたラバーストラップ(デプロワイヤントクラスプ付き)を選ぶことも可能だ。ただし、ブレスレットには便利なマイクロアジャスト機能が標準装備されているため、価格面を考慮しても非常にお得な選択肢といえるだろう。そして、気になる価格は、ラバーストラップ仕様が4595ドル(日本円で約66万円)、ブレスレット仕様が4825ドル(日本円で約70万円)に設定されている。
我々の考え
クリストファー・ウォードは、手ごろな価格帯のなかで可能性の限界を押し広げ、驚きを与え続けている。C1 ベル カントは、手ごろでありながら親しみのあるデザインに依存してきたこれまでの路線から脱却し、ブランドがさらなる拡張を目指すための転換点となった。この新作C12 ロコにも多くの価値が詰まっている。5000ドルを下回る価格でこれほど本格的なオープンワークのデザインを提供している点(さらに、パワーリザーブや公表されている精度などスペックも含めて)には非常に魅力を感じる。とはいえ個人的な印象を正直に言えば、ベル カントと比較すると、ブランドにとっての前進度合いはやや控えめに思えた。
ちょうど1年前に“ザ・トゥエルブ”について取材した際も、価格を考えれば非常に快適で魅力的なデザインだと感じた。しかもコレクションは拡大を続け、スティール、チタン、オープンワーク仕様、40mm径に38mm径、36mm径と多様なバリエーションを揃えてきた。これは市場にとっても大きなプラスだ。しかしどうしても気になるのは、このデザインがチャペックのアンタークティックにかなり似ているという点だ。後から教えられて気づいたのだが、クリストファー・ウォードで長年デザインを手がけ、ザ・トゥエルブを設計したエイドリアン・ブッフマン(Adrian Buchmann)氏が、かつてチャペックのアンタークティックのデザインにも関わっていたという。そう聞くと、この類似性にも納得がいく。もっとも、この時計を支持する理由も十分にある。
確かにジェラルド・ジェンタ(Gerald Genta)はロイヤル オークからノーチラス、ロコモティブなどへと、デザインビジョンを進化させていった。しかしそうした進化には段階的な変化があり、今回のチャペックとクリストファー・ウォードほど似通っているとは感じなかった。その後、同僚たちに意見を聞いたところ、皆が「新しい“ロコ”は正面から見るとアンタークティック・トゥールビヨンに非常によく似ている」という点で一致した。また、ムーブメント側にはアーミン・シュトロームを思わせる要素も見受けられる、という意見もあった。さらに正直に言えば、昨年にクレドールのロコモティブが再発売されたばかりであることを考えると、このロコというネーミングにも若干の疑問を感じている。
とはいえ、この時計を支持する理由やポジティブな面は数多く存在する。価格に対して得られる満足度の高さを考えれば、コレクションに加えたくなる気持ちは十分理解できる。デザインの美しさ、装着感、マイクロアジャスト機構まで、C12 ロコには多くの魅力が詰まっている。今後しばらくは、市場全体で価格への敏感さが高まるだろう。そんななかで、クリストファー・ウォードのビジネスモデルを考えれば、(関税の影響がブランドに大きく及ばない限り)彼らが提供するコストパフォーマンスは、やはり群を抜いていると言える。
そのため私がこのデザインについて行う批評は、ブランドに届き、より独自性を高めたモデルづくりへの1歩になればという願いを込めたものだ。はっきり言っておきたいが、C12 ロコが失敗作であるということは決してない。ただ特にデザイン言語という観点からこのモデルを評価する際には、先述したような背景を踏まえて考えるべきだと感じている。
撮影用に手元にあったサンプル個体には、クラスプの両側にマイクロアジャスト機構が搭載されていたが、実際の市販モデルでは片側に1か所だけのマイクロアジャストが標準仕様となる、その点はご留意いただきたい。
少し視点を広げるとベル カントに続く存在であり、ザ・トゥエルブ路線のデザイン基盤を強化する旗艦モデルとして、C12 ロコはクリストファー・ウォードにとって非常にエキサイティングな展開と言える。依然として人気の高いブレスレット一体型のスティールスポーツウォッチというジャンルで、ブランドの技術力と時計製造の幅をさらに押し広げる挑戦でもある。確かに、デザインのいくつかの要素には既視感もあるかもしれない。しかし比較対象となる他ブランドのモデルに対して積極的に価格を抑え込んでいる点を考慮すれば、このモデルの魅力は決して過小評価できない。こうした価格と価値のバランスこそ、クリストファー・ウォードが熱心な時計愛好家たちから支持され続けてきた理由であり、C12 ロコもその成功の流れをしっかりと受け継いでいる。
基本情報
ブランド: クリストファー・ウォード(Christopher Ward)
モデル名: C12 ロコ
直径: 41mm(全長は47.5mm)
厚さ: 13.7mm
ケース素材: ステンレススティール
文字盤色: アンスラサイト、ブルー、オレンジ、またはホワイト
インデックス: アプライド
夜光: 時・分針、アワーマーカー
防水性能: 30m
ストラップ/ブレスレット: 一体型ステンレススティール製ブレスレット、またはデプロワイヤントバックル付きラバーブレスレット
ムーブメント情報
キャリバー: CW-003
機能: 時・分表示、オープンワーク
パワーリザーブ: 144時間
巻き上げ方式: 手巻き
振動数: 2万8800振動/時
石数: 29
クロノメーター認定: なし、-0〜+7秒/日
価格 & 発売時期
価格: ストラップ仕様 4595ドル(日本円で約66万円)/ブレスレット仕様 4825ドル(日本円で約70万円)
発売時期: 発売直後には事前生産分が用意されており、年内にあと2回の追加リリースを予定
限定: なし
詳細はこちらをチェック
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