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ニバダ・グレンヒェンは歴史的なアーカイブを掘り起こす名手として知られるブランドであり、今回も新たにアンタークティック GMTを発表した。ニバダ・グレンヒェンやヴァルカンの現代復刻をてがけるギヨーム・ライデ(Guillaume Laidet)氏によれば、このモデルのインスピレーション源は1960年代に製造されたアンタークティック GMTにあるという。実はこのモデルが掲載されていたのは何年も前にHODINKEEで販売していた際のページだけであり、彼自身が実物を目にしたのもその時が唯一だったという。時計の特徴として際立っていたのは、エルヴィン・ピケレス S.A.(EPSA)社製のコンプレッサーケースと、赤と黒で構成された直線的なGMT針だった。
オリジナルのアンタークティック GMT Ref.87013。この1960年代後半のモデルは、数年前にHODINKEEで販売されていた。
ライデ氏によると、この復刻モデルのデザインは当時の写真と寸法を基に完全に再設計されたものだという。彼自身はそのヴィンテージウォッチを購入して実際に触れることはできなかったが、時計ブランドのトップに立つことで自分の夢を現実にする力(復刻)を持つことができたのだ。
今回11月14日に発表されたのは、次のふたつのバージョンだ。“トロピカル”ダイヤルの限定版(99本限定)と、オリジナルに似たブラックダイヤルを持つ通常モデルである。いずれもレザーストラップ仕様で価格は1600ドル(日本円で約24万8000円)。このほかにもブレスレットやストラップのオプションが用意されている。
ケースの仕様は、元の販売ページに記載されていた寸法を忠実に再現している。直径は36mmで、ラグトゥラグは40mmだ。特筆すべきは現代版のほうがオリジナルモデルよりも薄型化されている点である。オリジナルモデルの厚さは12.75mmだったが、現代版は11.6mmと薄くなっている。ヴィンテージの復刻モデルの多くが厚さや直径のバランスに苦労するなか、これは歓迎すべき改良だ。この薄型化は現代版が真の“コンプレッサーケース”ではないことによるものだろう。コンプレッサーケースは水中で圧力が高まるほどケースが密閉されるシステムを特徴としているが、このモデルではその仕組みは採用されていない。ただしふたつのねじ込み式リューズには、コンプレッサーケースを彷彿とさせるデザインが採用されている。
デザイン面を見ると、この時計はクッションケースにやや幾何学的な要素を取り入れられているようだ。ケースの上部と側面は全面ポリッシュ仕上げで、ケースの底部にはサテン仕上げが施されている。サイズ感は素晴らしく、特にヴィンテージのコンプレッサーケースファンにとって魅力的だろう。ラグトゥラグは非常に短いが、全面にポリッシュが施された幅広いショルダー部により、36mm径という小振りなサイズにもかかわらずそれなりの存在感を与えている。この時計は“ストラップモンスター”(さまざまなストラップと相性がよく、多様な組み合わせが楽しめる時計を指す)ともいえる存在で、トロピックストラップやスエードストラップが特によく似合うだろう。
アンタークティック GMTの防水性能は5気圧(5ATM)で、ふたつのねじ込み式リューズを備えている。2時位置に配置されたひとつ目のリューズは、24時間表示のインナーベゼルを回転させるためのものだ。オリジナルモデルと同様に、このインナーベゼルは夜を示すブラックと昼を示すイエローで色分けされており、ヴィンテージらしさを引き立てるプレキシガラスのインサートが採用されている。インナーベゼルを回転させる際、時計回りでは感触的に軽いフィードバックを感じられるが、反時計回りではその感触がやや弱い。どちらの方向でももう少ししっかりしたフィードバックがあれば、ベゼルの位置を正確に合わせやすかっただろう。
4時位置にあるふたつ目のリューズは、従来どおりの時刻設定用だ。この時計にはソプロッド製のC125 GMTムーブメントが搭載されており、42時間のパワーリザーブを備えている。このムーブメントではリューズを1段階に引き出すと、時計回りでGMT針を、反時計回りでデイトをそれぞれ独立して調整できる仕様になっている。ニバダはソプロッド製ムーブメントを使い慣れており、今回GMTのバリエーションを発表したのも理にかなった選択と言える。
文字盤のデザインに目を向けると12時位置には“Nivada Grenchen”のロゴが配置され、6時位置にはスタイリッシュな“Antarctic GMT”のロゴが針の下部に控えめに刻まれている。肉眼では気づきにくいが、注意深く見るとこのAntarctic GMTのロゴはわずかに隆起した面にプリントされており、標準的なプリントロゴとは異なる立体感を生み出している。時間を示すインデックス部には金属製のアプライドインデックスが採用されており、すべてにスーパールミノバが充填されている。実際に見るとその仕上がりは非常に美しく、4角いインデックスのファセット(面取り)が光をよく反射するため、文字盤の視認性が非常に高い。文字盤自体はマットブラック仕上げで3時位置にはデイト表示窓があり、アプライドインデックスごとのあいだにはプリントされたミニッツトラックが配されている。
針のデザインもオリジナルに忠実で、特にセンターポストにある秒針のダイヤモンド型まで再現されている。また時針と分針の中央にある白い蓄光ストライプを遮る黒い部分について、当初は塗装されているだけだと思っていたが、UVライトを当ててみるとそれらにも実は蓄光が施されていることがわかった。ただし、白いスーパールミノバよりも光の減衰が早い。そしてもちろん、この時計の目玉と言えるのが赤と黒のチェッカーボード柄を持つGMT針である。
目を引く赤と黒のGMT針。
現代版で引き継がれた大きなデザイン要素が、プレキシガラス風防の採用である。歴史的な観点からすると、この選択は理にかなっている。視覚的にも明るい光の下では文字盤が非常に美しく見え、ボックス型の風防はサファイアガラスよりも歪みがはるかに少ない。しかし個人的には、現代の復刻モデルにはサファイアクリスタルのほうが好ましいと感じる。サファイアクリスタルは耐久性に優れており、装着時により安心感をもたらしてくれるからだ。ブランドがプレキシガラスを選んだ理由は十分理解できるが、数日間この時計を使用しただけで目立つ傷がすでに2カ所付いてしまい、ドアノブに対する恐怖心まで芽生えた。
時計を裏返すと、ケースバックにゴールドトーンで施された“Nivada Antarctic”のロゴが目に飛び込んでくる。ペンギンをモチーフにしたこのロゴはオリジナルモデルの控えめなデザインから少し大胆なあしらいへと進化しているが、これは個人的にかなり気に入っているデザインのひとつだ。ケースバックに施されているため主張しすぎることもなく、遊び心が感じられ、とても楽しい。これについては文句のつけようがない。
ニバダのサイン入りバックル。
穴の開いたラリースタイルのストラップが付属する。
価格が1600ドル(日本円で約24万8000円)という点から見ても、このモデルは今なお成長を続けるニバダ・グレンヒェンのヴィンテージ復刻シリーズにとって非常におもしろみのある新作だと言えるだろう。今回、ブランド復活後のラインナップに初めてコンプレッサースタイルのケースが導入されたが、このプラットフォームにはさらに多くの可能性があると感じている。この時計は装着感が非常によく、市場において比較的少数派である小径ケースのGMTモデルのなかでも非常に魅力的でスタイリッシュな選択肢を提供する。同価格帯で同様のモデルを提供しているブランドとしてはロルカやフェラーが挙げられるが、ニバダのこのモデルはレトロなヴィンテージスタイルをより大胆に表現していると言えるだろう。
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