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WATCH OF THE WEEK グランドセイコーは繊細で小さな時計を愛することを教えてくれた

理想のGSを見つけるのには時間がかかった。しかし一目見て、私は確信したのだ。

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私の経験から言うと、自分が本当に欲しいものは時間をかければがわかるものだ。私にとって唯一のグランドセイコーであり、HODINKEEに参加して最初に購入した時計であるSBGM221 GMTにたどり着くまでには何年もかかった。若い頃の私が身につけたいと思ったかどうかわからないが、自分に時間を与えることで、時計収集の道程の最適なポイントで、このGMTにめぐりあうことができたのだ。

 2007年に初めて日本を訪れ、グランドセイコーを取材し、GSの時計づくりの哲学全般、特にスプリングドライブについて学んだことがきっかけだった。当時、私は時計の取材を始めてまだ2年ほどだったが、キャリアの早い段階でこうした偉大な文化を学ぶ機会を与えられたことは忘れられないし、現在の自分があるのはこの経験のおかげだと思っている。

Photo by Tiffany Wade

 しかし、日本の高品質な時計を作るための技術や技法、そして献身的な姿勢には魅力を感じていたが、当時の私は経済的にも好みの面でも大きく異なっていた。当時の私は45mmのジュリアーノ・マッツォーリ(Giuliano Mazzuoli)のマノメトロのような、大きくて派手な時計が欲しかったのだ。今はもう身につけることはできないだろうが、今でもたまに見るのは楽しい。新品のグランドセイコーを所有することは、当時の私には無理だったのだ。しかし、そのときたしかにSBGM221の種が蒔かれた。これは自信を持って言える。

 SBGM221は、もちろんスプリングドライブではないが、グランドセイコーのコアを成す存在だと思う。GMTは、グランドセイコーにおける中心的な機能だと私は思っている。単純な日付表示を除けば、唯一グランドセイコーの数あるムーブメントのなかで共通して使われる機能の一つだ。高品質のクォーツからスタンダードオートマティック、ハイビートオートマティック、そしてスプリングドライブにもGMTは存在している。オーバーサイズでスポーティなものから40mm以下のドレッシーなものまで簡単に見つけることができる。そしてそのすべてが友人であるジェームズ ・ステイシー(James Stacey)が言うように、真のフライヤー、つまりカレンダー車に連動したジャンピングローカルアワーを備えているのだ。私は飛行機に乗るとき、現地時間を目的地の時間にジャンプさせて自由に行き先の夢を見る。想像のなかで自分が向かうべき場所に近づいていく、私にとっての形而上学的な儀式なのだ。

Photo by Tiffany Wade

 理想的には、初めての日本旅行でグランドセイコーを購入する先見性と手段を持っていたらと思う。というのも、2007年当時はアメリカの正規販売店では手に入れることができなかったからだ。グランドセイコーは、当時のニューヨークでは滅多にお目にかかれない遠い国の時計だったのだ。日本以外に住む愛好家はアジアから帰国した友人が身につける、ザラツ研磨されたケースや鏡面仕上げのGMT針をたまに見かけることだけで満足しなければならなかった。私が日本からの帰国時に持っていたのは、今ではすっかり廃れてしまったデジタルカメラだけだった。確かカメラのドイで免税購入したものだ。グランドセイコーが流通戦略を見直し、アメリカ市場に時計を送り出すようになるのはさらに数年後のことだった。その頃、私のポケットのなかでは廃れたカメラの代わりにiPhoneが活躍していた。

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 2017年にHODINKEEに加わってから、時計販売事業への新規進出を最前列で見ることになった。私が非常にうれしかったのは、HODINKEE Shopで発売するブランドにグランドセイコーがあったことだ。その頃には私の好みも進化していて、初めてのGSへの準備ができていることを理解した。ダイヤモンドで磨かれた針、ザラツ研磨のケース、そして時計内部への関心が私の注意を引きつけた。さらに私の前に座っていたのは、世界でも有数のGSエキスパート、唯一無二のジャック・フォースター(Jack Forster)だった。

 私が入社して間もない頃、彼はSBGM221と同じスタイルのGMTをつけていたが、彼のものは限定品で、その時点ではもう手に入らなかったと思う。HODINKEEのライターであるジェイソン・ヒートン(Jason Heaton)の腕にはアイボリーダイヤルのGMT(SBGM021)が装着されていた。ジェイソンの時計には、2017年にブランドが再編される前の旧セイコーのダイヤルが使われていた。

Photo by James Stacey

 HODINKEEの取り扱いリストに目を通し、この時計の後継機種であるSBGM221を見つけ、購入した。それにHODINKEE Shopにあったブルーのカーフスキンストラップを合わせた。その後、同じくHODINKEE Shopのライトグレーのレザーストラップに交換し、さらにフォースナー(Forstner)のライスビーズブレスレットに交換して現在に至る。こうしたアレンジによってグランドセイコーの汎用性が思いのほか広がった。本来の仕様では秋冬のドレッシーな時計だと思っていたものが、春夏のスポーティーかつ品格のある時計に変身したのだ。

 この時計はとても品格があり、実は自身の結婚式でも着用した。この日SBGM221(当時はまだブルーのストラップ)を身につけたことで、私の心のなかのグランドセイコーの存在は確固たるものとなり、一生売ることのできない数少ない時計となった。ほかの時計をつけることも考えたが、やはり家宝にしたいのはグランドセイコーなのだ。

 時計は自分自身について教えてくれるものだと信じている。また時間を計るものであるがゆえに、過去の道しるべの役割も担っているのかもしれない。私が持つ39.5mmのグランドセイコーは、私の好みの変遷と時計コレクターとしての変化を思い出させてくれる。このヴィンテージテイストで、日本製のドレッシーなGMTのない世界なんて考えられないのだ。

時計の詳細は、グランドセイコー公式サイトへ。